31 / 50
船乗りの噂
しおりを挟む
「魔物って餓死するんですか?」
「餓死した魔物の死体を見たと言う話は聞いたことないですね」
魔物の餓死実験をする前に王都の冒険者ギルドで話を聞いてみたら聞いた話も記録としても餓死した魔物を知らないそうだ。
なに食べても生きていけるとかなのか?
「飢えた灰色狼の群れを討伐したこともあるぜ」
「餓死した魔物は他の魔物の餌になっちまうんじゃないか?」
話を聞いていたらしい顔見知りの冒険者がそんなことを言う。
「なるほど、その可能性のほうが高そうだな」
「なんでまたそんなのが気になったんだよ?」
「取ってきた大型魔獣を俺だけで処理出来る方法は無いかなと思ってさ」
「それなら深い池作って沈めりゃ良いんじゃねーの?」
「浮かんでくるからなぁ」
「岩でも落とせば良いだろ」
「おお…」
それは思い付かなかったな。
お礼を言って処分に困ってる塩を渡してギルドを出る。
この辺りだと塩を買えばそれなりの値段になる、取り扱える商会が決まってるので換金は出来ないけど。
泊まってる宿屋にでも渡せば交渉次第で宿泊費が安くなるくらいは有るんじゃないかな?
大型魔獣の溺死を試したい気がなくもないが大量の水を確保するにはまた海に行く必要があるからそのうちで良いか。
湖の容器だと大き過ぎるし、氷の精霊に頼んで小さめのを作ってもらおうかな。
*
城で料理人と薬師に魚を見せて買い取ってもらう。
食べると状態異常になる魚は全て薬師に渡した。知らない魚も居るらしく実験が楽しみだと言っていた。
異常にならない魚の中には料理人の知らない魚が混ざっていて、未知なる味とそちらも楽しそうだ。
「このような魚が海にはいるのですね」
「魚、なのか?」
「魔物ですかね?」
上半身が人間の少女で下半身が魚で有る。
「苦しそうですが、このままだと死んでしまうのでしょうか」
「流石に料理する気には慣れないですね、これは」
確かにね。
「身体の構造が気になるな、この身体で海に住めるのだろう」
薬師さんは解体する気だな。
彼女?を調べることで水の中で息が出来る道具や薬を作れるようになるかも知れないし。
「苦しんでるのよ、しまってあげて」
王女様? なんでここに?
とりあえず苦しんでる彼女をしまい、臣下の礼を取ろうとしたところで王女の従者に止められる。
俺は王の持ち物だが王族の持ち物ではないので、そこを勘違いすると俺よりも王女の方に問題が発生するんだよな。
だが、やはり慣れないのは仕方がない。
ただ、そうすると先ほど彼女をしまったのは不味かったか? しまったところにたまたま姫様が来た、そうしておこう。
「どうしてここへ?」
「生きた海の魚を見られると聞いて来ました。今を逃したら一生見ることは出来ないと思いましたのでわがままを言わせてもらったの」
王女様に限らずこの辺りに住む人が生きた海の魚を見る機会はないだろうな。
「それで、先程の少女も海の魚なのですか?」
「海の中で取ったものなのは確かですが、魚なのか魔物なのかわかりません」
「言葉は話しましたの?」
上半身が人間と同じなら話すことが出来るのか?
魔物だとしたらあり得るか、話す内容はわからないがオークが会話をしているのは見たことがある。
「話せるかも知れませんが、私たちと同じ言葉かはわかりません」
「そうですか」
「話してみたいのですか?」
「海で暮らす人がどのような生活をしているのか気になりますでしょう?」
「人だとお考えなのですか?」
「違うのですか?」
「わかりません」
どうなんだろうか。
雪の精霊なら知っているだろうか。水の精霊も知っているかも知れない。
海へ一緒に行けば収納した時に何かわかったのか?
「では直接本人に聞いてみましょう!」
いや、言葉通じるかわからないからね。
*
訓練場近くにある檻水槽の作られた部屋へ来る。
途中、事情を話して訓練中の騎士を王女の護衛に借りた。
水の中で話しても声が聞こえないと思うので頭ひとつ分くらい出せそうな位置まで水を入れて、念の為に海で取れた塩を混ぜて海水のようにする。
「檻は要らないのではないでしょうか?」
「何があるかわかりませんので」
未知なるものには警戒し過ぎくらいがちょうど良いとギルドでも言われたしな。
「それでは出します」
彼女を出すと水の中なのに深呼吸のような動作をしている。
水中で呼吸が出来る?
それとも水を吸ったのか?
「おお…」
少女が顔を上げてこちらを見ると、若い騎士がなんだか感動したような声をあげる。
精霊たちと同じくらい顔が整っているからかね?
「ここまで人にそっくりな魔物を見るのは初めてだ」
「ああ…」
確かにな。
しかし、海の中に住むのに人と近い形や肌を持つものなのか?
泳ぐのに邪魔に思えるが。
「これがセイレーンなのかも知れないな」
「セイレーン?」
「人間の女のフリをして船乗りを誘い食べる魔物だ」
「そんな魔物が海に入るのか」
「いや、船乗りの間でそんな話があるってだけで実際居るわけじゃないらしい。ただ、これを目撃した船乗りが思い付いたことなのかなってね」
騎士たちがそんな話をしている。
見た目が少女だからか警戒心が緩むのだろうな。
「話かけたらどうだ?」
いつの間にか陛下と付き人まで来ている。
「わかりました」
何かあったら即収納をするつもりで近づいていく。
辺りを面白そうに見回していた少女は俺が近づくのに気が付いたのかこちらを見て手を振ってきた。
その動作だけ見ると普通に会話出来そうな気がするな。
でも、何を話せば良いんだ?
わからない。
「お腹空きました、お兄さんは何か食べるもの持ってないですか?」
普通に話しかけられたのだが…。
「えっと、魚で良いかな」
「はい!」
お腹いっぱいになって満足した彼女と話したら、魔物じゃなくて海の精霊だとわかった。
そもそも港街で出した時は上半身が人の魚なんて居なかったのに何故と思っていたんだ。
魚になれるんですよと言った彼女が上半身を魚にしたり、人の姿にもなれますよと下半身も人と同じくなったり。
魚に姿を変えて泳いでいたところを収納されて、なんだか面白そうだったのでそのままで居たのだとか。
「海に帰してきます」
「そうしてくれ」
精霊って実はその辺りを普通に歩いてるのではって気がしてきた。
*****
2021年4月27日
前話を少し削りました
前 水の精霊と会話有り
後 水の精霊と発言を消し海へは1人で行ったことに
「餓死した魔物の死体を見たと言う話は聞いたことないですね」
魔物の餓死実験をする前に王都の冒険者ギルドで話を聞いてみたら聞いた話も記録としても餓死した魔物を知らないそうだ。
なに食べても生きていけるとかなのか?
「飢えた灰色狼の群れを討伐したこともあるぜ」
「餓死した魔物は他の魔物の餌になっちまうんじゃないか?」
話を聞いていたらしい顔見知りの冒険者がそんなことを言う。
「なるほど、その可能性のほうが高そうだな」
「なんでまたそんなのが気になったんだよ?」
「取ってきた大型魔獣を俺だけで処理出来る方法は無いかなと思ってさ」
「それなら深い池作って沈めりゃ良いんじゃねーの?」
「浮かんでくるからなぁ」
「岩でも落とせば良いだろ」
「おお…」
それは思い付かなかったな。
お礼を言って処分に困ってる塩を渡してギルドを出る。
この辺りだと塩を買えばそれなりの値段になる、取り扱える商会が決まってるので換金は出来ないけど。
泊まってる宿屋にでも渡せば交渉次第で宿泊費が安くなるくらいは有るんじゃないかな?
大型魔獣の溺死を試したい気がなくもないが大量の水を確保するにはまた海に行く必要があるからそのうちで良いか。
湖の容器だと大き過ぎるし、氷の精霊に頼んで小さめのを作ってもらおうかな。
*
城で料理人と薬師に魚を見せて買い取ってもらう。
食べると状態異常になる魚は全て薬師に渡した。知らない魚も居るらしく実験が楽しみだと言っていた。
異常にならない魚の中には料理人の知らない魚が混ざっていて、未知なる味とそちらも楽しそうだ。
「このような魚が海にはいるのですね」
「魚、なのか?」
「魔物ですかね?」
上半身が人間の少女で下半身が魚で有る。
「苦しそうですが、このままだと死んでしまうのでしょうか」
「流石に料理する気には慣れないですね、これは」
確かにね。
「身体の構造が気になるな、この身体で海に住めるのだろう」
薬師さんは解体する気だな。
彼女?を調べることで水の中で息が出来る道具や薬を作れるようになるかも知れないし。
「苦しんでるのよ、しまってあげて」
王女様? なんでここに?
とりあえず苦しんでる彼女をしまい、臣下の礼を取ろうとしたところで王女の従者に止められる。
俺は王の持ち物だが王族の持ち物ではないので、そこを勘違いすると俺よりも王女の方に問題が発生するんだよな。
だが、やはり慣れないのは仕方がない。
ただ、そうすると先ほど彼女をしまったのは不味かったか? しまったところにたまたま姫様が来た、そうしておこう。
「どうしてここへ?」
「生きた海の魚を見られると聞いて来ました。今を逃したら一生見ることは出来ないと思いましたのでわがままを言わせてもらったの」
王女様に限らずこの辺りに住む人が生きた海の魚を見る機会はないだろうな。
「それで、先程の少女も海の魚なのですか?」
「海の中で取ったものなのは確かですが、魚なのか魔物なのかわかりません」
「言葉は話しましたの?」
上半身が人間と同じなら話すことが出来るのか?
魔物だとしたらあり得るか、話す内容はわからないがオークが会話をしているのは見たことがある。
「話せるかも知れませんが、私たちと同じ言葉かはわかりません」
「そうですか」
「話してみたいのですか?」
「海で暮らす人がどのような生活をしているのか気になりますでしょう?」
「人だとお考えなのですか?」
「違うのですか?」
「わかりません」
どうなんだろうか。
雪の精霊なら知っているだろうか。水の精霊も知っているかも知れない。
海へ一緒に行けば収納した時に何かわかったのか?
「では直接本人に聞いてみましょう!」
いや、言葉通じるかわからないからね。
*
訓練場近くにある檻水槽の作られた部屋へ来る。
途中、事情を話して訓練中の騎士を王女の護衛に借りた。
水の中で話しても声が聞こえないと思うので頭ひとつ分くらい出せそうな位置まで水を入れて、念の為に海で取れた塩を混ぜて海水のようにする。
「檻は要らないのではないでしょうか?」
「何があるかわかりませんので」
未知なるものには警戒し過ぎくらいがちょうど良いとギルドでも言われたしな。
「それでは出します」
彼女を出すと水の中なのに深呼吸のような動作をしている。
水中で呼吸が出来る?
それとも水を吸ったのか?
「おお…」
少女が顔を上げてこちらを見ると、若い騎士がなんだか感動したような声をあげる。
精霊たちと同じくらい顔が整っているからかね?
「ここまで人にそっくりな魔物を見るのは初めてだ」
「ああ…」
確かにな。
しかし、海の中に住むのに人と近い形や肌を持つものなのか?
泳ぐのに邪魔に思えるが。
「これがセイレーンなのかも知れないな」
「セイレーン?」
「人間の女のフリをして船乗りを誘い食べる魔物だ」
「そんな魔物が海に入るのか」
「いや、船乗りの間でそんな話があるってだけで実際居るわけじゃないらしい。ただ、これを目撃した船乗りが思い付いたことなのかなってね」
騎士たちがそんな話をしている。
見た目が少女だからか警戒心が緩むのだろうな。
「話かけたらどうだ?」
いつの間にか陛下と付き人まで来ている。
「わかりました」
何かあったら即収納をするつもりで近づいていく。
辺りを面白そうに見回していた少女は俺が近づくのに気が付いたのかこちらを見て手を振ってきた。
その動作だけ見ると普通に会話出来そうな気がするな。
でも、何を話せば良いんだ?
わからない。
「お腹空きました、お兄さんは何か食べるもの持ってないですか?」
普通に話しかけられたのだが…。
「えっと、魚で良いかな」
「はい!」
お腹いっぱいになって満足した彼女と話したら、魔物じゃなくて海の精霊だとわかった。
そもそも港街で出した時は上半身が人の魚なんて居なかったのに何故と思っていたんだ。
魚になれるんですよと言った彼女が上半身を魚にしたり、人の姿にもなれますよと下半身も人と同じくなったり。
魚に姿を変えて泳いでいたところを収納されて、なんだか面白そうだったのでそのままで居たのだとか。
「海に帰してきます」
「そうしてくれ」
精霊って実はその辺りを普通に歩いてるのではって気がしてきた。
*****
2021年4月27日
前話を少し削りました
前 水の精霊と会話有り
後 水の精霊と発言を消し海へは1人で行ったことに
15
お気に入りに追加
187
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。
八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。
パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。
攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。
ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。
一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。
これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。
※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。
※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。
※表紙はAIイラストを使用。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

聖女なのに王太子から婚約破棄の上、国外追放って言われたけど、どうしましょう?
もふっとしたクリームパン
ファンタジー
王城内で開かれたパーティーで王太子は宣言した。その内容に聖女は思わず声が出た、「え、どうしましょう」と。*世界観はふわっとしてます。*何番煎じ、よくある設定のざまぁ話です。*書きたいとこだけ書いた話で、あっさり終わります。*本編とオマケで完結。*カクヨム様でも公開。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる