僕らはミステリー愛好会! ~シリーズ全三話収録~

村崎けい子

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トリックか否かの境界線

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 そういえば、幽霊でしたの逆パターン。
〝亡くなったと思われた人物が、実は生きていました〟は、ミステリー(殊に推理小説)に用いられることが多い。殺害されたかにみえた人物が まだ生きていて、しかも犯人 (黒幕)、という。
 何だか とっても物騒だけど、こっちのほうが現実的な感じはする。物語を盛り上げる為のトリックとして使うことも、十分アリだと思うんだ。 
 一人称で、(本人は被害者と思ってるけど)客観的にはストーカー、っていうものもあるよね。 
 そもそもだけど。殆どの推理小説には、何かしらミスリードの要素が含まれているものだと思うんだ。よくある〝怪しいと思っていた人は無実で、別の人が犯人でした〟ってのも、叙述トリックの一種と言えるんじゃないだろうか。

 但し、〝視点となっているキャラクター自身も騙されているような場合は、叙述トリックとはいわない〟という定説は あるらしいんだ。
 つまり、叙述トリックの該当条件として。〝実は○○でした〟だけでなく、〝【 語り手にとっては明らかな事柄 】を読み手には敢えて分からないように表現したもの〟というのがあるってこと。ここまでいろいろ語ってきといて、今更なんだけどさ。

 正直、僕には違いがよく分からない。実際、明確な線引きをすることは難しいんじゃないかと思う。
 例えば――  
 ・当時は騙されていた、或いは勘違いしていたけど、現在は真相を知っている語り手が、回想する構成のもの。
 回想シーンでの表記含めて、叙述トリックといえる場合があるんじゃないかと思う。 

 ・主人公は本気でそう思っていて、読み手からもそれが本当であるように思える。しかし、他の登場人物たちは主人公の勘違いであることを知っている。
 こういう場合も叙述トリックといっていいんじゃないかな。ストーカー目線を使ったショートショートとかで見かけたりするよね。

 ・視点の人物――主人公を、他の登場人物全員で騙している。主人公が騙されていたことは、ラスト近くなって読者に明かされる。 
 この場合はどうだろう。単に〝どんでん返し〟? 
 あれ? とすると、さっきの『みにくいあひるのこ』のように、登場キャラクター全てが真相 (主人公は白鳥)を知らなかった場合は、叙述トリックには当てはまらないのかもしれないね。
 余談だけど、同作者の『はだかの王さま』。
 犯人 (嘘つきの二人組)以外、全キャラクターが騙されている。
 勿論 読者は真相を知っているから、叙述トリックでは全然ないんだけれど。読み手に明らかなことを、主人公はじめ街じゅうの人々が騙されているって物語も珍しいんじゃないかなって思う。
 こういった演出を、コントに使っても面白そうだよね……
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