白宮の聖女

sara

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第三章 歪んだ愛

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 ある日、タランは神殿に向かうサディアスを見かけた。髪を結い上げ、正装を身にまとうサディアスは高貴で神秘的だった。後ろには同じく正装のカガリとロウエルが続く。
 サディアスの大神官としての正装はドレスでもローブでも、常に詰め襟で胸元や肩、首まで露出がないデザインだった。あれから定期的にサディアスの部屋に訪れるようになったタランはすぐにその理由を察した。サディアスの躰には度々、赤い印がつけられていたのだ。
 神聖力が集まる大神官の身体は再生力が高く、小さな傷や痣ぐらいは半日もかからず消える。きっと誰かが頻繁に印をつけている。タランはその犯人が分かるような気がした。


 その日大神殿の奥には奇跡を授かる名誉を受けようと民たちが集まっていた。男女や年齢、貧富の差を問わない15名ほどが選ばれていた。
 その部屋には四隅に神官が立っており2人は香を、2人は高い音の出る鐘を持ち、香りと音で厳粛な雰囲気を高めている。
 病や不自由な手足をもった民は神より施しを受けるために目を瞑り、それぞれが出来るだけ恭しく祈りを捧げていた。
 開きっぱなしの大戸の方から足音が近づいてくる。数人の足音が入ってきたが民は儀式の間、何を見ることも禁じられていたため必死に目を開けまいとする。
 入ってきた集団の先頭を歩くサディアスは部屋の1番奥まで進むと民のひとりひとりと順番に向き合っていく。
 聖女に付き従ってきたロウエルとカガリは入口の両側に立ち、儀式を見守っていた。
 癒しの聖女は次々と民に触れ、必要な神聖力を与えるために肌をなでたり、抱擁したり、時には額に口づけをした。奇跡を感じた民は息をのむと小さく感謝をつぶやく。
 まさに聖人。慈愛に満ちた表情でどんな民にも触れ、奇跡を与える姿にロウエルはいつものように見惚れた。
 サディアスの力の全貌や姿はこの国の機密事項の一つだった。それでも聖女は半年に数回、神の御心として信心深い民の苦しみを癒している。
 サディアスは昔からずっと変わらず高潔で尊い。そしてこの部屋だけでなく、世界中の誰よりもこの聖女から力を与えられるのは自分だということに悦を感じてロウエルは笑みをこぼした。


 ある夜、タランはサディアスの部屋を尋ねた。
 タランは日に日に自分の中の神聖力を感じ取れるようになり、そろそろ施しを受けるべきだと思ったのだ。
 扉を叩いて入ると部屋には誰もいなかった。
 タランは部屋の中まで進み、見渡すと寝室から物音がするのに気づいた。
 誰か先客がいたのか。タランは気配を隠し部屋から出ようとしたが男の声に呼び止められた。
「おーい。誰かわからないけどこっちに来なよ」
 声はロウエルのものだった。タランはゆっくりと寝室の入口に立つ。
 ベッドの上では座るロウエルの膝の間にサディアスがもたれかかり、ロウエルは後ろから彼女を抱きすくめていた。サディアスの頬は紅潮し息が荒かったが幸いにも2人とも服を着ている。それなのに彼女の表情が、やけに艶めかしかった。
「新人の騎士殿か」彼はあまり興味無さそうだった。
「失礼。また日を改めます」タランはサディアスに告げ、踵を返したがロウエルが呼び止めた。
「待ってよ。せっかくだから色々教えてあげるよ」
 タランは伺うように聖女を見たが彼女は虚ろで反応がない。
「大丈夫。あんたもあんまりにも快いとなにも考えられなくなるでしょ」
 青年は怪訝な顔をする騎士に言葉をかけ、合間にサディアスの首筋や肩に口づけした。そして彼女の服の隙間から手を入れて胸を弄び始めた。サディアスの体が小さく跳ねて声を漏らす。
「力の受け渡しは接触面積が大きいほどいい。もちろん肌を合わせた方がいいよ。場所でいうと神経が集まっているところが強いみたい。手と口とかここだね」
 ロウエルは聖女を自分の方を向かせると深く口付けしながら彼女の胸の頂上を責めた。しばらく堪能した後、ロウエルが口を離すとサディアスは苦しそうに息を吸った。
「あんた、ただ見に来たんじゃないんだよね?こっちきなよ」
「でも、彼女が‥」騎士はなんとか平静を装う。
「後で来るつもり?大男を1日に何度も相手するくらいなら、1回に済ました方がサディアスも楽だって」
 ずり下がっていく彼女の躰を持ち直しながら言う。
「それに、ぼくたち1時間以上こうしてるんだ。ぼくはずっとこうしていたい気分だけど、サディアスは次に進みたいよね?」
 ロウエルは答えることができないサディアスの頬にキスをした。
「ぼくが1番サディアスを知り尽くしているからね」
 彼は幸せそうに微笑った。
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