ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中

文字の大きさ
上 下
47 / 381

第47話 倍返しはデフォルトだよね?①

しおりを挟む
「……あれ、俺の聞き間違いかな? 君は今、なんて言ったんだ? まさかこの俺の提案を断る気じゃないよな?」

 ああ、よかった。
 ちゃんと伝わっていた様だ。

「ああ、それとも何か? もし俺がダンジョン攻略を進めてお前達から我が物顔でアイテムをぶん取ったら、笑って許してくれるのか??」

 俺がそう言うと、ユウキは顔を引き攣らせる。

「屁理屈を……。オーディンに会いゲームに囚われた人を解放する為には世界を渡る為に必要なキーアイテム『ムーブ・ユグドラシル』が必要なんだよ。ユグドラシルショップが無くなった今、そのアイテムがどれだけ希少かお前にも分かるだろう?」

「なんだ。よくわかっているじゃないか。そんな希少価値のある物を崇高な志を口頭で伝えれば、素直にこれを渡すと思ったのか? DW経験者ならわかると思うが、回数制限付きの『ムーブ・ユグドラシル』なら中級ダンジョンや上級ダンジョンでもドロップする。人に物を強請るよりも先に回数制限のある『ムーブ・ユグドラシル』を手に入れる努力をしたらどうだ? まずはそこからだろ」

 こいつはそんな当たり前の事もわからないのだろうか?
 ああ、わからないからこんな事をしている訳だ。
 冒険者のランクもCみたいだし、こいつに渡す位なら『ああああ』かカイルに渡した方がまだマシだ。

「うぐぐっ……。今日の所はこの位にしておいてやる。顔は覚えた……。精々、その『ムーブ・ユグドラシル』を無くさぬよう気を付けるんだな!」

 ユウキは悔し顔を浮かべると、マントを靡かせそのまま去っていく。

 あれがこのDWの世界に転移した事を喜んでいる連中『転移組』か……。
 中々、ヤバい連中だな。主に頭と思考回路が……。
 まあいいや。とりあえず、掲示板でも物色しよう。
 何か面白そうなクエストが貼られているといいんだけど……。

 掲示板の前でクエストを眺めていると、視界にアホ毛が映る。

「えっと、何の用ですか。さっき話は終わったと思ったんですが……」
「まだ話は終わっていません! 副協会長がカケル様との面会を申し出ているのです。お願いだからついて来てください!」

 正直言って邪魔だ。鬱陶しい受付嬢である。
 俺の目の前でピョンピョン跳ねないで欲しい。
 掲示板が見えないだろ。

「カケル様!?」
「あーわかったよ。一分だけな。一分経ったら帰るから」
「ほ、本当ですかっ!?」

 俺の言葉に受付嬢が笑顔を浮かべる。

「ええ、本当ですとも」
「それじゃあ、副協会長を呼びに行ってきますね!」
「はいはい。行ってらっしゃい」

 そう言って、手をひらひら振り、受付嬢が扉の中に消えた瞬間、一分が経過した。

「……よし、帰るか」

 受付嬢には一分経ったら帰ると言ってある。
 嘘は付いていない。
 副協会長が来てから一分だなんて誰も言っていないのだから。

 他の受付嬢達が唖然とした表情を浮かべる中、冒険者協会の外に出ると、俺はダンジョンに向かう為、転移門『ユグドラシル』へと向かった。

「いやぁ~。それにしても、変な奴が増えたなぁ~」

 DWがゲームであった時からおかしな連中は相当数存在したが、ここまでではなかったような気がする。
 転移門『ユグドラシル』に辿り着いた俺は、メニューバーを開き、行きたいダンジョンを選択する。

「転移。デザートクレードル」

 転移門の前でそう叫ぶと、俺の身体に蒼い光が宿り、広大な砂漠ダンジョン『デザートクレードル』へと転移する。
 転移すると先程までいた街の喧騒は消え去り、代わりにまるで砂が歌っているかの様な低い音やモンスターの声が聞こえてくる。

 ここは、通称『砂漠のゆりかご』と呼ばれる上級ダンジョン『デザートクレードル』。

 転移門『ユグドラシル』から離れた場所には、あちらこちらに蟻型モンスター、アントライオンが掘ったすり鉢状の巣穴があり、その巣穴の中には、様々なお宝が眠っていると言われている。
 まあ、実際の所、アントライオンの落とすドロップアイテムがお宝みたいなものなのである意味間違っていない。

 さて、なんで俺がこのダンジョンに転移したのか。それは……。

「ねえねえ。そろそろ出てきてくれない? 用があるみたいだったから折角、人目に付かないよう上級ダンジョンに転移してきたんだからさ」

 そう言うと、サボテンや岩の後ろから数名のプレイヤーが姿を現す。

「……へえ、ワザと上級ダンジョンに足を運んだの? 流石はSランク冒険者、まさか俺達の尾行に気付くなんてね」

「課金装備『モブ・フェンリルスーツ』には、探知機能も付いている。同じDWプレイヤーなら知っているだろ?」

 つーか、中級ダンジョンで手こずっている奴等がよく上級ダンジョンに入ってきたな。怒りで我を忘れているんじゃなかろうか?

「確かに……。まあ、この世界が現実になった今、そんな着ぐるみを装備するのはお前以外存在しないみたいだけどな。まあいいだろう。よくもこの俺を冒険者協会で虚仮にしてくれたな……。お前の事は絶対に許さないからなぁ!」

「へえ、別に許してくれなくてもいいけど、仮に許さなかったらどうするつもりなの?」

 興味本位で聞いて見ると、ユウキはほくそ笑みアイテムストレージから『モンスターリスポーン』を取り出した。

『モンスターリスポーン』は一定時間、モンスターをリスポーンさせる課金アイテム。それを取り出したという事は……。

「決まっているだろ? お前をモンスターに襲わせ、満身創痍になったところで『ムーブ・ユグドラシル』を回収させて貰うよ。いくらお前でも上級ダンジョンのモンスターが相手では対処できまい。安心しな。俺達は安全な所で、お前が無様に蹂躙される様を見学させて貰うよ」

 まさか、たったあれだけの問答で殺しにくるとは……。
 ちょっと、頭がイカレ過ぎてはいないだろうか?
 その風貌からして日本人だよね?
 ネット民の心の闇を今知ったよ。
 もしかして、この世界をゲームの延長線だと思っているんじゃないだろうか?

 ユウキが『モンスターリスポーン』を使うと、ユウキを起点として地面が円形に赤く染まり、次々とモンスターが湧いてくる。

「……さあ、俺達を虚仮にしたこと、後悔するがいい!」

 ユウキが高らかにそういった瞬間、エレメンタル達に光が灯り、地面から湧いてくるモンスター達を次々と虐殺していく。

「なあっ!?」

 驚愕の表情を浮かべるユウキを余所に、俺は上級ダンジョンのモンスターが屠られドロップアイテムを落としていく姿をボーっとした視線で眺めていた。

 流石はエレメンタルだ。容赦がない。上級ダンジョンでも余裕である。
 しかし、それでいい。
 何故ならば、上級ダンジョンでもエレメンタルが有効である事を今確認する事ができたからだ。

「な、何が起きているっ……。エレメンタルが上級ダンジョンのモンスターを? そんな馬鹿な……。あれはあくまでプレイヤーの補助的な役割を担うだけで、そこまでの力は……」

 ふふふっ……。
 現実世界の五百万円(相当)をかけて、エレメンタルを強化した事がないのだろう。
 知らなくて当然だ。
 俺自身、ここに来て、マイルームに入っているエレメンタル強化グッズを潤沢に使い始めてその真価がわかったほどだ。

 そこまでDWをやり込んでいない一般の人にそれがわかる訳がない。
 何より五百万円なんてリアルマネー、突っ込めるはずがない。
 俺もマイルームに入っていなければ検証すらしなかっただろう。

「ふふふっ、俺を殺そうとしたんだ。当然、やり返しても問題ないよね?」

 そう言って、課金アイテム『ボスモンスターリスポーン』を使うと、俺を起点として地面が円形に赤く染まり、次々とボスモンスターが湧いてくる。

 それを確認した俺はユウキ達から距離を置いた。

「お、お前何をっ!」

 随分と焦っているようだ。
 イレギュラーには弱いらしい。

「……今、使用したのは課金アイテム『ボスモンスターリスポーン』。良かったな。思う存分、ボスモンスターと戦う事ができるぞ……。安心してくれ。俺は何もしない。精々、生き残って見せろ」

 そう言うと、ユウキ達を囲む様に『デザートクレードル』のボスモンスター、アントライオン・ネオが姿を現す。

「あ、あわわわわっ……」

 ユウキの冒険者ランクはC。
 到底、敵う相手ではない。

『『グララララララッ!!』』

 蟻地獄から上がってきた『アントライオン・ネオ』は、ユウキ達に視線を向けると楽しそうに笑った。

「……に、逃げろ。逃げろっ! 俺達のレベルでは上級ダンジョンのボスモンスターには敵わない! すぐに転移門『ユグドラシル』まで退避するんだっ!」

 しかし、その願いは届かない。

「う、うわあぁぁぁ!」
「ユ、ユウキ様あぁぁぁ!」

 突然、地面から這い出た『アントライオン・ネオ』の触手がユウキの仲間を拘束していく。

「ヤ、ヤマトォォォォ! ヒュウガァァァァ!! おのれぇぇぇぇ!」

 叫び声を上げ『アントライオン・ネオ』に立ち向かっていくユウキ。
 しかし、圧倒的にレベルが足りない。

 捕われたヤマトとヒュウガを助ける為、『アントライオン・ネオ』に攻撃するも、剣は欠け、触手すら倒す事ができない。
 すると、『アントライオン・ネオ』を前に、俺に顔を向けユウキは叫び声を上げた。

「お、お前に人の心はないのかぁぁぁぁ! ボスモンスターを呼び出し、俺達に戦わせるなぞ、そんな事が許される筈がないっ! 今すぐこれを止めろぉぉぉぉ!」
「お前こそ人の心がないのか? 俺はお前にやられた事を倍返ししているだけなんだけど……」

 そう言うと、ユウキは顔を引き攣らせる。
 そして俺との問答は無駄と悟ったのか、欠けた剣を手に『アントライオン・ネオ』に向かって駆け出した。

「う、うわあぁぁぁぁ!」

 ガキンッ!

「あっ……」

 当然、上級ダンジョンのボスモンスターにCランク冒険者が叶う筈ない。
『デザートクレードル』のボスモンスター、『アントライオン・ネオ』を前に恐怖の表情を浮かべると、触手の一つがユウキを吹き飛ばし地面に横たわる。

 所詮は触手の一撃。Cランク冒険者のステータスであれば耐える事ができるだろう。

 周囲を見渡せば、俺を『モンスターリスポーン』で殺そうとして失敗し、横たわるユウキと今も触手に締め上げられているユウキの部下が二人。

「エレメンタル。あの三人を護れ」

 俺の声を聞き、エレメンタル達がユウキ達の守護に着く。

「さて、それじゃあ、レアドロップ狙いのボスモンスター討伐といきますか」

 そう呟くと、エレメンタルに光が灯り、『デザートクレードル』のボスモンスター、『アントライオン・ネオ』の頭に光線が走った。
しおりを挟む
最強呪符使い転生―故郷を追い出され、奴隷として売られました。国が大変な事になったからお前を買い戻したい?すいませんが他を当たって下さい―」を公開しました。皆様、是非、ブックマークよろしくお願い致します!!!!ブックマークして頂けると、更新頻度が上がるという恩恵が……あ、なんでもないです……。
感想 537

あなたにおすすめの小説

最強美少女達に愛されている無能サポーター 〜周りの人から馬鹿にされ続けてもう嫌なのパーティメンバーの天才たちが離してくれない〜

妄想屋さん
ファンタジー
 最強の美少女パーティメンバーに囲まれた無能、アルフ。  彼は周囲の人の陰口に心を病み、パーティメンバー達に、 「このパーティを抜けたい」  と、申し出る。  しかし、アルフを溺愛し、心の拠り所にしていた彼女達はその申し出を聞いて泣き崩れていまう。  なんとかアルフと一緒にいたい少女達と、どうしてもパーティを抜けたい主人公の話。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】

青緑
ファンタジー
 聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。 ——————————————— 物語内のノーラとデイジーは同一人物です。 王都の小話は追記予定。 修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

パーティのお荷物と言われて追放されたけど、豪運持ちの俺がいなくなって大丈夫?今更やり直そうと言われても、もふもふ系パーティを作ったから無理!

蒼衣翼
ファンタジー
今年十九歳になった冒険者ラキは、十四歳から既に五年、冒険者として活動している。 ところが、Sランクパーティとなった途端、さほど目立った活躍をしていないお荷物と言われて追放されてしまう。 しかしパーティがSランクに昇格出来たのは、ラキの豪運スキルのおかげだった。 強力なスキルの代償として、口外出来ないというマイナス効果があり、そのせいで、自己弁護の出来ないラキは、裏切られたショックで人間嫌いになってしまう。 そんな彼が出会ったのが、ケモノ族と蔑まれる、狼族の少女ユメだった。 一方、ラキの抜けたパーティはこんなはずでは……という出来事の連続で、崩壊して行くのであった。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

処理中です...