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第48話 倍返しはデフォルトだよね?②
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デザートクレードルのボスモンスター、アントライオン・ネオの頭に光線が走ると、そのままアントライオン・ネオは地面に沈んでいく
「あっ!? まだ、『レアドロップ倍率+500%』使ってないのに……」
すっかり忘れていた。
しかし、ユウキ達は完全に気絶している。
まあ、問題ないだろう。
とりあえず、アイテムストレージから『レアドロップ倍率+500%』を取り出し、使用すると絶賛気絶中のユウキ達の足を持ち転移門『ユグドラシル』の前まで引き摺っていく。
今、『アントライオン・ネオ』の相手は火の精霊サラマンダーが一体で対応している。
いくらエレメンタルでも、一体で上級ダンジョンのボスモンスターを相手にするのは厳しい筈だ。
一纏めにしたし、ユウキ達の護衛はエレメンタル一体を残せば問題ないだろう。
「シルフとウンディーネはサラマンダーに加勢を、ノームは俺の護衛をよろしく」
エレメンタル達はピカピカ光ると、ノームを残し、『アントライオン・ネオ』に向かっていく。
これでよし……。
エレメンタルが三体いれば問題ない。
後の問題は……。
絶賛気絶中のユウキ達に視線を向ける。
コイツらをここに放置して帰ってもいいが、死なれるのは夢見が悪い。それに『転移組』の動向も気になる。
さて、どうしたものか……。
カイルや『ああああ』の様に、呪いの装備を着けさせてもいいんだけど、それを利用して変に強くなられても厄介だ。
エレメンタル達が『アントライオン・ネオ』を討伐していく中、『う~ん』と唸り声を上げながら考え込んでいると、名案を思い付く。
そうだ。見張りを付けよう。
アイテムストレージから『エレメンタル獲得チケット』を選択すると使用する個数を確認し、『アイテムを使用する』をタップした。
すると、目の前に三体のエレメンタルが現れる。
現れたエレメンタルは、雷の精霊ヴォルト、氷の精霊セルシウス、音の精霊ハルモニウム。
どの精霊も獲得したばかりなので、まだ小さく弱弱しい。
黄と水、虹色の淡い光の玉が三つふよふよと浮いているだけの状態だ。
「おお、雷と氷、音の精霊か」
エレメンタル獲得チケット、それは、プレイヤーをサポートしてくれるそれぞれの元素を司る精霊を獲得する為の課金アイテム。
ダブりはない様だ。
獲得したエレメンタルを強化する為、アイテムストレージ内にある『エレメンタル強化チケット』を最大個数まで選択すると『アイテムを使用する』をタップする。
すると、淡い光の玉がはっきりとした色を持つ。
三つの光の玉が、俺の周りを一周すると肩の辺りで留まった。
「それじゃあ、ヴォルトにセルシウス、ハルモニウムはこいつ等の監視をお願いしようかな。もし、俺の不利になるような発言をしたり、害をなそうとしたら軽くお仕置きしてあげて。でも殺しちゃ駄目だよ? 夢見が悪くなっちゃうからね」
獲得したばかりのエレメンタル達にそう語りかけると、エレメンタル達はピカピカ光りユウキ達の肩にとまる。
「ああ、それともう一つ。こいつ等を護る必要はないから、ヴォルトにセルシウス、ハルモニウムは監視とお仕置きだけしてくれればいいからね。とりあえず、一ヶ月間監視して、大丈夫だと判断したら俺の下へ帰っておいで。その際は、冒険者協会の酒場でペロペロザウルスのTKG(卵かけご飯)を食べさせてあげるからね」
すると俺の言葉を聞いたエレメンタル達が色めき立つ。
流石はエレメンタル。ペロペロザウルスのTKG(卵かけご飯)に目がない。
任務を終え帰ってきた時には、食べきれないほどのTKG(卵かけご飯)を用意してあげよう。
「それじゃあ、こいつ等の監視、よろしくね」
さて、これで間接的にユウキ達『転移組』の動向を把握する事ができる。
あとは……。
『デザートクレードル』のボスモンスター、『アントライオン・ネオ』を絶賛蹂躙中のエレメンタル達の足元に視線を向ける。
「あとは、こいつ等が起きるまでの間にドロップアイテムを回収するだけか……」
上級ダンジョンのボスモンスターだけあって、落ちているドロップアイテムも中々凄い。
『エリクサー』に『上級回復薬』。回数制限付きの『ムーブ・ユグドラシル』、武器強化に使える『アントライオンの甲殻』に『アントライオン・ハート』まである。
エレメンタル達が『アントライオン・ネオ』を蹂躙して遊ぶ中、俺は一人、ドロップアイテムの回収を始めた。
「つ、疲れた……」
流石は砂漠ダンジョン。
砂に足をとられる。
それに、アントライオンの残した蟻地獄はそのままだ。
ゲームの時には勝手に消えたのに流石はリアル。
ドロップアイテムを回収するのに、何回、蟻地獄に嵌ったかわからない。
とはいえ、ドロップアイテム回収は終わった。
後はユウキ達『転移組』を放置して帰るだけだ。
この辺りのモンスターは粗方倒したし、当分の間、湧いてくる事はないだろう。
「ヴォルトにセルシウス、ハルモニウム。こいつ等の事はよろしくね」
『エレメンタル獲得チケット』を使い新たに獲得した雷の精霊ヴォルト、氷の精霊セルシウス、音の精霊ハルモニウムをユウキ達の下に残し、手を振るとエレメンタル達と共に転移門『ユグドラシル』を通り王都へと戻ってきた。
王都に戻ると血相を変えて誰かを探す受付嬢の姿が目に映る。
咄嗟に、転移門の後ろに隠れるも受付嬢に見つかってしまった。
「い、いましたね! ようやく見つけました。そこのモブ・フェンリル。待ちなさい!」
「やべっ……」
咄嗟に逃げようと考えて改める。
よく考えれば逃げる必要はまったくない。
何故なら、俺にやましい事は一切ないからだ。
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……。さ、探しましたよ。もう逃がしませんからね……」
息を切らして汗を拭う受付嬢の目がなんだか怖い。
冒険者協会にいた時は、借りてきた猫並みに大人しかったのに、どうやらあれは仮初の姿だったようだ。
しかし、俺にやましい事は一切ない。
堂々とした態度で全力でとぼける。
「……そんなに急いでどうしたんですか? まだ冒険者協会の営業時間中ですよね?」
そんな俺の態度が気に障ったのか、受付嬢の眉間に皴が寄り、額に青筋を浮かべる。
「ど、どの口がそれを……。誰のせいでこんな目にあってると思っているんですかっ!?」
「うーん。わかりません。誰です? 受付嬢さんをこんなに憤慨させる奴は??」
もちろん、すべて棒読みだ。
決して煽っている訳ではない。
何度でも言うが、俺にやましい事は一切ないからだ。
つまり、受付嬢が憤慨している理由は別にある筈。そう別にある筈なのである。
「あ、あなたという人は……」
目の前で受付嬢が拳を握りフルフル震えている。
やだ。なんだか怖い。
言葉を間違えれば殴りかかってきそうな勢いだ。
「えっと、用がないならもう帰っていいですか? ちょっと、一人でアフタヌーンティーを嗜みたい気分なので」
適当にそう言うと、受付嬢が殴り掛かってきた。
避けると、受付嬢が親の仇でも見るかのような視線を向けてくる。
「なんで避けるんですか!」
おいおい、無茶を言うなよ。
痛いからに決まっているだろ?
まあ、レベル百五十超えてるから、受付嬢の拳を喰らっても痛くないかも知れないけど、念には念を入れて避けただけだ。
「そりゃあ、殴られたら痛いからに決まっているでしょう? それでどうしたんです? 急に殴りかかってきて??」
そう問いかけると、受付嬢がすっと表情を消した。
滅茶苦茶怖い。
な、なんだこの表情は……。
突然、表情を消した受付嬢にどう対応したらいいか戸惑う。
すると、受付嬢は突然、俺の尻尾を掴んだ。
「えっ? 尻尾なんて掴んで何を……」
そして、尻尾を思いっきり引っ張ると、無言で俺をどこかへと連れて行こうとする。
しかし、ステータス差からか俺を動かす事はできない。
俺の体重は五十キロ。決して重い訳ではない。
何度も言おう。決して重い訳ではない。
とりあえず、傍観していると、受付嬢が顔を真っ赤にして地に伏した。
どうやら、俺をここから動かすのは無理と察してくれたらしい。
ようやく諦めたかとため息を吐くと、受付嬢が地面に向かって呪詛の言葉を呟く。
「モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す」
こ、怖い……。
今まで感じた事のない怖さだ。
エレメンタル達も異様な雰囲気を放つ受付嬢を前に、俺の背中に隠れ出てこない。
これは……。
駄目だ。解決策が見いだせない。
こんなモンスターが冒険者協会の受付にいたなんて……。
エレメンタルでも討伐できる気がしない。
なんていうか……。倒したとしても呪われそうだ。
受付嬢の呪い。
呪詛の言葉を地面に向かって吐き続ける受付嬢を前にしてこんな事を言うのは何だが、ここで受付嬢の呪いを受けては一生、冒険者協会で冷遇されそうだ。
まあ、それは別にいいんだけど、呪われるのは超怖い。
カイルと『ああああ』に呪いの装備を持たせた俺が言うのもなんだけど、めちゃ怖い。
「はあっ……」
俺はため息を吐くと、受付嬢の肩に軽く手を乗せる。
「俺の負け……」
「……セクハラで訴えますよクソ野郎」
ぐうの音も出てこない。
まさかゲームの世界にセクハラという概念があったとは……。
しかも、慰めようと肩に手を乗せただけで……。
突然、窮地に追い込まれた俺は、受付嬢の肩から手を放し、宙を仰いだ。
「あっ!? まだ、『レアドロップ倍率+500%』使ってないのに……」
すっかり忘れていた。
しかし、ユウキ達は完全に気絶している。
まあ、問題ないだろう。
とりあえず、アイテムストレージから『レアドロップ倍率+500%』を取り出し、使用すると絶賛気絶中のユウキ達の足を持ち転移門『ユグドラシル』の前まで引き摺っていく。
今、『アントライオン・ネオ』の相手は火の精霊サラマンダーが一体で対応している。
いくらエレメンタルでも、一体で上級ダンジョンのボスモンスターを相手にするのは厳しい筈だ。
一纏めにしたし、ユウキ達の護衛はエレメンタル一体を残せば問題ないだろう。
「シルフとウンディーネはサラマンダーに加勢を、ノームは俺の護衛をよろしく」
エレメンタル達はピカピカ光ると、ノームを残し、『アントライオン・ネオ』に向かっていく。
これでよし……。
エレメンタルが三体いれば問題ない。
後の問題は……。
絶賛気絶中のユウキ達に視線を向ける。
コイツらをここに放置して帰ってもいいが、死なれるのは夢見が悪い。それに『転移組』の動向も気になる。
さて、どうしたものか……。
カイルや『ああああ』の様に、呪いの装備を着けさせてもいいんだけど、それを利用して変に強くなられても厄介だ。
エレメンタル達が『アントライオン・ネオ』を討伐していく中、『う~ん』と唸り声を上げながら考え込んでいると、名案を思い付く。
そうだ。見張りを付けよう。
アイテムストレージから『エレメンタル獲得チケット』を選択すると使用する個数を確認し、『アイテムを使用する』をタップした。
すると、目の前に三体のエレメンタルが現れる。
現れたエレメンタルは、雷の精霊ヴォルト、氷の精霊セルシウス、音の精霊ハルモニウム。
どの精霊も獲得したばかりなので、まだ小さく弱弱しい。
黄と水、虹色の淡い光の玉が三つふよふよと浮いているだけの状態だ。
「おお、雷と氷、音の精霊か」
エレメンタル獲得チケット、それは、プレイヤーをサポートしてくれるそれぞれの元素を司る精霊を獲得する為の課金アイテム。
ダブりはない様だ。
獲得したエレメンタルを強化する為、アイテムストレージ内にある『エレメンタル強化チケット』を最大個数まで選択すると『アイテムを使用する』をタップする。
すると、淡い光の玉がはっきりとした色を持つ。
三つの光の玉が、俺の周りを一周すると肩の辺りで留まった。
「それじゃあ、ヴォルトにセルシウス、ハルモニウムはこいつ等の監視をお願いしようかな。もし、俺の不利になるような発言をしたり、害をなそうとしたら軽くお仕置きしてあげて。でも殺しちゃ駄目だよ? 夢見が悪くなっちゃうからね」
獲得したばかりのエレメンタル達にそう語りかけると、エレメンタル達はピカピカ光りユウキ達の肩にとまる。
「ああ、それともう一つ。こいつ等を護る必要はないから、ヴォルトにセルシウス、ハルモニウムは監視とお仕置きだけしてくれればいいからね。とりあえず、一ヶ月間監視して、大丈夫だと判断したら俺の下へ帰っておいで。その際は、冒険者協会の酒場でペロペロザウルスのTKG(卵かけご飯)を食べさせてあげるからね」
すると俺の言葉を聞いたエレメンタル達が色めき立つ。
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任務を終え帰ってきた時には、食べきれないほどのTKG(卵かけご飯)を用意してあげよう。
「それじゃあ、こいつ等の監視、よろしくね」
さて、これで間接的にユウキ達『転移組』の動向を把握する事ができる。
あとは……。
『デザートクレードル』のボスモンスター、『アントライオン・ネオ』を絶賛蹂躙中のエレメンタル達の足元に視線を向ける。
「あとは、こいつ等が起きるまでの間にドロップアイテムを回収するだけか……」
上級ダンジョンのボスモンスターだけあって、落ちているドロップアイテムも中々凄い。
『エリクサー』に『上級回復薬』。回数制限付きの『ムーブ・ユグドラシル』、武器強化に使える『アントライオンの甲殻』に『アントライオン・ハート』まである。
エレメンタル達が『アントライオン・ネオ』を蹂躙して遊ぶ中、俺は一人、ドロップアイテムの回収を始めた。
「つ、疲れた……」
流石は砂漠ダンジョン。
砂に足をとられる。
それに、アントライオンの残した蟻地獄はそのままだ。
ゲームの時には勝手に消えたのに流石はリアル。
ドロップアイテムを回収するのに、何回、蟻地獄に嵌ったかわからない。
とはいえ、ドロップアイテム回収は終わった。
後はユウキ達『転移組』を放置して帰るだけだ。
この辺りのモンスターは粗方倒したし、当分の間、湧いてくる事はないだろう。
「ヴォルトにセルシウス、ハルモニウム。こいつ等の事はよろしくね」
『エレメンタル獲得チケット』を使い新たに獲得した雷の精霊ヴォルト、氷の精霊セルシウス、音の精霊ハルモニウムをユウキ達の下に残し、手を振るとエレメンタル達と共に転移門『ユグドラシル』を通り王都へと戻ってきた。
王都に戻ると血相を変えて誰かを探す受付嬢の姿が目に映る。
咄嗟に、転移門の後ろに隠れるも受付嬢に見つかってしまった。
「い、いましたね! ようやく見つけました。そこのモブ・フェンリル。待ちなさい!」
「やべっ……」
咄嗟に逃げようと考えて改める。
よく考えれば逃げる必要はまったくない。
何故なら、俺にやましい事は一切ないからだ。
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……。さ、探しましたよ。もう逃がしませんからね……」
息を切らして汗を拭う受付嬢の目がなんだか怖い。
冒険者協会にいた時は、借りてきた猫並みに大人しかったのに、どうやらあれは仮初の姿だったようだ。
しかし、俺にやましい事は一切ない。
堂々とした態度で全力でとぼける。
「……そんなに急いでどうしたんですか? まだ冒険者協会の営業時間中ですよね?」
そんな俺の態度が気に障ったのか、受付嬢の眉間に皴が寄り、額に青筋を浮かべる。
「ど、どの口がそれを……。誰のせいでこんな目にあってると思っているんですかっ!?」
「うーん。わかりません。誰です? 受付嬢さんをこんなに憤慨させる奴は??」
もちろん、すべて棒読みだ。
決して煽っている訳ではない。
何度でも言うが、俺にやましい事は一切ないからだ。
つまり、受付嬢が憤慨している理由は別にある筈。そう別にある筈なのである。
「あ、あなたという人は……」
目の前で受付嬢が拳を握りフルフル震えている。
やだ。なんだか怖い。
言葉を間違えれば殴りかかってきそうな勢いだ。
「えっと、用がないならもう帰っていいですか? ちょっと、一人でアフタヌーンティーを嗜みたい気分なので」
適当にそう言うと、受付嬢が殴り掛かってきた。
避けると、受付嬢が親の仇でも見るかのような視線を向けてくる。
「なんで避けるんですか!」
おいおい、無茶を言うなよ。
痛いからに決まっているだろ?
まあ、レベル百五十超えてるから、受付嬢の拳を喰らっても痛くないかも知れないけど、念には念を入れて避けただけだ。
「そりゃあ、殴られたら痛いからに決まっているでしょう? それでどうしたんです? 急に殴りかかってきて??」
そう問いかけると、受付嬢がすっと表情を消した。
滅茶苦茶怖い。
な、なんだこの表情は……。
突然、表情を消した受付嬢にどう対応したらいいか戸惑う。
すると、受付嬢は突然、俺の尻尾を掴んだ。
「えっ? 尻尾なんて掴んで何を……」
そして、尻尾を思いっきり引っ張ると、無言で俺をどこかへと連れて行こうとする。
しかし、ステータス差からか俺を動かす事はできない。
俺の体重は五十キロ。決して重い訳ではない。
何度も言おう。決して重い訳ではない。
とりあえず、傍観していると、受付嬢が顔を真っ赤にして地に伏した。
どうやら、俺をここから動かすのは無理と察してくれたらしい。
ようやく諦めたかとため息を吐くと、受付嬢が地面に向かって呪詛の言葉を呟く。
「モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す。モブ・フェンリルぶっ殺す」
こ、怖い……。
今まで感じた事のない怖さだ。
エレメンタル達も異様な雰囲気を放つ受付嬢を前に、俺の背中に隠れ出てこない。
これは……。
駄目だ。解決策が見いだせない。
こんなモンスターが冒険者協会の受付にいたなんて……。
エレメンタルでも討伐できる気がしない。
なんていうか……。倒したとしても呪われそうだ。
受付嬢の呪い。
呪詛の言葉を地面に向かって吐き続ける受付嬢を前にしてこんな事を言うのは何だが、ここで受付嬢の呪いを受けては一生、冒険者協会で冷遇されそうだ。
まあ、それは別にいいんだけど、呪われるのは超怖い。
カイルと『ああああ』に呪いの装備を持たせた俺が言うのもなんだけど、めちゃ怖い。
「はあっ……」
俺はため息を吐くと、受付嬢の肩に軽く手を乗せる。
「俺の負け……」
「……セクハラで訴えますよクソ野郎」
ぐうの音も出てこない。
まさかゲームの世界にセクハラという概念があったとは……。
しかも、慰めようと肩に手を乗せただけで……。
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