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第361話 落下
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「おお……」
思わず声が出た。
まさか、闇の精霊・ジェイドを出してくるとは……。こいつ、もしかして、ゲーム世界の住人……いや、ゲーム世界に幽閉されたプレイヤーか?
闇の精霊・ジェイドが迫り来るのを眼下に収めながら、俺は軽く手を振る。
「ジン、ジェイドを返り討ちに……。あの男とも話をしたい。ジェイドを排除後、窓の外まで連れてきてくれ」
勿論、外のゴキブリが中に入って来ないよう措置した上で……。
そう風の上位精霊・ジンにお願いすると、特別個室に迫るジェイドを一瞬にして風で捕らえ、バラバラにしていく。
ジンは仮にも上位精霊。ただの精霊では話にならない。
「――じ、上位精霊だとっ!? そんな馬鹿なっ!」
「そうだな。そんな馬鹿なと嘆きたい気持ち。よく分かるよ。上位精霊を持つ相手に特攻を強いられる闇の精霊・ジェイドが可哀想だ。馬鹿な主人を持った事を嘸かし嘆いて消えていった事だろうよ」
というより、その声。ようやく思い出した。
「こ、こんな馬鹿な事があって堪るか! う、うわぁぁぁぁあ!? 誰か、誰か助けてぇぇぇぇ!!」
風の上位精霊に捕まり、男は上空へと舞い上がる。
「そうかそうか。助かりたいか……」
ゴキブリが特別個室に入って来ないよう、入念に散らして貰うと、窓を少しだけ開け、窓の外まで舞い上がってきた男に視線を向ける。
「なら、俺の質問に嘘偽りなく答えなきゃなァ。もし嘘を付けば……」
風の上位精霊・ジンに視線を向け、人差し指を下に向ける。
その瞬間、男を上空に舞い上げていた風が止み、呆然とした表情を浮かべた後、真っ逆さまに落ちていく。
「――ぎゃああああっ!? 誰か助けてぇぇぇぇ!!」
地上十階からの紐無しバンジーだ。
中々、できないぞ。こんな体験…。良い機会だ。存分に楽しむといい。
「――ぎゃああああああああっ!!」
「……ジン」
ジンに指示を出し、地面に打つかる直前で男を助けると、再び上空へ舞い上がらせる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
息も絶え絶え。紐なしバンジーを楽しんで貰えたようで何よりだ。
地上十階に舞い戻ってきた男に俺は早速、質問する。
「さて、最初の質問だ。お前は誰だ? まずは自己紹介して貰おうじゃないか」
俺の記憶が確かならこいつの名は……。
すると、あろう事か、男が俺を睨み付けてくる。
「クソ野郎が、俺の名は……」
何て反抗的な態度だろうか。
風の上位精霊・ジンに再び視線を向け、人差し指を回しながら下に向ける。
その瞬間、男を上空に舞い上げていた風が止み、まるでナルトに登場する体術、表蓮華の様にきりもみ回転しながら真っ逆さまに落ちていく。
「――ぎゃああああああああっ! なんで、質問に答えようとしたのになんでェェェェ!?」
何でもクソもない。
お前が「敵」で、「なんか反抗的」だから。それ以外の理由が必要だろうか?
ジンに指示を出し、地面に打つかる直前で男を助けると、再び上空へ舞い上がらせる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……うぷっ」
「どうした? そんなに息を荒くして、さあ、早く自己紹介してくれ」
「ぐっ……! この外道がっ!」
そう言うと、男はまたもや俺を睨み付けてくる。
まさか外道に外道と言われるとは思いもしなかった。
しかし、この男に学習能力は無いのだろうか?
今、どちらが優位な立場に立っているか、そんな単純な事すら理解できないほど認知が歪んでいるらしい。
仕方がない。俺としては甚だ不本意ではあるが……。
風の上位精霊・ジンに再び視線を向け、親指を下に向ける。
すると、ジンは宙を舞うゴキブリの大群を風のボールに閉じ込め、そこに男を放り込んだ。
「――う、うっぎゃああああああああっ!?」
どうだ? 突然、ゴキブリ蠢く風の檻に閉じ込められた気分は……。嬉しいだろう? ゴキブリと強く触れ合う事ができて……。
俺は優しいからな。
三回以上連続で紐なしバンジーをさせる様な鬼ではない。
良いだろう? 紐なしバンジーで命を危険に晒すよりゴキブリと触れ合う方が……。
生理的嫌悪感は凄いだろうが、紐なしバンジーと比較すれば人道的だ。
「うぎゃああああ…………」
暫くすると、男の声が途絶えた。
どうやら気絶したらしい。
折角、素直になる方策を練ってやったというのに軟弱な奴である。
「ジン……」
そう呟くと、ジンはゴキブリボールの中で気絶した男を叩き起こす。
「――う、うぎゃああああああああっ!」
するとまた、威勢のいい悲鳴が聞こえてきた。
元気なのはいい事だ。
「さて、俺とお前、どちらが優位か理解してくれたか? そろそろ自己紹介を始めてくれ。始めてくれないと、永遠にゴキブリボールの中から出れないぞ?」
永遠にゴキブリボールの中から出れない。
本気で言っているのが伝わったのか、男は悲鳴を上げながら自己紹介を始める。
「お、俺はルートォォォォ!? ゲーム世界で転移組という組織の副リーダーにいた者だァァァァ!! 上級ダンジョン攻略失敗の責任を取らされェェェェ! 今は借金奴隷としてェェェェ!? ピンハネの奴隷をしているゥゥゥゥ!!」
素晴らしい。叫びながら言っているので耳障りだが、簡潔で分かりやすい自己紹介だ。
「そうか。ルートか、久しぶりだな。元気にしてたか? 今、ピンハネの下で借金奴隷やってるのか。大変だね?」
嫌がらせを込め他愛のない会話を始めると、ルートの絶叫がゴキブリボールから聞こえてくる。
「じ、自己紹介を終えただろォォォォ!! ここから出せェェェェ!?」
ルートの魂が籠った絶叫。
余程ゴキブリボールの中にいるのが嫌らしい。
しかし、ルートは勘違いをしている。
「……お前、何か勘違いしてないか? 誰が自己紹介をしたらゴキブリボールから出してやるなんて言ったよ」
俺は、自己紹介を始めてくれないと、永遠にゴキブリボールの中から出れないぞと言ったんだ。
そこから出られるのは、俺が満足する回答をお前が出したその後だよ。
そう告げると、ルートは怨嗟の声を上げる。
「――ふ、ふざけるなァァァァ!」
「ふざけてなんかいないさ。俺は至って本気だ。質問を続けよう。俺が満足する回答をすれば、早くその中から出る事ができる。次の質問だ。お前か? 東京都内でモンスターリスポーンを使った馬鹿は……?」
モンスターリスポーンの効果範囲を考えれば、ピンハネだけが、モンスターリスポーンを使っているとは考え難い。
複数の人間が広範囲に渡って使っていると見るべきだ。
俺の問いにルートは絶叫を上げながら答える。
「そうだァァァァ! 俺がやったァァァァ!!」
質問をしたら馬鹿みたいな答えが返ってきた。余裕無さすぎだろ。そうだ。俺がやったじゃねーよ。威張んな、カス。
しかし、いちいち反応していては話が前に進まない。
俺はつっこみたい衝動を抑えて質問を続ける。
「……お前が知るピンハネの情報を全て話せ。エレメンタル、都に散らばった奴隷の人数。戦力。目的。全てだ」
すると、ルートは絶叫混じりに告白する。
「――ピンハネは神よりィィィィ! 人間をも収納できるアイテムゥゥゥゥ!? ストレェェェェジを賜ったァァァァ! 今は影の上位ィィィィ! 精霊であるスカジがァァァァ! 守りに付いているゥゥゥゥ! それ以外のエレメンタルは全てェェェェ! 倒されてしまったァァァァ! だから俺ら十人の奴隷がァァァァ! 呼ばれたのだァァァァ! 知っての通り俺達奴隷は元プレイヤァァァァ! 目的はお前を捕まえる事ォォォォ! 騒ぎを起こしてェェェェ! お前を誘き寄せるゥゥゥゥ! 俺はお前がここに居ると睨みここに来たァァァァ! もういいだろォォォォ!?」
余程、ゴキブリと戯れるのが嫌らしい。
しかし、おかしいな。自分が助かる為とはいえ、ピンハネの情報をこうもペラペラ喋り倒すとは……。
ルートの首には、隷属の首輪が嵌っている。
ピンハネの情報を話せば話す度、首輪が締まり苦しい筈だ。
だが、現状、そうは見えない。
「ああ、そういう事か……」
ピンハネの持つ闇の上位精霊・ディアボロスは、人やモンスターの精神面に多大な影響を与える事ができる存在。
ピンハネはディアボロスの力を使い、『隷属の首輪を嵌め、個別に命令する』という煩わしい作業を省略したのか。
隷属の首輪の特性として、首輪を嵌めた者の命令には逆らえない。
ディアボロスに隷属の首輪を付けさせ、そのディアボロスをピンハネが操れば、結果として、ピンハネが奴隷の命令 権を握る事になる。
しかし、そのディアボロスは俺が撃破してしまった。
ディアボロスの撃破は、ピンハネに対し、想像以上の影響を与えた様だ。
「――ピンハネはァァァァ! 先日、大量の首輪を購入したァァァァ! どうやらこっちでの商売が上手くいってるらしいィィィィ! 稼いだ金を金銀宝石に変えェェェェ! 首輪を購入した様だァァァァ! もういいだろォォォォ!」
「ああ、そうだな……」
十分過ぎる程の情報だ。
しかし、ピンハネの奴……許せないな。東京都民の血税で下らない物を購入しやがって……。
商売ってあれだろ? 東京都知事を支配下に置き、弱者救済の名の下に、ピンハネと村井が理事を務める財団法人に三兆円を投入した税金の無駄遣いの最たるもの。
当然、その血税の中には俺が納めた税金も入っている。
「……もう用済みだ。ありがとう。ルート」
闇の精霊を召喚し、嘘を付くこと。そして、俺に関する情報を話す事ができぬよう細工すると、風の上位精霊・ジンに視線を向ける。
すると、風が止み、閉じ込めていたゴキブリと共にルートが絶叫を上げて地面に向かって落下していく。
「――ぎゃああああっ!? なんで……なんでぇぇぇぇ!???」
いや、何でじゃねーだろ。
そこら中でモンスターリスポーンを使いやがって、東京都民の迷惑を考えろ。
自衛隊まで出動しているじゃねーかっ!
お前等がやった事は、テロと同義。
許される事じゃねーんだよ。
「償いの時だ。まあお前のレベルならこの高さから落ちても死ぬ事はないだろ」
俺は鬼でも悪魔でもない。
風の上位精霊・ジンに風量を調整して貰うと、死なず後遺症も残らないがもの凄く痛みを感じる絶妙な落ち方でルートを地上に叩き落とした。
思わず声が出た。
まさか、闇の精霊・ジェイドを出してくるとは……。こいつ、もしかして、ゲーム世界の住人……いや、ゲーム世界に幽閉されたプレイヤーか?
闇の精霊・ジェイドが迫り来るのを眼下に収めながら、俺は軽く手を振る。
「ジン、ジェイドを返り討ちに……。あの男とも話をしたい。ジェイドを排除後、窓の外まで連れてきてくれ」
勿論、外のゴキブリが中に入って来ないよう措置した上で……。
そう風の上位精霊・ジンにお願いすると、特別個室に迫るジェイドを一瞬にして風で捕らえ、バラバラにしていく。
ジンは仮にも上位精霊。ただの精霊では話にならない。
「――じ、上位精霊だとっ!? そんな馬鹿なっ!」
「そうだな。そんな馬鹿なと嘆きたい気持ち。よく分かるよ。上位精霊を持つ相手に特攻を強いられる闇の精霊・ジェイドが可哀想だ。馬鹿な主人を持った事を嘸かし嘆いて消えていった事だろうよ」
というより、その声。ようやく思い出した。
「こ、こんな馬鹿な事があって堪るか! う、うわぁぁぁぁあ!? 誰か、誰か助けてぇぇぇぇ!!」
風の上位精霊に捕まり、男は上空へと舞い上がる。
「そうかそうか。助かりたいか……」
ゴキブリが特別個室に入って来ないよう、入念に散らして貰うと、窓を少しだけ開け、窓の外まで舞い上がってきた男に視線を向ける。
「なら、俺の質問に嘘偽りなく答えなきゃなァ。もし嘘を付けば……」
風の上位精霊・ジンに視線を向け、人差し指を下に向ける。
その瞬間、男を上空に舞い上げていた風が止み、呆然とした表情を浮かべた後、真っ逆さまに落ちていく。
「――ぎゃああああっ!? 誰か助けてぇぇぇぇ!!」
地上十階からの紐無しバンジーだ。
中々、できないぞ。こんな体験…。良い機会だ。存分に楽しむといい。
「――ぎゃああああああああっ!!」
「……ジン」
ジンに指示を出し、地面に打つかる直前で男を助けると、再び上空へ舞い上がらせる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
息も絶え絶え。紐なしバンジーを楽しんで貰えたようで何よりだ。
地上十階に舞い戻ってきた男に俺は早速、質問する。
「さて、最初の質問だ。お前は誰だ? まずは自己紹介して貰おうじゃないか」
俺の記憶が確かならこいつの名は……。
すると、あろう事か、男が俺を睨み付けてくる。
「クソ野郎が、俺の名は……」
何て反抗的な態度だろうか。
風の上位精霊・ジンに再び視線を向け、人差し指を回しながら下に向ける。
その瞬間、男を上空に舞い上げていた風が止み、まるでナルトに登場する体術、表蓮華の様にきりもみ回転しながら真っ逆さまに落ちていく。
「――ぎゃああああああああっ! なんで、質問に答えようとしたのになんでェェェェ!?」
何でもクソもない。
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ジンに指示を出し、地面に打つかる直前で男を助けると、再び上空へ舞い上がらせる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……うぷっ」
「どうした? そんなに息を荒くして、さあ、早く自己紹介してくれ」
「ぐっ……! この外道がっ!」
そう言うと、男はまたもや俺を睨み付けてくる。
まさか外道に外道と言われるとは思いもしなかった。
しかし、この男に学習能力は無いのだろうか?
今、どちらが優位な立場に立っているか、そんな単純な事すら理解できないほど認知が歪んでいるらしい。
仕方がない。俺としては甚だ不本意ではあるが……。
風の上位精霊・ジンに再び視線を向け、親指を下に向ける。
すると、ジンは宙を舞うゴキブリの大群を風のボールに閉じ込め、そこに男を放り込んだ。
「――う、うっぎゃああああああああっ!?」
どうだ? 突然、ゴキブリ蠢く風の檻に閉じ込められた気分は……。嬉しいだろう? ゴキブリと強く触れ合う事ができて……。
俺は優しいからな。
三回以上連続で紐なしバンジーをさせる様な鬼ではない。
良いだろう? 紐なしバンジーで命を危険に晒すよりゴキブリと触れ合う方が……。
生理的嫌悪感は凄いだろうが、紐なしバンジーと比較すれば人道的だ。
「うぎゃああああ…………」
暫くすると、男の声が途絶えた。
どうやら気絶したらしい。
折角、素直になる方策を練ってやったというのに軟弱な奴である。
「ジン……」
そう呟くと、ジンはゴキブリボールの中で気絶した男を叩き起こす。
「――う、うぎゃああああああああっ!」
するとまた、威勢のいい悲鳴が聞こえてきた。
元気なのはいい事だ。
「さて、俺とお前、どちらが優位か理解してくれたか? そろそろ自己紹介を始めてくれ。始めてくれないと、永遠にゴキブリボールの中から出れないぞ?」
永遠にゴキブリボールの中から出れない。
本気で言っているのが伝わったのか、男は悲鳴を上げながら自己紹介を始める。
「お、俺はルートォォォォ!? ゲーム世界で転移組という組織の副リーダーにいた者だァァァァ!! 上級ダンジョン攻略失敗の責任を取らされェェェェ! 今は借金奴隷としてェェェェ!? ピンハネの奴隷をしているゥゥゥゥ!!」
素晴らしい。叫びながら言っているので耳障りだが、簡潔で分かりやすい自己紹介だ。
「そうか。ルートか、久しぶりだな。元気にしてたか? 今、ピンハネの下で借金奴隷やってるのか。大変だね?」
嫌がらせを込め他愛のない会話を始めると、ルートの絶叫がゴキブリボールから聞こえてくる。
「じ、自己紹介を終えただろォォォォ!! ここから出せェェェェ!?」
ルートの魂が籠った絶叫。
余程ゴキブリボールの中にいるのが嫌らしい。
しかし、ルートは勘違いをしている。
「……お前、何か勘違いしてないか? 誰が自己紹介をしたらゴキブリボールから出してやるなんて言ったよ」
俺は、自己紹介を始めてくれないと、永遠にゴキブリボールの中から出れないぞと言ったんだ。
そこから出られるのは、俺が満足する回答をお前が出したその後だよ。
そう告げると、ルートは怨嗟の声を上げる。
「――ふ、ふざけるなァァァァ!」
「ふざけてなんかいないさ。俺は至って本気だ。質問を続けよう。俺が満足する回答をすれば、早くその中から出る事ができる。次の質問だ。お前か? 東京都内でモンスターリスポーンを使った馬鹿は……?」
モンスターリスポーンの効果範囲を考えれば、ピンハネだけが、モンスターリスポーンを使っているとは考え難い。
複数の人間が広範囲に渡って使っていると見るべきだ。
俺の問いにルートは絶叫を上げながら答える。
「そうだァァァァ! 俺がやったァァァァ!!」
質問をしたら馬鹿みたいな答えが返ってきた。余裕無さすぎだろ。そうだ。俺がやったじゃねーよ。威張んな、カス。
しかし、いちいち反応していては話が前に進まない。
俺はつっこみたい衝動を抑えて質問を続ける。
「……お前が知るピンハネの情報を全て話せ。エレメンタル、都に散らばった奴隷の人数。戦力。目的。全てだ」
すると、ルートは絶叫混じりに告白する。
「――ピンハネは神よりィィィィ! 人間をも収納できるアイテムゥゥゥゥ!? ストレェェェェジを賜ったァァァァ! 今は影の上位ィィィィ! 精霊であるスカジがァァァァ! 守りに付いているゥゥゥゥ! それ以外のエレメンタルは全てェェェェ! 倒されてしまったァァァァ! だから俺ら十人の奴隷がァァァァ! 呼ばれたのだァァァァ! 知っての通り俺達奴隷は元プレイヤァァァァ! 目的はお前を捕まえる事ォォォォ! 騒ぎを起こしてェェェェ! お前を誘き寄せるゥゥゥゥ! 俺はお前がここに居ると睨みここに来たァァァァ! もういいだろォォォォ!?」
余程、ゴキブリと戯れるのが嫌らしい。
しかし、おかしいな。自分が助かる為とはいえ、ピンハネの情報をこうもペラペラ喋り倒すとは……。
ルートの首には、隷属の首輪が嵌っている。
ピンハネの情報を話せば話す度、首輪が締まり苦しい筈だ。
だが、現状、そうは見えない。
「ああ、そういう事か……」
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隷属の首輪の特性として、首輪を嵌めた者の命令には逆らえない。
ディアボロスに隷属の首輪を付けさせ、そのディアボロスをピンハネが操れば、結果として、ピンハネが奴隷の命令 権を握る事になる。
しかし、そのディアボロスは俺が撃破してしまった。
ディアボロスの撃破は、ピンハネに対し、想像以上の影響を与えた様だ。
「――ピンハネはァァァァ! 先日、大量の首輪を購入したァァァァ! どうやらこっちでの商売が上手くいってるらしいィィィィ! 稼いだ金を金銀宝石に変えェェェェ! 首輪を購入した様だァァァァ! もういいだろォォォォ!」
「ああ、そうだな……」
十分過ぎる程の情報だ。
しかし、ピンハネの奴……許せないな。東京都民の血税で下らない物を購入しやがって……。
商売ってあれだろ? 東京都知事を支配下に置き、弱者救済の名の下に、ピンハネと村井が理事を務める財団法人に三兆円を投入した税金の無駄遣いの最たるもの。
当然、その血税の中には俺が納めた税金も入っている。
「……もう用済みだ。ありがとう。ルート」
闇の精霊を召喚し、嘘を付くこと。そして、俺に関する情報を話す事ができぬよう細工すると、風の上位精霊・ジンに視線を向ける。
すると、風が止み、閉じ込めていたゴキブリと共にルートが絶叫を上げて地面に向かって落下していく。
「――ぎゃああああっ!? なんで……なんでぇぇぇぇ!???」
いや、何でじゃねーだろ。
そこら中でモンスターリスポーンを使いやがって、東京都民の迷惑を考えろ。
自衛隊まで出動しているじゃねーかっ!
お前等がやった事は、テロと同義。
許される事じゃねーんだよ。
「償いの時だ。まあお前のレベルならこの高さから落ちても死ぬ事はないだろ」
俺は鬼でも悪魔でもない。
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