26 / 381
第26話 冒険者ランク見直し―崩れ落ちるカイル―
しおりを挟む
「おおっ! やっぱりカケルじゃないか! なんだ? もしかして、お前も依頼を受けにきたのか?」
いや、違いますけど?
依頼を受けに来たのではなく依頼を出す方です。君と一緒にしないで欲しい。
しかし、俺は空気の読める男。そんな事は口にしない。
「まあ、そんな所だよ。それよりカイル。どうしたんだ。その水ぼらしい恰好は? 自慢の課金装備はどうした?」
カイルの課金装備は、ブラックシリーズと呼ばれる全てを黒で揃えた漆黒の魔法使い装備。課金装備というだけあって火力が高く。マントや手袋には、厨二心が疼く魔法陣のような刺繍が入れられている。
性能はいいが、俺にはレベルの高すぎる至極の装備だ。
とても恥ずかしくて装備できない。
恐らく、その恥ずかしさに耐える事ができる者のみに力を与える。そんな課金装備なのだろうと俺は考えている。
「ああ、あれか? あれは……」
「うん。あれは?」
なんだか歯切れが悪い。
一体、どうしたというのだろうか?
そんな事を考えているとカイルが盛大にため息を吐いた。
「実は金に困って売ってしまったんだ……」
「はあっ? マジでか!?」
金に困って売っちゃったの!?
この世界が現実となった今、課金装備を買う事ができないかもしれないのに?
もうこの世界にユグドラシルショップないんだよ!?
っていうか、カイル。お前、コツコツとログインボーナスを貰って、初級ダンジョンで回復薬を集めまくったから十年位は何もしなくても生活できそうとか言ってなかった!?
あれからまだ二日しか経っていないんですけど!?
「いや、実は今、カジノにハマっていて……。気付いた時には、全財産を失っていたんだ……」
「おいおい……」
想像以上にどうしようもなくて、阿保らしい理由で全財産を失っていた。
ある意味凄いな。
まさか、数日前は十年位何もしなくても生活できると言っていた男が、一瞬にして全財産を摩るなんて……。
「……それで、仕方がなく冒険者協会からの依頼を受けようと思っていたんだけど、依頼を受けようにも受け付けてくれないんだ! こっちは今すぐにでも金が欲しいのによ! なあ、カケル。お前も一緒に冒険者協会に抗議しようぜ? お前も金が欲しいだろ?」
「抗議って、お前……」
なんて抗議するの?
レベル一のSランク冒険者にもできる依頼を寄越せとでも言うつもりか?
多分、事の発端はお前達が『冒険者の証』を冒険者協会の職員に提示したからだよ?
その事が知れ渡れば、間違いなく袋叩きにされるよ!?
「大丈夫だって、ほら、よく言うだろ? 赤信号みんなで渡れば怖くないってさ?」
「いや、普通に怖いよ!?」
みんなじゃなくて二人だからね?
俺とお前の二人だからね!?
お前に至っては戦力外だから!
多分、何の役にも立たないから!
というより、なんでレベル一のSランク冒険者であるお前が堂々と冒険者協会に抗議できるの!? しちゃダメだろ! 現在進行形で一番困っているのは恐らくその冒険者協会だよ?
もうお前、胆力がSランクだよ!
「お前なぁ……。態々、依頼なんか受けなくても、モンスターの素材なら買い取って貰えるだろ? まずはそっちで頑張れよ」
俺がそうアドバイスをすると、カイルは信じられないといった表情を浮かべた。
「……お前、何を言ってるんだ? そんなんじゃ端金しか手に入らないじゃないか……。仮にもSランクである俺に低級冒険者の真似事をしろっていうのか?」
コイツ、マジか……。
なんでレベル一なのに、こんなに強気なの?
酔っ払っているの??
「カイル……。お前は現実を見たほうがいいぞ?」
それが俺にできる精一杯のアドバイスだ。
何度でも言うけど、君のレベルは一なんだよ?
レベル一のSランク冒険者なんだよ??
だから冒険者協会が協議しているんだよ!?
なんなら、今のお前は、課金装備を全部売っ払った一文無しなんだよ??
状況をちゃんと把握しないと死んじゃうよ!?
すると、カイルは胸を叩いて高らかに声を上げた。
「当然だ。俺は現実をちゃんと見て話をしている! だからこそ、簡単に大金が稼げるSランクの依頼を受けたいんだ!」
カイルの言葉を聞き、俺は愕然とした表情を浮かべた。
だ、駄目だコイツ。早くなんとかしないと……。
俺が頭の中でそう考えていると、冒険者協会内に大きな声が響き渡る。
「冒険者協会の協議が終わった! ここにいる冒険者に対し、結論だけを先に伝える!」
どうやら、冒険者協会内で協議が終わったらしい。
ここにいない冒険者に対しては後から協議した内容を伝えるつもりのようだ。
さて、どんな協議内容になったものか……。
話を聞き逃さないようにしないと……。
耳を傾けると冒険者協会の代表は、とても簡潔に協議内容を告げた。
「本日、現時点を以って、全冒険者のランクをFランクとする。ただし、レベルに応じてランクポイントを加算。ランクポイントに応じて、今回に限り特例昇級を認める事とする」
「へえ、なるほど……」
レベルに応じてランクポイントを加算か。
苦肉の策ながら考えたな……。
少なくとも、これでレベル一のSランクを一掃する事ができる。その他のランクについても同様だ。
それにレベルで測れば、プレイヤーを実力に見合ったランクに収める事ができる。
これにより、ランクに見合わなかったプレイヤーも、それに見合ったランクに収める事も可能となる。
随分と思い切った事をしたものだ。
俺が関心していると、足元から崩れ落ちるプレイヤーが一人。
そう。レベル一の元Sランク冒険者、カイルである。
「な、なんだと……。それじゃあ、俺はどうすればいいんだ。キャバ嬢のマミちゃんにバッグを買って上げる約束をしちゃったんだぞ……」
こいつ、カジノだけでは飽き足らず、キャバ嬢にも貢いでいたのか……。
どうしようもないな。と、いうより……。
「カイル……。お前、現実世界に本物の嫁がいるだろ。えっと、メアリさんだっけ? メアリさんはいいのかよ?」
そう言うとカイルは怖い表情を浮かべた。
「二次元の嫁より三次元のキャバ嬢の方が大事だろうがよっ! 空気読め!」
「ええっ……」
お前の嫁、二次元の嫁だったの?
次元を超えた空気嫁だったの!?
っていうか、お前が空気読め!!
一度、脳味噌を漂泊してこい!
まあ、取り敢えず、カイルの事は置いておこう。
周囲を見渡すと、カイルの様に膝から崩れ落ちているプレイヤーが相当数いた。
みんな、オーディンにレベルリセットされてしまった被害者なのだろう。
しかし、レベルに見合わないランクは、身を滅ぼす。
冒険者協会の決定に納得いかないプレイヤーも大勢いるだろうが、諦める他ないだろう。
「異議あり!」
すると、冒険者協会の決定に異議を唱えるプレイヤーが現れる。
まるで法廷バトルゲームの様な言い方だ。
協会長に向かって指を突きつけている。
協会長に向かって指を突き付けるなんて凄いな。
協会長って、一応、古参のSランク冒険者設定じゃなかったっけ?
そんな事を考えながら事の推移を見守っていると、異議を唱えたプレイヤーに同調したプレイヤー達が騒ぎ出す。
「そいつの言う通りだ!」
「納得できるか! そんな決定!」
「なんで俺達が降格されなきゃならないんだよ!」
「ちゃんとした理由を説明しろ!」
一方的な決定だ。
何故、この様な決定となったのか、説明を求めたくなる気持ちもよくわかる。
だがしかし、お前らプレイヤーは冒険者協会がなんでこんな決定を下したのか、心の底では薄々気付いているんだろ?
異議を唱えたプレイヤー達に冷めた視線を送っていると、協会長がテーブルを叩いた。
「鎮まれぇぇぇぇ!」
協会長の威圧に異議を唱えていたプレイヤー達が押し黙る。
「何故、冒険者協会がこの様な決定を下したのか聞きたいならば教えてやる……。原因については現在調査中だが、数日前からランクに相応しくないレベルの冒険者が急増した。これに起因して任務の失敗や冒険者の死傷等、様々な問題が発生している。これは、この国だけの問題ではない。隣国でも同様の問題が発生しているのだ」
冒険者協会の対応は当然だ。
寧ろ、こんなに早く決定を下すとは思いもしなかった。
冒険者のランクは信頼の証。
今、その信頼が崩れようとしている。
一度、崩れた信頼はもう二度と元には戻らない。
それを未然に防止する為、多少の泥を被る事になったとしても冒険者協会は、この様な決定を下したのだろう。
「……これは同時多発的に発生した事象だ。冒険者協会としては、誰かが不正を行ったとは考えていない。寧ろ、その逆。この措置は君達を保全する為のものだ。今回、この決定によりランクが降格される者については、冒険者協会がランクに応じたバックアップを行う。話は以上だが、何か質問はあるか」
協会長がそう幕引きを図ると、異議を唱えていたプレイヤーの一人が手を上げる。
「そ、それじゃあ、ランクに応じたバックアップについて教えてくれ。冒険者協会は一体、どんなバックアップをしてくれるんだ?」
冒険者協会が行うランクに応じたバックアップ。
確かに気になる所だ。
冒険者からの質問に協会長は顎に手をかけながら応じる。
「Fランクについては、レベルが二十になるまでの間、冒険者協会から引率の冒険者を派遣する予定だ。Eランクは武器、防具の割引購入ができるよう手配し、Dランクには、三回に限り高ランク冒険者と同行する事のできるチケットを配布する。勿論、そのチケット代金は冒険者協会が持つ。また、Cランク以上については、ダンジョンのマップ情報の公開等を主軸にバックアップを行う予定だ。他に質問はあるか?」
「い、いや、質問は以上だ」
想像以上に手厚いバックアップだった。
特にレベル二十。つまり、単身で初級ダンジョンに挑めるようになるまで面倒を見てくれるというのは凄い。
高ランク冒険者の同行チケットの配布についてもだ。
普通、高ランク冒険者にダンジョンの同行を頼む場合、数十万コルは積まないと引き受けてくれない。低ランク冒険者のお守りはそれ程、大変な事だからだ。
他に質問はないかと協会長が冒険者達に視線を向ける。
冒険者協会のバックアップ体制を聞き、安心したのか冒険者達はそれ以上、何も言う事はなく質問タイムは終わりを迎えた。
いや、違いますけど?
依頼を受けに来たのではなく依頼を出す方です。君と一緒にしないで欲しい。
しかし、俺は空気の読める男。そんな事は口にしない。
「まあ、そんな所だよ。それよりカイル。どうしたんだ。その水ぼらしい恰好は? 自慢の課金装備はどうした?」
カイルの課金装備は、ブラックシリーズと呼ばれる全てを黒で揃えた漆黒の魔法使い装備。課金装備というだけあって火力が高く。マントや手袋には、厨二心が疼く魔法陣のような刺繍が入れられている。
性能はいいが、俺にはレベルの高すぎる至極の装備だ。
とても恥ずかしくて装備できない。
恐らく、その恥ずかしさに耐える事ができる者のみに力を与える。そんな課金装備なのだろうと俺は考えている。
「ああ、あれか? あれは……」
「うん。あれは?」
なんだか歯切れが悪い。
一体、どうしたというのだろうか?
そんな事を考えているとカイルが盛大にため息を吐いた。
「実は金に困って売ってしまったんだ……」
「はあっ? マジでか!?」
金に困って売っちゃったの!?
この世界が現実となった今、課金装備を買う事ができないかもしれないのに?
もうこの世界にユグドラシルショップないんだよ!?
っていうか、カイル。お前、コツコツとログインボーナスを貰って、初級ダンジョンで回復薬を集めまくったから十年位は何もしなくても生活できそうとか言ってなかった!?
あれからまだ二日しか経っていないんですけど!?
「いや、実は今、カジノにハマっていて……。気付いた時には、全財産を失っていたんだ……」
「おいおい……」
想像以上にどうしようもなくて、阿保らしい理由で全財産を失っていた。
ある意味凄いな。
まさか、数日前は十年位何もしなくても生活できると言っていた男が、一瞬にして全財産を摩るなんて……。
「……それで、仕方がなく冒険者協会からの依頼を受けようと思っていたんだけど、依頼を受けようにも受け付けてくれないんだ! こっちは今すぐにでも金が欲しいのによ! なあ、カケル。お前も一緒に冒険者協会に抗議しようぜ? お前も金が欲しいだろ?」
「抗議って、お前……」
なんて抗議するの?
レベル一のSランク冒険者にもできる依頼を寄越せとでも言うつもりか?
多分、事の発端はお前達が『冒険者の証』を冒険者協会の職員に提示したからだよ?
その事が知れ渡れば、間違いなく袋叩きにされるよ!?
「大丈夫だって、ほら、よく言うだろ? 赤信号みんなで渡れば怖くないってさ?」
「いや、普通に怖いよ!?」
みんなじゃなくて二人だからね?
俺とお前の二人だからね!?
お前に至っては戦力外だから!
多分、何の役にも立たないから!
というより、なんでレベル一のSランク冒険者であるお前が堂々と冒険者協会に抗議できるの!? しちゃダメだろ! 現在進行形で一番困っているのは恐らくその冒険者協会だよ?
もうお前、胆力がSランクだよ!
「お前なぁ……。態々、依頼なんか受けなくても、モンスターの素材なら買い取って貰えるだろ? まずはそっちで頑張れよ」
俺がそうアドバイスをすると、カイルは信じられないといった表情を浮かべた。
「……お前、何を言ってるんだ? そんなんじゃ端金しか手に入らないじゃないか……。仮にもSランクである俺に低級冒険者の真似事をしろっていうのか?」
コイツ、マジか……。
なんでレベル一なのに、こんなに強気なの?
酔っ払っているの??
「カイル……。お前は現実を見たほうがいいぞ?」
それが俺にできる精一杯のアドバイスだ。
何度でも言うけど、君のレベルは一なんだよ?
レベル一のSランク冒険者なんだよ??
だから冒険者協会が協議しているんだよ!?
なんなら、今のお前は、課金装備を全部売っ払った一文無しなんだよ??
状況をちゃんと把握しないと死んじゃうよ!?
すると、カイルは胸を叩いて高らかに声を上げた。
「当然だ。俺は現実をちゃんと見て話をしている! だからこそ、簡単に大金が稼げるSランクの依頼を受けたいんだ!」
カイルの言葉を聞き、俺は愕然とした表情を浮かべた。
だ、駄目だコイツ。早くなんとかしないと……。
俺が頭の中でそう考えていると、冒険者協会内に大きな声が響き渡る。
「冒険者協会の協議が終わった! ここにいる冒険者に対し、結論だけを先に伝える!」
どうやら、冒険者協会内で協議が終わったらしい。
ここにいない冒険者に対しては後から協議した内容を伝えるつもりのようだ。
さて、どんな協議内容になったものか……。
話を聞き逃さないようにしないと……。
耳を傾けると冒険者協会の代表は、とても簡潔に協議内容を告げた。
「本日、現時点を以って、全冒険者のランクをFランクとする。ただし、レベルに応じてランクポイントを加算。ランクポイントに応じて、今回に限り特例昇級を認める事とする」
「へえ、なるほど……」
レベルに応じてランクポイントを加算か。
苦肉の策ながら考えたな……。
少なくとも、これでレベル一のSランクを一掃する事ができる。その他のランクについても同様だ。
それにレベルで測れば、プレイヤーを実力に見合ったランクに収める事ができる。
これにより、ランクに見合わなかったプレイヤーも、それに見合ったランクに収める事も可能となる。
随分と思い切った事をしたものだ。
俺が関心していると、足元から崩れ落ちるプレイヤーが一人。
そう。レベル一の元Sランク冒険者、カイルである。
「な、なんだと……。それじゃあ、俺はどうすればいいんだ。キャバ嬢のマミちゃんにバッグを買って上げる約束をしちゃったんだぞ……」
こいつ、カジノだけでは飽き足らず、キャバ嬢にも貢いでいたのか……。
どうしようもないな。と、いうより……。
「カイル……。お前、現実世界に本物の嫁がいるだろ。えっと、メアリさんだっけ? メアリさんはいいのかよ?」
そう言うとカイルは怖い表情を浮かべた。
「二次元の嫁より三次元のキャバ嬢の方が大事だろうがよっ! 空気読め!」
「ええっ……」
お前の嫁、二次元の嫁だったの?
次元を超えた空気嫁だったの!?
っていうか、お前が空気読め!!
一度、脳味噌を漂泊してこい!
まあ、取り敢えず、カイルの事は置いておこう。
周囲を見渡すと、カイルの様に膝から崩れ落ちているプレイヤーが相当数いた。
みんな、オーディンにレベルリセットされてしまった被害者なのだろう。
しかし、レベルに見合わないランクは、身を滅ぼす。
冒険者協会の決定に納得いかないプレイヤーも大勢いるだろうが、諦める他ないだろう。
「異議あり!」
すると、冒険者協会の決定に異議を唱えるプレイヤーが現れる。
まるで法廷バトルゲームの様な言い方だ。
協会長に向かって指を突きつけている。
協会長に向かって指を突き付けるなんて凄いな。
協会長って、一応、古参のSランク冒険者設定じゃなかったっけ?
そんな事を考えながら事の推移を見守っていると、異議を唱えたプレイヤーに同調したプレイヤー達が騒ぎ出す。
「そいつの言う通りだ!」
「納得できるか! そんな決定!」
「なんで俺達が降格されなきゃならないんだよ!」
「ちゃんとした理由を説明しろ!」
一方的な決定だ。
何故、この様な決定となったのか、説明を求めたくなる気持ちもよくわかる。
だがしかし、お前らプレイヤーは冒険者協会がなんでこんな決定を下したのか、心の底では薄々気付いているんだろ?
異議を唱えたプレイヤー達に冷めた視線を送っていると、協会長がテーブルを叩いた。
「鎮まれぇぇぇぇ!」
協会長の威圧に異議を唱えていたプレイヤー達が押し黙る。
「何故、冒険者協会がこの様な決定を下したのか聞きたいならば教えてやる……。原因については現在調査中だが、数日前からランクに相応しくないレベルの冒険者が急増した。これに起因して任務の失敗や冒険者の死傷等、様々な問題が発生している。これは、この国だけの問題ではない。隣国でも同様の問題が発生しているのだ」
冒険者協会の対応は当然だ。
寧ろ、こんなに早く決定を下すとは思いもしなかった。
冒険者のランクは信頼の証。
今、その信頼が崩れようとしている。
一度、崩れた信頼はもう二度と元には戻らない。
それを未然に防止する為、多少の泥を被る事になったとしても冒険者協会は、この様な決定を下したのだろう。
「……これは同時多発的に発生した事象だ。冒険者協会としては、誰かが不正を行ったとは考えていない。寧ろ、その逆。この措置は君達を保全する為のものだ。今回、この決定によりランクが降格される者については、冒険者協会がランクに応じたバックアップを行う。話は以上だが、何か質問はあるか」
協会長がそう幕引きを図ると、異議を唱えていたプレイヤーの一人が手を上げる。
「そ、それじゃあ、ランクに応じたバックアップについて教えてくれ。冒険者協会は一体、どんなバックアップをしてくれるんだ?」
冒険者協会が行うランクに応じたバックアップ。
確かに気になる所だ。
冒険者からの質問に協会長は顎に手をかけながら応じる。
「Fランクについては、レベルが二十になるまでの間、冒険者協会から引率の冒険者を派遣する予定だ。Eランクは武器、防具の割引購入ができるよう手配し、Dランクには、三回に限り高ランク冒険者と同行する事のできるチケットを配布する。勿論、そのチケット代金は冒険者協会が持つ。また、Cランク以上については、ダンジョンのマップ情報の公開等を主軸にバックアップを行う予定だ。他に質問はあるか?」
「い、いや、質問は以上だ」
想像以上に手厚いバックアップだった。
特にレベル二十。つまり、単身で初級ダンジョンに挑めるようになるまで面倒を見てくれるというのは凄い。
高ランク冒険者の同行チケットの配布についてもだ。
普通、高ランク冒険者にダンジョンの同行を頼む場合、数十万コルは積まないと引き受けてくれない。低ランク冒険者のお守りはそれ程、大変な事だからだ。
他に質問はないかと協会長が冒険者達に視線を向ける。
冒険者協会のバックアップ体制を聞き、安心したのか冒険者達はそれ以上、何も言う事はなく質問タイムは終わりを迎えた。
51
「最強呪符使い転生―故郷を追い出され、奴隷として売られました。国が大変な事になったからお前を買い戻したい?すいませんが他を当たって下さい―」を公開しました。皆様、是非、ブックマークよろしくお願い致します!!!!ブックマークして頂けると、更新頻度が上がるという恩恵が……あ、なんでもないです……。
お気に入りに追加
1,129
あなたにおすすめの小説

最強美少女達に愛されている無能サポーター 〜周りの人から馬鹿にされ続けてもう嫌なのパーティメンバーの天才たちが離してくれない〜
妄想屋さん
ファンタジー
最強の美少女パーティメンバーに囲まれた無能、アルフ。
彼は周囲の人の陰口に心を病み、パーティメンバー達に、
「このパーティを抜けたい」
と、申し出る。
しかし、アルフを溺愛し、心の拠り所にしていた彼女達はその申し出を聞いて泣き崩れていまう。
なんとかアルフと一緒にいたい少女達と、どうしてもパーティを抜けたい主人公の話。
『自重』を忘れた者は色々な異世界で無双するそうです。
もみクロ
ファンタジー
主人公はチートです!イケメンです!
そんなイケメンの主人公が竜神王になって7帝竜と呼ばれる竜達や、
精霊に妖精と楽しくしたり、テンプレ入れたりと色々です!
更新は不定期(笑)です!戦闘シーンは苦手ですが頑張ります!
主人公の種族が変わったもしります。
他の方の作品をパクったり真似したり等はしていないので
そういう事に関する批判は感想に書かないで下さい。
面白さや文章の良さに等について気になる方は
第3幕『世界軍事教育高等学校』から読んでください。

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。
下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。
豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。
小説家になろう様でも投稿しています。

聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】
青緑
ファンタジー
聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。
———————————————
物語内のノーラとデイジーは同一人物です。
王都の小話は追記予定。
修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。

パーティのお荷物と言われて追放されたけど、豪運持ちの俺がいなくなって大丈夫?今更やり直そうと言われても、もふもふ系パーティを作ったから無理!
蒼衣翼
ファンタジー
今年十九歳になった冒険者ラキは、十四歳から既に五年、冒険者として活動している。
ところが、Sランクパーティとなった途端、さほど目立った活躍をしていないお荷物と言われて追放されてしまう。
しかしパーティがSランクに昇格出来たのは、ラキの豪運スキルのおかげだった。
強力なスキルの代償として、口外出来ないというマイナス効果があり、そのせいで、自己弁護の出来ないラキは、裏切られたショックで人間嫌いになってしまう。
そんな彼が出会ったのが、ケモノ族と蔑まれる、狼族の少女ユメだった。
一方、ラキの抜けたパーティはこんなはずでは……という出来事の連続で、崩壊して行くのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる