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席替え大作戦①

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 ゴールデンウィーク明けの学校は何とも身体がダルい。休みの間はお昼近くまで寝て、朝方まで起きていてしまう。そうして生活リズムを狂わせた学生たちは、だいたい寝不足そうな表情をして登校するものだ。
 かく言う私もその一人で、今日は大変寝不足でございます。なぜ寝不足かと言うと、

「あ、神泉さん。おはよう」
「~~っ! 倉敷くん、お! おは、おはしゃす……」

 倉敷くんと会えるのが楽しみすぎて寝れなかったから! そして相変わらず照れて挨拶がまともに返せない……。
 しかし、久しぶりに会えたという事実は嬉しいものだ。私が上機嫌で席に着くと、すでに教室に居た佐奈がやってくる。

「あらー栞里ちゃん、何だか朝から機嫌良いじゃないの」
「ふふーん、何てったって今日も朝から倉敷くんと挨拶できたのです。そりゃあ機嫌もよくなるよね!」
「あんたデートまでしたのに、よく挨拶でそこまで上機嫌になれるよね」
「挨拶をバカにするなぁ!」

 挨拶はとても重要なんだぞぉ!
 相変わらず佐奈が茶化してくるが、一応ここ最近の私と倉敷くんのことは話している。なんだかんだ言っても、やっぱり佐奈が一番の友達だ。嬉しいことも、悲しいことも共有したい。……まぁ最近は私が一方的に共有しているんだけど。

「それにしても、ゴールデンウィークが終わると一学期も半分が過ぎたって気がするわよね」
「実際はまだ三分の一くらいだけどね」
「早く夏休み来ないかしらねぇ」
「私は休みいらないけど……」

 だって特別な理由がないと倉敷くんと会えなくなるしね。そんなの辛すぎるうわあああ!

「ちょっと前の栞里にそのセリフを聞かせてあげたいわ」
「私もそう思う……」
「くぅ、ハニかんで言うんじゃないよ可愛いなぁ全く! 」

 でも本当に、倉敷くんに恋をしてから私の学校生活は一変したのです。学校がこんなにも楽しくなるなんて思いもしなかった。
 これからもこんな生活が続いて欲しいと、私は切に願う。

「そんな栞里に朗報だよ。なんと今日の6限目のホームルームでは席替えをするみたいです。……この意味、わかる?」
「え、席替え、席替えはそりゃあ今の席を変える……はっ……——!?」

 席替えですと!? 今は出席番号順に並んでいるこの席配置を、ごちゃ混ぜにするあの席替えですと!?
 ちょっと前までの私なら対して気にも止めなかっただろう。後ろの席に行けたら良いなぁくらいにしか思わなかっただろう。しかーし! こと恋の乙女となってしまった今の私にとって、それはどれほど重要な意味を持つか……。

「お分りいただけただろうか……」
「佐奈、私……私っ!」

 倉敷くんの隣になりたい! 隣の席になれたら、どれほど学校が楽しくなることか。今でも楽しいのに、もっとハッピーになっちゃう!

「まぁでも、どうやらクジ引きらしいからどうしようもないんだけどね!」
「うぅ、今から緊張してきた……」

 知らない方が授業に集中できたのではと内心思いつつ、私は6限目まで祈りを捧げ続けたのでした。

◇◇◇
~同日6限目ホームルーム~

 担任の先生からプリントが回される。残り一学期の予定表だ。ゴールデンウィーク明けということもあり、今日のホームルームとしてはどうやらこれの説明が本命のよう。
 まず5月は中間テスト、6月に体育祭、そして7月に期末テスト。それらが終わってようやく、生徒待望の夏休みが訪れるらしい。
 体育祭までまだ約一ヶ月あるのかぁ……。楽しみなだけに遠く感じるなぁ。というか、中間テストの存在を忘れていた……。もうそれだけで憂鬱だよ。
 先生が30分ほどプリントの説明をし終えると、いつの間にかクラス委員が前に立っており、

「えぇ、それでは今日のホームルームの残り時間は席替えとなります」

 クラス中で大きな歓声が湧いた。やはり学校に置いて席替えは重大イベントみたい。
 倉敷くんの方を見ると、どうやら倉敷くんもそわそわしているご様子だ。やっぱり気になるんだね可愛いっ!
 その様子が可愛くてつい眺めていると、倉敷くんがチラとこちらへ一瞬振り返り目が合ってしまう。相変わらず目が合うと、胸がドキドキして顔が真っ赤になってしまう私は、すぐに視線を逸らしてしまう。
 うぅ、なんとか、なんとか倉敷くんの隣に……!
 果たして私の祈りは届いてくれるのだろうか。運命の席替えが今始まる!

 ……後ろから眺めてるのも割と好きなんだよなぁ……。
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