231 / 374
第231話 危篤状態に陥る川島
しおりを挟む
影の精霊・シャドーに案内された場所。
そこは、奇しくも俺が宿泊している新橋大学付属病院の特別個室の隣の部屋である特別個室。コンシェルジュさんにお願いをして、事務所の関係者として面会させて貰う事となった。
「……ねえ、なんで中級回復薬を使って回復させた筈の川島がこんな危篤状態に陥っているの?」
傷は治した筈だ。まあ、かなり出血はしていたけど、その場で意識がある事を確認している。
「わかりません。二日前から突然、苦しみ始めまして……」
「ふーん。二日前からねぇ……」
俺が警察の監視下に置かれていた時からか……。
怨まれているね。もの凄く……。一体、何をやったらこんなに怨まれる事になるのやら、見当もつかない。
でも困るんだよ。誰かは知らないが、そっち側の都合で勝手に殺されちゃあ。
こっちはまだレアメタルの販路を広げてない。命を狙われるなら業務上横領罪で塀の中に行ってからにしてほしいものだ。
「……仕方がない。上級回復薬を使うか」
とりあえず、これを飲ませば命の危機を脱する事ができる。
しかし、それだけでは問題を解決した事にはならない。
死なれては困るので、ヒューヒューとかすれ声を上げる川島の口に管を通してもらい、強制的に上級回復薬を飲ませて貰うと、川島の顔色が段々と良くなってくる。
「とりあえずは、これでよしと……」
さて、問題はこれからだ。
川島はこれからレアアース事業で俺に財を成してくれる重要人物。
仕方がない。縋りたくはないが、奴に縋るか……。
「申し訳ないんだけど、医学博士の石井さんに川島の様子を見て貰うよう交渉できないかな? 川島が退院するまででいい。報酬として上級回復薬二本と中級回復薬五本を寄贈する。特別に上級回復薬を服用した川島の体液の採取も認め……いや、認めさせる」
体液の採取位、命に比べたら安いものだろう。
「……それで、お願いできないかな?」
「すぐに確認致します。少々お待ち下さいませ」
そう言うと、コンシェルジュは頷き、個室を出ていった。
◇◆◇
「うーん……それはできんなぁ? 君は私の事を便利屋か何かと勘違いしてないかね?」
そう言って渋る石井。
「――御託はいい。それで、追加の条件があるんだろ? 言ってみろよ。もしかしたら、叶える事ができるかもしれないぜ?」
そう提案すると、医学博士である石井六郎が笑みを浮かべる。
「――その言葉を待っていたのだよ。実は君に頼みがあってね」
「頼み?」
何だか嫌な予感がする。
そう言うと、石井はリモコンを手にして、テレビの電源を入れた。
そこには、突如として北極に現れた大樹『ユグドラシル』が写っている。
「……君はフルダイブ型VRMMO『Different World』というゲームを知っているかね?」
「ええ、まあ、人並みには……」
まさか医学博士の口からその単語が出てくるとは思いもしなかった。
予想外の発言に驚きつつ、様子を伺っていると石井は俺の反応を見ながら回復薬を手に持つ。
「ならば、話は早い。この回復薬の瓶、どこかで見た事があると思っていたが思い出したよ。これはフルダイブ型VRMMO『Different World』内で販売されていた回復薬そのものだ……。ここからは仮定だが、もしかして君はこの世界に渡る手段を持っているのではないか?」
ミスったな。他の瓶に移し替えてから売るんだった。
まさか、そんな所からバレるとは……。
とりあえず、知らない体で話を進めよう。
「……話が突拍子もなくてついて行けませんね。ゲーム内を行き来できるなんて、そんな事できる訳ないじゃありませんか。回復薬の瓶についても偶然ですよ。実は俺、DW内で売っている回復薬の瓶の形が好きで自作しているんです。以前、どっかのゲームメーカがどっかの飲料水会社とコラボして、ゲーム内のポーションを炭酸飲料として販売しましたよね? それと似たようなものです」
「……つまり、君は、私の仮定が間違えていると、そう言うつもりかな?」
「仮定も何も、提供した回復薬の瓶の形がDWの回復薬と似ていたというだけの事じゃないですか……。ゲームの世界に渡る手段なんてある筈ありません」
首を振って否定すると、石井は手に持った回復薬に視線を向け考え込む。
「ふむ……ならば、証拠を見せれば認めてくれるかね?」
「証拠……?」
ゲーム世界とこの世界を渡る事を証明する証拠ってなんだ?
そんな事を考えていると、石井はコンシェルジュに指示を出す。
「……君、防犯カメラの動画を持って来てくれないか? ほら、特別個室内に仕掛けたあれだよ。それを見せれば――」
ぼ、防犯カメラ!?
この糞爺……特別個室に防犯カメラを仕掛けるとは……。
防犯の為とはいえ、なんつーことを……。
と、いうより特別個室で行われる犯罪ってなんだそれ、意味が分からん。
普通にプライバシーの侵害である。
とはいえ、証拠を握られているのであれば仕方がない。
「――わかりました。話を聞かせて頂きましょう。欲しいサンプルって何です?」
「……いきなり素直になったな。しかし、私の考え通りだ。やはり、ゲーム内を行き来できるんだな?」
「ああ、できる……」
「な、ならば、私もゲームの世界に……」
「それは……多分無理だ……」
現状、ゲームを行き来できるのは俺と美琴ちゃん位のもの。
そもそも、何で、俺と美琴ちゃんだけがゲーム世界を行き来できるかわからないのに説明できるはずがない。
「……そもそも、俺自身も何故、ゲーム世界を行き来できるか理解していないんだ。ゲーム内にログインできる事が知られていれば、今頃、話題に上がっているでしょう?」
「うむむむむっ……しかし……」
納得できないのは分かるが、仕方がない事だろう。
俺自身、答えを持っていないのだから。
「とにかく、俺に出来るのは、ゲーム世界から物やアイテムを持ち帰る事位ですよ。それ以上の事を要求されても困ります。後、この件は他言無用でお願いしますね? また、この件を公表するぞとマウントを取るのもやめて下さい。脅迫する訳ではありませんが、俺も手荒な真似はしたくないので……」
俺も敵対していない相手に対し、闇の精霊・ジェイドの力を借りて記憶を弄るなんてことはしたくない。まあ必要があればやるけど……。
「うむむ……仕方がない。ならば一つだけ頼まれてくれないか?」
「依頼内容にもよりますが……まあいいでしょう。その代わりこちらのお願いも聞いて貰いますよ?」
「ああ、それでいい……」
しかし、俺に何を依頼するつもりだ?
DW内で手に入るものなんてたかが知れてる。
石井は、目をぎらつかせながら言う。
「……君が行き来できるゲーム世界が、フルダイブ型VRMMO『Different World』であると仮定してお願いしよう。何でもいい。人型のモンスターを一体、生きたまま捕獲し、持ち帰ってきて欲し……」
「あー、それは無理です。ゲームの仕様上、アイテムストレージに生き物は入りません」
ついでに言えば、俺が倒したモンスターは皆、アイテムか素材に変わってしまう為、不可能だ。
すると、石井はポケットから液体の入ったペットボトルを二本取り出した。
「……その可能性も考慮して、ここに生き物を仮死状態にする薬がある。これならアイテムストレージに入るのではないか?」
「仮死状態にする薬ねぇ……」
そんな劇物をラベル付きのペットボトルに入れて持ち歩くとは、中々、頭が逝かれてる。
しかし、条件付きとはいえ、確かに、その方法ならこちらにモンスターを運ぶ事ができるかもしれない。
「……いいでしょう。ただし、失敗しても文句は言わないで下さいね?」
何せ、初めてやる事だ。モンスターにこの薬が効くかもわからない。
「ああ、その場合、モンスターの死体を持ち帰ってくるだけでも構わん」
「……わかりました。受け渡しはどこで行いますか? 流石に病院内では拙いでしょう?」
モンスターがどんな菌を持っているかわかったもんじゃないからな。
「いや、病院内で構わん。私の研究室に持って来てくれ」
「えっ? 大丈夫なんですか?」
「ああ、問題ない。すべて私が責任を取る」
流石にそれは……。まあ、当人がいいと言うならいいんだけど……。
「わかりました。それじゃあ、そうしましょう」
石井からペットボトルを受け取ると、それをアイテムストレージ内にしまう。
「さてと、それじゃあ、今度はこちらが要求する番ですね。数日前からこいつの事を殺そうとする勢力が病院内で暗躍しているようなんです。端的に言います。こいつを……川島の奴が死なないよう守って頂きたい」
すると、それを聞いた石井は考え込む。
「……それは警察に通報した方がいいのではないかね?」
至極もっとも意見だが、俺自身、警察に対し不信感を抱いている。信頼なんてできる筈もない。
「警察は駄目です。信用できない。だから、石井さんにお願いしてるんですよ」
「ふぅむ。訳ありか? あまり警察を敵に回したくないのだが……」
「そういう訳じゃありませんよ。とにかく、川島の奴を守ってやって下さい」
今、殺されるのは、あまりに都合が悪いからな。
今回の場合、毒物混入が原因ではないかと予想される。そうなると、エレメンタルを護衛につけた所でどうにもならない。
「……まあ、いいだろう」
「お願いしますよ? もし万が一、川島の奴が殺されるような事があれば、こっちに持ってくる予定のモンスター、取り上げますからね?」
そう言って、笑みを浮かべると、石井は頬をピクリと上げた。
「……いいだろう。ついでに、この病院内で悪さを働こうとする者も捕らえてやる。それで満足かね?」
「ええ、そこまでして頂けるのであれば、こちらから申し上げる事は何もありません」
中々、話のわかる糞爺だ。
「それじゃあ、これからモンスターを捕らえてきますね」
「ああ、楽しみに待っておるよ」
川島の事を預けると、俺は自分の特別個室に向かう。そして、部屋に取り付けられた防犯カメラをすべて取り除くと、ゲーム世界にログインした。
---------------------------------------------------------------
次回は2023年3月24日AM7時更新となります。
そこは、奇しくも俺が宿泊している新橋大学付属病院の特別個室の隣の部屋である特別個室。コンシェルジュさんにお願いをして、事務所の関係者として面会させて貰う事となった。
「……ねえ、なんで中級回復薬を使って回復させた筈の川島がこんな危篤状態に陥っているの?」
傷は治した筈だ。まあ、かなり出血はしていたけど、その場で意識がある事を確認している。
「わかりません。二日前から突然、苦しみ始めまして……」
「ふーん。二日前からねぇ……」
俺が警察の監視下に置かれていた時からか……。
怨まれているね。もの凄く……。一体、何をやったらこんなに怨まれる事になるのやら、見当もつかない。
でも困るんだよ。誰かは知らないが、そっち側の都合で勝手に殺されちゃあ。
こっちはまだレアメタルの販路を広げてない。命を狙われるなら業務上横領罪で塀の中に行ってからにしてほしいものだ。
「……仕方がない。上級回復薬を使うか」
とりあえず、これを飲ませば命の危機を脱する事ができる。
しかし、それだけでは問題を解決した事にはならない。
死なれては困るので、ヒューヒューとかすれ声を上げる川島の口に管を通してもらい、強制的に上級回復薬を飲ませて貰うと、川島の顔色が段々と良くなってくる。
「とりあえずは、これでよしと……」
さて、問題はこれからだ。
川島はこれからレアアース事業で俺に財を成してくれる重要人物。
仕方がない。縋りたくはないが、奴に縋るか……。
「申し訳ないんだけど、医学博士の石井さんに川島の様子を見て貰うよう交渉できないかな? 川島が退院するまででいい。報酬として上級回復薬二本と中級回復薬五本を寄贈する。特別に上級回復薬を服用した川島の体液の採取も認め……いや、認めさせる」
体液の採取位、命に比べたら安いものだろう。
「……それで、お願いできないかな?」
「すぐに確認致します。少々お待ち下さいませ」
そう言うと、コンシェルジュは頷き、個室を出ていった。
◇◆◇
「うーん……それはできんなぁ? 君は私の事を便利屋か何かと勘違いしてないかね?」
そう言って渋る石井。
「――御託はいい。それで、追加の条件があるんだろ? 言ってみろよ。もしかしたら、叶える事ができるかもしれないぜ?」
そう提案すると、医学博士である石井六郎が笑みを浮かべる。
「――その言葉を待っていたのだよ。実は君に頼みがあってね」
「頼み?」
何だか嫌な予感がする。
そう言うと、石井はリモコンを手にして、テレビの電源を入れた。
そこには、突如として北極に現れた大樹『ユグドラシル』が写っている。
「……君はフルダイブ型VRMMO『Different World』というゲームを知っているかね?」
「ええ、まあ、人並みには……」
まさか医学博士の口からその単語が出てくるとは思いもしなかった。
予想外の発言に驚きつつ、様子を伺っていると石井は俺の反応を見ながら回復薬を手に持つ。
「ならば、話は早い。この回復薬の瓶、どこかで見た事があると思っていたが思い出したよ。これはフルダイブ型VRMMO『Different World』内で販売されていた回復薬そのものだ……。ここからは仮定だが、もしかして君はこの世界に渡る手段を持っているのではないか?」
ミスったな。他の瓶に移し替えてから売るんだった。
まさか、そんな所からバレるとは……。
とりあえず、知らない体で話を進めよう。
「……話が突拍子もなくてついて行けませんね。ゲーム内を行き来できるなんて、そんな事できる訳ないじゃありませんか。回復薬の瓶についても偶然ですよ。実は俺、DW内で売っている回復薬の瓶の形が好きで自作しているんです。以前、どっかのゲームメーカがどっかの飲料水会社とコラボして、ゲーム内のポーションを炭酸飲料として販売しましたよね? それと似たようなものです」
「……つまり、君は、私の仮定が間違えていると、そう言うつもりかな?」
「仮定も何も、提供した回復薬の瓶の形がDWの回復薬と似ていたというだけの事じゃないですか……。ゲームの世界に渡る手段なんてある筈ありません」
首を振って否定すると、石井は手に持った回復薬に視線を向け考え込む。
「ふむ……ならば、証拠を見せれば認めてくれるかね?」
「証拠……?」
ゲーム世界とこの世界を渡る事を証明する証拠ってなんだ?
そんな事を考えていると、石井はコンシェルジュに指示を出す。
「……君、防犯カメラの動画を持って来てくれないか? ほら、特別個室内に仕掛けたあれだよ。それを見せれば――」
ぼ、防犯カメラ!?
この糞爺……特別個室に防犯カメラを仕掛けるとは……。
防犯の為とはいえ、なんつーことを……。
と、いうより特別個室で行われる犯罪ってなんだそれ、意味が分からん。
普通にプライバシーの侵害である。
とはいえ、証拠を握られているのであれば仕方がない。
「――わかりました。話を聞かせて頂きましょう。欲しいサンプルって何です?」
「……いきなり素直になったな。しかし、私の考え通りだ。やはり、ゲーム内を行き来できるんだな?」
「ああ、できる……」
「な、ならば、私もゲームの世界に……」
「それは……多分無理だ……」
現状、ゲームを行き来できるのは俺と美琴ちゃん位のもの。
そもそも、何で、俺と美琴ちゃんだけがゲーム世界を行き来できるかわからないのに説明できるはずがない。
「……そもそも、俺自身も何故、ゲーム世界を行き来できるか理解していないんだ。ゲーム内にログインできる事が知られていれば、今頃、話題に上がっているでしょう?」
「うむむむむっ……しかし……」
納得できないのは分かるが、仕方がない事だろう。
俺自身、答えを持っていないのだから。
「とにかく、俺に出来るのは、ゲーム世界から物やアイテムを持ち帰る事位ですよ。それ以上の事を要求されても困ります。後、この件は他言無用でお願いしますね? また、この件を公表するぞとマウントを取るのもやめて下さい。脅迫する訳ではありませんが、俺も手荒な真似はしたくないので……」
俺も敵対していない相手に対し、闇の精霊・ジェイドの力を借りて記憶を弄るなんてことはしたくない。まあ必要があればやるけど……。
「うむむ……仕方がない。ならば一つだけ頼まれてくれないか?」
「依頼内容にもよりますが……まあいいでしょう。その代わりこちらのお願いも聞いて貰いますよ?」
「ああ、それでいい……」
しかし、俺に何を依頼するつもりだ?
DW内で手に入るものなんてたかが知れてる。
石井は、目をぎらつかせながら言う。
「……君が行き来できるゲーム世界が、フルダイブ型VRMMO『Different World』であると仮定してお願いしよう。何でもいい。人型のモンスターを一体、生きたまま捕獲し、持ち帰ってきて欲し……」
「あー、それは無理です。ゲームの仕様上、アイテムストレージに生き物は入りません」
ついでに言えば、俺が倒したモンスターは皆、アイテムか素材に変わってしまう為、不可能だ。
すると、石井はポケットから液体の入ったペットボトルを二本取り出した。
「……その可能性も考慮して、ここに生き物を仮死状態にする薬がある。これならアイテムストレージに入るのではないか?」
「仮死状態にする薬ねぇ……」
そんな劇物をラベル付きのペットボトルに入れて持ち歩くとは、中々、頭が逝かれてる。
しかし、条件付きとはいえ、確かに、その方法ならこちらにモンスターを運ぶ事ができるかもしれない。
「……いいでしょう。ただし、失敗しても文句は言わないで下さいね?」
何せ、初めてやる事だ。モンスターにこの薬が効くかもわからない。
「ああ、その場合、モンスターの死体を持ち帰ってくるだけでも構わん」
「……わかりました。受け渡しはどこで行いますか? 流石に病院内では拙いでしょう?」
モンスターがどんな菌を持っているかわかったもんじゃないからな。
「いや、病院内で構わん。私の研究室に持って来てくれ」
「えっ? 大丈夫なんですか?」
「ああ、問題ない。すべて私が責任を取る」
流石にそれは……。まあ、当人がいいと言うならいいんだけど……。
「わかりました。それじゃあ、そうしましょう」
石井からペットボトルを受け取ると、それをアイテムストレージ内にしまう。
「さてと、それじゃあ、今度はこちらが要求する番ですね。数日前からこいつの事を殺そうとする勢力が病院内で暗躍しているようなんです。端的に言います。こいつを……川島の奴が死なないよう守って頂きたい」
すると、それを聞いた石井は考え込む。
「……それは警察に通報した方がいいのではないかね?」
至極もっとも意見だが、俺自身、警察に対し不信感を抱いている。信頼なんてできる筈もない。
「警察は駄目です。信用できない。だから、石井さんにお願いしてるんですよ」
「ふぅむ。訳ありか? あまり警察を敵に回したくないのだが……」
「そういう訳じゃありませんよ。とにかく、川島の奴を守ってやって下さい」
今、殺されるのは、あまりに都合が悪いからな。
今回の場合、毒物混入が原因ではないかと予想される。そうなると、エレメンタルを護衛につけた所でどうにもならない。
「……まあ、いいだろう」
「お願いしますよ? もし万が一、川島の奴が殺されるような事があれば、こっちに持ってくる予定のモンスター、取り上げますからね?」
そう言って、笑みを浮かべると、石井は頬をピクリと上げた。
「……いいだろう。ついでに、この病院内で悪さを働こうとする者も捕らえてやる。それで満足かね?」
「ええ、そこまでして頂けるのであれば、こちらから申し上げる事は何もありません」
中々、話のわかる糞爺だ。
「それじゃあ、これからモンスターを捕らえてきますね」
「ああ、楽しみに待っておるよ」
川島の事を預けると、俺は自分の特別個室に向かう。そして、部屋に取り付けられた防犯カメラをすべて取り除くと、ゲーム世界にログインした。
---------------------------------------------------------------
次回は2023年3月24日AM7時更新となります。
32
お気に入りに追加
1,111
あなたにおすすめの小説
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
【短編】追放した仲間が行方不明!?
mimiaizu
ファンタジー
Aランク冒険者パーティー『強欲の翼』。そこで支援術師として仲間たちを支援し続けていたアリクは、リーダーのウーバの悪意で追補された。だが、その追放は間違っていた。これをきっかけとしてウーバと『強欲の翼』は失敗が続き、落ちぶれていくのであった。
※「行方不明」の「追放系」を思いついて投稿しました。短編で終わらせるつもりなのでよろしくお願いします。
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
学園長からのお話です
ラララキヲ
ファンタジー
学園長の声が学園に響く。
『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』
昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。
学園長の話はまだまだ続く……
◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない)
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる