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雅也
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しおりを挟む「えっ?」
ぱちくりと雅也は目を瞬いた。
今日は高校の卒業式で卒業式が終わって真っ直ぐ男の許へ来たのだ。
さて何を作ろう? とキッチンに立つとソファでゴロゴロしていた男んい呼ばれた。
「何ですか?」
「お前、今日卒業式だっただろ。その勢いでオトモダチと一緒に風俗行かなかったの? 行けるくらいの金なら渡してあるだろ?」
男の言葉に雅也ははぁーと深く息を吐いた。何を云い出すのかと思えば。
「・・・・・・何か食べたいものありますか?」
「童貞捨ててくれば良かったのにー・・・・・・ってそっか、雅也くんは一緒に行くようなオトモダチがいないもんなー」
「・・・・・・はいはい、そうですね」
適当に返事をしながらキッチンに戻ろうとすると手首を捕まれ、気がついたらソファに転がされていた。
上に男が乗ってくる。
「えっ?」
ぱちくりと雅也は目を瞬いた。
男がにやりと笑う。
「だから卒業祝いに俺の処女をやるよ」
「は?」
驚く雅也をよそに男が雅也の制服のボタンを外していく。
一番上のジャケットはキッチンに立つ前に脱いでいたからシャツのボタンが外され肌がさらされる。
「い―――やいやいや、アサヒさんっ」
雅也は慌てて男の手をつかんだ。
出会った頃、何て呼べば良い? と聞いたところ
『そうだなぁ・・・・・・俺も実はマサヤって云うんだ。お互いマサヤマサヤって呼び合うのもあれだから好きに呼んで良いよ』
と云われたので「アサヒ」と呼ぶことにしたのだ。
朝日を浴びてキラキラと輝いていたから。
だけど本当に男の名前が「マサヤ」と云うのか雅也は知らない。知りようがないからだ。
「何だよぅ。光栄に思えよ」
「いえっ・・・・・・光栄とか、そういう問題じゃなくて・・・・・・っ」
揉み合いながらも形の良い尻を股間にぐりぐり押しつけられて雅也は焦った。
「お、たってきた・・・・・・さて観念して俺に突っ込めよ。いい思いをさせてやるからさ」
「そういうことじゃ・・・・・・アサヒさんっ!」
雅也の絶叫をよそに男が手際良く行為を進めていく。
結局、押し負けてしまった雅也は男の内で何度も果ててしまった。
それからというものどうやら定期的に男はそういう気分になるようで雅也をベッドに引きずりこんだ。
そしてその度に項をさらして
『あー・・・・・・かんでっ、かんで・・・・・・噛めっ!』
と雅也に強請った。
それに微妙な気持ちになりながらも強請られるまま雅也は男の項を噛んだ。
というのも雅也はベータだし、きっとこの自信家で気まぐれな男はアルファだ。
番になりようもない組合わせだ。
・・・・・・何だろう、ごっこ遊びでもしたいのだろうか?
首を捻る日々。
そんなある日、買い物から帰ると爽やかな、スッキリとしたなかにも甘さのある香りが雅也を出迎えた。
何だろう・・・・・・? 突発的にルームフレグランスとかそういうものに目覚めたのだろうか?
まあ、きまぐれな人だからな。
キッチンに行き、買ってきたものを片付けていると匂いがだんだん強くなっているようで頭がくらくらしてきた。
・・・・・・これは云って少し控えてもらわなければ。どうせ加減がわからずやった結果だろうから・・・・・・あれ、そもそもあの人鼻が弱くなかったか? じゃあ今頃倒れているかも・・・・・・匂いがキツすぎて。
不安になって男を探すと男は寝室のベッドで伸びていた。
あ、やっぱり・・・・・・。
「・・・・・・大丈夫ですか?」
「んー・・・・・・」
「換気しましょうか」
「んー・・・」
「・・・・・・少量から焚けば良かったんじゃないですか? いきなり量を焚くから―――」
思い切りが良すぎたのだ。
少しの量から試していって自分に合う量を探っていけば良いのに。
「んー・・・・・・ん?」
思わずこぼした言葉に男はゆっくり瞳を開けた。
「・・・・・・へぇ、お前、この匂いがわかるの」
どこか面白がるような男の言葉に雅也は目を瞬かせた。
「え? え、ええ・・・・・・ルームフレグランスか何かですよね?」
「ふっ・・・・・・ふふっはーはっはははは」
雅也の言葉に男は弾かれたように笑い出した。
ひとしきり笑って雅也を見る。
「半年・・・・・・いや、一年か・・・・・・? 意外に時間がかかったな―――俺のアルファ」
「・・・・・・は?」
雅也はベータだ。それは間違いない。
学校の健康診断の時についでに行われる検査ではいつもベータだった。
そもそもあの母では雅也が例えアルファでもオメガでもパニックだろう。
だからいつもベータでホッと胸を撫で降ろしていたのだ。
それが何、アルファ?
「え?」
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