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エピローグ 【放課後の教室にて】
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忠宏: はぁ、何とか書き終えた~! ねぇ、こんな感じでどうかな。ラストもうちょっと書き足したほうがいいかもだけど。勇や啓太が語ってくれたこと、結構いい具合に詰め込めたと思うんだぁ。
勇 : つまり……早速、叙述トリックに挑戦してみたってことか。
忠宏: そう、叙述トリックについて書いたんだ。
勇 : そうじゃなくて。いかにも「僕=啓太」って感じで書いてるけど。本当は啓太じゃなく、忠宏が書いたんだろ?
忠宏: あ……そうだね、言われてみれば。
勇 : 意識したんじゃねぇのかよ。それにしても、これを忠宏が書いたってことが、すっげぇ意外なんだけどな。叙述トリックの名前すら知らなかったってのに、こんな詳しく長々と。それこそ不意打ちされた気分だぜ。
忠宏: 知らなかったけど……こないだ勇たちが教えてくれたじゃんか。こんな風に熱~く語ってさ。啓太のメモをもとに、あの時のことを思い出しながら創作したんだけどさ。二人が話してくれたことは、ちゃぁんと覚えてるよ。勇も啓太も僕の大事な親友だから、ねッ。
勇 : ……! そ、そんなことより啓太。おまえ、勝手に作者にされてんぞ。
啓太: (勇、俄かに赤くなっちゃって。こっちへ話題ふってくるかぁ。)そこは、まぁ……単に、〝事実に基づいたフィクション〟ってことでいいんじゃないかなぁ。叙述トリックというには、それこそ伏線が足りてないと思うし。
勇 : 気になんの、そこかよ。足りてないってことは、全くないってわけでもないんだな。
啓太: そうだね。まず、「小説でした」ってことに関しては、僕たち三人、仲間内での会話の筈が、それ以外の人――読者を意識した書き方になってる箇所があるよね。「小説でした」を叙述トリック・パターンの一例として挙げてるとこも、伏線って言えるのかもしれない。ちょっと こじつけになっちゃうかな。
忠宏: へぇ……
勇 : へぇって、つまり、書いてるうちに偶然そうなっただけなんだな。
啓太: 次に「忠宏 作でした」についてだけど。たまに目線がぶれて 忠宏のになっちゃってるとこかなぁ。けど、僕が書くより勇のキャラがよく出てて いいと思う。それに、何ていうか その……勇への眼差しも熱いみたいだし?
勇 :…… 啓太。お前、もしかして――妬いてんのか?
啓太: え……
忠宏: あ~~っ、二人とも近い、ちかい! 何だよ、勇っ。僕からは離れようとするくせに、啓太には――
勇 : 忠宏は普段から近づきすぎなんだよっ!
啓太: あ、え~と、まだ続きあるから、二人とも聞いてくれる? あと、僕が書いたなら――流石に自分の名前を書き間違えたりはしないかな、ってとこが。
忠宏: えっ、マジ?! どこどこ??
勇 : ここ。俺がしゃべってることになってる箇所。誰だよ〝敬太〟って。
忠宏: うわぁ、ホントだ~。ごめんよ、啓太ぁ。
啓太:(って、忠宏のそんなところも好きなんだけどね。だから――)気にすることなんてないさ。だって、僕らが今いる場所だって、もしかしたら――
忠宏: 漫画の中かもしれないよね♪
勇 : そこは せめて、小説って言えよッ!
【 完 】
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