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第353話 工事現場内での抗議活動は自己責任②

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「な、なんで急に……!」

 村井元事務次官が代表を務める法人の傘下となった「一般社団法人きつねの手」の代表理事、毛利哲郎は突如として発生した突風を受け、唖然とした表情を浮かべる。

「こ、こんなの聞いてない。こんなの聞いてないぞ!」

 本日は晴れ予報。警報級の突風が吹くなんて聞いていない。
 毛利は突風に吹かれ体をよろめかせながらも指示を飛ばす。

「ここは危ない! 今すぐゲートの外に逃げるんだぁぁぁぁ!」

 周りを仮囲が囲んでいるせいか、風の通りが悪い。信じられぬ事に小さな竜巻まで発生している。
 急いでここを離れねば危険だ。
 村井の指示でこの抗議活動に参加した市民活動家達が身を縮めながら立ち上がると、更に強い風が吹き荒れ、先ほどまで座っていたパイプ椅子が風に攫われていく。

 バキバキバキッ!

 風に攫われたパイプ椅子は風に煽られるまま建設中の壁や窓ガラスを破壊。
 悪い夢でも見ているかの様な気分だ。
 俺達は平和的な抗議活動をしていただけだというのに、これでは損害賠償請求されかねない。
 だが、今はそんな事も言っていられない。

「み、皆! パイプ椅子が宙に舞っている! 気を付けてゲートの外まで……」

 そこまで言って、ゲート近くで何かを探す様に這いつくばる活動家の姿に気付く。

「おい! 何やってるんだっ! 早くゲートを開けろっ!」

 ゲートは外側から簡単に開けられない様に、鎖できつく縛り上げ、錠前で鍵を閉めてある。

「だ、駄目だっ! 鍵が……鍵が風で飛ばされて……!」
「な、なにっ!? か、鍵が飛ばされただとぉぉぉぉ!」

 鍵がなければ、工事現場から出る事も叶わない。絶望的な状況に置かれた毛利は立ち尽くす。

「な、何でこんな事に……」

 座り込みの為、工事現場に運び入れたパイプ椅子が風に煽られ猛威を振るう中、毛利はただただ絶望する。

 現在進行形でパイプ椅子により破壊されていく建設中の建物。
 風の猛威に頭を抱えながら這いつくばる市民活動家。
 自分達が締めた鍵により逃げる事ができないこの状況。

 村井さんからの要請を受け、高橋翔を糾弾する平和的な抗議活動に参加しただけなのに、何でこんな事になる!

 このままでは、怪我人が続出する。下手したら死傷者が出るかも知れない。

 毛利は必死になって助けを求める。

「――誰か……。外にいる誰かァァァァ! 助けてくれェェェェ! 警察を……いや……」

 これは最早、災害だ。
 普段から自衛隊反対デモも推進している毛利は恥や外聞を捨て叫び声を上げる。

「自衛隊に連絡してくれェェェェ! 早く、早くここから出して……」

 そこまで言って、毛利は気付く。
 この突風がこの場所だけで発生しているとは考え難い。
 もしかして……いや、もしかしなくても、外も同様の状況下に置かれているのではないかという事に……。
 そうなると、自衛隊が我々の救出に来るのはだいぶ先の事となる。その事に思い至った毛利は、絶望感に襲われガックリ項垂れた。

 ◆◆◆

「――と、まあ……そんな自分勝手な想像を頭の中でしているんだろうなぁ……言っておくけど、助けは来ないよ。まあ、自衛隊の代わりに警察がお前達を捕まえには来てくれるだろうけどね」

 音の精霊・ハルモニウムの活躍により仮囲いの中の声は外側に一切漏れる事はない。
 平和的な抗議活動という名の座り込みをしたかったんだろ?
 好きにやれよ。暴風吹き荒れる仮囲いの中で存分に……。但し、責任は取って貰う。
 お前等は一次情報を精査する事もなく勝手な憶測で俺の事を犯罪者であると断定し、冤罪にも関わらず糾弾した。その罪は万死に値する。
 少なくとも、普通の一般人では耐える事もできなかっただろう。だがお前等は自分達の都合を優先させ、それを実行した。
 ならば、お前等も同様の苦しみを味わえ、自分の力で冤罪を帳消しにして見せろ。

 俺がお前等に与える冤罪は、抗議活動中ヒートアップしてしまった自称市民活動家が、宝くじ御殿と称する建設中の建物をパイプ椅子でぶっ壊す、不法侵入&器物損壊罪。

 まったく残念だよ。折角、建物を建設中だというのに馬鹿共のお陰で建て直さなければならないなんて……。
 セキュリティ完備。宝くじ御殿の名に相応しい三十五億の建物だ。
 四割完成していたのにそれをぶっ壊されてしまったからな。こればかりは、損害賠償を貰わないと気が済まない。
 安心しろ。俺はお前等が借金を完済するその日まで付き合ってやる。
 回収できるまでの期間、数ヶ月に一度、債権執行を行い、五年に一度、債権保全手続きをして債権が未来永劫消えないようにしておいてやるよ。嬉しいだろ?
 俺も鬼じゃない。疑いを晴らす事ができるなら、俺も潔く手を引いてやるよ。
 俺はお前等と違って暇ではないし、粘着質な冤罪メーカーじゃないんでね。
 まあ、証拠となりそうな物はどさくさに紛れエレメンタルが軒並み壊しているので、自分達が壊したんじゃないと立証するのは難しいだろうけど……。

 音の精霊・ハルモニウムの音波により、犯罪者共の持つ電子機器は全て破壊した。
 そして高い仮囲の外で待つマスコミが捉えた映像により犯罪者共がパイプ椅子を持ち工事現場に立て篭もる様が記録されている。
 本来撮りたかった映像は違うだろうに残念だったなぁ……。おっと、そうこうしている内に数台のパトカーが現着した様だ。

「すいません。お話を伺わせて頂いてもよろしいでしょうか?」

 警察手帳を見せながら話しかけてくる警察官に対し、俺はオロオロしながら対応する。

「は、はい。何故、こんな事になっているのか分かりませんが、まるで市民活動家のような方々が仮囲にハシゴを掛け、工事現場に侵入していったみたいでして……。中には、総建設費三十五億円を超える建設中の建物が……。ああ、ハシゴで侵入した市民活動家が内側からゲートを開き、パイプ椅子を片手に持った市民活動家を工事現場に招き入れたと聞きますし、建物が壊されていないか心配で……。ああ、ゲートから人が出てきました!」

 警察が到着した今、これ以上の時間を自称市民活動家の対応に費やすのは馬鹿馬鹿しい。
 風の上位精霊・ジンにアイコンタクトで指示し、ゲートを開けてもらうと、中からおぼつかない足取りで自称市民活動家共が出てくる。

「そ、そんな……。建設中の建物が滅茶苦茶に……」

 そして、そうパフォーマンスしてやると、警察官はゲートから少し見える工事現場に視線を向け、渋い表情を浮かべた。

「これは酷い……」

 ひしゃげたパイプ椅子に、穴の空いた壁。欠けた外壁に、曲がった支柱。
 相当、力を込めて破壊工作に勤しんだのだろう。工事現場に置いてあったフォークリフトや仮設足場まで倒されている。

 さて、準備は整った。
 もういいだろう。

 俺は足をふらつかせながら、やっとの思いで工事現場から出てきた自称市民活動家の前に立つと、被害者仕草で激昂する。

「なんで……なんでだよ。なあ、俺があんた等に何をしたよ。総建設費三十五億の建物を壊される程の悪い事を俺がしたか? なあ、答えろよ!」
「――ち、ちょっと、落ち着きましょう。落ち着いて話をしましょう!」

 そう警察官が仲裁してくるが、普通、建物をぶっ壊され、落ち着いて話し合いできる奴はいない。
 自称市民活動家に詰め寄る素振りを見せると、流石にヤバいと思ったのか、警察官が俺を抑えに掛かる。

「離せっ! 離せよっ!」
「落ち着いて! 気持ちはわかりますが落ち着いて下さい!」

 気持ちが分かるなら邪魔すんじゃねーよと思わない事もないが、万が一、これで警察官に振り上げた腕が当たってしまい公務執行妨害で逮捕されるのは拙い。と、いうより馬鹿みたいだ。
 なので俺は、荒い息を吐きながら自称市民活動家を睨み付けるだけに留める。
 頭のおかしな奴等の相手をしてきた事で、演技力が向上した様だ。
 自称市民活動家達は揃って俯くと、俺とは目を合わさず警察官に訴えかける様に弁解する。

「――ち、違う。私達は何もやってない。本当だ! 強い風が吹いていた。あれは自然現象だ。私達は何も悪くない。私達は何も悪くないぞ」

 自称市民活動家の言葉を聞き、警察官はポカンとした表情を浮かべる。

「別に強い風なんて吹いていなかったが、一体何の話をしているんだ?」

 至極真っ当な質問をする警察官を横目に、俺はうんうんと頷く。

 まったく、自称市民活動家共は救いようがないな。建設中の建物を盛大にぶっ壊しておいて何を言ってるんだ。
 仮囲いの中以外、風なんか吹いてなかったぞ。
 開き直るな、カス。少なくともお前等は、人の敷地内にパイプ椅子片手に不法侵入していただろうが。私達は何も悪くないじゃねーよ、ボケ。パイプ椅子が建築中の建物の壁にぶっ刺さっているじゃねーか。

 自称市民活動家達は、警察官の言葉を聞き、唖然とした表情を浮かべる。

「そ、そんな馬鹿な……! あれほど強い風が吹いていたじゃないか! 工事現場を見て見ろ! パイプ椅子が壁に突き刺さり、フォークリフトが横倒しになっているんだぞ!? 支柱だってひしゃげてる! あんな事、我々にできる訳がないだろ! 普通に考えれば分かる事だろうが!」
「いや、わかんねーよ。加害者の考える事は特にな」

 警察官様は、『別に強い風なんか吹いていなかった』と言っているじゃないか。
 事実、仮囲いの外側に強い風なんか吹かせていない。強い風が吹いていたのは仮囲いの中だけだ。

 すると、自称市民活動家はあり得ない事を口にする。

「じ、じしゃあ、あれだ! あの中だけだ! 仮囲いの中だけ、強い風が吹いていたんだ!」

 責任を取らされるかも知れないとあって必死だな。
 自称市民活動家の言う事は、事実ではあるが、俺がそれを認めてやる必要はない。
 冤罪にも拘らず、その事を追及してきたのはこいつ等だからな。

 警察官と俺、そして、野次馬達の冷めた視線が自称市民活動家達に突き刺さる。

「夢でも見ていたんじゃありませんか? 強い風なんて微塵も吹いていませんでしたよ?」

 そう呟くと、警察官を始め、野次馬達もうんうんと頷き始めた。
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