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第37話 現実となったゲーム世界の中で生活保護を求められても困るんですけど②
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「あれ? もしかしてカケル君……。生活保護制度を知らないのかい?」
「えっ?」
いや、知ってますけど?
えっ? 五体満足で働く事のできる引き篭もりが、なんでそんな偉そうに生活保護制度について語ってるのだろうか?
ヤバい。混乱してきた。なんだか俺の精神がゲシュタルト崩壊しそうだ。
引き続き唖然とした表情を浮かべ続けていると、『ああああ』はヤレヤレといった感じに首を横に振る。
「カケル君は不勉強だな。俺は四十年間、親の脛を齧り続けてきた男……。その位の情報を知っていないと、親に見限られるか、いなくなった時に対処できないよ?」
……いや、まあそうだろうね?
齧る脛が無くなったら、そりゃあそうなるだろうね??
あれ、なんだかおかしいな。
俺の思考回路がおかしいのだろうか?
なんでそんな事を自信満々に言ってるの??
普通に考えてクズ発言なんですけれども??
それとも俺の考え方がおかしいの??
唖然を通り越して呆然とした表情を浮かべていると、『ああああ』が俺の顔を覗き込んでくる。
「呆然とした表情なんか浮かべちゃって、どうかしたのか? もしかして本当に生活保護制度、知らなかった?」
「……いや、ゲームの世界に何を求めてるの? DWの世界に生活保護なんて概念ある訳ないだろ?」
考えればわかる筈だ。
ゲームの世界に生活保護。
夢も希望もありゃしない。
「え、ええっ!?」
俺がそう指摘すると、『ああああ』は一転、愕然とした表情を浮かべた。
えっ? 何その表情。まさかこの世界に本気で生活保護制度があるとでも思っていたのだろうか?
『ああああ』は、ふらふらしながら膝をつくと、両手も地面に付けて項垂れる。
「な、なんだって……。それじゃあ、俺はどうやって生活すればいいんだ……」
「いや、普通に働きなさいよ……」
何言ってるんだこいつ?
頭でもおかしいのだろうか?
そんな事を思いながら呆れ顔を浮かべていると、『ああああ』が声を荒げる。
「な、何を言ってるんだ! 俺は親がいたからこそ、これまで生きてこれたんだぞ! とてもじゃないが俺、一人じゃ生きていけない!」
「い、いや、それ、誇らしくいう事じゃないよ!?」
何を言っているんだ。この脛齧り。
常軌を逸している。どうかしているとしか思えない。
完全に精神を病んでいる。
「じ、じゃあ、俺はどう生活したら……。寄生する人が……。寄生する人がいないと、俺は……。俺は……」
呟く様にそう言うと、『ああああ』は俺に視線を向けてくる。
縋る様な目付きが怖い。
まるで寄生虫の様だ。
……いや、虫じゃないから寄生獣かな?
「まあ、なんだ……。強く生きてくれ……」
そう言って、『ああああ』の肩を軽く叩くと、『ああああ』が物理的に縋りつこうとしてくる。
「ち、ちょっと待って! あっ……」
それを俺は華麗なバックステップで回避すると、絶望した表情を浮かべる『ああああ』に向かって後ろを振り向きながら手を振った。
「それじゃあ、『ああああ』。束の間の幸せを楽しんでくれ。百万コル。大切に使えよ」
「カ、カケルくぅぅぅぅん~!」
しかし、俺は『ああああ』の事を舐めていた。奴は四十年間に渡り親の脛を齧り続けゲームばかりしていたどうしようもない男。
命の危機を明確に認識した寄生獣『ああああ』は俊足で俺の足にしがみついてくる。
「ガ、ガケルぐん~! 俺を見捨てないでくれよぉぉぉぉ!」
「くっ! 離せっ!」
縋りつく力が強い。
流石は四十年間親の脛を齧り続けた男。
寄生先への執着が強い。
「俺には、脛齧りを飼育する趣味なんてないんだよ! つーか、働け! 狩りに出ろ! ダンジョンに行けば金になるモンスターが一杯いるぞ!」
「俺に死ねって言うのか!」
「いや、そんな事、言ってねーだろっ! レベル二十になるまでの間、冒険者協会が引率の冒険者を派遣してくれるらしいぞ。さっきの奴らがそうだったんじゃないの!?」
そう言うと、『ああああ』の表情が歪む。
「だ、だったら、カケル君がダンジョンについて来てくれよ!」
「はあっ!?」
いや、なんでだよ。
脛齧りのお守りなんて普通に嫌だよ。
そう言って断ろうとすると、『ああああ』がより強く縋り付いてくる。
「お、俺達、同じ穴の狢だろっ!」
「嫌な事、言うんじゃねーよ!」
同じ穴の狢。
一見関係がないようでも実は同類・仲間である事の例えである。
失礼な事を言うんじゃないよ。
俺とお前が同類?
そんな筈ないだろ。俺とお前を一緒にするなと言いたい。
飛ばない豚はただの豚。
人に縋り自分の力で立とうとしない脛齧りは、一生脛齧りのままである。
「ううっ、それじゃあ、俺はどうしたらいいんだ……」
仕方のない奴だ。
なんだか哀れに見えてきた。
今回だけ……。今回だけ手伝ってやるか……。
要はこいつが一人でも働き(ダンジョン)に行ける様にしてやれば問題は解決する。
「……今回だけだ。四十秒で支度しな……。だた、俺の命令には絶対に従って貰うよ」
「えっ?」
そう言うと、『ああああ』は呆けた表情を浮かべた。
「グズは嫌いだよ。これからダンジョンに向かう。呆けてないで、さっさと立ち上がりな!」
「えっ、ええっ……」
そう言って、戸惑う『ああああ』を無理やり立たせると、首根っこを掴み、グズる『ああああ』と共にダンジョンへ向かう事にした。
◇◆◇
「こ、ここは……」
「うん? ここがどこかって? そんな事、決まっているだろ。中級ダンジョン『ボルケーノケイブ』だよ」
今、俺達がいる場所。
それは広大な火山洞窟ダンジョン『ボルケーノケイブ』。
レベルが初期化された『ああああ』には、少し厳しいダンジョンである。
何故、そんなダンジョンを選んだのか。
それは『ああああ』のレベルを効率よく上げる為である。
俺も暇じゃない。こういう類の事はさっさと済ませるに限る。
「な、なんで……!? ボルケーノケイブは中級ダンジョン。今の俺じゃあ死んじゃうって!」
「ダイジョーブ。ダイジョーブヨ。アタナハ今ノ自分ニ不満デスネ? デモ、モウダイジョーブ! アナタヲぱわーあっぷシテアゲマショー!」
「な、なんでパ〇プロっ!? どこのダイジョーブ博士っ!?」
『ああああ』のツッコミを華麗にスルーし、アイテムストレージから呪いの装備を吟味していく。
「安心シテクダサーイ。『科学ノ進歩ニ犠牲ハツキモノデース』ニナラナイヨウ、頑張リマース!」
「いや、全然、安心できないんだけど!?」
「ワタシガ、ダイジョーブト言エバダイジョーブナノデース。ソレデハイキマスヨ」
「ち、ちょっ……。カケル君! 何をっ!?」
俺はモブ・フェンリルバズーカを『ああああ』に向けると、『ああああ』が逃げられない様に、捕縛する魔法の鎖『グレイプニル』弾を放つ。
そして、動けない『ああああ』に呪いの装備を持たせると、グレイプニルから解放した。
「ダイジョーブ。ダイジョーブヨ! タダ呪イノ装備ヲ、装備シテ貰ウダケダカラ! 新シイ自分ガ待ッテルヨ!」
「い、いやあぁぁぁぁ!」
叫び声を上げる『ああああ』に呪いの装備を手渡すと、呪いの装備が纏っていた黒い謎の物質が『ああああ』の身体に吸収されていく。
すると、グレイプニルに縛られて動けない筈の『ああああ』がむくりと、上半身を上げた。
「あれ? 俺こんなとこで何をやってたんだろ? 何かひどいことされた気がするけど……。ダンジョンへ帰ろーっと」
そう言うと、呪いの装備を片手に付けたまま立ち上がると、武器を持ったまま火山洞窟ダンジョン『ボルケーノケイブ』に駆けていった。
「オオ! 完璧ニ成功シタノデース。医学ガマタ一歩前進シタ瞬間デース……。なんて、言ってる場合じゃない!」
俺は突然駆け出した『ああああ』を追いかけ駆け出した。
「ち、ちょっと待って! 駄目だって、勝手にダンジョンに入ったらっ!」
「あははははっ!!!」
尋常じゃない笑い方だ。
まさか、呪いの装備にこんな効果があったとは……。
予想外である。
カイルの件があったから、なんとなく上手くいくと思っていたんだけど、完全に予想を外してしまったらしい。
『ああああ』に渡したのは、DWのコラボ装備『命名神の怒り』。
『ああああ』とか『いいいい』とか『うううう』とかいうふざけた名前を付けた奴に対して加護を与える。限られたプレイヤーに対する呪いの装備である。
加護を与えている時点で呪いのアイテムなのかどうなのかは不明だが、DWでは呪いのアイテムに該当されている。
そのアイテムの力は、次の通り。
一定時間物理・魔法無効。
ただし、呪われている為、一生、名前を変える事ができず、名前を一文字でも変えた場合、ステータスが初期化される呪いにかかってる。
また、命名神に嫌われている為、教会での回復は完全に無効化される。
回復薬を飲んでも、少しだけしか回復できないというデメリットもある。
悪ふざけで作られた呪いの装備も、いつか、ゲーム作成陣の神経が元に戻り、アップデートでマイナス補正してくれるかと思いきや、結局、その最強装備はそのまま有料配信される事となった。
勿論、配信して翌日、SNSとニュースサイトが荒れ叩かれまくった結果、緊急メンテナンスが入りこの呪いの装備は削除されたと思われていたが、ちゃんとマイルームに格納されていた様だ。
「凄い! 力が漲ってくる! これが呪いの装備の力か!」
「い、いや、そうだけど待って! お前、現状、レベル一なんだよっ!? その事分かってる!??」
『命名神の怒り』の効果は一定時間物理・魔法無効。
ただそれだけである。
『ああああ』はオーディンの力により、ステータスが初期化されているから、中級ダンジョンのモンスターに攻撃を加えても多分ダメージは与えられない。
「わかっている。わかっているさ! でも、今の俺ならやれそうな気がする。くらえ! 会心の一撃!」
『ああああ』は手に持っていた剣を振り上げると、モンスターに向かって力を込めて振り下ろす。
すると『バキッ!』と音を立てて、剣が折れた。
『ああああ』に攻撃された火山洞窟ダンジョン『ボルケーノケイブ』に出現する野良ボスモンスター『ボルケーノ・ドラゴン』は後ろを振り向くと、邪魔と言わんばかりに『ああああ』の事を尻尾で薙いだ。
「えっ?」
いや、知ってますけど?
えっ? 五体満足で働く事のできる引き篭もりが、なんでそんな偉そうに生活保護制度について語ってるのだろうか?
ヤバい。混乱してきた。なんだか俺の精神がゲシュタルト崩壊しそうだ。
引き続き唖然とした表情を浮かべ続けていると、『ああああ』はヤレヤレといった感じに首を横に振る。
「カケル君は不勉強だな。俺は四十年間、親の脛を齧り続けてきた男……。その位の情報を知っていないと、親に見限られるか、いなくなった時に対処できないよ?」
……いや、まあそうだろうね?
齧る脛が無くなったら、そりゃあそうなるだろうね??
あれ、なんだかおかしいな。
俺の思考回路がおかしいのだろうか?
なんでそんな事を自信満々に言ってるの??
普通に考えてクズ発言なんですけれども??
それとも俺の考え方がおかしいの??
唖然を通り越して呆然とした表情を浮かべていると、『ああああ』が俺の顔を覗き込んでくる。
「呆然とした表情なんか浮かべちゃって、どうかしたのか? もしかして本当に生活保護制度、知らなかった?」
「……いや、ゲームの世界に何を求めてるの? DWの世界に生活保護なんて概念ある訳ないだろ?」
考えればわかる筈だ。
ゲームの世界に生活保護。
夢も希望もありゃしない。
「え、ええっ!?」
俺がそう指摘すると、『ああああ』は一転、愕然とした表情を浮かべた。
えっ? 何その表情。まさかこの世界に本気で生活保護制度があるとでも思っていたのだろうか?
『ああああ』は、ふらふらしながら膝をつくと、両手も地面に付けて項垂れる。
「な、なんだって……。それじゃあ、俺はどうやって生活すればいいんだ……」
「いや、普通に働きなさいよ……」
何言ってるんだこいつ?
頭でもおかしいのだろうか?
そんな事を思いながら呆れ顔を浮かべていると、『ああああ』が声を荒げる。
「な、何を言ってるんだ! 俺は親がいたからこそ、これまで生きてこれたんだぞ! とてもじゃないが俺、一人じゃ生きていけない!」
「い、いや、それ、誇らしくいう事じゃないよ!?」
何を言っているんだ。この脛齧り。
常軌を逸している。どうかしているとしか思えない。
完全に精神を病んでいる。
「じ、じゃあ、俺はどう生活したら……。寄生する人が……。寄生する人がいないと、俺は……。俺は……」
呟く様にそう言うと、『ああああ』は俺に視線を向けてくる。
縋る様な目付きが怖い。
まるで寄生虫の様だ。
……いや、虫じゃないから寄生獣かな?
「まあ、なんだ……。強く生きてくれ……」
そう言って、『ああああ』の肩を軽く叩くと、『ああああ』が物理的に縋りつこうとしてくる。
「ち、ちょっと待って! あっ……」
それを俺は華麗なバックステップで回避すると、絶望した表情を浮かべる『ああああ』に向かって後ろを振り向きながら手を振った。
「それじゃあ、『ああああ』。束の間の幸せを楽しんでくれ。百万コル。大切に使えよ」
「カ、カケルくぅぅぅぅん~!」
しかし、俺は『ああああ』の事を舐めていた。奴は四十年間に渡り親の脛を齧り続けゲームばかりしていたどうしようもない男。
命の危機を明確に認識した寄生獣『ああああ』は俊足で俺の足にしがみついてくる。
「ガ、ガケルぐん~! 俺を見捨てないでくれよぉぉぉぉ!」
「くっ! 離せっ!」
縋りつく力が強い。
流石は四十年間親の脛を齧り続けた男。
寄生先への執着が強い。
「俺には、脛齧りを飼育する趣味なんてないんだよ! つーか、働け! 狩りに出ろ! ダンジョンに行けば金になるモンスターが一杯いるぞ!」
「俺に死ねって言うのか!」
「いや、そんな事、言ってねーだろっ! レベル二十になるまでの間、冒険者協会が引率の冒険者を派遣してくれるらしいぞ。さっきの奴らがそうだったんじゃないの!?」
そう言うと、『ああああ』の表情が歪む。
「だ、だったら、カケル君がダンジョンについて来てくれよ!」
「はあっ!?」
いや、なんでだよ。
脛齧りのお守りなんて普通に嫌だよ。
そう言って断ろうとすると、『ああああ』がより強く縋り付いてくる。
「お、俺達、同じ穴の狢だろっ!」
「嫌な事、言うんじゃねーよ!」
同じ穴の狢。
一見関係がないようでも実は同類・仲間である事の例えである。
失礼な事を言うんじゃないよ。
俺とお前が同類?
そんな筈ないだろ。俺とお前を一緒にするなと言いたい。
飛ばない豚はただの豚。
人に縋り自分の力で立とうとしない脛齧りは、一生脛齧りのままである。
「ううっ、それじゃあ、俺はどうしたらいいんだ……」
仕方のない奴だ。
なんだか哀れに見えてきた。
今回だけ……。今回だけ手伝ってやるか……。
要はこいつが一人でも働き(ダンジョン)に行ける様にしてやれば問題は解決する。
「……今回だけだ。四十秒で支度しな……。だた、俺の命令には絶対に従って貰うよ」
「えっ?」
そう言うと、『ああああ』は呆けた表情を浮かべた。
「グズは嫌いだよ。これからダンジョンに向かう。呆けてないで、さっさと立ち上がりな!」
「えっ、ええっ……」
そう言って、戸惑う『ああああ』を無理やり立たせると、首根っこを掴み、グズる『ああああ』と共にダンジョンへ向かう事にした。
◇◆◇
「こ、ここは……」
「うん? ここがどこかって? そんな事、決まっているだろ。中級ダンジョン『ボルケーノケイブ』だよ」
今、俺達がいる場所。
それは広大な火山洞窟ダンジョン『ボルケーノケイブ』。
レベルが初期化された『ああああ』には、少し厳しいダンジョンである。
何故、そんなダンジョンを選んだのか。
それは『ああああ』のレベルを効率よく上げる為である。
俺も暇じゃない。こういう類の事はさっさと済ませるに限る。
「な、なんで……!? ボルケーノケイブは中級ダンジョン。今の俺じゃあ死んじゃうって!」
「ダイジョーブ。ダイジョーブヨ。アタナハ今ノ自分ニ不満デスネ? デモ、モウダイジョーブ! アナタヲぱわーあっぷシテアゲマショー!」
「な、なんでパ〇プロっ!? どこのダイジョーブ博士っ!?」
『ああああ』のツッコミを華麗にスルーし、アイテムストレージから呪いの装備を吟味していく。
「安心シテクダサーイ。『科学ノ進歩ニ犠牲ハツキモノデース』ニナラナイヨウ、頑張リマース!」
「いや、全然、安心できないんだけど!?」
「ワタシガ、ダイジョーブト言エバダイジョーブナノデース。ソレデハイキマスヨ」
「ち、ちょっ……。カケル君! 何をっ!?」
俺はモブ・フェンリルバズーカを『ああああ』に向けると、『ああああ』が逃げられない様に、捕縛する魔法の鎖『グレイプニル』弾を放つ。
そして、動けない『ああああ』に呪いの装備を持たせると、グレイプニルから解放した。
「ダイジョーブ。ダイジョーブヨ! タダ呪イノ装備ヲ、装備シテ貰ウダケダカラ! 新シイ自分ガ待ッテルヨ!」
「い、いやあぁぁぁぁ!」
叫び声を上げる『ああああ』に呪いの装備を手渡すと、呪いの装備が纏っていた黒い謎の物質が『ああああ』の身体に吸収されていく。
すると、グレイプニルに縛られて動けない筈の『ああああ』がむくりと、上半身を上げた。
「あれ? 俺こんなとこで何をやってたんだろ? 何かひどいことされた気がするけど……。ダンジョンへ帰ろーっと」
そう言うと、呪いの装備を片手に付けたまま立ち上がると、武器を持ったまま火山洞窟ダンジョン『ボルケーノケイブ』に駆けていった。
「オオ! 完璧ニ成功シタノデース。医学ガマタ一歩前進シタ瞬間デース……。なんて、言ってる場合じゃない!」
俺は突然駆け出した『ああああ』を追いかけ駆け出した。
「ち、ちょっと待って! 駄目だって、勝手にダンジョンに入ったらっ!」
「あははははっ!!!」
尋常じゃない笑い方だ。
まさか、呪いの装備にこんな効果があったとは……。
予想外である。
カイルの件があったから、なんとなく上手くいくと思っていたんだけど、完全に予想を外してしまったらしい。
『ああああ』に渡したのは、DWのコラボ装備『命名神の怒り』。
『ああああ』とか『いいいい』とか『うううう』とかいうふざけた名前を付けた奴に対して加護を与える。限られたプレイヤーに対する呪いの装備である。
加護を与えている時点で呪いのアイテムなのかどうなのかは不明だが、DWでは呪いのアイテムに該当されている。
そのアイテムの力は、次の通り。
一定時間物理・魔法無効。
ただし、呪われている為、一生、名前を変える事ができず、名前を一文字でも変えた場合、ステータスが初期化される呪いにかかってる。
また、命名神に嫌われている為、教会での回復は完全に無効化される。
回復薬を飲んでも、少しだけしか回復できないというデメリットもある。
悪ふざけで作られた呪いの装備も、いつか、ゲーム作成陣の神経が元に戻り、アップデートでマイナス補正してくれるかと思いきや、結局、その最強装備はそのまま有料配信される事となった。
勿論、配信して翌日、SNSとニュースサイトが荒れ叩かれまくった結果、緊急メンテナンスが入りこの呪いの装備は削除されたと思われていたが、ちゃんとマイルームに格納されていた様だ。
「凄い! 力が漲ってくる! これが呪いの装備の力か!」
「い、いや、そうだけど待って! お前、現状、レベル一なんだよっ!? その事分かってる!??」
『命名神の怒り』の効果は一定時間物理・魔法無効。
ただそれだけである。
『ああああ』はオーディンの力により、ステータスが初期化されているから、中級ダンジョンのモンスターに攻撃を加えても多分ダメージは与えられない。
「わかっている。わかっているさ! でも、今の俺ならやれそうな気がする。くらえ! 会心の一撃!」
『ああああ』は手に持っていた剣を振り上げると、モンスターに向かって力を込めて振り下ろす。
すると『バキッ!』と音を立てて、剣が折れた。
『ああああ』に攻撃された火山洞窟ダンジョン『ボルケーノケイブ』に出現する野良ボスモンスター『ボルケーノ・ドラゴン』は後ろを振り向くと、邪魔と言わんばかりに『ああああ』の事を尻尾で薙いだ。
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