3 / 3
悟りの三賢者と余りの賢者
しおりを挟む
「私にも一本貰えませんか?」
「はいよ」
「すいません」
タバコを咥え一緒に渡されたライターで火を付ける。
やめる時まで吸っていたものと違う銘柄だが悪くない。
「あんた、若いのに美味そうに吸うね」
「そうですか? 久しぶりなので自分じゃどんな風に吸ってるのかわからないですね」
「禁煙してたんか?」
「ええ、吸ってた銘柄が発売中止になりましてそのままタバコも辞めました」
「なにを吸ってたんだ?」
「峰です」
「懐かしいな、俺も昔は吸ってたわ」
そのまま煙草吸いながら話していると、年配のご婦人が近づいて来た。
「こんにちは」
「はい、こんにちは」
「貴女も気が付いたらここへ?」
「ええ、こんなものを持ってここに居ましたよ」
「私もです」
「俺もだ」
御婦人はノートを、俺と煙草をくれたおじさんはワープロだ。
「こつこつと書いてたんですけど、結婚が決まってそれっきり。旦那や相手の親に見つかると恥ずかしいので燃やしたんですがね」
「俺は壊れてしまってそれっきりだな、パソコンで読み込めるのかもしらねーがフロッピーにカビ生えてたからそのままだったわ」
「うちも似たようなものですね」
「小説家になろうと努力したんだがな、収入が安定すると気持ちも萎んだわ」
「私もです」
遅めの自己紹介をし、ここへ来る前の話などをする。
タバコを貰った山下さんも佐々木さんも何故ここにいるのかわからないそうだ。
「そう言う久保田さんは?」
「私もわからないですね、駅から出てコンビニで秋味買おうと考えてたらここに居ました」
「秋味良いな。普段は一番搾りかい?」
「ええ」
「やはり麒麟だよな」
山下さんとは趣味が合いそうだ。
「佐々木さんはワインとか飲んでそうだな」
「そんな雰囲気ありますね」
「いえいえ、普通にいいちことかを飲みますよ」
「いいちこ」
「見た目から想像出来ない名前が出ましたね」
*
「孤独だ…」
懐かしい気持ちで手元のノートを読んでたうちにグールプが出来てしまっていた。
しかも入る隙間が無さそう。
会ってすぐ普通に話せるとかコミュ強過ぎるだろ…。
て言うか、なんでこんな状況で普通に話しているんだ。
いや、思えば俺も変だな。
いつの間にか知らない場所に居たってのに持ってたノートを読み始めるとかしないだろ。
「何か細工をされているのか?」
俺だけ1人なのもそのせいか? そのせいだろう? そのはずだろ?
*****
久保田 作家志望だった 37歳 中華料理店勤務
山下 作家志望だった 52歳 タクシー運転手
佐々木 作家志望だった 48歳 御婦人
ぼっち 孤独 29歳 コンビニ店員
続かない…。
「はいよ」
「すいません」
タバコを咥え一緒に渡されたライターで火を付ける。
やめる時まで吸っていたものと違う銘柄だが悪くない。
「あんた、若いのに美味そうに吸うね」
「そうですか? 久しぶりなので自分じゃどんな風に吸ってるのかわからないですね」
「禁煙してたんか?」
「ええ、吸ってた銘柄が発売中止になりましてそのままタバコも辞めました」
「なにを吸ってたんだ?」
「峰です」
「懐かしいな、俺も昔は吸ってたわ」
そのまま煙草吸いながら話していると、年配のご婦人が近づいて来た。
「こんにちは」
「はい、こんにちは」
「貴女も気が付いたらここへ?」
「ええ、こんなものを持ってここに居ましたよ」
「私もです」
「俺もだ」
御婦人はノートを、俺と煙草をくれたおじさんはワープロだ。
「こつこつと書いてたんですけど、結婚が決まってそれっきり。旦那や相手の親に見つかると恥ずかしいので燃やしたんですがね」
「俺は壊れてしまってそれっきりだな、パソコンで読み込めるのかもしらねーがフロッピーにカビ生えてたからそのままだったわ」
「うちも似たようなものですね」
「小説家になろうと努力したんだがな、収入が安定すると気持ちも萎んだわ」
「私もです」
遅めの自己紹介をし、ここへ来る前の話などをする。
タバコを貰った山下さんも佐々木さんも何故ここにいるのかわからないそうだ。
「そう言う久保田さんは?」
「私もわからないですね、駅から出てコンビニで秋味買おうと考えてたらここに居ました」
「秋味良いな。普段は一番搾りかい?」
「ええ」
「やはり麒麟だよな」
山下さんとは趣味が合いそうだ。
「佐々木さんはワインとか飲んでそうだな」
「そんな雰囲気ありますね」
「いえいえ、普通にいいちことかを飲みますよ」
「いいちこ」
「見た目から想像出来ない名前が出ましたね」
*
「孤独だ…」
懐かしい気持ちで手元のノートを読んでたうちにグールプが出来てしまっていた。
しかも入る隙間が無さそう。
会ってすぐ普通に話せるとかコミュ強過ぎるだろ…。
て言うか、なんでこんな状況で普通に話しているんだ。
いや、思えば俺も変だな。
いつの間にか知らない場所に居たってのに持ってたノートを読み始めるとかしないだろ。
「何か細工をされているのか?」
俺だけ1人なのもそのせいか? そのせいだろう? そのはずだろ?
*****
久保田 作家志望だった 37歳 中華料理店勤務
山下 作家志望だった 52歳 タクシー運転手
佐々木 作家志望だった 48歳 御婦人
ぼっち 孤独 29歳 コンビニ店員
続かない…。
0
お気に入りに追加
2
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
幼馴染みの2人は魔王と勇者〜2人に挟まれて寝た俺は2人の守護者となる〜
海月 結城
ファンタジー
ストーカーが幼馴染みをナイフで殺そうとした所を庇って死んだ俺は、気が付くと異世界に転生していた。だが、目の前に見えるのは生い茂った木々、そして、赤ん坊の鳴き声が3つ。
そんな俺たちが捨てられていたのが孤児院だった。子供は俺たち3人だけ。そんな俺たちが5歳になった時、2人の片目の中に変な紋章が浮かび上がった。1人は悪の化身魔王。もう1人はそれを打ち倒す勇者だった。だけど、2人はそんなことに興味ない。
しかし、世界は2人のことを放って置かない。勇者と魔王が復活した。まだ生まれたばかりと言う事でそれぞれの組織の思惑で2人を手駒にしようと2人に襲いかかる。
けれども俺は知っている。2人の力は強力だ。一度2人が喧嘩した事があったのだが、約半径3kmのクレーターが幾つも出来た事を。俺は、2人が戦わない様に2人を守護するのだ。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる