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第8話 ホーン・ラビット
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「うん? どういうことじゃ?」
イデアの言わんとすることがわからず首を傾げるブルーノ。
ノアの頭の後ろに隠れたホーン・ラビットを見てイデアは笑みを浮かべる。
「ふえっ、ふえっ、ふえっ。ノアはのぅ……ホーン・ラビットの魔石に『体力』と『魔力』そして『知力』を『付与』することにより、疑似的な生命体を創り上げたのだよ。すごいねぇ。誰にも教わらず自力で、疑似生命体を創り出すとは……潤沢にステータス値を『付与』できるノアだからこそできることさね。しかも、そのホーン・ラビットは特別種ときたものだ。運も持っている……」
「ほう。それはすごいのぅ!」
特別種と聞いて、ブルーノもホーン・ラビットに興味津々だ。
そんなブルーノの視線に怯え、ノアの服の中に入り込むホーン・ラビット。
怯えたホーン・ラビットを見てブルーノは残念そうな表情を浮かべる。
「……話が逸れたの」
落ち込むブルーノを無視して、イデアはノアに問いかける。
「……さて、どうかねぇ? 私達の庇護下に入るか、信じられぬと断るか。もちろん、すぐに回答は出さなくてもいい」
「それでは……」
今すぐ回答を出さなくても良いと付け加えられるもノアの回答は決まっていた。
「……よろしくお願いします」
そう言って頭を下げると、イデアとブルーノは少しだけ驚く素振りを見せた。
「本当に良いのかい? もっとよく考えてから回答しても良いんだよ?」
「そうじゃぞ? ステータス値だけ見ればノアの力は既にワシ等を超えている。無理に庇護下に入る必要はないんじゃぞ?」
(確かに、『付与』と『リセット』のスキルがあれば大抵のことはなんとかなるかも知れない。でも俺は……)
「……俺はこれまでの間、孤児院で生活をしてきました」
「ああ、知っとるよ……」
「生活の大半を孤児院と併設された庭。そして、魔の森で過ごしてきたため、俺は社会のことや常識をあまり知りません」
「ふむ、なるほどのぅ……」
そう呟くとブルーノはノアの頭に手を乗せる。
「……そうじゃな、社会や常識はこれから学べば良い」
「ふえっ、ふえっ、ふえっ……私達の知り得るすべてのことを教えてあげるよ。だから安心しな」
イデアもいつの間にかノアの手を握っていた。
「……ありがとうございます」
そう言って、手を握り返そうとするとイデアはノアの手をパッと放した。
突然のことに目を丸くするノア。しんみりとした空気が吹き飛んでしまう。
「ふえっ、ふえっ、ふえっ。危ない所だったねぇ……手を握り潰される所だった。その指輪に到達者クラスのステータス値を乗せているんだろう?」
「――あっ!?」
(そ、そういえばそうだった……)
このステータス差で手を握り返すことは、万力で手を挟み返すことと同義だ。
(危ない危ない。これからお世話になる人の手を握り潰す所だった……)
ノアは冷や汗を流す。
「そういった、うっかりな所も矯正する必要がありそうだねぇ?」
「なるほどのぅ。これは鍛えがいがありそうじゃわい……!」
(なにが、なるほどなのかわからないけど……)
「あっ、そういえば、お婆さん。さっき、ここにいたら危険って言っていましたけど、あれは……」
魔の森に構えた拠点にいた時、イデアに言われた言葉。
その意味を尋ねると、イデアはノアにその時の状況を淡々と告げた。
「ああ、あれかい。なに、大したことじゃないよ。ノアが助けたことで、爺さんが仕留め損なった傭兵がいただろう? その傭兵が近くまで来ていたんだよ。仲間を引き連れ、お前さんを探しにね」
「ええっ? 俺を探しにですかっ!?」
まさか、自分を探すために傭兵が近くまで来ていたことに驚くノア。
そんなノアに、イデアは残酷な事実を告げる。
「ふえっ、ふえっ、ふえっ。『付与』のスキル保持者は希少だからねぇ。お前さんのことを逃がすまいと捕えに来たのだろうさ。ガンツとかいう傭兵に捕まった時のレベルは5だったのだろう? 若いし体力値も残っていた。お前さんのレベルを上げてやれば、まだまだ多くのステータスを奪えるとでも思っていたんじゃないかい? ガンツという傭兵の素行も調べたけどね。碌な者じゃなかったよ。自分より弱い者を恫喝し、泣いて縋る姿を見て喜ぶ変態さ。ノアはとんでもないサイコパスに狙われたものだねぇ」
「サ、サイコパス……」
聞きなれない単語だが、あまり良くない言葉であることだけはわかる。
「そう。お前さんは、いつの間にかサイコパスに狙われていたんだよ。だから、危険だと言ったのさ。まあ、杞憂に終わったけどねぇ」
(確かに、指輪にステータス値を移していたため、襲われたとしても撃退すること自体は容易だった。しかし……)
「……しかし、まあ、お前さんが襲撃者を撃退していたら大変なことになっていたかも知れないねぇ? 相手は傭兵団。もしかしたら、犯罪者として指名手配されていたかもしれないよ。だが安心しな。私達の庇護下についた以上、そうはさせないよ」
「そうじゃ、ワシ等が味方についた以上、そうはさせんよ」
イデアとブルーノはそう言うと、ノアの手を取る。
「だから、安心しな」
「ここにいれば、安全じゃ。独り立ちしても大丈夫なよう、みっちり鍛えてやるからのぅ」
やる気満々のイデアとブルーノ。
「あ、あははははっ……」
そんなイデアとブルーノを見て苦笑いをするノア。
ノアは乾いた笑いを浮かべると、指で頬を軽くかいた。
そして、頭を下げる。
「……お手柔らかにお願いします」
「ああ、任せておきな……それでは、早速、向かおうかのぅ」
「そうじゃな。ノアよ。はぐれず着いてくるのだぞ?」
「はい!」
イデアとブルーノに先導され歩くこと数十分。
森の奥底にある切り開かれた土地に大きなログハウスが建っているのが見えてきた。
イデアの言わんとすることがわからず首を傾げるブルーノ。
ノアの頭の後ろに隠れたホーン・ラビットを見てイデアは笑みを浮かべる。
「ふえっ、ふえっ、ふえっ。ノアはのぅ……ホーン・ラビットの魔石に『体力』と『魔力』そして『知力』を『付与』することにより、疑似的な生命体を創り上げたのだよ。すごいねぇ。誰にも教わらず自力で、疑似生命体を創り出すとは……潤沢にステータス値を『付与』できるノアだからこそできることさね。しかも、そのホーン・ラビットは特別種ときたものだ。運も持っている……」
「ほう。それはすごいのぅ!」
特別種と聞いて、ブルーノもホーン・ラビットに興味津々だ。
そんなブルーノの視線に怯え、ノアの服の中に入り込むホーン・ラビット。
怯えたホーン・ラビットを見てブルーノは残念そうな表情を浮かべる。
「……話が逸れたの」
落ち込むブルーノを無視して、イデアはノアに問いかける。
「……さて、どうかねぇ? 私達の庇護下に入るか、信じられぬと断るか。もちろん、すぐに回答は出さなくてもいい」
「それでは……」
今すぐ回答を出さなくても良いと付け加えられるもノアの回答は決まっていた。
「……よろしくお願いします」
そう言って頭を下げると、イデアとブルーノは少しだけ驚く素振りを見せた。
「本当に良いのかい? もっとよく考えてから回答しても良いんだよ?」
「そうじゃぞ? ステータス値だけ見ればノアの力は既にワシ等を超えている。無理に庇護下に入る必要はないんじゃぞ?」
(確かに、『付与』と『リセット』のスキルがあれば大抵のことはなんとかなるかも知れない。でも俺は……)
「……俺はこれまでの間、孤児院で生活をしてきました」
「ああ、知っとるよ……」
「生活の大半を孤児院と併設された庭。そして、魔の森で過ごしてきたため、俺は社会のことや常識をあまり知りません」
「ふむ、なるほどのぅ……」
そう呟くとブルーノはノアの頭に手を乗せる。
「……そうじゃな、社会や常識はこれから学べば良い」
「ふえっ、ふえっ、ふえっ……私達の知り得るすべてのことを教えてあげるよ。だから安心しな」
イデアもいつの間にかノアの手を握っていた。
「……ありがとうございます」
そう言って、手を握り返そうとするとイデアはノアの手をパッと放した。
突然のことに目を丸くするノア。しんみりとした空気が吹き飛んでしまう。
「ふえっ、ふえっ、ふえっ。危ない所だったねぇ……手を握り潰される所だった。その指輪に到達者クラスのステータス値を乗せているんだろう?」
「――あっ!?」
(そ、そういえばそうだった……)
このステータス差で手を握り返すことは、万力で手を挟み返すことと同義だ。
(危ない危ない。これからお世話になる人の手を握り潰す所だった……)
ノアは冷や汗を流す。
「そういった、うっかりな所も矯正する必要がありそうだねぇ?」
「なるほどのぅ。これは鍛えがいがありそうじゃわい……!」
(なにが、なるほどなのかわからないけど……)
「あっ、そういえば、お婆さん。さっき、ここにいたら危険って言っていましたけど、あれは……」
魔の森に構えた拠点にいた時、イデアに言われた言葉。
その意味を尋ねると、イデアはノアにその時の状況を淡々と告げた。
「ああ、あれかい。なに、大したことじゃないよ。ノアが助けたことで、爺さんが仕留め損なった傭兵がいただろう? その傭兵が近くまで来ていたんだよ。仲間を引き連れ、お前さんを探しにね」
「ええっ? 俺を探しにですかっ!?」
まさか、自分を探すために傭兵が近くまで来ていたことに驚くノア。
そんなノアに、イデアは残酷な事実を告げる。
「ふえっ、ふえっ、ふえっ。『付与』のスキル保持者は希少だからねぇ。お前さんのことを逃がすまいと捕えに来たのだろうさ。ガンツとかいう傭兵に捕まった時のレベルは5だったのだろう? 若いし体力値も残っていた。お前さんのレベルを上げてやれば、まだまだ多くのステータスを奪えるとでも思っていたんじゃないかい? ガンツという傭兵の素行も調べたけどね。碌な者じゃなかったよ。自分より弱い者を恫喝し、泣いて縋る姿を見て喜ぶ変態さ。ノアはとんでもないサイコパスに狙われたものだねぇ」
「サ、サイコパス……」
聞きなれない単語だが、あまり良くない言葉であることだけはわかる。
「そう。お前さんは、いつの間にかサイコパスに狙われていたんだよ。だから、危険だと言ったのさ。まあ、杞憂に終わったけどねぇ」
(確かに、指輪にステータス値を移していたため、襲われたとしても撃退すること自体は容易だった。しかし……)
「……しかし、まあ、お前さんが襲撃者を撃退していたら大変なことになっていたかも知れないねぇ? 相手は傭兵団。もしかしたら、犯罪者として指名手配されていたかもしれないよ。だが安心しな。私達の庇護下についた以上、そうはさせないよ」
「そうじゃ、ワシ等が味方についた以上、そうはさせんよ」
イデアとブルーノはそう言うと、ノアの手を取る。
「だから、安心しな」
「ここにいれば、安全じゃ。独り立ちしても大丈夫なよう、みっちり鍛えてやるからのぅ」
やる気満々のイデアとブルーノ。
「あ、あははははっ……」
そんなイデアとブルーノを見て苦笑いをするノア。
ノアは乾いた笑いを浮かべると、指で頬を軽くかいた。
そして、頭を下げる。
「……お手柔らかにお願いします」
「ああ、任せておきな……それでは、早速、向かおうかのぅ」
「そうじゃな。ノアよ。はぐれず着いてくるのだぞ?」
「はい!」
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