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第172話 区議会議員②
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融解したワインボトルを振り上げたままの恰好で固まっている自称知人。
一体、どうしたのだろうか?
「うん? どうした?」
「……い、いえ、何でもっ!?」
いや、何でもない訳ないだろ……。
そんな事を思いながら、先ほどまで溶けていなかった瓶に俺は視線を向ける。
「そっか……それで、何で溶けた瓶持ってんの?」
「あ、あはははっ……何でだろうね?」
そう尋ねると、自称知人はその瓶を背後に隠し、苦笑いを浮かべた。
うーん。歯切れが悪い。
もしかして、俺に危害を与えようとして、エレメンタルに反撃されたのか?
エレメンタルに視線を向けると、何かを言いた気にチカチカ光る。
うん。わからん。
まあ確かに、現実世界では、あまり人に直接的な攻撃を行わない様にとお願いしてあるけど……。
……まあいいか。
エレメンタルが居れば、安心だ。
以前、エレメンタルの存在を過信し過ぎて刺された事もあったがあれはレアケース。
自称知人は背後に隠した瓶を後ろに放ると、何事もなかったかの様に振舞う。
「あ、あれはファッション。そう。今、流行りのファッションアイテムなんだ!」
「……そうなんだ」
言い訳が苦しい。ファッションだと言い張るなら、何故、そのファッションアイテムを捨てたのだろうか。意味がわからない。
とりあえず、そう呟くと、自称知人が『ウッカリしてました』見たいな表情を浮かべる。
「あっ、そんな事より店に入りましょう」
急に丁寧語になった自称知人。
さっきまでの馴れ馴れしい砕けた口調はどこに行ったのだろうか?
疑問に思う事ばかりだ。
自称知人は思い出したかの様にそう言って、店の扉に手をかける。
しかし、当然ながら扉は開く気配を見せない。
建付けが悪いのだろうか?
チラリと扉に視線を向けると、扉にクローズと書かれたプレートがかかっている事に気付く。えらく達筆で書かれていて、全然気付かなかった。
自称知人もそれに気付いた様で、扉を開けようとする手を止める。
そして、気まずそうに振り向くと、苦笑いを浮かべた。
「あははははっ……まだ、やってなかったみたいです」
そして、腕時計を見ると、
「あっ、バイトの時間だっ! すいません。ちょっと、バイトの時間が迫ってるんで今日はこれで失礼します!」と言って走り去っていった。
バイトか。大事だよね。バイト。
しかし……。
「一体何だったんだ?」
意味がわからない。
まあ、俺としては一人飲みする方が好きだし、自称知人と酒を飲むのはちょっとなーと思っていたので万々歳だ。
「……まあ、いいか」
ため息一つ吐きスマホを取り出すと、昼から飲む事のできる場所を探す。
すると、近くに餃子の王将があった。
最近、餃子を食べていなかったし、つまみも豊富。その上、ビールも飲める。
「とりあえず、ここにするか……」
そう呟くと、俺は餃子の王将に向かう事にした。
餃子の王将に向かい歩いていると、またもや変な奴に遭遇する。
「おい。兄ちゃん。ちいとツラ貸せや……おう?」
そう言って喧嘩をふっかけてきたのは、釘バットを持ったヤンキー。
つまり、アホである。
「ああっ? お前正気か?」
町中で釘バットなんかひけらかして、軽犯罪法違反で捕まっても知らないぞ?
俺がそう言うと、釘バットを持ったヤンキーは、俺に近付きメンチを切ってきた。
何なのだろうか?
もしかして、オヤジ狩り的な何かなのだろうか?
「なめてんじゃねーぞ。兄ちゃん……いいからツラ貸せって言ってんだよ!」
兄ちゃんと言う事は年上か?
しかし、顔が近い。つばも飛んできて不快だ。
「いや、貸す訳ねーだろ。そんな事よりも、お前、さっさと、その釘バット早くしまえって……こんな町中で釘バットを持ってくるなんて何を考えているんだ?」
俺がそう諭してやると、ヤンキーは顔を真っ赤に染めて、釘バットをアスファルトに打ち付けた。
「うるせぇな! 御託はいいからツラ貸せっていってんだよっ!」
やはりアホの相手は疲れる。
恐らく脳に致命的な欠陥があるのだろう。
もしくは、ヤンキー漫画の見過ぎだ。
ヤンキー漫画に影響されて現実世界と漫画世界が混ざり、漫画の世界ではアリだった設定が現実世界にも適用されると、そう錯覚しているのかも知れない。
対話を諦めた俺は、ヤンキーから距離を取る。
「あん? なんだテメェ! 俺にビビってんのか? あっ!?」
距離を取った瞬間、恫喝してくるヤンキー。
「あーはいはい。わかった。わかった。話は後で聞くから、警察から解放されたらまた連絡してよ。そうしたら付き合ってやるからさ」
「あっ? 警察?? 何を言っていやがる! おいこら待てよっ!」
ヤンキーの後ろに青と黒の制服を着た警察官の姿を確認すると、俺はヤンキーに背を向ける。すると、そんな俺の態度に怒り心頭なヤンキーは釘バットを思い切り振り上げると、ドスの聞いたでただ一言「ぶっ殺す!」と声を上げた。
しかし、ここは法治国家日本。ヤンキーがいくら喚こうと俺に指一本触れる事はできない。
それは何故か……。警察官と思わしき二人組が、ヤンキーの背後にいる為だ。
「ああ、君。釘バットを下ろして。ちょっと、話を聞かせてくれるかな?」
そう言って、釘バットを振り上げたヤンキーに声をかける警察官。
その瞬間、ヤンキーは顔を強張らせる。
「……へっ?」
釘バットを振り上げたまま、後ろを振り向くヤンキー。
警察官は硬い表情を浮かべたまま、釘バットを手に掴む。
「へっ? じゃないよ。君ね。釘バットなんて危ない物を振り回しちゃダメじゃないか。ちょっと、署で話を聞かせてくれるかな?」
「えっ? はっ? い、いや、俺は、そういうつもりじゃ……」
「それじゃあ、どういうつもりだったんだい? 人に危害を加える気で釘バットを振ったんじゃないの? 今、『ぶっ殺す』って言っていたよね?」
警察官の言葉に、戸惑うヤンキー。
「い、いや、違うんですっ! お、俺はあいつに……!」
「あいつと言うのは誰の事だね?」
「へっ?」
前を向くと、百万円を手に入れる為の対象である高橋翔が消えている事に気付く。
「そ、そんな馬鹿なっ……お、俺は、あいつに……」
「ああ、詳しい話は署で聞くから……」
ヤンキーに視線を向けた警察官はため息を吐くと、釘バットを押収し、新橋駅近くにある愛宕警察署に連行した。
◇◆◇
自称知人に絡まれ、おやじ狩りに会い、俺は辟易としていた。
「……今日は厄日か何かか?」
折角、ゲーム世界もゴミ問題から落ち着いてきたというのに……。
現実世界に戻ってきた途端これだ。
何だ? 俺は、呪われているのだろうか?
普通、釘バットを持った奴に襲われるか?
俺は、あり得ない非日常に混乱していた。
野生の気配で危機を脱したが、まだまだ悪い事が起きそうな予感がする。
これだから、俺は、現実世界に帰りたくなかったのだ。
そんな中、スマホでネットニュースを見て見ると、近く、北極評議会が突如、北極に現れたユグドラシルへの侵入を試みようとする動きが流されていた。
正直、滅茶苦茶、迷惑だ。下手をすれば死人すら出し得る愚行である。
「相当な死人が出るだろうな……」
調査に向かった人はまず一人も帰ってくる事はできないだろう。
だって、この世界にレベルという概念自体存在しないし、レベル三百の俺ですら、ユグドラシルを護るように張られた薄い膜の中を徘徊する巨大な毒蛇ヨルムンガルドを倒せるかわからない。
とはいえ、俺にできる事は何もない。
「……とりあえず、餃子の王将に向かうか」
そう呟いた瞬間、ナイフを持った男が俺の前に立ち塞がった。
「お、おう……」
驚きである。まさか、ナイフを持った凶悪犯に出くわすとは思いもしなかった。
普通に銃刀法違反である。
「ひ、百万円っ!」
「はっ? 百万円??」
百万円がどうかしたのだろうか?
もしかして、俺の事をハントすると百万円貰えるとか?
懸賞金とか、かかってんの? 俺っ!?
そう言うと、男はナイフを持ち、俺に向かって突撃してくる。
「百万円、百万円、百万円、百万円、ひゃくまんえーんっ!」
「う、うわぁああああっ!」
͡怖っ!?
百万円連呼しながらナイフを持って突撃してくる男、めっちゃ怖い。
俺が慌て逃げ惑っていると、エレメンタルの熱線がナイフの刃先を消し飛ばす。
その瞬間、男は目を剥いた。
「なあっ!?」
ゆっくり減速し、膝から崩れ落ちる男。
そして、柄だけになったナイフを落とすと、四つん這いになり泣き始めた。
「…………」
ど、どうしたらいいんだろうか。この状況……。
とりあえず、通報した方がいいのだろうか?
しかし、事情聴取に付き合うのはちょっと面倒臭い。
うーん。どうしよう。これ……。
そんな事を考えていると、誰かが警察に通報したのだろう。
「こっちです!」と警察官を誘導する人の声が聞こえてきた。
とりあえず、巻き込まれたくない俺は、何事も無かったかのようにその場から離れると、餃子の王将に向かって歩き始めた。
「うん。やっぱり、事情聴取は避けるに限るな……」
まあ、春だし?
春になると頭のおかしい人が多く湧くよね。
そんな奴らに一々構っていられない。
基本的に俺は警察に係り合いになりたくないのだ。
事情聴取なんかに時間を取られたくないともいう。
「……さてと、何を注文しようかな?」
餃子の王将についた俺は、一番奥のテーブルに座るとメニュー表を手に取る。
「新橋駅前店オリジナルメニューの炒飯セットか……」
炒飯に中華スープ、よだれ鶏に餃子が六個付くセットメニューだ。
中々良いな。しかし、今日の俺はただ食事をしに来た訳ではない。
昼間から酒を飲みに来たのだ。美味いつまみを食べながらな。
「すいませーん。注文いいですか?」
手を軽く上げると、店員さんが水を持ってやってくる。
「お待たせしました。注文をどうぞ」
「……それじゃあ、餃子と油淋鶏、揚げそばと回鍋肉、あとビールをお願いします。ビールは料理と一緒に貰えるとありがたいです」
「はい。ご注文ありがとうございます。餃子と油淋鶏、揚げそばと回鍋肉、生ビールですね。少々お待ち下さいませ」
そう言うと、店員さんは厨房に戻っていった。
俺が注文したメニューは、小皿で味わう事のできるジャストサイズメニューなのだ。
料理が来るのを待っている間、店員さんが持ってきた水を口に含みながら、スマホで異世界系の小説を読んでいると、店内にパンクなファッションをした男が入ってきた。
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2022年11月3日AM7時更新となります。
一体、どうしたのだろうか?
「うん? どうした?」
「……い、いえ、何でもっ!?」
いや、何でもない訳ないだろ……。
そんな事を思いながら、先ほどまで溶けていなかった瓶に俺は視線を向ける。
「そっか……それで、何で溶けた瓶持ってんの?」
「あ、あはははっ……何でだろうね?」
そう尋ねると、自称知人はその瓶を背後に隠し、苦笑いを浮かべた。
うーん。歯切れが悪い。
もしかして、俺に危害を与えようとして、エレメンタルに反撃されたのか?
エレメンタルに視線を向けると、何かを言いた気にチカチカ光る。
うん。わからん。
まあ確かに、現実世界では、あまり人に直接的な攻撃を行わない様にとお願いしてあるけど……。
……まあいいか。
エレメンタルが居れば、安心だ。
以前、エレメンタルの存在を過信し過ぎて刺された事もあったがあれはレアケース。
自称知人は背後に隠した瓶を後ろに放ると、何事もなかったかの様に振舞う。
「あ、あれはファッション。そう。今、流行りのファッションアイテムなんだ!」
「……そうなんだ」
言い訳が苦しい。ファッションだと言い張るなら、何故、そのファッションアイテムを捨てたのだろうか。意味がわからない。
とりあえず、そう呟くと、自称知人が『ウッカリしてました』見たいな表情を浮かべる。
「あっ、そんな事より店に入りましょう」
急に丁寧語になった自称知人。
さっきまでの馴れ馴れしい砕けた口調はどこに行ったのだろうか?
疑問に思う事ばかりだ。
自称知人は思い出したかの様にそう言って、店の扉に手をかける。
しかし、当然ながら扉は開く気配を見せない。
建付けが悪いのだろうか?
チラリと扉に視線を向けると、扉にクローズと書かれたプレートがかかっている事に気付く。えらく達筆で書かれていて、全然気付かなかった。
自称知人もそれに気付いた様で、扉を開けようとする手を止める。
そして、気まずそうに振り向くと、苦笑いを浮かべた。
「あははははっ……まだ、やってなかったみたいです」
そして、腕時計を見ると、
「あっ、バイトの時間だっ! すいません。ちょっと、バイトの時間が迫ってるんで今日はこれで失礼します!」と言って走り去っていった。
バイトか。大事だよね。バイト。
しかし……。
「一体何だったんだ?」
意味がわからない。
まあ、俺としては一人飲みする方が好きだし、自称知人と酒を飲むのはちょっとなーと思っていたので万々歳だ。
「……まあ、いいか」
ため息一つ吐きスマホを取り出すと、昼から飲む事のできる場所を探す。
すると、近くに餃子の王将があった。
最近、餃子を食べていなかったし、つまみも豊富。その上、ビールも飲める。
「とりあえず、ここにするか……」
そう呟くと、俺は餃子の王将に向かう事にした。
餃子の王将に向かい歩いていると、またもや変な奴に遭遇する。
「おい。兄ちゃん。ちいとツラ貸せや……おう?」
そう言って喧嘩をふっかけてきたのは、釘バットを持ったヤンキー。
つまり、アホである。
「ああっ? お前正気か?」
町中で釘バットなんかひけらかして、軽犯罪法違反で捕まっても知らないぞ?
俺がそう言うと、釘バットを持ったヤンキーは、俺に近付きメンチを切ってきた。
何なのだろうか?
もしかして、オヤジ狩り的な何かなのだろうか?
「なめてんじゃねーぞ。兄ちゃん……いいからツラ貸せって言ってんだよ!」
兄ちゃんと言う事は年上か?
しかし、顔が近い。つばも飛んできて不快だ。
「いや、貸す訳ねーだろ。そんな事よりも、お前、さっさと、その釘バット早くしまえって……こんな町中で釘バットを持ってくるなんて何を考えているんだ?」
俺がそう諭してやると、ヤンキーは顔を真っ赤に染めて、釘バットをアスファルトに打ち付けた。
「うるせぇな! 御託はいいからツラ貸せっていってんだよっ!」
やはりアホの相手は疲れる。
恐らく脳に致命的な欠陥があるのだろう。
もしくは、ヤンキー漫画の見過ぎだ。
ヤンキー漫画に影響されて現実世界と漫画世界が混ざり、漫画の世界ではアリだった設定が現実世界にも適用されると、そう錯覚しているのかも知れない。
対話を諦めた俺は、ヤンキーから距離を取る。
「あん? なんだテメェ! 俺にビビってんのか? あっ!?」
距離を取った瞬間、恫喝してくるヤンキー。
「あーはいはい。わかった。わかった。話は後で聞くから、警察から解放されたらまた連絡してよ。そうしたら付き合ってやるからさ」
「あっ? 警察?? 何を言っていやがる! おいこら待てよっ!」
ヤンキーの後ろに青と黒の制服を着た警察官の姿を確認すると、俺はヤンキーに背を向ける。すると、そんな俺の態度に怒り心頭なヤンキーは釘バットを思い切り振り上げると、ドスの聞いたでただ一言「ぶっ殺す!」と声を上げた。
しかし、ここは法治国家日本。ヤンキーがいくら喚こうと俺に指一本触れる事はできない。
それは何故か……。警察官と思わしき二人組が、ヤンキーの背後にいる為だ。
「ああ、君。釘バットを下ろして。ちょっと、話を聞かせてくれるかな?」
そう言って、釘バットを振り上げたヤンキーに声をかける警察官。
その瞬間、ヤンキーは顔を強張らせる。
「……へっ?」
釘バットを振り上げたまま、後ろを振り向くヤンキー。
警察官は硬い表情を浮かべたまま、釘バットを手に掴む。
「へっ? じゃないよ。君ね。釘バットなんて危ない物を振り回しちゃダメじゃないか。ちょっと、署で話を聞かせてくれるかな?」
「えっ? はっ? い、いや、俺は、そういうつもりじゃ……」
「それじゃあ、どういうつもりだったんだい? 人に危害を加える気で釘バットを振ったんじゃないの? 今、『ぶっ殺す』って言っていたよね?」
警察官の言葉に、戸惑うヤンキー。
「い、いや、違うんですっ! お、俺はあいつに……!」
「あいつと言うのは誰の事だね?」
「へっ?」
前を向くと、百万円を手に入れる為の対象である高橋翔が消えている事に気付く。
「そ、そんな馬鹿なっ……お、俺は、あいつに……」
「ああ、詳しい話は署で聞くから……」
ヤンキーに視線を向けた警察官はため息を吐くと、釘バットを押収し、新橋駅近くにある愛宕警察署に連行した。
◇◆◇
自称知人に絡まれ、おやじ狩りに会い、俺は辟易としていた。
「……今日は厄日か何かか?」
折角、ゲーム世界もゴミ問題から落ち着いてきたというのに……。
現実世界に戻ってきた途端これだ。
何だ? 俺は、呪われているのだろうか?
普通、釘バットを持った奴に襲われるか?
俺は、あり得ない非日常に混乱していた。
野生の気配で危機を脱したが、まだまだ悪い事が起きそうな予感がする。
これだから、俺は、現実世界に帰りたくなかったのだ。
そんな中、スマホでネットニュースを見て見ると、近く、北極評議会が突如、北極に現れたユグドラシルへの侵入を試みようとする動きが流されていた。
正直、滅茶苦茶、迷惑だ。下手をすれば死人すら出し得る愚行である。
「相当な死人が出るだろうな……」
調査に向かった人はまず一人も帰ってくる事はできないだろう。
だって、この世界にレベルという概念自体存在しないし、レベル三百の俺ですら、ユグドラシルを護るように張られた薄い膜の中を徘徊する巨大な毒蛇ヨルムンガルドを倒せるかわからない。
とはいえ、俺にできる事は何もない。
「……とりあえず、餃子の王将に向かうか」
そう呟いた瞬間、ナイフを持った男が俺の前に立ち塞がった。
「お、おう……」
驚きである。まさか、ナイフを持った凶悪犯に出くわすとは思いもしなかった。
普通に銃刀法違反である。
「ひ、百万円っ!」
「はっ? 百万円??」
百万円がどうかしたのだろうか?
もしかして、俺の事をハントすると百万円貰えるとか?
懸賞金とか、かかってんの? 俺っ!?
そう言うと、男はナイフを持ち、俺に向かって突撃してくる。
「百万円、百万円、百万円、百万円、ひゃくまんえーんっ!」
「う、うわぁああああっ!」
͡怖っ!?
百万円連呼しながらナイフを持って突撃してくる男、めっちゃ怖い。
俺が慌て逃げ惑っていると、エレメンタルの熱線がナイフの刃先を消し飛ばす。
その瞬間、男は目を剥いた。
「なあっ!?」
ゆっくり減速し、膝から崩れ落ちる男。
そして、柄だけになったナイフを落とすと、四つん這いになり泣き始めた。
「…………」
ど、どうしたらいいんだろうか。この状況……。
とりあえず、通報した方がいいのだろうか?
しかし、事情聴取に付き合うのはちょっと面倒臭い。
うーん。どうしよう。これ……。
そんな事を考えていると、誰かが警察に通報したのだろう。
「こっちです!」と警察官を誘導する人の声が聞こえてきた。
とりあえず、巻き込まれたくない俺は、何事も無かったかのようにその場から離れると、餃子の王将に向かって歩き始めた。
「うん。やっぱり、事情聴取は避けるに限るな……」
まあ、春だし?
春になると頭のおかしい人が多く湧くよね。
そんな奴らに一々構っていられない。
基本的に俺は警察に係り合いになりたくないのだ。
事情聴取なんかに時間を取られたくないともいう。
「……さてと、何を注文しようかな?」
餃子の王将についた俺は、一番奥のテーブルに座るとメニュー表を手に取る。
「新橋駅前店オリジナルメニューの炒飯セットか……」
炒飯に中華スープ、よだれ鶏に餃子が六個付くセットメニューだ。
中々良いな。しかし、今日の俺はただ食事をしに来た訳ではない。
昼間から酒を飲みに来たのだ。美味いつまみを食べながらな。
「すいませーん。注文いいですか?」
手を軽く上げると、店員さんが水を持ってやってくる。
「お待たせしました。注文をどうぞ」
「……それじゃあ、餃子と油淋鶏、揚げそばと回鍋肉、あとビールをお願いします。ビールは料理と一緒に貰えるとありがたいです」
「はい。ご注文ありがとうございます。餃子と油淋鶏、揚げそばと回鍋肉、生ビールですね。少々お待ち下さいませ」
そう言うと、店員さんは厨房に戻っていった。
俺が注文したメニューは、小皿で味わう事のできるジャストサイズメニューなのだ。
料理が来るのを待っている間、店員さんが持ってきた水を口に含みながら、スマホで異世界系の小説を読んでいると、店内にパンクなファッションをした男が入ってきた。
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2022年11月3日AM7時更新となります。
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