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設立編
—第1章:あなたは誰?
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静まり返った部屋に、ドタドタと足音が近づいてくる。勢いよくドアが開かれ、鎧に身を包んだ兵士たちが多数入ってきた。その後ろからは、白い服に刺繍を施した布の衣装を纏った神官たちがぞろぞろと続いている。
「誰だお前は!? 大悪魔がこちらに落ちたと連絡が入ったが、どこに行った!」
後ろにいた男が荒々しく叫びながら、人の隙間を縫って前に出てきた。その男も白い服を着ていたが、頭には金や銀の装飾が施された、一層豪華な円錐型の帽子をかぶっている。
「はっ、あんな奴、あたしがぶっ殺してやったよ」
意気揚々と答えると、神官は「何を馬鹿な…」と訝しげに顔をしかめたが、次の瞬間、こちらを見ていた顔に驚きが宿った。
「お、お前は…もしかして聖…」
発言を遮るように、さらにもう一人、同じく豪華な帽子をかぶった神官が飛び出してきた。
「マ…マリア様…! ご無事でしたか!」
その神官は目の前まで来てひざまずく。
(わけがわからない…)
こいつらは、いきなり部屋に入ってくるなり「大悪魔がなんたら」と言っているが、それはまあいい。その大悪魔とやらは確かにあたしが倒した。でも、「マリア様」って? 何を言っているんだ、こいつは。あたしはどこにでもいるただの傭兵だ、全く意味がわからない。
混乱しながら「マリア様」と話しかけてきた神官に向き直り、答えた。
「いや、傭兵だ。あたしはヴェルベットだ」
それを聞いた神官は目を白黒させ、口をパクパクと開け閉めする。そこへ、最初に質問してきた別の神官が口を開いた。
「待ちたまえ、ヘイムダル司祭。確かにマリア様にそっくりの顔立ちだが、本人が違うと言っている。となると、マリア様の捜索部隊を直ちに派遣しなくてはならない。場合によっては、悪魔の襲撃で既にお亡くなりになっているかもしれない」
その発言に、ヘイムダルと呼ばれた神官が睨みつけるように答えた。
「ロキ司祭! 何を馬鹿な…! 目の前におられるのはマリア様に決まっている。この慈悲深い聖母のような顔立ち…見間違えるはずがない」
ロキ司祭はすかさず言い返す。
「馬鹿なことを言っているのはあなたですよ、ヘイムダル司祭。たしかに顔はある程度似ているかもしれない。しかし、汚らしい傭兵の姿じゃないか。それに、髪の色が明らかに違うだろう。マリア様は美しい金色の髪だ。そんな漆黒の髪ではない!」
二人の問答に周りもざわつき始め、兵士や他の神官たちも半信半疑の表情で見つめている。ロキ司祭はにやつく。そのとき、心の中から声が聞こえた。
—ロキ司祭は、私が死んだことにすれば、このタイミングで神官団の権力を全て自分の手にしようとしています…
(何を言っているんだ? 死んだこと? 権力?)
さっぱり理解できない。そもそもこの声はなんなんだ。気持ちが悪い。今日はずっと戦ってきて疲れているし、あたしには何の関係もない。
「悪いんだけどさ、そのマリア様とやらなんてあたしは知らないんで、もう帰るわ。あとでちゃんと傭兵料はもらうね」
「マリア様! お待ちを…私は…」
ドアに近づき退出しようとすると、ヘイムダル司祭が近くに来て囁くように言う。それを見た騎士たちは静止しようとするが、もう面倒くさくなって無視して城を後にした。
「誰だお前は!? 大悪魔がこちらに落ちたと連絡が入ったが、どこに行った!」
後ろにいた男が荒々しく叫びながら、人の隙間を縫って前に出てきた。その男も白い服を着ていたが、頭には金や銀の装飾が施された、一層豪華な円錐型の帽子をかぶっている。
「はっ、あんな奴、あたしがぶっ殺してやったよ」
意気揚々と答えると、神官は「何を馬鹿な…」と訝しげに顔をしかめたが、次の瞬間、こちらを見ていた顔に驚きが宿った。
「お、お前は…もしかして聖…」
発言を遮るように、さらにもう一人、同じく豪華な帽子をかぶった神官が飛び出してきた。
「マ…マリア様…! ご無事でしたか!」
その神官は目の前まで来てひざまずく。
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こいつらは、いきなり部屋に入ってくるなり「大悪魔がなんたら」と言っているが、それはまあいい。その大悪魔とやらは確かにあたしが倒した。でも、「マリア様」って? 何を言っているんだ、こいつは。あたしはどこにでもいるただの傭兵だ、全く意味がわからない。
混乱しながら「マリア様」と話しかけてきた神官に向き直り、答えた。
「いや、傭兵だ。あたしはヴェルベットだ」
それを聞いた神官は目を白黒させ、口をパクパクと開け閉めする。そこへ、最初に質問してきた別の神官が口を開いた。
「待ちたまえ、ヘイムダル司祭。確かにマリア様にそっくりの顔立ちだが、本人が違うと言っている。となると、マリア様の捜索部隊を直ちに派遣しなくてはならない。場合によっては、悪魔の襲撃で既にお亡くなりになっているかもしれない」
その発言に、ヘイムダルと呼ばれた神官が睨みつけるように答えた。
「ロキ司祭! 何を馬鹿な…! 目の前におられるのはマリア様に決まっている。この慈悲深い聖母のような顔立ち…見間違えるはずがない」
ロキ司祭はすかさず言い返す。
「馬鹿なことを言っているのはあなたですよ、ヘイムダル司祭。たしかに顔はある程度似ているかもしれない。しかし、汚らしい傭兵の姿じゃないか。それに、髪の色が明らかに違うだろう。マリア様は美しい金色の髪だ。そんな漆黒の髪ではない!」
二人の問答に周りもざわつき始め、兵士や他の神官たちも半信半疑の表情で見つめている。ロキ司祭はにやつく。そのとき、心の中から声が聞こえた。
—ロキ司祭は、私が死んだことにすれば、このタイミングで神官団の権力を全て自分の手にしようとしています…
(何を言っているんだ? 死んだこと? 権力?)
さっぱり理解できない。そもそもこの声はなんなんだ。気持ちが悪い。今日はずっと戦ってきて疲れているし、あたしには何の関係もない。
「悪いんだけどさ、そのマリア様とやらなんてあたしは知らないんで、もう帰るわ。あとでちゃんと傭兵料はもらうね」
「マリア様! お待ちを…私は…」
ドアに近づき退出しようとすると、ヘイムダル司祭が近くに来て囁くように言う。それを見た騎士たちは静止しようとするが、もう面倒くさくなって無視して城を後にした。
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