17 / 381
第17話 ヤバい弁護士①
しおりを挟む
ボロ宿の管理人を助け、DWをログアウトした俺はネットカフェで目覚めると、ドリンクバーでコーヒーをドリップし、口に含む。
「ああ、相変わらず美味い……」
一仕事終えた後に飲むネットカフェのコーヒーは、何故、こうも美味しいのだろうか?
本当に不思議だ。
「さてと、もう午後五時か……」
交番と労働基準監督署に行って、ほんの少しDWにログインしただけで一日の殆どが終わってしまった。
休日というのは、なんでこうも時間が過ぎるのが早いのだろうか。
会社で過ごす一日はとても長く感じるのに不思議だ。
まあいい。
今の俺は無職だし、会社を辞めたからには、毎日が休日。毎日が日曜日だ。
ふと、スマートフォンを手に取り、画面を覗き込むと、数件の不在着信が残っていた。
一体なんだろう?
画面をタップすると、電話番号が表示される。
「誰だこれ?」
電話番号を打ち込み、ネットサーフィンすると『西葛西警察署』と出た。
どうやら、警察が電話をかけてきたらしい。
とりあえず、連絡するかと、電話をかける。
「すいません。午後三時に連絡があったみたいなんですけど……」
『はい。名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?』
「あ、はい。高橋翔と申します」
『高橋翔様ですね。少々、お待ち下さい』
しばらく待つと、刑事課に電話を回された。
『お待たせ致しました。刑事課に繋ぎます』
「あ、はい」
すると、刑事課の警察官が電話口に出る。
『初めまして、西葛西警察署、刑事課の大西と申します。えっと、高橋翔さんでお間違いないでしょうか?』
「はい。そうですけど……」
刑事課?
俺、何かやったっけ?
警察に被害届を提出したのは今日の朝だし、俺の事を暴行し、スクラッチくじを強奪した高校生達の逮捕にはまだ早い様な気もする。
『いえね。被害届が出されていた件で、本日、昼過ぎに強盗致傷事件の容疑者四名を逮捕致しましたので、その連絡をと思いまして……』
「えっ? もう逮捕されたんですか?」
はやっ!
正直、警察を舐めていたわ。
まさか、こんなに早く動いてくれるとは……。
『はい。現在、拘留中です。また進展があればお伝え致します』
「わかりました。連絡頂きありがとうございます」
そう言って電話を切ると、「ふう~」と息を吐き出した。
「いや、警察凄いな」
まさか、容疑者逮捕の連絡までくれるとは……。
あの高校生が無事逮捕された事がわかってなんだかホッとした気分だ。
多分、警察からの容疑者逮捕の連絡も、被害者を安心させる為のものなのだろう。
そういえば、二日間位、家に帰っていない気がする。
あいつらも捕まった事だし、一旦、家に帰るかな……。
時間一杯までネットカフェで寛ぐと、俺は二日ぶりに家に戻る事にした。
◇◆◇
「ありがとうございました」
店員さんの声に送られながらネットカフェを出た俺は家に向かって歩いていく。
軽快なステップで家に向かって歩いていると、誰か知らない人が張り付いているのが見える。
「あれは……だれだ?」
知らない人だ。
なんで俺の部屋の前で張り込みをしているかはわからないが、碌でもないだろう事だけはよくわかる。
触らぬ神に祟りなしと言うし……。
不穏な気配を感じた俺は踵を返すと、近くにある電信柱の影に隠れた。
俺の部屋を張っている男にバレないようにする為だ。
しかし、なんで俺の住んでいるマンション前に人が張り込んでいるんだ?
謎だ。
正直、気味が悪い。
もしかして、俺のストーカーか?
それとも宗教の勧誘??
しかし、スーツを着ていたし……。眼鏡だし、髪はポマードか何かの整髪料でベッタリ固められている。
高そうな時計にバッグ、胸元に光るバッチのような物……。
となると、考えられるのは一つだけ。
「わかったぞ。あれは弁護士だな……」
どうやって、俺の住んでいるマンションの住所を特定したのかは分からないが、まず間違いないだろう。
おそらく、警察に捕まった高校生達の親の誰かが示談にして貰おうと弁護士を雇ったのだろう。
まあ、警察には絶対に示談しないと言っておいたし、連絡先も教えないで下さいと伝えてあった。
警察から俺の連絡先を聞き出す事ができなかった。だからこそ、俺の自宅に張り込んでいるのだろうと思われる。
「よし、それなら俺は……」
そう呟くと、俺は近くのビジネスホテルに連泊する事に決めた。
家に戻ろうと思ったのも、高校生達が逮捕されてもう大丈夫だと判断した為だ。
新たな問題が発生したのであれば、その要因が取り除かれるまで、徹底的に避ければいい。
部屋の前に張り込んでいる弁護士から逃げる様にその場を立ち去ると、俺は西葛西駅まで向かった。
弁護士が部屋の前で張っている。
高校生達の動画は既に拡散済で、目元は隠しているものの、風貌や体格から俺が特定されてしまう可能性もある。
いや、もうされていると見るべきだろう。
だからこそ、ほとぼりが冷めるまでは……。
具体的には、高校生達の刑罰が確定し、弁護士が俺の部屋に張り付かなくなるまでは、家に帰る訳には行かない。
ぶっちゃけ、弁護士はあまり好きじゃないし、万が一、弁護士から内容証明郵便とか届けられても嫌だ。
という事で、俺は今、東西線から数々の電車を乗り継ぎ新橋駅の近くにあるカンデオホテルにいた。
カンデオホテルは良い。
館内は清潔感があるし、スタッフの対応も丁寧。屋上にスカイスパと呼ばれる星空に一番近い露天風呂があり、アメニティも豊富。
何より、必要以上に係わってこようとしないスタッフ達が素晴らしい。
俺の元職場こと、アメイジング・コーポレーション株式会社を訴える為に予約した弁護士事務所も東京駅近くだったし、もってのこいだ。
「さてと……。なんだか腹が減ったな。とりあえず、鳥貴族にでも行くか」
鳥貴族とは、税込三百二十七円均一の焼鳥屋だ。
「いらっしゃいませ! 一名様でよろしいでしょうか?」
「はい。一名です」
「それでは、こちらにどうぞ。一名様ご来店です!」
そう言って通されたのは、カウンター席だった。
新型ウイルス対策の一環か、席にはパーテーションが完備されている。
「お飲み物は何に致しますか?」
「う~ん。それじゃあ、メガ金麦で」
「はい。メガ金麦ですね!」
「ああ、塩だれキューリと、もも貴族焼のたれもお願いします」
「はい! 塩だれキューリともも貴族焼のたれですね。少々お待ち下さいませ!」
料理を注文して一分経たない内に、メガ金麦と塩だれキューリが運ばれてくる。
「お待たせしました。メガ金麦と塩だれキューリになります」
「ああ、ありがとうございます」
料理を受け取った俺は、早速、メガ金麦に口を付けた。
「ふう……」
やはり、店で飲むお酒は美味しい。
メガ金麦も飲み応えがあるし、塩だれキューリもいい塩梅だ。
これがあれば、何杯でもメガ金麦を飲める気がする。
スマートフォンを片手に、お気に入りのネット小説を読みながら酒を呑んでいると、突然、画面に知らない番号が表示されスマートフォンが鳴り出した。
うん?
誰だこれ?
知らない番号だ。
とりあえず、今、表示されている番号を入力すると、弁護士事務所の電話番号である事が分かった。
もしかして、明日、アポイントメントを取った弁護士からの電話だろうか?
「はい」
余計な事は言わず、ただ淡々とそう呟くと、電話口から声が聞こえてくる。
『私、野梅法律相談事務所の弁護士、野梅八屋と申します。高橋翔様の電話番号でよろしかったでしょうか?』
ヤバい奴や……!
名前からしてヤバい。
少なくとも、俺がアポイントメントを取った弁護士事務所じゃない見たいだし、とりあえず、知らんフリをしておこう。
「いえ、違いますね。間違い電話じゃないですか?」
即座にそう切り返すと、野梅弁護士が戸惑いの声を上げる。
『えっ? 本当ですか?? 本当にこの電話は高橋翔様の電話ではないのですか?』
「高橋翔ですか? どなたです? それ?」
『ま、間違い電話です。失礼しました』
野梅弁護士は電話越しにそう言うと、電話が切れる。
どうやら、やり過ごす事に成功したらしい。
野梅弁護士の電話をやり過ごしてすぐ店員が注文した貴族焼を持ってくる。
「お待たせしました。注文のもも貴族焼になります」
「ああ、ありがとうございます」
店員から貴族焼を受け取ると、追加でメガハイボールと、チキン南蛮、とり釜飯を注文した。
やはり鳥貴族に来たら、とり釜飯は欠かせない。
「さて……」
スマートフォンを置き、貴族焼の串を手に取ると、串に刺さっている鶏肉とネギを口に含んで咀嚼する。
うん。安定の美味しさだ。
流石は鳥貴族。メガ金麦と貴族焼の相性が堪らない。
しかし、あの高校生達、弁護士を雇ったのか……。
必死だな。まあ、当然か……。
あいつ等のやった事はカツアゲではない。カツアゲという名の強盗致傷だ。
一度は三千万円の当選くじを強奪しているのだ。あの時の悔しさは忘れない。
何よりこの俺に対して暴行しているからね?
痛かったなぁ~あれ、特にあの自転車の空気入れで背中を殴られたやつ。本当に痛かったわ!
まさか鈍器で攻撃してくるとは思わなかったわ!
初級回復薬で傷を癒したんだからいいじゃないって?
んなわけねーだろっ!
こっちは痛い思いしているんだよ!
初級回復薬があったのも、偶々なんだよ!
俺が初級回復薬を持っていなければ、全身打撲を負っていた。血も出ていたし、その報いは必ず受けて貰う。示談なんて絶対してやらないんだからね!
「お待たせ致しました。こちら、注文の品になります。あっ、空いたグラスはおさげしますね」
そんな事を考えていると、店員がメガハイボールと、チキン南蛮、とり釜飯を持ってきた。
テーブルにそれらを置くと、とり釜飯のセットに火を灯し、「お召し上がりまで三十分お待ち下さい」といい、空になったグラスを片手に席を立つ。
片手にスマートフォンを持ちながらチキン南蛮を口に運ぶと、チキン南蛮のジューシーな味わいが口に広がってくる。
そのまま、メガハイボールを口にすると、幸せ一杯の余韻が口を伝った。
久しぶりに食べるチキン南蛮は、何故こんなにも美味しいのだろうか?
流石は鳥貴族だ。
庶民の懐に優しい値段設定でこれ程、美味しい物を食べさせてくれるとは……。
まあ、それは置いておいて、丁度、読んでいたネット小説も最新話まで読み終わった。次の小説でも読むかな……。
メガハイボールを片手に、スマートフォンをスワイプしていると、突然電話がかかってくる。スワイプしていた指で、そのまま反射的に通話ボタンをタップすると、またしても野梅弁護士が電話口に現れた。
「ああ、相変わらず美味い……」
一仕事終えた後に飲むネットカフェのコーヒーは、何故、こうも美味しいのだろうか?
本当に不思議だ。
「さてと、もう午後五時か……」
交番と労働基準監督署に行って、ほんの少しDWにログインしただけで一日の殆どが終わってしまった。
休日というのは、なんでこうも時間が過ぎるのが早いのだろうか。
会社で過ごす一日はとても長く感じるのに不思議だ。
まあいい。
今の俺は無職だし、会社を辞めたからには、毎日が休日。毎日が日曜日だ。
ふと、スマートフォンを手に取り、画面を覗き込むと、数件の不在着信が残っていた。
一体なんだろう?
画面をタップすると、電話番号が表示される。
「誰だこれ?」
電話番号を打ち込み、ネットサーフィンすると『西葛西警察署』と出た。
どうやら、警察が電話をかけてきたらしい。
とりあえず、連絡するかと、電話をかける。
「すいません。午後三時に連絡があったみたいなんですけど……」
『はい。名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?』
「あ、はい。高橋翔と申します」
『高橋翔様ですね。少々、お待ち下さい』
しばらく待つと、刑事課に電話を回された。
『お待たせ致しました。刑事課に繋ぎます』
「あ、はい」
すると、刑事課の警察官が電話口に出る。
『初めまして、西葛西警察署、刑事課の大西と申します。えっと、高橋翔さんでお間違いないでしょうか?』
「はい。そうですけど……」
刑事課?
俺、何かやったっけ?
警察に被害届を提出したのは今日の朝だし、俺の事を暴行し、スクラッチくじを強奪した高校生達の逮捕にはまだ早い様な気もする。
『いえね。被害届が出されていた件で、本日、昼過ぎに強盗致傷事件の容疑者四名を逮捕致しましたので、その連絡をと思いまして……』
「えっ? もう逮捕されたんですか?」
はやっ!
正直、警察を舐めていたわ。
まさか、こんなに早く動いてくれるとは……。
『はい。現在、拘留中です。また進展があればお伝え致します』
「わかりました。連絡頂きありがとうございます」
そう言って電話を切ると、「ふう~」と息を吐き出した。
「いや、警察凄いな」
まさか、容疑者逮捕の連絡までくれるとは……。
あの高校生が無事逮捕された事がわかってなんだかホッとした気分だ。
多分、警察からの容疑者逮捕の連絡も、被害者を安心させる為のものなのだろう。
そういえば、二日間位、家に帰っていない気がする。
あいつらも捕まった事だし、一旦、家に帰るかな……。
時間一杯までネットカフェで寛ぐと、俺は二日ぶりに家に戻る事にした。
◇◆◇
「ありがとうございました」
店員さんの声に送られながらネットカフェを出た俺は家に向かって歩いていく。
軽快なステップで家に向かって歩いていると、誰か知らない人が張り付いているのが見える。
「あれは……だれだ?」
知らない人だ。
なんで俺の部屋の前で張り込みをしているかはわからないが、碌でもないだろう事だけはよくわかる。
触らぬ神に祟りなしと言うし……。
不穏な気配を感じた俺は踵を返すと、近くにある電信柱の影に隠れた。
俺の部屋を張っている男にバレないようにする為だ。
しかし、なんで俺の住んでいるマンション前に人が張り込んでいるんだ?
謎だ。
正直、気味が悪い。
もしかして、俺のストーカーか?
それとも宗教の勧誘??
しかし、スーツを着ていたし……。眼鏡だし、髪はポマードか何かの整髪料でベッタリ固められている。
高そうな時計にバッグ、胸元に光るバッチのような物……。
となると、考えられるのは一つだけ。
「わかったぞ。あれは弁護士だな……」
どうやって、俺の住んでいるマンションの住所を特定したのかは分からないが、まず間違いないだろう。
おそらく、警察に捕まった高校生達の親の誰かが示談にして貰おうと弁護士を雇ったのだろう。
まあ、警察には絶対に示談しないと言っておいたし、連絡先も教えないで下さいと伝えてあった。
警察から俺の連絡先を聞き出す事ができなかった。だからこそ、俺の自宅に張り込んでいるのだろうと思われる。
「よし、それなら俺は……」
そう呟くと、俺は近くのビジネスホテルに連泊する事に決めた。
家に戻ろうと思ったのも、高校生達が逮捕されてもう大丈夫だと判断した為だ。
新たな問題が発生したのであれば、その要因が取り除かれるまで、徹底的に避ければいい。
部屋の前に張り込んでいる弁護士から逃げる様にその場を立ち去ると、俺は西葛西駅まで向かった。
弁護士が部屋の前で張っている。
高校生達の動画は既に拡散済で、目元は隠しているものの、風貌や体格から俺が特定されてしまう可能性もある。
いや、もうされていると見るべきだろう。
だからこそ、ほとぼりが冷めるまでは……。
具体的には、高校生達の刑罰が確定し、弁護士が俺の部屋に張り付かなくなるまでは、家に帰る訳には行かない。
ぶっちゃけ、弁護士はあまり好きじゃないし、万が一、弁護士から内容証明郵便とか届けられても嫌だ。
という事で、俺は今、東西線から数々の電車を乗り継ぎ新橋駅の近くにあるカンデオホテルにいた。
カンデオホテルは良い。
館内は清潔感があるし、スタッフの対応も丁寧。屋上にスカイスパと呼ばれる星空に一番近い露天風呂があり、アメニティも豊富。
何より、必要以上に係わってこようとしないスタッフ達が素晴らしい。
俺の元職場こと、アメイジング・コーポレーション株式会社を訴える為に予約した弁護士事務所も東京駅近くだったし、もってのこいだ。
「さてと……。なんだか腹が減ったな。とりあえず、鳥貴族にでも行くか」
鳥貴族とは、税込三百二十七円均一の焼鳥屋だ。
「いらっしゃいませ! 一名様でよろしいでしょうか?」
「はい。一名です」
「それでは、こちらにどうぞ。一名様ご来店です!」
そう言って通されたのは、カウンター席だった。
新型ウイルス対策の一環か、席にはパーテーションが完備されている。
「お飲み物は何に致しますか?」
「う~ん。それじゃあ、メガ金麦で」
「はい。メガ金麦ですね!」
「ああ、塩だれキューリと、もも貴族焼のたれもお願いします」
「はい! 塩だれキューリともも貴族焼のたれですね。少々お待ち下さいませ!」
料理を注文して一分経たない内に、メガ金麦と塩だれキューリが運ばれてくる。
「お待たせしました。メガ金麦と塩だれキューリになります」
「ああ、ありがとうございます」
料理を受け取った俺は、早速、メガ金麦に口を付けた。
「ふう……」
やはり、店で飲むお酒は美味しい。
メガ金麦も飲み応えがあるし、塩だれキューリもいい塩梅だ。
これがあれば、何杯でもメガ金麦を飲める気がする。
スマートフォンを片手に、お気に入りのネット小説を読みながら酒を呑んでいると、突然、画面に知らない番号が表示されスマートフォンが鳴り出した。
うん?
誰だこれ?
知らない番号だ。
とりあえず、今、表示されている番号を入力すると、弁護士事務所の電話番号である事が分かった。
もしかして、明日、アポイントメントを取った弁護士からの電話だろうか?
「はい」
余計な事は言わず、ただ淡々とそう呟くと、電話口から声が聞こえてくる。
『私、野梅法律相談事務所の弁護士、野梅八屋と申します。高橋翔様の電話番号でよろしかったでしょうか?』
ヤバい奴や……!
名前からしてヤバい。
少なくとも、俺がアポイントメントを取った弁護士事務所じゃない見たいだし、とりあえず、知らんフリをしておこう。
「いえ、違いますね。間違い電話じゃないですか?」
即座にそう切り返すと、野梅弁護士が戸惑いの声を上げる。
『えっ? 本当ですか?? 本当にこの電話は高橋翔様の電話ではないのですか?』
「高橋翔ですか? どなたです? それ?」
『ま、間違い電話です。失礼しました』
野梅弁護士は電話越しにそう言うと、電話が切れる。
どうやら、やり過ごす事に成功したらしい。
野梅弁護士の電話をやり過ごしてすぐ店員が注文した貴族焼を持ってくる。
「お待たせしました。注文のもも貴族焼になります」
「ああ、ありがとうございます」
店員から貴族焼を受け取ると、追加でメガハイボールと、チキン南蛮、とり釜飯を注文した。
やはり鳥貴族に来たら、とり釜飯は欠かせない。
「さて……」
スマートフォンを置き、貴族焼の串を手に取ると、串に刺さっている鶏肉とネギを口に含んで咀嚼する。
うん。安定の美味しさだ。
流石は鳥貴族。メガ金麦と貴族焼の相性が堪らない。
しかし、あの高校生達、弁護士を雇ったのか……。
必死だな。まあ、当然か……。
あいつ等のやった事はカツアゲではない。カツアゲという名の強盗致傷だ。
一度は三千万円の当選くじを強奪しているのだ。あの時の悔しさは忘れない。
何よりこの俺に対して暴行しているからね?
痛かったなぁ~あれ、特にあの自転車の空気入れで背中を殴られたやつ。本当に痛かったわ!
まさか鈍器で攻撃してくるとは思わなかったわ!
初級回復薬で傷を癒したんだからいいじゃないって?
んなわけねーだろっ!
こっちは痛い思いしているんだよ!
初級回復薬があったのも、偶々なんだよ!
俺が初級回復薬を持っていなければ、全身打撲を負っていた。血も出ていたし、その報いは必ず受けて貰う。示談なんて絶対してやらないんだからね!
「お待たせ致しました。こちら、注文の品になります。あっ、空いたグラスはおさげしますね」
そんな事を考えていると、店員がメガハイボールと、チキン南蛮、とり釜飯を持ってきた。
テーブルにそれらを置くと、とり釜飯のセットに火を灯し、「お召し上がりまで三十分お待ち下さい」といい、空になったグラスを片手に席を立つ。
片手にスマートフォンを持ちながらチキン南蛮を口に運ぶと、チキン南蛮のジューシーな味わいが口に広がってくる。
そのまま、メガハイボールを口にすると、幸せ一杯の余韻が口を伝った。
久しぶりに食べるチキン南蛮は、何故こんなにも美味しいのだろうか?
流石は鳥貴族だ。
庶民の懐に優しい値段設定でこれ程、美味しい物を食べさせてくれるとは……。
まあ、それは置いておいて、丁度、読んでいたネット小説も最新話まで読み終わった。次の小説でも読むかな……。
メガハイボールを片手に、スマートフォンをスワイプしていると、突然電話がかかってくる。スワイプしていた指で、そのまま反射的に通話ボタンをタップすると、またしても野梅弁護士が電話口に現れた。
43
「最強呪符使い転生―故郷を追い出され、奴隷として売られました。国が大変な事になったからお前を買い戻したい?すいませんが他を当たって下さい―」を公開しました。皆様、是非、ブックマークよろしくお願い致します!!!!ブックマークして頂けると、更新頻度が上がるという恩恵が……あ、なんでもないです……。
お気に入りに追加
1,129
あなたにおすすめの小説

最強美少女達に愛されている無能サポーター 〜周りの人から馬鹿にされ続けてもう嫌なのパーティメンバーの天才たちが離してくれない〜
妄想屋さん
ファンタジー
最強の美少女パーティメンバーに囲まれた無能、アルフ。
彼は周囲の人の陰口に心を病み、パーティメンバー達に、
「このパーティを抜けたい」
と、申し出る。
しかし、アルフを溺愛し、心の拠り所にしていた彼女達はその申し出を聞いて泣き崩れていまう。
なんとかアルフと一緒にいたい少女達と、どうしてもパーティを抜けたい主人公の話。
『自重』を忘れた者は色々な異世界で無双するそうです。
もみクロ
ファンタジー
主人公はチートです!イケメンです!
そんなイケメンの主人公が竜神王になって7帝竜と呼ばれる竜達や、
精霊に妖精と楽しくしたり、テンプレ入れたりと色々です!
更新は不定期(笑)です!戦闘シーンは苦手ですが頑張ります!
主人公の種族が変わったもしります。
他の方の作品をパクったり真似したり等はしていないので
そういう事に関する批判は感想に書かないで下さい。
面白さや文章の良さに等について気になる方は
第3幕『世界軍事教育高等学校』から読んでください。

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。
下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。
豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。
小説家になろう様でも投稿しています。

聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】
青緑
ファンタジー
聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。
———————————————
物語内のノーラとデイジーは同一人物です。
王都の小話は追記予定。
修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。

パーティのお荷物と言われて追放されたけど、豪運持ちの俺がいなくなって大丈夫?今更やり直そうと言われても、もふもふ系パーティを作ったから無理!
蒼衣翼
ファンタジー
今年十九歳になった冒険者ラキは、十四歳から既に五年、冒険者として活動している。
ところが、Sランクパーティとなった途端、さほど目立った活躍をしていないお荷物と言われて追放されてしまう。
しかしパーティがSランクに昇格出来たのは、ラキの豪運スキルのおかげだった。
強力なスキルの代償として、口外出来ないというマイナス効果があり、そのせいで、自己弁護の出来ないラキは、裏切られたショックで人間嫌いになってしまう。
そんな彼が出会ったのが、ケモノ族と蔑まれる、狼族の少女ユメだった。
一方、ラキの抜けたパーティはこんなはずでは……という出来事の連続で、崩壊して行くのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる