ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中

文字の大きさ
上 下
50 / 381

第50話 留置所にぶち込まれました②

しおりを挟む
 カンデオホテルに戻った俺は、気分をサッパリさせる為、露天風呂に浸かると、留置所の事を考える。
 よく考えてみれば、あの状況を打破しない事には、俺は永遠にあの留置所から出る事ができない。
 まあ、完全に濡れ衣なので録画機能を使い当時の状況を見せれば何とかなるだろうか?

 というより、なんとかなってくれないと困る。

「とりあえず、風呂から出たらDWにログインして見るか……」

 そう呟くと、露天風呂を出て部屋に向かい、冷蔵庫に入っているビールを軽く飲んでからベッドの上に転がった。
 やる気のない声で「――コネクト『Different World』」と呟き、嫌々、DWの世界にログインする。
 ため息を吐きながら牢屋の中を見渡すも、そこに課金アイテム『身代わり人形』の姿はなかった。

「はへっ?」

 どういう事??
 なんで『身代わり人形』が消えてんの??
 キョトンとした表情を浮かべながら、牢に視線を向けると、鍵が開いている事に気付く。チラリと牢屋の中から通路を見ると、見張りが立っている事に気付いた。

 なんで『身代わり人形』が消えているのかよくわからないが、これはチャンスである。
 アイテムストレージから姿を隠すのに最適な通常ドロップアイテム『隠密マント』を取り出すと、それを羽織り足早に牢屋から抜け出した。

 周囲の位置情報を探ると、何やら人が多く集まっている場所がある事に気付く。

「……なんだか怪しいが、とりあえず、行ってみるか」

 牢屋を抜け出し、注意深く階段を上がっていくと、見張りの門番と鉢合う。
 しかし、『隠密マント』のお蔭か、門番は俺に気付いていないらしい。

 堂々と、門番の横を抜けると脱獄に成功した俺は拳を握りガッツポーズした。
 しかし、喜んではいられない。

 マップ機能を頼りに多くの人が集まる場所に急行すると、そこには見るも無残な姿となったモブ・フェンリル(身代わり人形)の姿があった。

『え、ええええっ!! どういう事、これっ!? なんで磔にされてんのっ!!?』

 心の中で俺は絶叫を上げる。
 驚きながら、今もモブ・フェンリル(身代わり人形)を弄ぶ衛兵達に視線を向けると、隠れながら近付き様子を伺う事にした。
 聞き耳を立てると衛兵達の声が聞こえてくる。

「……駄目だな。いくら尋問しても声一つ上げやしない」
「これじゃあ、自白を得る事は不可能です。殺す訳にもいきませんし、どうしましょう?」
「そうだな……。尋問が激しすぎてまったく動かなくなってしまったが、まだ死んではないだろう。尋問が原因で死なれては面倒だ……。これだけ痛めつければ二度と、カンナちゃんにセクハラしようと思わないだろ、釈放してやれ……」

 衛兵の一人がそう言うと、磔にされた『身代わり人形』の縄を解き、乱暴に打ち捨てる。

「……これに懲りたら二度と、カンナちゃんに手を出すんじゃねーぞ。わかったなっ!」

 そして、衛兵達は『身代わり人形』に唾を吐き捨てると、その場から去ろうとする。

「……待てよ」

 気付けば俺は、『隠密マント』を纏ったまま衛兵達に立ち塞がっていた。

「だ、誰だっ!」
「姿を現せっ!」
「くっ、まさか見られていたとは……」

 俺の声を聞き、衛兵達は剣を片手にキョロキョロと周囲を警戒する。

 ふむ。どうやら、こいつ等、目の前に姿を現しているというのにも関わらず、俺の姿を認識できていないらしい。隠密マントのお陰かな?
 好都合だ。

 元々、慰めようとして肩に手を置いただけで、こんな目に遭っているのだ。
 尋問が原因で死なれると面倒だと言っていたし、衛兵自身も『くっ、まさか見られていたとは……』とか言っている。

 この衛兵達の対応はどう考えても過剰。罪の重さとつり合いが取れていない。
 そもそもセクハラなんてやってないけどね!

 あの受付嬢め……。
 冤罪で俺を留置所にぶち込み、あまつさえ『身代わり人形』をこんなにボロボロにしやがって……。
 まあ、俺も副協会長と話したくないあまり少しヤンチャが過ぎたかもしれないけど、これはねーだろ!
 少し留置所で反省させてやろうとか、そんな感じで衛兵に突き出したんだろうけどな。やり過ぎなんだよ。主に衛兵!
 副協会長と面会なんか絶対にしてやらないからなっ!!

「おいっ! 誰かいるんだろっ! さっさと出てこい!」

 おっと、危ない。
 思考が別の方向に逸れていた。
 今はこいつ等に罰を与える事の方が重要だ。

 こいつ等は人として、この国を護る衛兵としてやっちゃいけない事をした。
 独善的に犯罪者でないモブ・フェンリルをボコボコにし、磔にして放る事はこの国の衛兵として許されざる行為だ。(多分)

 だから、俺はエレメンタルに対してこう命じる。

「あいつ等を男として終わらせてやれ。エレメンタル」

 その瞬間、火の精霊サラマンダーの熱線が三人の股間に向けて照射された。
 股間が消し炭になると同時に、衛兵達は泡を噴いて気絶する。

「ふん。クソ共がっ……」

 カンナちゃんだか、なんだか知らないが百パーセント受付嬢の言葉を信じるなんて、まったく愚かな奴等だ。
 アイテムストレージから取り出した『初級回復薬』を衛兵達の股間に乱暴にぶちまけ止血すると、ボロボロになった『身代わり人形』をアイテムストレージに収納する。

 部位欠損は『エリクサー』か、それに準ずる魔法を使わない限り直す事はできない。
 冤罪者を尋問し、拷問する事はそれと同等の苦しみを味わうべきだ。
 独善的衛兵という権力を笠に冤罪者に鞭を振う馬鹿野郎は去勢してしまうに限る。

 永遠と股間の痛みに苦しみな、クソ野郎。
 死屍累々となった衛兵達を後目にその場をすると、そのまま冒険者協会に向かった。

 冒険者協会に入ってすぐ、受付嬢達が驚愕といった表情を浮かべる。
 俺はそれを無視し掲示板の前に立つと、衛兵に突き出した張本人である受付嬢カンナが気まずそうに声をかけてきた。

「ぶ、無事、出所されたようで安心しました」
「そうですね。(身代わり人形が)磔にされ、ボコボコにされましたが、無事、出所する事ができました。いや、貴重な体験をさせて貰いましたよ。ありがとうございます」
「えっと、カケル様。もしかしなくても、怒ってますよね?」

 ……ええ、その通りですけれども?
 一言謝罪があってもいいと思うんだけど、それをスルーしての「怒ってますよね?」発言。お前の軽はずみなセクハラ発言により、留置所にぶち込まれた上、課金アイテム『身代わり人形』がボロボロになる程に痛めつけられたんだよ。反省しやがれ。
 もし、あの時、入れ替わっていなかったら、俺がその憂き目に遭っていた所だ。

「一時の感情で人を衛兵に突き出しておいて、怒っていないと思ってるんですか?」

 そう言うと、冒険者協会の空気が凍りつく。
 その瞬間、受付嬢カンナが頭を下げた。

「も、申し訳ございませんでしたっ!」

 綺麗な最敬礼だ。
 膝に額が付きそうなほど頭を下げている。
 しかし、俺は許さない。
 だって、当たり前だろ?
 一時の感情で衛兵に突き出され(身代わり人形が)尋問という名の拷問を受けたんだぜ?

「謝罪は不要です。本当にいい勉強をさせて貰いましたよ。セクハラと言えば、それが例え冤罪であってもあなたの事を盲信的に信じる周囲の人間が犯罪者扱いしてくれるんですから本当に素晴らしいです。それにしても肩に手を置いただけで牢屋に打ち込まれ、(身代わり人形が)拷問を受け、衛兵には唾を吐きかけられるのかぁ。思い出しても身震いします。やはり冒険者協会の受付嬢とは距離を置いた方がいいのかもしれませんね。またセクハラとか言われて衛兵に突き出されるのは嫌ですし……」

 俺の辛辣な言葉に、受付嬢のカンナは顔を蒼褪めさせた。

「ほ、本当に申し訳……」
「謝罪は不要と言ったでしょう? どうぞ顔を上げて下さい」
「そ、それは……」

 受付嬢のカンナは床に視線を向けたまま動かない。
 冒険者協会の受付嬢も全員、俺から視線を背けている。

 まあ、これだけ牽制球を投げまくれば十分だろう。
 悪びれず、掲示板を眺めていると、階段から人が降りてくる。

「……おやおや、これは一体、どういう事だい? なんでお通夜みたいな空気になっている?」

 出てきたか……。冒険者協会の副協会長。

「おや、おやおやおやっ? そこにいるのはSランク冒険者のカケル君じゃないか」
「カケル? 誰ですかそれ?」

 冒険者協会を後にしようとすると、副協会長が俺の肩に手を置いてくる。

「……なんですか?」
「『なんですか』はないだろう? ボクは冒険者協会の副協会長だよ?」
「……それがどうしたんですか? セクハラで訴えますよクソ野郎」

 そう呟くと、今も最敬礼したまま顔を上げない受付嬢のカンナがビクリと震えた。 

「うん? セクハラっ? 君はなにを言っているんだい?」
「あれ? 聞こえなかったんですか? セクハラで訴えるって言ったんですよ。実は俺、男に触られるだけで蕁麻疹ができるんですよね。あー痒い。それにさ、俺、そこで最敬礼してる受付嬢に衛兵に突き出されたんですよ」
「うん? 何故、君が留置所送りに??」

「いや、今のあんたの様に手を肩に置いただけでセクハラ扱いされて、衛兵に突き出されたんですよ。それより肩から手を放して頂いてもいいですか? 本当にセクハラで訴えますよ?」

 そう言って、手を払うと副協会長は受付嬢のカンナに視線を向ける。

「一体、そういう事だい? 何故、彼はこんなに憤っているんだ?」
「も、申し訳ございません!」
「申し訳ございませんと言われても困るな。理由を話してくれないと……」
「そ、それは……」

 これには副協会長も困った表情を浮かべる。

「……まあいい。カケル君。冒険者協会の副協会長であるボクがこの場に出てきたんだ。ここは、ボクの顔に免じて彼女を許してくれないかい?」
「そうですね。俺の言う事を飲んでくれるならいいですよ?」
「君の言う事ねえ? まあ、いいだろっ。さあ、みんな通常業務に戻りなさい。カケル君はボクについて来てくれ」
「……わかりました」

 そう言うと、俺は冒険者協会の副協会長室へと向かった。
 部屋に入ると、副協会長はまっすぐ俺に視線を向ける。

「……それで、君は何が望みだい?」
「望みという訳ではありませんが、これ以上、回復薬の件で俺につき纏わないで頂けますか?」
「ふうむ。何故だね?」
「理由は副協会長がよくお分かりでしょう?」

 副協会長は顎に手をやると深く考え込む。
しおりを挟む
最強呪符使い転生―故郷を追い出され、奴隷として売られました。国が大変な事になったからお前を買い戻したい?すいませんが他を当たって下さい―」を公開しました。皆様、是非、ブックマークよろしくお願い致します!!!!ブックマークして頂けると、更新頻度が上がるという恩恵が……あ、なんでもないです……。
感想 537

あなたにおすすめの小説

最強美少女達に愛されている無能サポーター 〜周りの人から馬鹿にされ続けてもう嫌なのパーティメンバーの天才たちが離してくれない〜

妄想屋さん
ファンタジー
 最強の美少女パーティメンバーに囲まれた無能、アルフ。  彼は周囲の人の陰口に心を病み、パーティメンバー達に、 「このパーティを抜けたい」  と、申し出る。  しかし、アルフを溺愛し、心の拠り所にしていた彼女達はその申し出を聞いて泣き崩れていまう。  なんとかアルフと一緒にいたい少女達と、どうしてもパーティを抜けたい主人公の話。

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】

青緑
ファンタジー
 聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。 ——————————————— 物語内のノーラとデイジーは同一人物です。 王都の小話は追記予定。 修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

パーティのお荷物と言われて追放されたけど、豪運持ちの俺がいなくなって大丈夫?今更やり直そうと言われても、もふもふ系パーティを作ったから無理!

蒼衣翼
ファンタジー
今年十九歳になった冒険者ラキは、十四歳から既に五年、冒険者として活動している。 ところが、Sランクパーティとなった途端、さほど目立った活躍をしていないお荷物と言われて追放されてしまう。 しかしパーティがSランクに昇格出来たのは、ラキの豪運スキルのおかげだった。 強力なスキルの代償として、口外出来ないというマイナス効果があり、そのせいで、自己弁護の出来ないラキは、裏切られたショックで人間嫌いになってしまう。 そんな彼が出会ったのが、ケモノ族と蔑まれる、狼族の少女ユメだった。 一方、ラキの抜けたパーティはこんなはずでは……という出来事の連続で、崩壊して行くのであった。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

処理中です...