忘れる国の話

岡本羅太

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END.1〜忘れる幸せ

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 何日が経っただろうか。少しやつれたララはゆっくりと起き上がった。シュウもそれに気付き起き上がった。ララの横にはシュウが苦労して採った果物や木の実が置いてあった。
 ララは見向きもせず、真っ直ぐと道に沿うかのように歩き始めた。
「大丈夫?」
 シュウの声にも反応はしなかった。
 しばらく歩くと空気の澱んだ街に出た。空は黄色いモヤに隠れ、川は赤く濁っている。
「シュウ。装置を貸して」
「え?」
 シュウはポケットに手を入れた。あの豆電池のような装置はまだ持っていた。
 ララは目の前の建物の一つの窓から目を離さずにシュウの方へ手を伸ばしている。
「でも…」
「いいから、はやく」
 シュウは思わず涙を流した。それを渡したらどうなるかはなんとなく察しがついたからだ。
 涙を拭ったその手で、ララに装置を渡した。
 受け取ったララは向きを確かめ、両手を頭の後ろに回し、装置を付けた。
 カチッ。
 装置がはまる音とともに、ララの頭から一年以上前の記憶が抜け落ちていく。思い出す時とは違い、それは一瞬だった。
「あれ?シュウ。どうして泣いてるの?」
 リュックを下ろし、膝をついてシュウを抱き寄せる。
「なんでもないよ!」
 シュウは笑顔を向けてララに言った。

(完)
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