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第72話 呪いの装備『命名神の逆鱗』①
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声のした方へ向かうと、そこには、プレイヤー達の盾として、上級ダンジョン『デザートクレードル』に棲息するモンスター、アントライオンの攻撃を弾く『ああああ』の姿があった。
異様なのは『ああああ』のテンションとその姿。
「ふははははっ! そんな攻撃、俺には効かん! 俺は無敵だぁぁぁぁ!」
――と、まあそんな事を叫んでいる。
十字架に磔にされ、後ろに隠れるプレイヤーを護るための盾にされながら……。
なにやってるんだ……あいつ。馬鹿じゃないのか?
無敵かなんだか知らないけど、もし俺が転移組の連中に磔にされ、モンスターの盾代わりに扱われてたらキレてるね。あいつには羞恥心とかプライドというものがないのだろうか?
「さあ、転移組の皆さん。今の内にやっちゃって下さい!」
首しか動かすことのできない『ああああ』が転移組の連中にそう声をかける。
「ああ、言われなくてもそうさせてもらうよ! 行くぞっ!」
「「おおっ!!」」
「…………」
なんだかよく分からないが、『ああああ』の奴、上手いこと転移組の連中に利用されているらしい。
それにしても、『ああああ』を磔にして肉壁代わりに利用するとは凄いな。
流石の俺でも、あんな事はしない。
『ああああ』がバカスカとアントライオンに殴られている間に、転移組の連中がアントライオンに攻撃を仕掛けていく。
転移組の連中がアントライオンに攻撃を仕掛ける中、『ああああ』は……。
「ふははははっ! 無駄だと言ってるだろっ! 俺の無敵タイムはあと二十秒は続く。それまでお前は立っていられるかな?」
そう言って高笑いしていた。
しかし、現実は無常だ。
二十秒が経過し、『ああああ』の無敵タイムが終わってなお、アントライオンはピンピンしていた。転移組のレベルも攻撃力も足りな過ぎる。
アントライオン一匹すら倒せないのに、よく上級ダンジョンに挑戦しようと思ったものだ。
『転移組』の奴ら、上級ダンジョン攻略を焦り過ぎじゃないだろうか?
「くっ、やっぱり駄目か……。お前達、一旦引くぞっ! 体勢を立て直す!」
「ぐうっ! 盾は……盾はどうするっ!」
「置いていくに決まっているだろっ! 俺達の命には代えられない!」
「そうだなっ! 行くぞっ! 撤退だっ!」
すると、転移組の連中はあっさり『ああああ』を見捨てて撤退してしまった。
「マ、マジか……あいつら……」
磔にされ逃げられない『ああああ』を置いて逃げ出しやがった。
転移組突然の撤退に『ああああ』も信じられないと表情を歪める。
「ち、ちょっと待っ……ぶへっ!? 助けっ……ぐはっ!? 俺はまだ死にたくなっ……ぐへえっ!?」
無敵タイムが終了し、フルボッコタイムに突入してしまったようだ。
アントライオンがこれまでの鬱憤をぶつけるかのように、『ああああ』をボコっていく。
「ち、ちょっと待とうか、アントライオン君、ぶへっ!? もうこんな悲しい戦い止めよう、へぶっ!? ちょっと、俺の話を聞いて、アントライオン君、ぐはっ!!?」
『ああああ』の奴……結構、余裕があるんじゃないだろうか?
あんなにタコ殴りにされてるのに、アントライオン相手に説得を試みようとは、その発想はなかったわ。
とはいえ、そろそろヤバそうだ。
「おーい! 『ああああ』、もうクールタイム終わっただろ! さっさと『命名神の怒り』を発動させろっ!」
「ええっ!?」
「『ええっ!?』じゃねー! 早くしろって言ってるんだよ!」
俺の言葉を聞いた『ああああ』がクールタイムを終えた『命名神の怒り』を発動させる。
『ああああ』が装備する『命名神の怒り』の効果は、一定時間物理・魔法無効。
レベル一の場合、物理・魔法無効は一分。その後、一レベル毎に十秒加算されていく。
「あっ……た、助かった……」
「いや、全然助かってねぇー!」
そう呟く『ああああ』をアントライオンが容赦なくタコ殴りにしていく。しかし、ダメージはないようだ。
俺がレベリングをしてやった時のレベルは五十。
つまり、最低でも九分十秒は持ち堪える事ができる筈。
磔にされながらも、余裕の表情を浮かべる『ああああ』。
俺がこの場にいるから何とかなるとでも思っているのだろう。
このまま帰ったらどうなるかちょっと見てみたい気もするが、助かる命を散らせるのも夢見が悪い。
「…………」
仕方がない。今日の所は助けてやるか。
モブ・フェンリルバズーカを『ああああ』の直線上にいるアントライオンに向けると、『ああああ』が騒ぎ出す。
「ぎ、ぎゃああああっ! 何やってんの、カケル君っ!?」
「いや、磔にされたお前を助けるにはこっちの方が手っ取り早いかなって……」
「だ、誰か助けてー!」
「……ああ、今すぐ助けてやるよっと!」
そう言って引き金を引くと、アントライオンに向かって砲弾が射出される。
『わおーん』という声と共に射出された砲弾は、アントライオンの身体を貫通すると、そのまま『ああああ』の身体へとぶち当たり爆散した。
「ぎゃああああっ!?」
爆散と同時に磔状態から解放される『ああああ』。しかし、『命名神の怒り』のお蔭でダメージはないようだ。
磔から解放された『ああああ』の前まで向かうと、俺は手を差し伸べ声をかける。
「おい。しっかりしろよ。大丈夫か?」
すると、『ああああ』はあろう事か俺を非難し始める。
「た、助けてもらってなんですが、もう少し穏便に助ける方法があったんじゃないでしょうか!?」
「ああっ?」
俺が凄むと、『ああああ』は肩を震わせた。
なんだコイツ、助けてもらっておきながら、助け方に文句を付けるとは、いいご身分だな。あのまま放置してやってもよかったんだぞ?
磔からも解放してやった。それに無傷で助けてやったんだ。少なくとも、『ああああ』を置き去りにする転移組の奴等よりかはマシな対応だろう。
まあいいや。
とりあえず発言を無視すると、俺は『ああああ』に手を差し伸べる。
すると、何を勘違いしたのか、『ああああ』が手を伸ばしてきた。
「いや、お前、何勘違いしてるんだ? 助けたんだからまず言う事があるだろ」
「あ、ああ、そうだった。助けてくれてありが……」
謝辞を述べようとする『ああああ』の言葉を遮ると、俺は親指と人さし指で丸を作る。
「……いや、そんなのどうでもいいから。『ああああ』君、助けてもらった誠意を言葉以外で示しなさいよ。誠意とは何かね。誠意とは」
すると、『ああああ』は俺に伸ばそうとした手を止め、困惑した表情を浮かべる。
「え、ええっと、カ、カボチャ……」
「んな訳ねーだろっ! それが通じるのは、某ドラマの中だけだからっ!?」
まったく、何を考えているんだ。
誠意とは、私利私欲や邪な考えを捨て、相手の立場を汲み取って正直な態度で接する心。つまり、俺の場合はマネーだ。
断じてカボチャなんかではない。
むしろ、『ああああ』でも汲み取れるよう、親指と人さし指で丸を作ってやっただろうがっ!
「お、お金ですかぁ……じ、実はあまり持ってなくて……」
「嘘つくんじゃないよ。さっき、転移組の奴らがここにいたよなぁ? お前がタダで上級ダンジョンの攻略を手伝うはずがねーだろっ! 奴らから貰ったマネーを寄こしなさいよ」
転移組の奴らの代わりにアントライオンを倒してやったんだ。それに『ああああ』も助けてやった。俺にはその資格があると思う。
にじり寄っていくと、『ああああ』は綺麗な五体投地をきめた。
「す、すいません! 転移組の人達に脅されて、無償で手伝わされていましたぁ! だからお金は勘弁して下さい!」
「はあっ?」
マジでか……。
転移組の奴ら、報酬も払わず上級ダンジョン攻略を手伝って貰ってたの?
「い、いや……だってほら、転移組の人達、絶対大丈夫だって、安全だって言うから……」
「お前なぁ……」
上級ダンジョン『デザートクレードル』の推奨レベルは百五十。
つい先日、レベル五十になったばかりの『ああああ』には不適格なダンジョンだ。
仕方がない。
俺に誠意を示す事ができないのであれば、別の形で誠意を示してもらおう。
「……はあっ、わかったよ」
そう呟くと、『ああああ』が逃げられないよう、モブ・フェンリルバズーカを向け捕縛する魔法の鎖『グレイプニル』弾を放つ。
「カ、カケル君っ!? なにをっ!?」
俺、突然の行動に驚く『ああああ』。
そんな『ああああ』に俺は言葉を投げかける。
「いや、謝辞以外の誠意が示せないなら、ちょっと実験に付き合ってもらおうかなって……大丈夫、大丈夫。死にはしないから。多分……」
「多分って、なにっ!?」
「まあまあ、『ああああ』君。落ち着きなさいよ。君はただこれを装備するだけでいいから、その後、パワーレベリングもしてあげるから……」
「い、いやあぁぁぁぁ!」
叫び声を上げる『ああああ』にアイテムストレージから取り出した呪いの装備を手渡すと、呪いの装備が纏っていた黒い謎の物質が『ああああ』の身体に吸収されていく。
『ああああ』に渡したのは、命名神シリーズの内の一つ。『命名神の逆鱗』。
『命名神の怒り』の効果が一定時間物理・魔法無効効果と防御に特化しているのに対し、『命名神の逆鱗』は、一定時間物理・魔法攻撃反射・ドレインという破格の効果を持っている。
もちろん、命名神シリーズは『ああああ』とか『いいいい』とか『うううう』とかいうふざけた名前を付けた奴にしか装備できない呪いの装備。ただし、呪われている為、『命名神の怒り』と同様に、一生、名前を変える事ができず、万が一、名前を一文字でも変えた場合、ステータスが初期化される呪いにかかってる。また、命名神に嫌われている為、教会での回復は完全に無効化される。回復薬を飲んでも、少しだけしか回復できないというデメリットもある。
しかし、命名神シリーズはゲーム作成陣が悪ふざけで作った最強の呪いの装備。
命名神シリーズを装備した今、『ああああ』は一定時間において完全無敵の存在となった。
とはいえ、一定時間無敵の存在になれる命名神シリーズにも弱点はある。
それは、物理攻撃でもなく魔法攻撃でもない捕縛には効果がない点。また、無敵タイム終了後、レベルと同じ秒数のクールタイムがある点だ。
「それじゃあ、楽しい。楽しいパワーレベリングを始めようか」
捕縛する魔法の鎖『グレイプニル』弾に絡め捕られた『ああああ』に視線を向けると、俺は笑みを浮かべた。
異様なのは『ああああ』のテンションとその姿。
「ふははははっ! そんな攻撃、俺には効かん! 俺は無敵だぁぁぁぁ!」
――と、まあそんな事を叫んでいる。
十字架に磔にされ、後ろに隠れるプレイヤーを護るための盾にされながら……。
なにやってるんだ……あいつ。馬鹿じゃないのか?
無敵かなんだか知らないけど、もし俺が転移組の連中に磔にされ、モンスターの盾代わりに扱われてたらキレてるね。あいつには羞恥心とかプライドというものがないのだろうか?
「さあ、転移組の皆さん。今の内にやっちゃって下さい!」
首しか動かすことのできない『ああああ』が転移組の連中にそう声をかける。
「ああ、言われなくてもそうさせてもらうよ! 行くぞっ!」
「「おおっ!!」」
「…………」
なんだかよく分からないが、『ああああ』の奴、上手いこと転移組の連中に利用されているらしい。
それにしても、『ああああ』を磔にして肉壁代わりに利用するとは凄いな。
流石の俺でも、あんな事はしない。
『ああああ』がバカスカとアントライオンに殴られている間に、転移組の連中がアントライオンに攻撃を仕掛けていく。
転移組の連中がアントライオンに攻撃を仕掛ける中、『ああああ』は……。
「ふははははっ! 無駄だと言ってるだろっ! 俺の無敵タイムはあと二十秒は続く。それまでお前は立っていられるかな?」
そう言って高笑いしていた。
しかし、現実は無常だ。
二十秒が経過し、『ああああ』の無敵タイムが終わってなお、アントライオンはピンピンしていた。転移組のレベルも攻撃力も足りな過ぎる。
アントライオン一匹すら倒せないのに、よく上級ダンジョンに挑戦しようと思ったものだ。
『転移組』の奴ら、上級ダンジョン攻略を焦り過ぎじゃないだろうか?
「くっ、やっぱり駄目か……。お前達、一旦引くぞっ! 体勢を立て直す!」
「ぐうっ! 盾は……盾はどうするっ!」
「置いていくに決まっているだろっ! 俺達の命には代えられない!」
「そうだなっ! 行くぞっ! 撤退だっ!」
すると、転移組の連中はあっさり『ああああ』を見捨てて撤退してしまった。
「マ、マジか……あいつら……」
磔にされ逃げられない『ああああ』を置いて逃げ出しやがった。
転移組突然の撤退に『ああああ』も信じられないと表情を歪める。
「ち、ちょっと待っ……ぶへっ!? 助けっ……ぐはっ!? 俺はまだ死にたくなっ……ぐへえっ!?」
無敵タイムが終了し、フルボッコタイムに突入してしまったようだ。
アントライオンがこれまでの鬱憤をぶつけるかのように、『ああああ』をボコっていく。
「ち、ちょっと待とうか、アントライオン君、ぶへっ!? もうこんな悲しい戦い止めよう、へぶっ!? ちょっと、俺の話を聞いて、アントライオン君、ぐはっ!!?」
『ああああ』の奴……結構、余裕があるんじゃないだろうか?
あんなにタコ殴りにされてるのに、アントライオン相手に説得を試みようとは、その発想はなかったわ。
とはいえ、そろそろヤバそうだ。
「おーい! 『ああああ』、もうクールタイム終わっただろ! さっさと『命名神の怒り』を発動させろっ!」
「ええっ!?」
「『ええっ!?』じゃねー! 早くしろって言ってるんだよ!」
俺の言葉を聞いた『ああああ』がクールタイムを終えた『命名神の怒り』を発動させる。
『ああああ』が装備する『命名神の怒り』の効果は、一定時間物理・魔法無効。
レベル一の場合、物理・魔法無効は一分。その後、一レベル毎に十秒加算されていく。
「あっ……た、助かった……」
「いや、全然助かってねぇー!」
そう呟く『ああああ』をアントライオンが容赦なくタコ殴りにしていく。しかし、ダメージはないようだ。
俺がレベリングをしてやった時のレベルは五十。
つまり、最低でも九分十秒は持ち堪える事ができる筈。
磔にされながらも、余裕の表情を浮かべる『ああああ』。
俺がこの場にいるから何とかなるとでも思っているのだろう。
このまま帰ったらどうなるかちょっと見てみたい気もするが、助かる命を散らせるのも夢見が悪い。
「…………」
仕方がない。今日の所は助けてやるか。
モブ・フェンリルバズーカを『ああああ』の直線上にいるアントライオンに向けると、『ああああ』が騒ぎ出す。
「ぎ、ぎゃああああっ! 何やってんの、カケル君っ!?」
「いや、磔にされたお前を助けるにはこっちの方が手っ取り早いかなって……」
「だ、誰か助けてー!」
「……ああ、今すぐ助けてやるよっと!」
そう言って引き金を引くと、アントライオンに向かって砲弾が射出される。
『わおーん』という声と共に射出された砲弾は、アントライオンの身体を貫通すると、そのまま『ああああ』の身体へとぶち当たり爆散した。
「ぎゃああああっ!?」
爆散と同時に磔状態から解放される『ああああ』。しかし、『命名神の怒り』のお蔭でダメージはないようだ。
磔から解放された『ああああ』の前まで向かうと、俺は手を差し伸べ声をかける。
「おい。しっかりしろよ。大丈夫か?」
すると、『ああああ』はあろう事か俺を非難し始める。
「た、助けてもらってなんですが、もう少し穏便に助ける方法があったんじゃないでしょうか!?」
「ああっ?」
俺が凄むと、『ああああ』は肩を震わせた。
なんだコイツ、助けてもらっておきながら、助け方に文句を付けるとは、いいご身分だな。あのまま放置してやってもよかったんだぞ?
磔からも解放してやった。それに無傷で助けてやったんだ。少なくとも、『ああああ』を置き去りにする転移組の奴等よりかはマシな対応だろう。
まあいいや。
とりあえず発言を無視すると、俺は『ああああ』に手を差し伸べる。
すると、何を勘違いしたのか、『ああああ』が手を伸ばしてきた。
「いや、お前、何勘違いしてるんだ? 助けたんだからまず言う事があるだろ」
「あ、ああ、そうだった。助けてくれてありが……」
謝辞を述べようとする『ああああ』の言葉を遮ると、俺は親指と人さし指で丸を作る。
「……いや、そんなのどうでもいいから。『ああああ』君、助けてもらった誠意を言葉以外で示しなさいよ。誠意とは何かね。誠意とは」
すると、『ああああ』は俺に伸ばそうとした手を止め、困惑した表情を浮かべる。
「え、ええっと、カ、カボチャ……」
「んな訳ねーだろっ! それが通じるのは、某ドラマの中だけだからっ!?」
まったく、何を考えているんだ。
誠意とは、私利私欲や邪な考えを捨て、相手の立場を汲み取って正直な態度で接する心。つまり、俺の場合はマネーだ。
断じてカボチャなんかではない。
むしろ、『ああああ』でも汲み取れるよう、親指と人さし指で丸を作ってやっただろうがっ!
「お、お金ですかぁ……じ、実はあまり持ってなくて……」
「嘘つくんじゃないよ。さっき、転移組の奴らがここにいたよなぁ? お前がタダで上級ダンジョンの攻略を手伝うはずがねーだろっ! 奴らから貰ったマネーを寄こしなさいよ」
転移組の奴らの代わりにアントライオンを倒してやったんだ。それに『ああああ』も助けてやった。俺にはその資格があると思う。
にじり寄っていくと、『ああああ』は綺麗な五体投地をきめた。
「す、すいません! 転移組の人達に脅されて、無償で手伝わされていましたぁ! だからお金は勘弁して下さい!」
「はあっ?」
マジでか……。
転移組の奴ら、報酬も払わず上級ダンジョン攻略を手伝って貰ってたの?
「い、いや……だってほら、転移組の人達、絶対大丈夫だって、安全だって言うから……」
「お前なぁ……」
上級ダンジョン『デザートクレードル』の推奨レベルは百五十。
つい先日、レベル五十になったばかりの『ああああ』には不適格なダンジョンだ。
仕方がない。
俺に誠意を示す事ができないのであれば、別の形で誠意を示してもらおう。
「……はあっ、わかったよ」
そう呟くと、『ああああ』が逃げられないよう、モブ・フェンリルバズーカを向け捕縛する魔法の鎖『グレイプニル』弾を放つ。
「カ、カケル君っ!? なにをっ!?」
俺、突然の行動に驚く『ああああ』。
そんな『ああああ』に俺は言葉を投げかける。
「いや、謝辞以外の誠意が示せないなら、ちょっと実験に付き合ってもらおうかなって……大丈夫、大丈夫。死にはしないから。多分……」
「多分って、なにっ!?」
「まあまあ、『ああああ』君。落ち着きなさいよ。君はただこれを装備するだけでいいから、その後、パワーレベリングもしてあげるから……」
「い、いやあぁぁぁぁ!」
叫び声を上げる『ああああ』にアイテムストレージから取り出した呪いの装備を手渡すと、呪いの装備が纏っていた黒い謎の物質が『ああああ』の身体に吸収されていく。
『ああああ』に渡したのは、命名神シリーズの内の一つ。『命名神の逆鱗』。
『命名神の怒り』の効果が一定時間物理・魔法無効効果と防御に特化しているのに対し、『命名神の逆鱗』は、一定時間物理・魔法攻撃反射・ドレインという破格の効果を持っている。
もちろん、命名神シリーズは『ああああ』とか『いいいい』とか『うううう』とかいうふざけた名前を付けた奴にしか装備できない呪いの装備。ただし、呪われている為、『命名神の怒り』と同様に、一生、名前を変える事ができず、万が一、名前を一文字でも変えた場合、ステータスが初期化される呪いにかかってる。また、命名神に嫌われている為、教会での回復は完全に無効化される。回復薬を飲んでも、少しだけしか回復できないというデメリットもある。
しかし、命名神シリーズはゲーム作成陣が悪ふざけで作った最強の呪いの装備。
命名神シリーズを装備した今、『ああああ』は一定時間において完全無敵の存在となった。
とはいえ、一定時間無敵の存在になれる命名神シリーズにも弱点はある。
それは、物理攻撃でもなく魔法攻撃でもない捕縛には効果がない点。また、無敵タイム終了後、レベルと同じ秒数のクールタイムがある点だ。
「それじゃあ、楽しい。楽しいパワーレベリングを始めようか」
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