理想とは違うけど魔法の収納庫は稼げるから良しとします

水野忍舞

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魔車根

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この国はなんか合わないので街には寄らず手に入れた宿で寝泊まりしながら移動する。
途中見掛けない魔物とか収納したり、水の精霊が持ち帰りたいと言う植物とか山を収納したり。
城を地上部分だけ収納したので山の一部だけを目視で収納出来るのではないかと試したら出来てしまったというね…。

山には汚れた水を浄化する水麗石と昼に太陽の光を集めて夜になると光る蓄光石と言う物があったらしく、これで庭を飾ったら綺麗よと水の精霊はご機嫌である。
採掘跡などは無かったので何も言われないはず。



国境を越えた。
王様たちが言うには仲が悪いらしいけど、旅行なのにずっと手に入れた宿で寝泊まりと言うのもなぁ…。
この国では街に寄ってみたい、身分と目的隠せば大丈夫だろう? 大丈夫だよね?

「なんかこっち見て手を振ってる人がいるわよ?」
「木こりのおじさんたち?」
「行ってみる?」
「そうするか」

水の精霊に収納の中に入ってもらって降りてみる。

「こんにちは、木を集めてるんですか?」
「畑を作ろうと思ってな」 
「森の中にですか?」
「ああ、村の畑に魔車根を植えると魔物が入ってくるかも知れんからな」
「まぐるまこん?魔物が来る?」
「魔車根を知らない? この辺りのもんじゃないのか?」
「サーシャ王国から、観光しに来ました」
「それは遠くから来たなぁ」

普通の反応…だよな?
特に嫌われてる感じはしないけど…。
仲が悪いのは貴族とか王族とだけ?

「手伝うので代わりにこの国のことを聞いても良いですか?」
「良いぞ、なんでも聞いてくれ」

木を10本ほど収納して軽く整地した。

「…こいつは凄いな」
「広さがわからなかったのでこれくらいですが、まだまだやれますよ」
「そうか! それならあっち側にも広げてくれ」
「はい」



「君のおかげで助かったよ、これで冬も無事に越せる! 本当に良い出会いだった!」
「こちらも色々知れたし良かったです」

水のワイバーンに乗り村から出る。

あれから追加で100本くらい抜いた後、おじさんの住む村に抜いた木を置いて宿屋と食堂が一緒になった店でご飯を食べながら話を聞いた。
途中から他の人も加わってこの国の首都の話やら見たほうが良いものとか教えてもらう。
この国と帝国は魔王軍の城やら砦があったところで当時の物とか色々残っているらしい。 
魔王の四天王が埋葬された墓が最近見つかったみたいな話があるけど、魔王の四天王って誰も知らないから絶対嘘だろって笑ってた。



「どうだ?」
「力は本物だな、城を消したと言うのはおそらく本当だろう」
「そうか」
「だが、怒らせたら何をするかわからない性格と言うのは疑問だ」
「優しいと言うかお人好しだったな」
「食堂の飯に不満を感じていないようだったしうちの貴族連中より余程マシだろ」
「そうなると、街か宿屋で何かあったのか?」
「城は返したが宿屋は戻ってきてないらしいからな、許せないことがあったのかも知れん」
「食堂の飯を普通に食える奴が高級宿に不満を持つか?」
「そればっかりはわからん。まぁ、普通の対応をしておけば危険はないはずだ」
「馬鹿に接触させるなと報告しておくか」
「牢屋にでも入れとけと言っとけ」
「無茶言うな」



村から離れたので水の精霊に出てもらった。
収納の中に居たままだとなんか落ち着かないからな。

「魔車根て知ってたか?」
「魔王が魔物の餌として持ちこんだ物ね、魔力で育つから成長早いのよ」

また魔王か…。
最近よく聞くようになったな魔王。
上の学年になったら詳しく習うからと入学前には殆ど教えてもらってないんだよなぁ。
うちの国では扱い軽いよね魔王。

「それが飢え死にしそうな人を救う非常食になるんだからな、魔王もビックリだ」
「魔物の好物なのは変わらないから村人が食べるより先に魔物に食べられちゃうかもね」
「だったら帰りに囲いでも作ろうか」
「そこまでやるの?」
「話した人が死んでるかも知れないってのはなんか嫌じゃない?」
「どうかな」
「う~ん、俺や庭師さんたちが死んだらどう思う?」
「それは嫌かも知れないわね」



魔王関係の遺跡や戦場跡、それから四天王の墓なんかを見ながら国境を越えて帝国に入る。首都には寄らなかった。
地方都市で珍しい食べ物とか香辛料を買ったり、水の精霊用の服や装飾品を買う。
俺の服も勧められたので結構買ってしまったが、学生と騎乗用の服を着ることが多いからいつ着るかわからないな。

「冒険者らしく見えるか?」
「良いんじゃないかな、私はどう?」
「魔法使いらしさがあって良い」
「似合ってる?」
「ああ、良く似合ってる」



帝国では自前の宿に泊まりながら首都を目指すことにした。
魔車根の村で聞いた話では帝国民は余所者に厳しいらしく、露天商とかでは売値を変えることもあるから気を付けろと言われたので、用事を済ます前に揉め事を起こしたくないなと思ったからだ。

帝国の首都まで歩いて1時間くらいの場所にワイバーンで降りる。
最近騎乗移動ばかりで歩くことがあまりなかったからか、30分もしないうちに疲れた。

「何言われても良いから、ワイバーンで城に降りれば良かった」
「言い訳する間もなく斬りかかられると思うわ」

でしょうね。

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