ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中

文字の大きさ
上 下
120 / 381

第120話 ○○で解決できる心底面倒臭い依頼①

しおりを挟む
「それじゃあ、司祭様。後の事はよろしくお願いします」
「え、ええっ……」

 真っ青な顔を浮かべる司祭様とイチャコラしているカイルを残し、元教会を後にした俺は当初の予定通り冒険者協会に向かう事にした。

「いやー、それにしてもラッキーだったなぁ……」

 下衆だが有能な駒を安価で手に入れる事ができた。
 これは僥倖だ。後は何もしなくても、部下と司祭様が残りの上級ダンジョンを攻略してくれる。

 それにしてもメリーさん、強かったな。
 呪いの装備を装着するだけで、メリーさんが味方に付くなら一度、装備するのもありかなと思ってしまう程強かった。

「……いや、やっぱり駄目だわ」

 ……と一瞬、魔が刺したが、やっぱり駄目だ。普通に考えて危険が過ぎる。
 あれはカイルの奴がドMの異常性癖だったからこそ手に入れる事ができた力だ。
 それは他の呪いの装備も同じ事。呪いの装備を使う者は総じてドMでなければならない。
 ナイフで刺されてもメリーさんに愛を囁くカイル然り。
 変な名前で一生を過ごす代わりにとんでもない力を手にした『ああああ』然りだ。

 少なくともS気強めの俺には無理である。
 だって痛いの普通にやだし。

 そんな事を考えながら大通りを歩いていると、冒険者協会が見えてきた。
 冒険者協会の中は冒険者で一杯だ。
 上級ダンジョン『デザートクレードル』攻略以降、冒険者協会は活気に沸いている。

 活気付く冒険者達に生暖かい視線を向け素通りすると、俺は冒険者協会に併設されている酒場に向かった。
 もちろん、お目当てはエレメンタル達の大好物。
 ペロペロザウルスのTKG(卵かけご飯)である。

「あ、すいませーん。注文いいですかー?」

 空いている席に座ると、ウエイトレスさんに声をかける。
 もちろん、エレメンタル達も席についている。

「はい。ご注文を窺います」
「ああ、それじゃあ、ペロペロザウルスのTKGを十二人前お願いします。あと、エールにつまみでソーセージも」
「はい。ペロペロザウルスのTKGを十二人前とエールにソーセージですね。かしこまりました。もうしばらくお待ち下さい」

 注文を取るとウエイトレスさんは厨房に走っていく。

 とりあえず、ここにいるエレメンタル六体に対して二杯づつペロペロザウルスのTKGを注文したが、失敗したな……。雷の精霊ヴォルトも連れてきて上げればよかった。
 しかし、雷の精霊ヴォルトにはやる事がある。
 今度、また連れてきてあげよう。
 ペロペロザウルスのTKGを待つエレメンタルの姿を眺めていると、ウエイトレスさんが料理を運んできた。

「お待たせ致しました。ペロペロザウルスのTKG十二人前とエール、ソーセージをお持ちしました。TKGにはこちらの醤油をかけてお召し上がり下さい!」

 ウエイトレスがテーブルにペロペロザウルスのTKGをテーブルに置くと、エレメンタル達がTKGに群がっていく。
 ここ最近、ペロペロザウルスのTKGを食べさせていなかったからか、喜び具合が半端ではない。エレメンタル達はペロペロザウルスのTKGに醤油を垂らすと、綺麗に平らげていく。

「うん。ソーセージも美味いな」

 その光景を俺はソーセージを齧り、エールを飲みながら見守る。

 それにしてもソーセージの原料は何だろうか?
 メニュー表を見ると、そこにはオークロードとゴブリンキングの合びき肉と書かれていた。

「ぶふうっ!」

 それを見て俺は咥えていたソーセージを思いっきり吐き出した。
 吐き出したソーセージは弧を描き、そのままエレメンタルの口にイートインする。

「な、何故にゴブリンキングッ!?」

 無駄に豪華だ。
 しかも、合びき肉の割合は七対三。
 オークロード七割、ゴブリンキング三割だ。結構、ゴブリンキングが入ってる。

「あれ? オークロードとゴブリンキングのソーセージはお口に合いませんでしたか?」
「い、いや、そんな事は……」

 むしろ、味だけを見れば美味しかった。
 ただ、なんとなく忌諱感があるだけだ。
 二足歩行だし、なんとなく人に似ている。

「最近、食べられないお客様が増えているんですよねー。この酒場のグランドメニューなんですけど……」

 しかもグランドメニューらしい。ド定番の人気メニューという事だ。

「どちらも二足歩行なので、それがダメなんですかねー?」

 よく考えてみたら、オークロードもゴブリンキングも二足歩行。
 ゴブリンキングだけに忌諱感を覚えるのは確かに何か違うような気がしてきた。

「ゴブリンキングのお肉って、結構、淡白で美味しいんですよ?」
「そ、そうなんですね……」

 確かに、エレメンタルも美味しそうに食べている。
 思い返してみればここはゲーム世界。
 ゲーム世界に現実を持ち込むのはNG行為だ。

 俺はソーセージにフォークをぶっ刺すと改めてソーセージに齧り付く。

「た、確かに美味い……です」

 言われてみれば、オークロード肉の油分をゴブリンキング肉のサッパリした味わいがいい感じにマリアージュされているような気がしないでもない。

 ここはゲーム世界。
 そしてゴブリンキングは食用モンスターだ。
 初めて知ったけど……。

 しかし、改めて考えてみると凄いな。
 俺、ゲーム世界のモンスターの肉食ってる訳か……。

 テーブルに置かれたメニュー表を開いて見ると、そこにはモンスターの肉を使った様々な料理が載っていた。

 モブ・フェンリルのステーキにオークロードフット、ゴブリンキングジャーキー。
 よくわからないが、字面がなんか凄い。

 メニュー表と睨めっこをしていると、何故か、知らない人が俺の席の隣に座った。

「こんにちは、あなたの事を探しましたよ……」
「あっ? あんた誰?」

 知らない顔だ。
 身なりは綺麗だし、武器や防具を装備してない事から冒険者という感じでもない。
 スーツ姿から、なんとなくホスト風の男にも見える。

「ああ、これは失礼……」

 男は笑みを浮かべると、名刺の様な物を差し出した。

「……私、こういう者でして」

 名刺を受け取り、視線を落とす。

「私は『CLUB mami』支配人のキンドリーと申します……」
「はあ、『CLUB mami』ねぇ……」

 それって、カイルの奴と下衆司祭が懇意にしているキャバクラの名前ではないだろうか?
 何だか聞いた事がある。キャバクラの支配人が俺に何の用だろうか?

「はい。実はカケル様にお願いがございまして……」
「お願い?」
「ええ、お願いです。ユルバン司祭から聞かせて頂きましたが……」
「えっ? ユルバン司祭? 誰それ?」

 マジで知らない人の名前が出てきた。
 本当に誰だそれ?
 俺が知ってる司祭は下衆司祭だけだ。

 そう言うと、キンドリーは困惑した表情を浮かべる。

「ユルバン司祭をご存知ない? 本人からはお金の貸し借りをする仲と聞いておりましたが……?」
「ああ、なるほど……」

 どうやら下衆司祭の名前はユルバンというらしい。別に興味なかったが初めて知った。

「……すいません。知り合いでした」

 つい先ほど知り合った仲だが、確かに、金の貸し借りをし、呪いの装備をプレゼントする位の交流はある。

「それで、『CLUB mami』の支配人さんが俺に何の用で?」

 そう尋ねると、支配人は厚かましくもこう述べてきた。

「いや、よかった。そうですよね。ユルバン司祭とお知り合いですよね。実はとても話辛い事なので恐縮なのですが……」

 そう言うと、キンドリーは一枚の紙を取り出し目の前に置く。

「……ユルバン司祭の借金を肩代わりして頂けませんか?」

 正直、意味がわからない。そう言われた瞬間、俺は目の前に置かれた紙を破り捨て大きな声を上げる。

「――いや、なんでだよ!?」

 意味がわからないよ。訳がわからないよ!
 何で俺が下衆司祭がキャバクラで遊んだツケを払わなきゃいけないんだよ。
 する訳ねーだろ、そんな肩代わり。
 真っ平御免だわ!

 すると、キンドリーは悲しそうに呟く。

「い、いえ、私もそのつもりでツケの回収に向かったのですが、金はないの一点張りで……暴力で言う事を聞かせようにも歯が立たず困っているのです……」
「いや、知らねーよ!」

 最低だな。下衆司祭。借金を踏み倒すとは風上にも置けない奴だ。
 って言うか暴力で言う事を聞かせようとして歯が立たなかったってどう言う事?
 負けちゃったの?
 あの下衆司祭に?

 そう声を上げるとキンドリーは悲壮感溢れる表情を浮かべ、俺の足に縋りついてくる。

「お、お願いします! 暴力も脅迫も効かず困っているのです! あなたなのでしょう!? あんな訳のわからない武器をユルバン司祭に与えたのは!?」
「そうですが、それが何か?」

 俺は俺自身の利益の為に呪いの装備をユルバン司祭に与えただけだ。
 まさかそれで借金を踏み倒すとは思っても見なかったが、それは俺には関係ない。
 借金を踏み倒したあいつ自身の問題だ。

「あんな凶悪な武器を与えた責任があるでしょう!?」

 責任。俺にとって一番嫌いな言葉だ。
 他にも色々と嫌いな言葉はあるが……。

「ないな。何度も言うが俺には関係ない」

 毅然とした態度でそう言うと、キンドリーは涙を浮かべる。

「そ、それでは、私はどうしたらいいんですかっ!? ユルバン司祭からツケを回収しないと私が代わりに負債を負う羽目になって……」

 いや、知らんがなそんな事……。

 俺はため息を吐くと、男泣きするキンドリーの肩を軽く叩く。

「……まあ、頑張れよ。あ、すいませーん。注文いいですか? エール一杯お願いします」

 キンドリーの肩を叩きながらエールを注文すると、ウエイトレスさんが元気よく返事する。

「はーい。エール一杯ですね。少々、お待ち下さい」

 辛気臭い表情を浮かべるキンドリーから目を背け、嬉しそうにペロペロザウルスのTKGを食べるエレメンタル達に視線を向ける。
 エレメンタル達が嬉しそうにピカピカ光りTKGを食べる姿。中々に眼福だ。
 辛気臭い空気を醸し出す奴が近くに居るとよりそう思う。

「ううっ……。わかりました。それでは……」

 なんだかよくわからないが、漸くわかってくれたようだ。

「ああ、元気出せよ」

 そう言って送り出そうとすると、キンドリーが予想外な行動に出る。

「……それでは、私は私の人脈を使い、あなたに強制依頼をかけさせて頂きます」
「はあ?」

 強制依頼?
 何言ってるんだ?
 馬鹿かお前。仮にもSランク冒険者だぞ、俺は……。
 冒険者協会の最高ランクだ。そんな下らないことで強制依頼なんてかけられる筈がない。
 しかし、キンドリーは余裕の表情を崩さない。

「実は、冒険者協会のお偉い様はすべて私の経営する『CLUB mami』の常連でして……」
「な、何っ!?」

 冒険者協会の上層部、真っ黒じゃねーか!
 キャバクラなんか俺でも行った事ないぞ!

「……それでは、私はこれで」

 キンドリーはそれだけ述べると、そのまま酒場の階段を上がっていってしまう。

 ---------------------------------------------------------------

 2022年7月22日AM7時更新となります。
しおりを挟む
最強呪符使い転生―故郷を追い出され、奴隷として売られました。国が大変な事になったからお前を買い戻したい?すいませんが他を当たって下さい―」を公開しました。皆様、是非、ブックマークよろしくお願い致します!!!!ブックマークして頂けると、更新頻度が上がるという恩恵が……あ、なんでもないです……。
感想 537

あなたにおすすめの小説

最強美少女達に愛されている無能サポーター 〜周りの人から馬鹿にされ続けてもう嫌なのパーティメンバーの天才たちが離してくれない〜

妄想屋さん
ファンタジー
 最強の美少女パーティメンバーに囲まれた無能、アルフ。  彼は周囲の人の陰口に心を病み、パーティメンバー達に、 「このパーティを抜けたい」  と、申し出る。  しかし、アルフを溺愛し、心の拠り所にしていた彼女達はその申し出を聞いて泣き崩れていまう。  なんとかアルフと一緒にいたい少女達と、どうしてもパーティを抜けたい主人公の話。

『自重』を忘れた者は色々な異世界で無双するそうです。

もみクロ
ファンタジー
主人公はチートです!イケメンです! そんなイケメンの主人公が竜神王になって7帝竜と呼ばれる竜達や、 精霊に妖精と楽しくしたり、テンプレ入れたりと色々です! 更新は不定期(笑)です!戦闘シーンは苦手ですが頑張ります! 主人公の種族が変わったもしります。 他の方の作品をパクったり真似したり等はしていないので そういう事に関する批判は感想に書かないで下さい。 面白さや文章の良さに等について気になる方は 第3幕『世界軍事教育高等学校』から読んでください。

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】

青緑
ファンタジー
 聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。 ——————————————— 物語内のノーラとデイジーは同一人物です。 王都の小話は追記予定。 修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

パーティのお荷物と言われて追放されたけど、豪運持ちの俺がいなくなって大丈夫?今更やり直そうと言われても、もふもふ系パーティを作ったから無理!

蒼衣翼
ファンタジー
今年十九歳になった冒険者ラキは、十四歳から既に五年、冒険者として活動している。 ところが、Sランクパーティとなった途端、さほど目立った活躍をしていないお荷物と言われて追放されてしまう。 しかしパーティがSランクに昇格出来たのは、ラキの豪運スキルのおかげだった。 強力なスキルの代償として、口外出来ないというマイナス効果があり、そのせいで、自己弁護の出来ないラキは、裏切られたショックで人間嫌いになってしまう。 そんな彼が出会ったのが、ケモノ族と蔑まれる、狼族の少女ユメだった。 一方、ラキの抜けたパーティはこんなはずでは……という出来事の連続で、崩壊して行くのであった。

処理中です...