上 下
25 / 373

第25話 やられたらやり返す! 倍返しだ!②

しおりを挟む
「あ、あなたっ、それを寄越しなさ……。う、うぐっ……」

 くくくっ……。
 リフリ・ジレイター。お前は本当に欲しがりさんだな……。
 俺が取り出したオマルに熱い視線を向けて……。そんなにオマルが欲しいのかい?

 これ見よがしにオマルをチラつかせていると、リフリ・ジレイターは怒りと苦悶の表情を浮かべた。
 器用な表情の浮かべ方だ。
 しかし、もう。話す余裕もないらしい。
 プルプル震えながら悶絶している。
 いいザマである。

「さて、これで俺の気持ち。わかってくれたかな?」

 スタンガンで顔をウリウリすると、リフリ・ジレイターが歯を食い縛る。
 顔が真っ赤だ。
 ヤバいな。もうそろそろ肛門括約筋が決壊しそうだ。

 流石はモンスター用の下剤だ。効きが早い。
 馬車の振動と下剤の相乗効果で、リフリ・ジレイターの腹にダイレクトアタックを与え続けているのだろう。

 それはさながら永続トラップ『馬車の振動』。
 腹痛に苦しむ者に振動を与え続ける地獄の様な永続トラップだ。
 高橋翔はリフリ・ジレイターの肛門括約筋にダイレクトアタック!
 そんな気分である。

 俺は箱檻の鍵を開けると、リフリ・ジレイターに顔を向ける。

「じゃあな、リフリ・ジレイター。市中引き回しの刑頑張ってくれよ。アディオス!」
「ま、待ちなさ……。ふぐうううううっ!!?」

 親指を立てて、箱罠から飛び降りると同時に、リフリ・ジレイターから腹の内容物がぶち撒けられる。そんな音がした。

「汚ねえ花火だぜ」

 勿論、言ってみたかっただけだ。実際に汚いし……。
 リフリ・ジレイターの奴。折角、オマルを用意してやったと言うのに使わなかったらしい。
 まあ、縛られた状態で使う事ができたら、それはそれで凄い事だ。

 まあオマルを使えても、お前の汚ねえケツを拭く紙はないけどね。

 まああれだけ恥をかかせてやれば、もう二度と絡んでこないだろう。
 もし、また絡んでくる様なら、もうワンテイク行くまでだ。
 俺に絡みたくなくなるまで、何テイクでも付き合ってやる。
 その度に汚い花火を打ち続ける事になるが、それでも構わないというのであれば何度でも絡んでくるがいい。

 野太い声を上げるリフリ・ジレイターを乗せた馬車を後目に、俺は宿に向かった。

 ◇◆◇

『ぐ、ぐう、うおぉぉぉぉ! ビーツにクレソンは何をやっているのですかああああ!』

 馬車の荷台に設置された箱罠で叫び声を上げるリフリ・ジレイター。
 御者台に乗り、馬車の運転をしているビーツは怪訝な表情を浮かべた。

「うん……。おかしいな?」

 馬車の荷台からリフリ・ジレイター様の声が聞こえた様な気がする。

 いや、気のせいか……。

 リフリ・ジレイター様の乗る馬車は前を走っている。箱罠にはクレソンが乗っているし、大方、あのモブフェン野郎が叫び声を上げているのだろう。

 それにしても品のない叫び声だ。
 冷凍庫組に喧嘩を売るからそうなる。
 全く馬鹿な男だ。

 背後から聞こえてくる叫び声に耳を傾ける事なく馬車を走らせる。
 すると、暫くして冷蔵庫組本部が見えてきた。
 馬車を停めると御者台から降りて荷台に視線を向ける。

「クレソン。本部に着いたぞ。そこまでにしてお……けえ?」

 するとそこには、とても形容する事のできない姿となったリフリ・ジレイター様がいた。
 慌てて近寄ろうとするも、悪臭が立ち込めており近寄る事ができない。

「うっ……。くさっ!?」

 思わず、声に出してそう言うと、思いきりリフリ・ジレイター様に睨み付けられてしまう。

「ビーツさん? あなた、今、私に向かって何と言ったのですか?」

 拙い。私の余計な一言に。
 リフリ・ジレイター様がお怒りだ。
 な、何とか諫めなければ……。

「い、いえ、違うのです!? く、草木を腐らせた腐葉土の様に熟成された香しい匂いがしたなと……」
「そんな恥ずかしい弁解はいらないのよ!! さっさと私を解放しなさい! シャワーと服の準備もよ! ううっ……。恥ずかしくて、もう歩けないわ! 美容整形の予約も入れておいて!」
「い、いえ、ですが……」
「私は早くしてと言っているのよ!」
「は、はい! 承知しました!」

 い、一体何が……。何が起こっているんだ……。あのモブフェン野郎はどこに?
 何故、リフリ・ジレイター様があの様な姿に……。
 それでは、前を走っていた馬車には誰が乗っているんだ?

 リフリ・ジレイター様を縛っていた縄を解き、馬車に視線を向けると、そこには股間を抑え悶絶するクレソンの姿があった。

 ク、クレソォォォォン!?
 お、お前、何やってんの!?
 っていうか、いつの間に前の馬車に??
 どういう事っ!?

「ビ、ビーツ……。あのモブフェン野郎は危険だ……。リフリ・ジレイター様はどちらに……」

 股間を抑えながら地面に這いつくばり悶絶するクレソン。
 心なしか、クレソンの目に恐怖が入り混じっている気がする。
 手になにかを持っているようだが、あれは……。

「……私はここですよ。クレソンさん。その手に持っている物は一体何です?」

 リフリ・ジレイター様が歩く度に、悪臭を放ちながら汚物が地面にポタポタと垂れる。
 思わず、私は渋面を浮かべた。
 しかし、渋面を浮かべた瞬間、リフリ・ジレイター様に睨み付けられてしまう。
 すぐさま、にこやかな笑みを浮かべると、リフリ・ジレイター様はクレソンが手に持っていた物を拾い上げる。

「こ、これは……。なるほど、そういう事でしたか……。クレソンさん。あなた、これを握り潰しながら私の名前を言いましたね?」
「え、ええっ、その通りです……」

 すると、リフリ・ジレイター様が鬼の様な形相を浮かべる。

「ふふふっ……。まさか、クレソンさんと私の位置を入れ替える為だけに、こんな高額なアイテムを使うとはね。初めてですよ……。こんな高額なアイテムを嫌がらせする為だけに使うお馬鹿さんは……」
「そ、それはどういう……。うっ!?」

 リフリ・ジレイター様の臭気に鼻が曲がりそうだ。

「あなたもしつこいですね……。そんなに私の事を怒らせたいのですか? まあいいでしょう。クレソンさんが使用したアイテムは、『スワップ・プレイス』と呼ばれる位置を入れ替えるだけの大変高価なアイテム……。いえ、消耗品です。恐らく、あの男はクレソンさんにこの『スワップ・プレイス』を渡し、私の名前を無理矢理言わせたのでしょう……。ふふふっ、この私に攻撃し、あまつさえ内容物塗れにするなんて、こんな屈辱初めてですよ。あの……クソ野郎ぉぉぉぉ! 絶対許さないからなぁぁぁぁ! この私を怒らせて平穏な暮らしが送れると思うんじゃねぇぞ! 絶対にぶち殺してくれる!」
「ぎゃんっ!?」

 リフリ・ジレイター様が叫び声を上げながらクレソンの股間を蹴り上げると、クレソンは泡を噴いて崩れ落ちる。

 お、恐ろしい……。
 股間に重傷を負っているクレソンを蹴り上げるなんて……。
 既に男としての人生を失ったも同然なのに平然と追い打ちをかける事ができるとは、流石はリフリ・ジレイター様だ。

「さあ、そんなゴミは置いておいて行きますよ。臭いが酷くて堪りません!」
「は、はい! すぐに準備致します!」

 私は泡を噴いて倒れているクレソンを放置すると、これ以上、リフリ・ジレイター様の機嫌を損ねないようシャワーと服の準備をし、その後、美容整形の予約を入れる。

「ビーツさん! この服は処分しておいて! あと、私が歩いた場所の清掃よ! 私がシャワーから上がる前にやっておいてよね!」
「は、はい! 今すぐに!」

 冷蔵庫組の本部に着いてやった事。
 それは内容物塗れとなった組の掃除だった。

 くそっ!
 何で冷蔵庫組のエリートである私がこんな事を……。
 これも全て、リフリ・ジレイター様を内容物塗れにしたモブフェン野郎のせいだ!
 絶対に許さない。

 私は怒りの炎を目に宿すと、リフリ・ジレイター様の内容物に塗れた廊下の拭き掃除を始めた。

 ◇◆◇

「……そうか。それは良かった」

 宿に戻った俺は、従業員達に聞き取り調査を行い、リフリ・ジレイター達に何かされていないか話を聞いていく。
 話を聞いた限り、リフリ・ジレイター達はこの宿に悪さをする事はなかったようだ。
『地上げ屋本舗』の様に、宿に火をつけるようであれば、俺自ら冷蔵庫組を潰しに行かなければならない所だった。
 完全に潰す事はできないかも知れないが、嫌がらせだけはしてやろうと思っている。

 まあ、あいつ等は俺の事を探していたみたいだし、元々、この宿を取り戻そうとしていたから手荒い事をすることはなかったのだろう。

 まあ、あれだけ酷い目に遭わせてやったのだから、もう絡んでくる事はないと思いたい。
 とりあえず、何かしら対策を打たないといけない。
 いっその事、冒険者協会に宿の警備でも頼もうかな?

 その方が良さそうだ。
 金で解決できることは金で解決するべきだ。
 この宿に過度な利益は求めていない。
 潰れない程度に経営してくれれば十分だ。
 よし。決めた!
 冒険者に宿の警備を頼もう!

 そう考えた俺は、早速、冒険者協会へと向かった。

「さてと……」

 冒険者協会に辿り着いた俺は、早速、宿の警備を依頼する事にした。
 冷蔵庫組の奴等を追い払うには、最低でも、Cランクの力が必要だろう。
 勿論、実際にやり合ってみて感じた俺の所感である。
 しかし、Cランクが宿の警備依頼を受けてくれるだろうか?

 一抹の不安を覚えながら受付で依頼をかけると、受付嬢が首を振る。

「申し訳ございません。現在、ご紹介する事のできる冒険者はおりません」
「ええっ! なんでですか!?」

 冒険者協会併設の酒場に冒険者達が大勢いますけど!?

 すると、受付嬢は申し訳なさそうな表情を浮かべる。

「じ、実は今、ランクに合わないレベルの方が続出しておりまして……。現在、冒険者協会ではランク制度の運用見直しを含め、協議中なのです。その為、暫くの間、冒険者協会から冒険者の斡旋及び派遣は控えさせて頂いております」
「な、なん、だと……」

 レベル一のSランク冒険者急増の余波がこんな所に……。

 いや、言われてみれば当たり前か。
 冒険者協会としても、実力の伴わない冒険者を斡旋したり派遣する事はできない。
 実力の伴わない冒険者を派遣した結果、依頼を失敗しましたでは冒険者協会の名誉が毀損してしまう。

 しかし、困ったな……。
 完全に想定外だ。

「おや? お前、カケルじゃないか?」
「うん?」

 背後から声をかけられ顔を向けると、そこには筋骨隆々の逞しい体躯に、日焼けサロンで焼いたかのような鮮やかな黒い肌が特徴的な魔法使い、カイルが佇んでいた。
しおりを挟む
感想 530

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

【短編】追放した仲間が行方不明!?

mimiaizu
ファンタジー
Aランク冒険者パーティー『強欲の翼』。そこで支援術師として仲間たちを支援し続けていたアリクは、リーダーのウーバの悪意で追補された。だが、その追放は間違っていた。これをきっかけとしてウーバと『強欲の翼』は失敗が続き、落ちぶれていくのであった。 ※「行方不明」の「追放系」を思いついて投稿しました。短編で終わらせるつもりなのでよろしくお願いします。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

処理中です...