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男泣き
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妾の子だけが戦い向きとは言えぬスキルを持ったことに意味があったとは。
初代様がグリフォンを乗りこなしたことを何度も話して聞かせたものの、そこに慰め以外のものはなかった。
*
朝起きてドアの前と窓の下を確認、氷像は無い。
「氷像がまた出来てるかもと思ったんだけど、大丈夫だったな」
「昨日城に行ったのが良かったのかしらね?」
「たぶんね。他国の貴族が自国の都で襲われたら問題だからね」
朝食を取る為に外へ出ようとしたら、宿の主人から城からの使いが待っていると言われた。
部屋まで来ても良かったのにと言ったら城の使いが断ったそうだ。それと身分に相応しい宿へ移って欲しいとも言われた。
「この辺りは貴族様の泊まるようなところではないのです」
「それは迷惑をかけたね」
出る時に多めに支払った。
外には馬車とその横に使いの人が居た。
彼が言うにはこのまま馬車に乗り登城して欲しいそうだ。
「よく予定が組めたね」
「何よりも優先せよと」
何がそんなに効果あったんだろう?
硬貨? ドゥーンハルトの名前? 入る時に揉めたこと? 男たちを凍らせたこと?
ワイバーンに乗って来たのを伝えたから凄い急ぎなことだと勘違いしてるのかも?
たんにグリフォン渡しに来ただけって知ったら投獄されるかも…。
*
皇帝陛下が既に待っていると言う部屋に通される。
やはり何か勘違いされている可能性が高い、困った。
「挨拶は良い」
「はい」
それ程緊急だと思われている…不味い、が仕方がない。
近くにいる人へ王様から預かった書簡を渡す。それを皇帝陛下の側近らしき人に渡され確認。
「なんと!」
驚くようなことが?
グリフォン渡す以外にも何か有ったのか?
皇帝陛下が読み始める。
「おお!」
立ち上がって叫んだが…。
「私の代でグリフォンを迎えることが!」
え、それだけ?
「使者殿がグリフォン様をお持ちと書かれているが!」
立ったまま泣いている皇帝陛下に代わり、側近の人から質問された。
あとグリフォン様とは?
「はい。何時でも出すことが出来ます」
「おお…」
「ここで、ここで見せてはもらえぬか」
「ここだと少し狭いと思いますが」
「どれくらいの広さが必要でごさいますか?」
「そうですね、この部屋と同じ大きさでテーブルと椅子が無いのなら出せるかと」
「では私の部屋で!」
自室に魔物を? 外じゃなくて? 聖獣なんだっけ? なら良いのか?
「わかりました。ただ、人を襲いそうな時はすぐにしまいますので」
皇帝陛下の自室と言うか寝室にグリフォンを出した。
人を襲うかもと身構えていたのだけれど、皇帝陛下の元にゆっくりと歩いていき顔を舐め始めた。
味見か?
「まこと、まことに…」
皇帝陛下はグリフォンの首に抱きつき、泣き始めた。
グリフォンはそのまま床に座り、皇帝陛下のされるがままになっている。
一緒に来た側近らしき人、騎士、使用人なども皆泣いている。
この空気を壊すことも出来ないので話し掛けられるまで黙っていよう…。
*
「あの子はね、自分が皇帝に向いていないとずっと思っていたのですよ」
何故だが皇太后様に呼ばれて話を聞かされている。
今の皇帝陛下以外の皇帝候補達は大小の違いは有る物の皆戦闘向けのスキルを手に入れたのに、長子で有る皇帝陛下は調教スキルだったそうだ。
帝国の男は強い者が好まれるそうで帝国を治める皇帝が調教スキルではと昔から言われていて、本人も皇帝になることを弟達に譲ろうと考えていたこともあったのだとか。
ただ、皇帝陛下の父で有る前皇帝が強く推したらしく引き継いだらしい。
今も影で皇帝辞めて馬番でもしてろと弟たちに言われてたりするのだが、あまり強く言えないらしい。
「だから、あの子が調教スキルを手に入れた意味がわかって私は嬉しいのよ。この日の為にあの子は神様から調教スキルを手に入れたの」
皇太后様が涙を拭きながらそんなことを言う。
何時の間にか出ていた水の精霊が皇太后様の背中を摩ってるのだけれども。
周りの人達は何も言わないし。
帝国や皇帝に持っていた印象とだいぶ違うなぁ。
水の精霊の身体目的で兵士や暗殺者?を使った国だったのでは?
*
城の地下牢に首都へ入る時に揉めた連中を全裸で出す。
皇帝陛下の弟も中に含まれているらしく、水の精霊を欲しがったのはコイツではないかと思う。
「もう終わりですなロップ殿」
密かに皇帝になろうと色々動いてたらしい。
あの時も戦力になりそうな連中を確保する為に出入りする人間を見に来ていたらしい。
どの派閥にも配下を入れてあると説明してくれた皇帝陛下の側近の人に教えてもらった。
そんなことを俺に教えて良いのだろうか…。
*
色々とお誘いがあったのだがまだ学生なので帰る必要があるのだと伝えたら理解してもらえた。
本音は城の中に用意された部屋が落ち着かないからなのだが。
城の中から水のワイバーンで外に出る許可と一緒に、城に直接入っても良い許可、そのことが書かれた用紙と皇帝陛下の友人に送られると言う記章を貰う。記章を身に付けておくと皇帝陛下の身内として扱われるそうだ。使わないかなぁ…。
帝国を出た後は魔車根の村に寄り畑を木で作った柱などで囲ったり、隣国の城をもとの位置に戻したりしてから帰った。
途中、水の精霊が見つけた採掘されてない鉱石や宝石などを山や地面ごと収納したが、その付近は人が住んでいないので問題ないはず。
初代様がグリフォンを乗りこなしたことを何度も話して聞かせたものの、そこに慰め以外のものはなかった。
*
朝起きてドアの前と窓の下を確認、氷像は無い。
「氷像がまた出来てるかもと思ったんだけど、大丈夫だったな」
「昨日城に行ったのが良かったのかしらね?」
「たぶんね。他国の貴族が自国の都で襲われたら問題だからね」
朝食を取る為に外へ出ようとしたら、宿の主人から城からの使いが待っていると言われた。
部屋まで来ても良かったのにと言ったら城の使いが断ったそうだ。それと身分に相応しい宿へ移って欲しいとも言われた。
「この辺りは貴族様の泊まるようなところではないのです」
「それは迷惑をかけたね」
出る時に多めに支払った。
外には馬車とその横に使いの人が居た。
彼が言うにはこのまま馬車に乗り登城して欲しいそうだ。
「よく予定が組めたね」
「何よりも優先せよと」
何がそんなに効果あったんだろう?
硬貨? ドゥーンハルトの名前? 入る時に揉めたこと? 男たちを凍らせたこと?
ワイバーンに乗って来たのを伝えたから凄い急ぎなことだと勘違いしてるのかも?
たんにグリフォン渡しに来ただけって知ったら投獄されるかも…。
*
皇帝陛下が既に待っていると言う部屋に通される。
やはり何か勘違いされている可能性が高い、困った。
「挨拶は良い」
「はい」
それ程緊急だと思われている…不味い、が仕方がない。
近くにいる人へ王様から預かった書簡を渡す。それを皇帝陛下の側近らしき人に渡され確認。
「なんと!」
驚くようなことが?
グリフォン渡す以外にも何か有ったのか?
皇帝陛下が読み始める。
「おお!」
立ち上がって叫んだが…。
「私の代でグリフォンを迎えることが!」
え、それだけ?
「使者殿がグリフォン様をお持ちと書かれているが!」
立ったまま泣いている皇帝陛下に代わり、側近の人から質問された。
あとグリフォン様とは?
「はい。何時でも出すことが出来ます」
「おお…」
「ここで、ここで見せてはもらえぬか」
「ここだと少し狭いと思いますが」
「どれくらいの広さが必要でごさいますか?」
「そうですね、この部屋と同じ大きさでテーブルと椅子が無いのなら出せるかと」
「では私の部屋で!」
自室に魔物を? 外じゃなくて? 聖獣なんだっけ? なら良いのか?
「わかりました。ただ、人を襲いそうな時はすぐにしまいますので」
皇帝陛下の自室と言うか寝室にグリフォンを出した。
人を襲うかもと身構えていたのだけれど、皇帝陛下の元にゆっくりと歩いていき顔を舐め始めた。
味見か?
「まこと、まことに…」
皇帝陛下はグリフォンの首に抱きつき、泣き始めた。
グリフォンはそのまま床に座り、皇帝陛下のされるがままになっている。
一緒に来た側近らしき人、騎士、使用人なども皆泣いている。
この空気を壊すことも出来ないので話し掛けられるまで黙っていよう…。
*
「あの子はね、自分が皇帝に向いていないとずっと思っていたのですよ」
何故だが皇太后様に呼ばれて話を聞かされている。
今の皇帝陛下以外の皇帝候補達は大小の違いは有る物の皆戦闘向けのスキルを手に入れたのに、長子で有る皇帝陛下は調教スキルだったそうだ。
帝国の男は強い者が好まれるそうで帝国を治める皇帝が調教スキルではと昔から言われていて、本人も皇帝になることを弟達に譲ろうと考えていたこともあったのだとか。
ただ、皇帝陛下の父で有る前皇帝が強く推したらしく引き継いだらしい。
今も影で皇帝辞めて馬番でもしてろと弟たちに言われてたりするのだが、あまり強く言えないらしい。
「だから、あの子が調教スキルを手に入れた意味がわかって私は嬉しいのよ。この日の為にあの子は神様から調教スキルを手に入れたの」
皇太后様が涙を拭きながらそんなことを言う。
何時の間にか出ていた水の精霊が皇太后様の背中を摩ってるのだけれども。
周りの人達は何も言わないし。
帝国や皇帝に持っていた印象とだいぶ違うなぁ。
水の精霊の身体目的で兵士や暗殺者?を使った国だったのでは?
*
城の地下牢に首都へ入る時に揉めた連中を全裸で出す。
皇帝陛下の弟も中に含まれているらしく、水の精霊を欲しがったのはコイツではないかと思う。
「もう終わりですなロップ殿」
密かに皇帝になろうと色々動いてたらしい。
あの時も戦力になりそうな連中を確保する為に出入りする人間を見に来ていたらしい。
どの派閥にも配下を入れてあると説明してくれた皇帝陛下の側近の人に教えてもらった。
そんなことを俺に教えて良いのだろうか…。
*
色々とお誘いがあったのだがまだ学生なので帰る必要があるのだと伝えたら理解してもらえた。
本音は城の中に用意された部屋が落ち着かないからなのだが。
城の中から水のワイバーンで外に出る許可と一緒に、城に直接入っても良い許可、そのことが書かれた用紙と皇帝陛下の友人に送られると言う記章を貰う。記章を身に付けておくと皇帝陛下の身内として扱われるそうだ。使わないかなぁ…。
帝国を出た後は魔車根の村に寄り畑を木で作った柱などで囲ったり、隣国の城をもとの位置に戻したりしてから帰った。
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