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来訪者
しおりを挟む幼少期以来に見る都の姿は、こんなものだったかとアルベールは拍子抜けした。よくある記憶の美化というものだろうか。それとも感受性というものが欠落したせいだろうか。
とにかく都には何の感慨も無く、一直線に馬車をある屋敷に走らせた。屋敷につき、馬車を降りると誰も迎えは出てこない。アルベールは顔に笑みを浮かべた。
アルベールが歩きだすと使用人が慌ててついて来て、屋敷の扉を開いた。屋敷の中は薄暗く淋しい雰囲気だ。しかし、その分、人の気配が分かりやすい。
アルベールはある扉の前まで歩みを進めた。
そして、高鳴る気持ちを抑える為に深呼吸をする。扉を開けると夢にまで見た人が布張りの長椅子に座っていた。陶器のような白い肌。宝石のように光る瞳。艷やかな髪。どんな衣服を纏っていても、その美しさは隠せないようだ。
「逢いたかったよ、ルーザ」
久しぶりに見るルーザの姿は、ますます輝いているようだった。会わない間に、僅かに大人びた顔つきになり、より美しくなっている。記憶の美化も彼女には追いつけなかったようだ。
アルベールは目配せをして自分の使用人を下がらせた。
「随分遅かったじゃないか。それで報告は?」
ルーザは表情を変えずに冷たい声を投げかける。声を聞くと、本物の彼女がそこにいるのだと実感して、鳥肌が立った。昔からアルベールにとってルーザが何よりも大切な存在だった。
「その前に、遠路はるばる来た兄を労ってくれてもいいんじゃないかな?会えない間、私がどんなに辛かったか……」
ルーザに近づき、その手の甲に口づけをする。その滑らかな肌を唇に感じるだけで躰が疼いた。彼女を上目遣いに見ると、冷ややかな目線が自分に向けられている。
「私が都にいる間に、どれだけの女を犠牲にしたかは聞いているよ。だから、こっちに呼んだんだ。家臣を困らせるなよ」
出来るだけルーザに似た娘を集めさせて彼女の代わりにしたことは筒抜けなようだ。それを黙っておかないだろうルーザが期待通り自分を呼び出してくれたことは喜ばしい。
「仕事はちゃんとしてるんだからいいだろ?君がいなくちゃ、正気を保てないんだ。赦してくれ。それにしても、使用人も置かずに1人で王都にいるなんて……」
ルーザの手に頬ずりする。その手がアルベールの顎を乱暴に掴んだ。
「相変わらず重症だな。悪化してるんじゃないのか?いちいち私の行動を報告させる奴がいなければ、使用人を置いたんだけどな」
ルーザの色水晶のような瞳に自分が映されていることに口がにやける。
「君が悪いんだよ、ルーザ。これからは側に置いてくれるんだろ?」
「利用価値がある内はね」
アルベールは顎がルーザの手から解放されると、立ち上がり彼女の隣に座る。
「もちろん。君の為ならなんでもするよ。今までだって、そうだっただろう?」
ルーザに擦り寄り首筋に頬を寄せると、彼女の香りを吸い込む。それだけで躰が高揚し、息も荒くなっていく。
「私の邪魔はするなよ」
「君がちゃんと私の相手をしてくれるなら、嫉妬に狂わないように努力するよ」
ルーザは大きなため息をつく。アルベールはこれ以上は我慢できず、ルーザの唇を奪った。そのまま、彼女の存在を確かめるように口内を暴き、躰を弄る。
ルーザは抵抗せず、なすがまま、それを受け入れた。
*
長椅子にもたれかかるルーザの裸体をうっとりと眺めた。久しぶりに味わうルーザの躰は蕩けそうなほど甘かった。白く滑らかな肌に舌をはわし、柔らかい肉に自身を押し込むと、なんとも言えない幸福感に包まれる。
「あぁ、ルーザ。やっぱり君は何者にも代えがたい」
アルベールはルーザの胎内を確かめるように腰をゆっくりと動かした。腕で顔を隠しているルーザは何も答えないが、ルーザの躰は無意識にアルベールに応えている。膣内は切なそうに蠢き、愛液が動きに合わせて溢れていた。
少しづつ動きを早めていく。あえて全て奥まで突かずに何度も膣壁を擦り付ける。両手の指先で届く範囲の様々な箇所を優しく撫でる。
ルーザの肌は冷たいままだが、躰が震え呼吸が荒くなっていった。
「声を」
アルベールは急にルーザの両脚を持ち上げ、彼女の躰を長椅子に押し付けるように深く挿入した。ルーザが堪えきれずに声を上げる。何度も激しく奥を突き、その度にルーザは喘いだ。
ルーザは必死にアルベールの動きを止めようと彼の躰を抑えようと手を伸ばした。ルーザの膣内も収縮してアルベールをきつく締め上げるが動きは止まらなかった。
アルベールは自分の下で大きく揺さぶられ感じるルーザの姿を彼女の躰を内側から感じながら恍惚の表情で見下ろしていた。
昔からこの瞬間だけはルーザよりも優位だと感じられる。高貴で美麗な彼女の全てを今は自分が独占しているのだという優越感で満たされる。
ルーザが何度目かの絶頂に意識を飛ばしかけた時、ようやくアルベールも絶頂を迎えたようだった。
「……こんなとこで。……躰が痛い」
「あぁ、失礼したね。ところでベッドはどこかな」
アルベールはルーザに挿入したまま、彼女を抱き上げた。そして、上下に揺さぶるとルーザが震える。2人の足元にはルーザから押し出された白濁液が落ちる。ルーザは振り落とされないようにアルベールの首に抱きつく形になり、アルベールは嬉しそうに、そんなルーザの姿を眺めている。
「ほら、どこかな?」
アルベールの問いにルーザは震える手で指差すしかなかった。
*
王都のある貴族の屋敷。屋敷の主の寝室ではにやけた男が女性の手を取り撫でている。
この男、クリストは北方貴族の次男だったが高利貸し事業で富を成し、今では都に屋敷を構えるほどになった。借金のかたに、その家の家財や娘を奪う、あくどいやり方で有名だった。
そのクリストは小規模な舞踏会で出会ったメイリーン嬢に入れあげていた。メイリーン嬢は貴族を相手に働いている高級娼婦で数多の貴族男性を虜にしている。
「君の望みは叶えてあげたよ?次は私の望みを叶えてくれ。私だけのものになってくれるだろ?」
クリストは肘掛け椅子に腰掛けると下半身を露出させた。メイリーンは言われるままにクリストの足の間にしゃがみこむと、肉棒に手を添える。クリストが生唾を飲み込んだ。
メイリーンの小さな唇が肉棒に音を立てて口づけをした。何度も口づけてから、竿を舐めあげる。裏筋を細かく舐める舌の動きが見え、クリストの欲情が高まる。
「流石、男を喜ばせる方法は熟知しているね。嫉妬してしまうよ。でも、今日からは私だけのものだね」
「……もちろんです」
「僕の形を忘れてしまっただろう?じっくり思い出させて上げるからね」
クリストはメイリーンの首筋に指を這わせ、そのまま手を服に侵入させる。
「嬉しいです。また可愛がってください……なんてね」
メイリーンは手を振り払う仕草をする。クリストの体は力無く床に倒れた。メイリーンは身なりを直しながら立ち上がり、唾を吐き捨ててからクリストを見下した。
「もう私に触らないでくれる?穢らわしい」
「……メイリーン?……なんで」
クリストは辛うじて動く顔をメイリーンに向けた。
「お前が愛してる、可愛いメイリーンなんて、初めからいないんだよ。さぁ、地獄を見せてあげる」
メイリーンは残酷な表情で見下している。
「意識はあるのに、体が勝手に動くってどう思う?その手で大事なものを順番に壊していこうか。まずは自分からだね」
クリストの両手が意思と関係なく動き、自分の肉棒を掴み、反対の手は尻の穴に指を入れる。初めての挿入に痛みが走った。そして、乱暴に動き出す。
「ほら、快楽を求めてたんだろ?願いを叶えてやったのに、その顔は何?」
クリストは顔を歪め、懇願するような顔でメイリーンを見上げたが、彼女は冷たい笑みを浮かべたまま言い放つ。
「見たくないから私は行くね。じゃあね“クリスト様”」
メイリーンはクリストに背を向けた。が、すでにクリストの目は彼女の姿を映す余裕は無くなっていた。
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