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エリちゃんの事情
しおりを挟むエリは由条絵里のクローンである。
由条家は何でも神代の昔から続く家柄であり、その血を守るため、または進化させるための優秀な血を取り込んでその力を伸ばしてきた。
そんな由条のクローンが何故、この学校にいるのかというとある人物のせいだ。
その人物は公爵と呼ばれる男の一人息子だ。
公爵と呼ばれる男は、たった一晩で前の公爵からすべてを奪ったのだ。他にも家をいくつか潰したとかいう噂もある。
そんな男を由条が放っておけるわけもなく。
とりあえず姻戚関係を結ぶという正当な手段を用いたもののあっけなく断られ、今はあらゆる手段を使ってでも公爵の遺伝子情報を手に入れるという方向にシフトしている。
その一環としてその息子の遺伝子情報を手に入れるというのがエリの今回の任務だ。
同じ学校、同じクラスというのは由条の権力を使えば簡単だ。
だが、そこからが問題だ。どうやって距離をつめるか考えていたのだ。どうせ向こうも警戒しているだろうし。
それがたまたま近くの席になったのはラッキーだった。
ラッキーだったのだが・・・・・・。
何故か相手が秋の休みが明けたら何というかちょっと雰囲気が変わっていたのだ。
・・・・・・いや、ちょっとというかだいぶ?
それまでは反抗期を拗らせているのか?
という程毛嫌いしているような態度をとっていたのに、休みが明けてみたらファザコンを隠さなくなっていたのだ。あれほど隠していたのに。
それだけじゃなくいつの間にかクラスの女子の絵の上手い子と仲良くなったらしく絵を描いてもらったりしてキャッキャッしているのだ。
どうしたキャラ変でもしたのか? と問いただしたいくらいだ。
そして何よりエリを困惑させたのはあの公爵をモデルにした小説を自作して読ませられることだ。しかも官能小説。
おまけに感想も求められる。
どうしろと!?
一体、どうしろと云うのだ。
同調すればジョウカは喜ぶかもしれないがもしバレた時、もし公爵本人やその周囲にバレた時どうするのだ。
書いた本人は息子だろうからお叱りだけで済むかもしれないがエリは?
由条家は絶対守ってくれない。
オリジナルはきっとゲラゲラ笑い転げてからエリを生け贄として差し出すだろう。
いくらでも替えの効く駒より公爵の不興を買いたくないからだ。
だからエリは声を大にして云うのだ。
名前をそのまま使うな!
特定出来るような設定にするな! と。
書いている本人はわかっているのかわかっていないのかイマイチよくわからないけれど。
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