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第38話 現実となったゲーム世界の中で生活保護を求められても困るんですけど③
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「『ああああ』! お、お前っ! 何やってるのぉぉぉぉ! 馬鹿だろっ! お前、馬鹿だろっ!!」
普通に考えてレベル一のFランク冒険者が、中級ダンジョンの野良ボスモンスターに一撃喰らわしたりしねーだろうがぁぁぁぁ!
本当に何考えているのぉぉぉぉ!
もしかして、命名神の逆鱗に触れ、気でも触れた!?
それとも、その呪いの装備『命名神の怒り』の力を過信したの!?
駄目だって、『命名神の怒り』を過信し過ぎたら!
一定時間物理・魔法無効効果しかないから!
お前の攻撃力、レベル一のままだからぁぁぁぁ!
「う、うーん……」
ボルケーノ・ドラゴンの尻尾に横薙ぎされた『ああああ』が茫然とした表情浮かべている。
「あ、あれっ? おかしいな? 俺は確かにボルケーノ・ドラゴンに攻撃をした筈……。それなのになんで……」
「いや、そうだけれども、そんな場合じゃねーからっ! 取り敢えずその場から離れよう? 命を大事にしよっ!? ここに連れて来たの俺だけれどもっ!!」
俺の言葉を聞いた『ああああ』は茫然とした表情を浮かべたまま、ボルケーノ・ドラゴンに視線を向ける。
「あ、あははははっ……」
どうやら『ああああ』は腰を抜かしてしまったらしい。
『命名神の怒り』の効果でダメージは受けていないようだが、冷や汗が凄い。
「って、笑っている場合かぁぁぁぁ!」
咄嗟に『ああああ』の前に出ると、エレメンタルが光りを帯び、ボルケーノ・ドラゴンに会心の一撃を与える。
ボルケーノ・ドラゴンが倒れ行く中、周囲の警護をエレメンタル達に任せると、俺は『ああああ』の前にでる。
「カ、カケル……」
「いや、お前、前に出過ぎっ! レベル一のお前がボスモンスターに一撃入れるとか何考えてるの!?」
『命名神の怒り』がなければ死んでいたよ!?
まあ、俺が呪いの装備を装備させたのが発端だけどさ!
中級ダンジョンに連れてきたのが悪いんだけどさ!
もっとやりようがあるだろうがぁぁぁぁ!
レベル一の冒険者が、中級ダンジョンの野良ボスモンスターに攻撃を加えるとか、普通に自殺行為だよ!
死んじゃうよ!!
「で、でも、なんだか行けると思って……」
「いや、そんなフワッとした考えでボスモンスターに突撃したのっ!?」
『命名神の怒り』の効果は、一定時間物理・魔法無効。
ここでいう一定時間はレベルによってまちまちだ。
因みにレベル一の場合、物理・魔法無効は一分。
ボルケーノ・ドラゴンの尻尾に横薙がれるのが一分以上経っていたら死んでいたかもしれない。
「とりあえず、お前はそこにステイ! シット! まずはレベル上げをするから何もしないで!」
「あ、ああっ、わかった……」
とはいえ、正直不安だ。
また暴走して走り出されては敵わない。
俺は心を鬼にしてモブ・フェンリルバズーカを構えると『ああああ』が何もしない様に、捕縛する魔法の鎖『グレイプニル』弾を放つ。
すると、魔法の鎖『グレイプニル』に縛られた『ああああ』が叫び声を上げた。
「ぎゃああああっ!? 何するんだカケル君!? これじゃあ何もできないじゃないかぁぁぁぁ!」
「えっ?」
何かする気だったの?
今、『わかった』って言ったばかりなのに?
「……いや、何かしなくていいんだよっ! お願いだから余計な事しないでっ!?」
勝手な事をされる前に捕縛する事ができて本当によかった。
これで安心してレベル上げをする事ができる。
俺は効率よくレベルを上げる為、『ああああ』に見えない所で、課金アイテム『レアドロップ倍率+500%』『獲得経験値+500%』『ブースターパック』『モンスターリスポーン』を使用していく。
さて、準備はできた。
後はフェスティバルが始まるのを待つだけだ。
「カ、カケル君っ!? な、何か様子がおかしいよっ??」
「ふふふっ……。中々、感が鋭いじゃないか」
その通りだよ。『モンスターリスポーン』を使用したからね。
流石は四十年間親の脛を齧り続けてきた古参プレイヤーだ。
危険に聡い。
『ああああ』がそう声を上げると俺を起点として地面が円形に赤く染まり、次々とモンスターが湧いてくる。
「さあ、モンスターフェスティバルの始まりだ……」
周囲にリスポーンしたモンスター達が牙を剥きだしにして涎を垂らす。
多分、俺達の事を餌だと思っているのだろう。
しかし、それは間違いだ。
俺にはお前達が経験値の塊に見える。
「ぎゃああああっ!」
「ギシャァァァァ!」
『ああああ』の悲鳴とモンスター達の叫びが木霊する中、俺はエレメンタルに命令する。
「さあ、エレメンタル達よ。モンスターを経験値に変えてしまいなさい」
そう言うと、エレメンタル達に光が灯り、モンスター達の頭上へ移動すると暴虐の嵐が巻き起こる。モンスター達は次々とドロップアイテムと経験値に変わっていき、『モンスターリスポーン』の効果が切れる頃には、『ああああ』のレベルも五十に達していた。
◇◆◇
「……やり過ぎた」
それはもう完全にやり過ぎた。
目の前には、数多のドロップアイテムが散乱している。
すっかり忘れていたが、ゲームが現実となった今、ドロップアイテムを量産できるのは、今の所、俺だけ……(多分)。
『ああああ』も目を見開いて、ドロップアイテムを見つめている。
「カケル君? もしかして俺は夢を見ているのかな? なんだかドロップアイテムが一杯落ちている様に見えるんだけど……」
「そうだね……」
「そ、そうだよね……?」
何度、目を擦っても消えないよ?
何故かはわからないけど、俺と俺のエレメンタルが倒したモンスターは、もれなくドロップアイテムに変わってしまうからね。
「一発、俺を殴ってくれない? なんだか、信じられない光景で……」
「えっ? いいの?」
正直、もの凄く好都合だ。
俺はそっと『ああああ』の目の前に移動すると、鳩尾に打撃を加え昏倒させた。
レベル差があり過ぎて、『ああああ』が白目を剥いているけど、まあ問題ないだろう。
「……ふう。危なかった」
とりあえず、今、あった事は夢だったと、そんな感じで話を進めよう。
『ああああ』が目を覚ます前にドロップアイテムを回収した俺は、『ああああ』を引き摺りながら転移門『ユグドラシル』の前まで行き、セントラル王国に帰還する。
「さて、これから(こいつを)どうするか……」
転移門の前で処遇を決めかねていると、丁度いいタイミングで『ああああ』が目を覚ました。
「うっ……。俺は何を……」
「だ、大丈夫か『ああああ』! 急に倒れるから心配したんだぞ!」
咄嗟の判断で、心の底から心配しているかの様な表情を浮かべる俺。
正直、役者になれると思う。役者は役者でも大根役者かもしれないけど……。
「あれ、俺、さっきまで中級ダンジョンにいた筈じゃあ……。そういえば、大量のドロップアイテムを見たような気が……。あれは夢だったのか?」
俺はため息を吐くと、首を横に振る。
「……何を言っているんだ。お前はな、呪いの装備を付けた瞬間、奇声を上げてボルケーノ・ドラゴンに突撃し、そのまま気を失ったんじゃないか。もしかして覚えていないのか?」
「俺がボルケーノ・ドラゴンに……。でも、『命名神の怒り』の効果で相殺した筈じゃ……」
そんな事を言う『ああああ』の肩に、俺はできるだけ心配そうな表情を浮かべるよう心がけながら手を置いた。
「お前さ、疲れてるんだよ……」
「ええっ!?」
「ほら、お前、ボルケーノ・ドラゴンに突撃した所までは覚えているんだろ? 無理もないって、ストレス溜まるよな。レベル一で中級ダンジョンに連れて行かれたんだ。悪かったって、これで何か旨いもんでも食べろよ」
そう言って俺は、アイテムストレージから取り出した一万コルを手渡す。
「えっ? これ、貰っていいの?」
「ああ、勿論さ。それに今のお前のレベルは五十。これなら初級ダンジョン位なら楽勝だろ?」
「えっ? ああ、確かに初級ダンジョン位なら……」
「そうかそうか。それは良かった! 俺、心配だったんだよ。大事な知人の一人である『ああああ』がこの世界でも引き篭もりになりやしないかってさ。でも、これなら安心だ。それにお前には『命名神の怒り』がある。これがあれば、ダンジョンに入ってから最低五十分間は安全に探索する事ができる。レベルを上げれば、その内、一人でも中級ダンジョンに入れるようになるさ!」
『ああああ』の肩を軽く叩きながらそう言うと、一切の有無を言わせず俺は笑顔を浮かべ、言葉を続ける。
「それじゃあ、俺はこれからやる事があるからさ、後は頑張って! カイルの奴もFランク冒険者を卒業できそうな位強くなってるみたいだから、今度、一緒に中級ダンジョンでも探索してこいよ! それじゃあ、俺、そろそろ行くから」
「あ、ああ、うん。そうだね? 確かに俺、夢を見ていたのかも……。そ、それじゃあ、またな!」
「ああ、それじゃあな!」
笑顔を浮かべながら手を振り返すと、俺は『微睡の宿』に向けて歩き始めた。
「いや~。反省したわ。俺、今度から一人でダンジョンに入ろ……」
正直、面倒事はご免である。
『ああああ』は、奴が俺の想像を上回るほどの馬鹿だったから何とかなったが、あれが他のプレイヤーとかだったらヤバかった。
俺がモンスターを倒してドロップアイテムを手に入れる事は秘密にしなければ……。
となると、当面は冒険者の寄り付かない上級ダンジョンを探索するか。
うん。なんだかそれがいい気がする。
「お久しぶりですねぇ。元気にしておりましたか?」
『微睡の宿』に向かう途中、まるで宇宙人の様な恰好をした人に話しかけられた。
知らない人だ。
こんな気味の悪い人初めてみた。
とはいえ、そんな事は言えない。
もし万が一、知り合いだったら大変な事になるからだ。
だからこそ、俺は、知り合いに話すかの様な口調で君の悪い人に話を合せる事にした。
「あ、ああ、お久しぶりです。元気にしておりましたか?」
「え? ええっ……。あなたこそ元気の様ですね? それより、なんです? その口調?? 以前はもっと横暴な喋り方だった様な気がするのですが……」
そんな事は決まっている。
あなたが誰だかわからない為だ。
『あなた……。どちら様です?』と聞くのも失礼だし、万が一、高貴な御方であれば口答え一つで処罰される可能性も否めない。
事の推移を見守っていると、宇宙人の様な恰好をした人が話しかけてきた。
普通に考えてレベル一のFランク冒険者が、中級ダンジョンの野良ボスモンスターに一撃喰らわしたりしねーだろうがぁぁぁぁ!
本当に何考えているのぉぉぉぉ!
もしかして、命名神の逆鱗に触れ、気でも触れた!?
それとも、その呪いの装備『命名神の怒り』の力を過信したの!?
駄目だって、『命名神の怒り』を過信し過ぎたら!
一定時間物理・魔法無効効果しかないから!
お前の攻撃力、レベル一のままだからぁぁぁぁ!
「う、うーん……」
ボルケーノ・ドラゴンの尻尾に横薙ぎされた『ああああ』が茫然とした表情浮かべている。
「あ、あれっ? おかしいな? 俺は確かにボルケーノ・ドラゴンに攻撃をした筈……。それなのになんで……」
「いや、そうだけれども、そんな場合じゃねーからっ! 取り敢えずその場から離れよう? 命を大事にしよっ!? ここに連れて来たの俺だけれどもっ!!」
俺の言葉を聞いた『ああああ』は茫然とした表情を浮かべたまま、ボルケーノ・ドラゴンに視線を向ける。
「あ、あははははっ……」
どうやら『ああああ』は腰を抜かしてしまったらしい。
『命名神の怒り』の効果でダメージは受けていないようだが、冷や汗が凄い。
「って、笑っている場合かぁぁぁぁ!」
咄嗟に『ああああ』の前に出ると、エレメンタルが光りを帯び、ボルケーノ・ドラゴンに会心の一撃を与える。
ボルケーノ・ドラゴンが倒れ行く中、周囲の警護をエレメンタル達に任せると、俺は『ああああ』の前にでる。
「カ、カケル……」
「いや、お前、前に出過ぎっ! レベル一のお前がボスモンスターに一撃入れるとか何考えてるの!?」
『命名神の怒り』がなければ死んでいたよ!?
まあ、俺が呪いの装備を装備させたのが発端だけどさ!
中級ダンジョンに連れてきたのが悪いんだけどさ!
もっとやりようがあるだろうがぁぁぁぁ!
レベル一の冒険者が、中級ダンジョンの野良ボスモンスターに攻撃を加えるとか、普通に自殺行為だよ!
死んじゃうよ!!
「で、でも、なんだか行けると思って……」
「いや、そんなフワッとした考えでボスモンスターに突撃したのっ!?」
『命名神の怒り』の効果は、一定時間物理・魔法無効。
ここでいう一定時間はレベルによってまちまちだ。
因みにレベル一の場合、物理・魔法無効は一分。
ボルケーノ・ドラゴンの尻尾に横薙がれるのが一分以上経っていたら死んでいたかもしれない。
「とりあえず、お前はそこにステイ! シット! まずはレベル上げをするから何もしないで!」
「あ、ああっ、わかった……」
とはいえ、正直不安だ。
また暴走して走り出されては敵わない。
俺は心を鬼にしてモブ・フェンリルバズーカを構えると『ああああ』が何もしない様に、捕縛する魔法の鎖『グレイプニル』弾を放つ。
すると、魔法の鎖『グレイプニル』に縛られた『ああああ』が叫び声を上げた。
「ぎゃああああっ!? 何するんだカケル君!? これじゃあ何もできないじゃないかぁぁぁぁ!」
「えっ?」
何かする気だったの?
今、『わかった』って言ったばかりなのに?
「……いや、何かしなくていいんだよっ! お願いだから余計な事しないでっ!?」
勝手な事をされる前に捕縛する事ができて本当によかった。
これで安心してレベル上げをする事ができる。
俺は効率よくレベルを上げる為、『ああああ』に見えない所で、課金アイテム『レアドロップ倍率+500%』『獲得経験値+500%』『ブースターパック』『モンスターリスポーン』を使用していく。
さて、準備はできた。
後はフェスティバルが始まるのを待つだけだ。
「カ、カケル君っ!? な、何か様子がおかしいよっ??」
「ふふふっ……。中々、感が鋭いじゃないか」
その通りだよ。『モンスターリスポーン』を使用したからね。
流石は四十年間親の脛を齧り続けてきた古参プレイヤーだ。
危険に聡い。
『ああああ』がそう声を上げると俺を起点として地面が円形に赤く染まり、次々とモンスターが湧いてくる。
「さあ、モンスターフェスティバルの始まりだ……」
周囲にリスポーンしたモンスター達が牙を剥きだしにして涎を垂らす。
多分、俺達の事を餌だと思っているのだろう。
しかし、それは間違いだ。
俺にはお前達が経験値の塊に見える。
「ぎゃああああっ!」
「ギシャァァァァ!」
『ああああ』の悲鳴とモンスター達の叫びが木霊する中、俺はエレメンタルに命令する。
「さあ、エレメンタル達よ。モンスターを経験値に変えてしまいなさい」
そう言うと、エレメンタル達に光が灯り、モンスター達の頭上へ移動すると暴虐の嵐が巻き起こる。モンスター達は次々とドロップアイテムと経験値に変わっていき、『モンスターリスポーン』の効果が切れる頃には、『ああああ』のレベルも五十に達していた。
◇◆◇
「……やり過ぎた」
それはもう完全にやり過ぎた。
目の前には、数多のドロップアイテムが散乱している。
すっかり忘れていたが、ゲームが現実となった今、ドロップアイテムを量産できるのは、今の所、俺だけ……(多分)。
『ああああ』も目を見開いて、ドロップアイテムを見つめている。
「カケル君? もしかして俺は夢を見ているのかな? なんだかドロップアイテムが一杯落ちている様に見えるんだけど……」
「そうだね……」
「そ、そうだよね……?」
何度、目を擦っても消えないよ?
何故かはわからないけど、俺と俺のエレメンタルが倒したモンスターは、もれなくドロップアイテムに変わってしまうからね。
「一発、俺を殴ってくれない? なんだか、信じられない光景で……」
「えっ? いいの?」
正直、もの凄く好都合だ。
俺はそっと『ああああ』の目の前に移動すると、鳩尾に打撃を加え昏倒させた。
レベル差があり過ぎて、『ああああ』が白目を剥いているけど、まあ問題ないだろう。
「……ふう。危なかった」
とりあえず、今、あった事は夢だったと、そんな感じで話を進めよう。
『ああああ』が目を覚ます前にドロップアイテムを回収した俺は、『ああああ』を引き摺りながら転移門『ユグドラシル』の前まで行き、セントラル王国に帰還する。
「さて、これから(こいつを)どうするか……」
転移門の前で処遇を決めかねていると、丁度いいタイミングで『ああああ』が目を覚ました。
「うっ……。俺は何を……」
「だ、大丈夫か『ああああ』! 急に倒れるから心配したんだぞ!」
咄嗟の判断で、心の底から心配しているかの様な表情を浮かべる俺。
正直、役者になれると思う。役者は役者でも大根役者かもしれないけど……。
「あれ、俺、さっきまで中級ダンジョンにいた筈じゃあ……。そういえば、大量のドロップアイテムを見たような気が……。あれは夢だったのか?」
俺はため息を吐くと、首を横に振る。
「……何を言っているんだ。お前はな、呪いの装備を付けた瞬間、奇声を上げてボルケーノ・ドラゴンに突撃し、そのまま気を失ったんじゃないか。もしかして覚えていないのか?」
「俺がボルケーノ・ドラゴンに……。でも、『命名神の怒り』の効果で相殺した筈じゃ……」
そんな事を言う『ああああ』の肩に、俺はできるだけ心配そうな表情を浮かべるよう心がけながら手を置いた。
「お前さ、疲れてるんだよ……」
「ええっ!?」
「ほら、お前、ボルケーノ・ドラゴンに突撃した所までは覚えているんだろ? 無理もないって、ストレス溜まるよな。レベル一で中級ダンジョンに連れて行かれたんだ。悪かったって、これで何か旨いもんでも食べろよ」
そう言って俺は、アイテムストレージから取り出した一万コルを手渡す。
「えっ? これ、貰っていいの?」
「ああ、勿論さ。それに今のお前のレベルは五十。これなら初級ダンジョン位なら楽勝だろ?」
「えっ? ああ、確かに初級ダンジョン位なら……」
「そうかそうか。それは良かった! 俺、心配だったんだよ。大事な知人の一人である『ああああ』がこの世界でも引き篭もりになりやしないかってさ。でも、これなら安心だ。それにお前には『命名神の怒り』がある。これがあれば、ダンジョンに入ってから最低五十分間は安全に探索する事ができる。レベルを上げれば、その内、一人でも中級ダンジョンに入れるようになるさ!」
『ああああ』の肩を軽く叩きながらそう言うと、一切の有無を言わせず俺は笑顔を浮かべ、言葉を続ける。
「それじゃあ、俺はこれからやる事があるからさ、後は頑張って! カイルの奴もFランク冒険者を卒業できそうな位強くなってるみたいだから、今度、一緒に中級ダンジョンでも探索してこいよ! それじゃあ、俺、そろそろ行くから」
「あ、ああ、うん。そうだね? 確かに俺、夢を見ていたのかも……。そ、それじゃあ、またな!」
「ああ、それじゃあな!」
笑顔を浮かべながら手を振り返すと、俺は『微睡の宿』に向けて歩き始めた。
「いや~。反省したわ。俺、今度から一人でダンジョンに入ろ……」
正直、面倒事はご免である。
『ああああ』は、奴が俺の想像を上回るほどの馬鹿だったから何とかなったが、あれが他のプレイヤーとかだったらヤバかった。
俺がモンスターを倒してドロップアイテムを手に入れる事は秘密にしなければ……。
となると、当面は冒険者の寄り付かない上級ダンジョンを探索するか。
うん。なんだかそれがいい気がする。
「お久しぶりですねぇ。元気にしておりましたか?」
『微睡の宿』に向かう途中、まるで宇宙人の様な恰好をした人に話しかけられた。
知らない人だ。
こんな気味の悪い人初めてみた。
とはいえ、そんな事は言えない。
もし万が一、知り合いだったら大変な事になるからだ。
だからこそ、俺は、知り合いに話すかの様な口調で君の悪い人に話を合せる事にした。
「あ、ああ、お久しぶりです。元気にしておりましたか?」
「え? ええっ……。あなたこそ元気の様ですね? それより、なんです? その口調?? 以前はもっと横暴な喋り方だった様な気がするのですが……」
そんな事は決まっている。
あなたが誰だかわからない為だ。
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