白宮の聖女

sara

文字の大きさ
上 下
10 / 23
第四章 罰

しおりを挟む
「でも、ぼくじゃなくてタランが…」
「あなたがタランをそそのかしたのでしょう」
 カガリに自分の部屋を出ることも禁止にされた後、ようやく会うことが出来た聖女の冷たい声にロウエルは焦った。
「いいと言うまで、わたしに触れることを許しません」
 今までもサディアスにたしなめられることはあったが、ここまで突き放されるのは初めての事だった。
「もう嫌がるようなことはしないから許して」
 ロウエルは哀れっぽく言ったがサディアスの表情が緩むことは無かった。
 ロウエルは狼狽えて同席していたカガリを見たが、彼も苦々しく見返してくるだけだった。
 ロウエルは聖人が自分を見殺しにするようなことはしないだろうと思いながらも、最愛の人から拒絶されている事実に絶望した。

 それからサディアスに触ることを制限されたロウエルは生きるために出来るだけ彼女に付き従い、少しでも近くにいた。
 彼女が許可しただけの接触で細々と神聖力を流し込んで貰っていたが、日を増すごとにやつれていった。普段は多い口数も徐々に減る。
 陶酔する女性から、そこら辺の民と同じような扱いをされるのが耐え難かったし、なにより他の供奉人がサディアスに神聖力を施されているそばにいることは屈辱だった。あんなに見たがっていたサディアスの扇情的な姿も、飢えた状態では余計に渇きを募らせるだけだった。それでも行為中のサディアスからは近くにいるだけでもわずかに神聖力を得られたし、気分が良くなった彼女が差し出す手や足の甲に口づけるチャンスを逃すことは出来なかった。

 10日目。ロウエルはソファでサディアスからの抱擁をただ受けていた。腕を回し抱き返したいが、それも許可が無いと出来ない。罰が始まった当初は反射的に触ろうとするので何度も止められた。体が辛い。5日目以降、限界を何度も更新していた。
「舌を出して」
 その言葉に期待を込めて出来るだけ舌を出す。サディアスがロウエルの舌に自分の舌を絡める。ロウエルは思わず動かしそうになるのを震えながら我慢した。少しでも聖女の機嫌を損ねるようなことは避けたかった。口づけは3日ぶりだ。出来るだけ長く続けて欲しかった。
「さすがにキスはぼくも動かないとつまらないんじゃない?」
 サディアスが離れるとロウエルが期待を込めて問いかける。
「そうでもないわ」
 微笑むサディアスをみてロウエルは絶望した。
「お願い。もう許して」
 懇願するロウエルの目には涙が滲んでいた。「つらくて死にそう」
 それでもサディアスはロウエルの手を握って微笑むだけだった。
「あなたは私のためなら何でもできるんでしょう?」

 13日目。朝。もうベッドから起き上がることも出来ずにいた。いつの間にかまた寝ていたのか、意識を失ったのか、もう一度重いまぶたを開けた時にはサディアスの腕の中だった。添い寝をしていた相手が目覚めたことがわかると彼女はロウエルの頬を撫でた。優しい碧色の瞳が自分を覗き込んできた時、ロウエルは何故か怯えた。
「もう許してくれる?」
 ロウエルはかすれた声を出した。自分の中の神聖力の底を感じて、命の危機を感じていた。
「ぼくのこと嫌いになったの?」
 それならこのまま死んでもいいな。とロウエルは思った。サディアスの腕の中が最後の場所なら悪くない。
 聖女は何かを考えている様子だったが「首から上だけ許す」と言うとロウエルに口づける。
 自ら触れる許しを得たロウエルの口は必死にサディアスを求めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生先で溺愛されてます!

目玉焼きはソース
恋愛
異世界転生した18歳のエマが転生先で色々なタイプのイケメンたちから溺愛される話。 ・男性のみ美醜逆転した世界 ・一妻多夫制 ・一応R指定にしてます ⚠️一部、差別的表現・暴力的表現が入るかもしれません タグは追加していきます。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

男女比がおかしい世界にオタクが放り込まれました

かたつむり
恋愛
主人公の本条 まつりはある日目覚めたら男女比が40:1の世界に転生してしまっていた。 「日本」とは似てるようで違う世界。なんてったって私の推しキャラが存在してない。生きていけるのか????私。無理じゃね? 周りの溺愛具合にちょっぴり引きつつ、なんだかんだで楽しく過ごしたが、高校に入学するとそこには前世の推しキャラそっくりの男の子。まじかよやったぜ。 ※この作品の人物および設定は完全フィクションです ※特に内容に影響が無ければサイレント編集しています。 ※一応短編にはしていますがノープランなのでどうなるかわかりません。(2021/8/16 長編に変更しました。) ※処女作ですのでご指摘等頂けると幸いです。 ※作者の好みで出来ておりますのでご都合展開しかないと思われます。ご了承下さい。

傾国の聖女

恋愛
気がつくと、金髪碧眼の美形に押し倒されていた。 異世界トリップ、エロがメインの逆ハーレムです。直接的な性描写あるので苦手な方はご遠慮下さい(改題しました2023.08.15)

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

処理中です...