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#3生徒会編
赤髪の後輩
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輝夜と花咲は永遠と喧嘩をやめず、結局そのままお別れとなった。
二人は同じ一年S組の生徒だ。一限のチャイムが鳴っても永遠と教室の中で、先輩への愛の深さがどうだの言い合ってないといい。
加賀美たちとも別れ、俺と鈴芽で教室に行って授業を受ける。授業間の休みは、浦戸の相変わらずの謎トークは聞き流す。これが日課。今日も変わらずなんともない日だった。
昼休みの始まりに、俺の名前を呼び出す放送が流れるまでは。
『生徒の呼び出しをします。二年B組桃野太郎さん、至急生徒会室へ来てください』
繰り返します、と放送が再度繰り返される。空っぽの頭の中に反復する謎の言語。生徒の呼び出し? 桃野太郎? エッ、何、どういうこと? これ日本語?
「キタコレ!!!!」
隣にいた浦戸がニッコニコの笑顔でそう叫んだ。クラスメイトはザワついて、こちらを見てくる。待ってくれ待ってくれ、嘘だろ。
「桃野くん、何かやっちゃった感じかな?」
鈴芽はそう言うが、まったくもって心当たりがない。
「なにやらかしたか分からねぇ……分からねぇから尚更怖ぇよ!」
「これは生徒会室でのワクワク密会コースでは?!」
「いやこんな校内放送で呼び出してるんだから、もはや密会とかいうレベルじゃねぇだろ」
助けを求めようと再度鈴芽の方を見れど、彼も彼の方で困惑している様子だ。
何人かのクラスメイトは「行った方がいいよね」「何の呼び出しかな」と声を掛けてくれている。
たとえこれが何の呼び出しであろうと、生徒会からこうも校内放送で呼び出しを喰らえば行かない選択肢は必然的になくなってしまう。
ちょーっとにわかには信じ難い呼び出しであるが、B組にましてや二年生に俺と同姓同名の人はいないはずだ。この学園の全生徒集めてもいない気がする。
「生きて帰ってこいよ」
と、浦戸はそう言ってニヤニヤする。マジでこの人は他人の不幸を喜ぶ節がある。
それはそうと現実的に考えて、生徒会からのこの呼び出しは何かの間違いだろう。それか生徒会の顧問はウチの担任である春暁先生なんだ、あの人が俺に何か用があって呼び出したとかそんなところ。
きっと、しょうもないことだ。ていうか、それ以外認めない。桃野くんのハッピー平穏ライフに、生徒会の呼び出しとかは全く含められていない。
鈴芽と浦戸に遺骨は海に流してくれ、と遺言を告げ大人しく生徒会室に向かった。
憂鬱な足取りで、夢であってくれよと願いながら来たのだが、結局この悪夢からは覚めることが出来ずに生徒会室まで来てしまった。
生徒会室の扉自体は、他の教室のものとなんら変わりはないのだが、やはり雰囲気が一線を画している。
ひぇ~~~、緊張する~~~~~。
なんか悪いことしたわけじゃないのに、気分は罪人のようだ。俺が何やったっていうんだよ。気付かぬうちに、何かやってた説は普通にある。
だが、落ち着け。自分が正しいと思うことが大切である。まずは、深呼吸をして覚悟を決めよう。
………………。
よしよしよし、落ち着け。ここで永遠と深呼吸をしてたとて時間は過ぎ行くのみ。
意を決して扉をノックすれば、中から静かに「どうぞ」と声がした。
「失礼します」
そう呟いて、戸を開ける。
すると開けてびっくり、そこには赤髪短髪のイケメンがいた。
はわわ~!! こんなイケメンと二人きり?! 気まずすぎるでしょ、そんなの!
「…………」
「…………」
赤髪イケメンは、中央にある机で何やら生徒会の作業をしていた。いかにも忙しそう。俺には一瞥すらくれねぇ。見る価値もないってことかな?
ふつふつと湧き出る、帰りたい欲。
桃野、普通におじゃま説浮上中だが。
「……あの」
「なんですか」
え。呼び出しといて「なんですか」って何事?! それは俺のセリフじゃないの? 思わず、そう言いたくなったが、相手はおそらく生徒会役員の一人。そうじゃなくても初対面にそんな言葉を投げかけるのは失礼だろう。グッと呑み込んで笑みを浮かべとく。
「俺、なんで呼び出されたのかなぁって……思って…………」
「それは白雪さんに訊いてください」
「えっ、でも、白雪さんは」
「今、少し席を外しているだけです。おそらく、すぐに帰ってきます」
それらの受け答えの後にまた訪れる沈黙。俺は赤髪の(確証は持てないがおそらく)後輩を見つめて、漠然としていた。こいつはやべぇ。
この赤髪くん、輝夜タイプだ。
言葉の端々から見え隠れするクールさ。その冷たさに痺れてきた。世間からクーデレ、ツンデレと言われるタイプだろう。目もシュッとしててかっこいい。
花咲のように先輩に忠誠を誓ってくれる忠犬タイプは、言葉が荒くなってしまうが扱いやすい。だがしかし、輝夜のようにツンツンしたタイプは俺の手に余る! 正直なところ、どうやって接していいかわからん。
ウオ~~!! これは、ますます二人きりが気まずくなってきた。早く来てくれ、白雪さん。この二人きりという気まずい状態をなるべく早めに脱却したい。正直、白雪さんじゃなくてもいい。神さま仏さま!
哀れな俺に救いの手を!
もはや一縷の望みにかけることしかできず、天を仰いでいると、ガラガラーッと背後の扉が開いた。
こんな世界にも救いはあったのか! やっぱり人生ってまだ捨てたもんじゃない!
湧き出る喜びを胸に、勢いよく後ろに振り返る。俺の神様は一体どんな人だろうか。
「……んで、ここに桃野がいるんだよ」
あぁ…………そうだ、この学園には神も仏も存在しないんだったっけな。後ろには我らが担任、春暁先生が立っていた。予想の斜め上の人物すぎて、もはや笑えてくる。
二人は同じ一年S組の生徒だ。一限のチャイムが鳴っても永遠と教室の中で、先輩への愛の深さがどうだの言い合ってないといい。
加賀美たちとも別れ、俺と鈴芽で教室に行って授業を受ける。授業間の休みは、浦戸の相変わらずの謎トークは聞き流す。これが日課。今日も変わらずなんともない日だった。
昼休みの始まりに、俺の名前を呼び出す放送が流れるまでは。
『生徒の呼び出しをします。二年B組桃野太郎さん、至急生徒会室へ来てください』
繰り返します、と放送が再度繰り返される。空っぽの頭の中に反復する謎の言語。生徒の呼び出し? 桃野太郎? エッ、何、どういうこと? これ日本語?
「キタコレ!!!!」
隣にいた浦戸がニッコニコの笑顔でそう叫んだ。クラスメイトはザワついて、こちらを見てくる。待ってくれ待ってくれ、嘘だろ。
「桃野くん、何かやっちゃった感じかな?」
鈴芽はそう言うが、まったくもって心当たりがない。
「なにやらかしたか分からねぇ……分からねぇから尚更怖ぇよ!」
「これは生徒会室でのワクワク密会コースでは?!」
「いやこんな校内放送で呼び出してるんだから、もはや密会とかいうレベルじゃねぇだろ」
助けを求めようと再度鈴芽の方を見れど、彼も彼の方で困惑している様子だ。
何人かのクラスメイトは「行った方がいいよね」「何の呼び出しかな」と声を掛けてくれている。
たとえこれが何の呼び出しであろうと、生徒会からこうも校内放送で呼び出しを喰らえば行かない選択肢は必然的になくなってしまう。
ちょーっとにわかには信じ難い呼び出しであるが、B組にましてや二年生に俺と同姓同名の人はいないはずだ。この学園の全生徒集めてもいない気がする。
「生きて帰ってこいよ」
と、浦戸はそう言ってニヤニヤする。マジでこの人は他人の不幸を喜ぶ節がある。
それはそうと現実的に考えて、生徒会からのこの呼び出しは何かの間違いだろう。それか生徒会の顧問はウチの担任である春暁先生なんだ、あの人が俺に何か用があって呼び出したとかそんなところ。
きっと、しょうもないことだ。ていうか、それ以外認めない。桃野くんのハッピー平穏ライフに、生徒会の呼び出しとかは全く含められていない。
鈴芽と浦戸に遺骨は海に流してくれ、と遺言を告げ大人しく生徒会室に向かった。
憂鬱な足取りで、夢であってくれよと願いながら来たのだが、結局この悪夢からは覚めることが出来ずに生徒会室まで来てしまった。
生徒会室の扉自体は、他の教室のものとなんら変わりはないのだが、やはり雰囲気が一線を画している。
ひぇ~~~、緊張する~~~~~。
なんか悪いことしたわけじゃないのに、気分は罪人のようだ。俺が何やったっていうんだよ。気付かぬうちに、何かやってた説は普通にある。
だが、落ち着け。自分が正しいと思うことが大切である。まずは、深呼吸をして覚悟を決めよう。
………………。
よしよしよし、落ち着け。ここで永遠と深呼吸をしてたとて時間は過ぎ行くのみ。
意を決して扉をノックすれば、中から静かに「どうぞ」と声がした。
「失礼します」
そう呟いて、戸を開ける。
すると開けてびっくり、そこには赤髪短髪のイケメンがいた。
はわわ~!! こんなイケメンと二人きり?! 気まずすぎるでしょ、そんなの!
「…………」
「…………」
赤髪イケメンは、中央にある机で何やら生徒会の作業をしていた。いかにも忙しそう。俺には一瞥すらくれねぇ。見る価値もないってことかな?
ふつふつと湧き出る、帰りたい欲。
桃野、普通におじゃま説浮上中だが。
「……あの」
「なんですか」
え。呼び出しといて「なんですか」って何事?! それは俺のセリフじゃないの? 思わず、そう言いたくなったが、相手はおそらく生徒会役員の一人。そうじゃなくても初対面にそんな言葉を投げかけるのは失礼だろう。グッと呑み込んで笑みを浮かべとく。
「俺、なんで呼び出されたのかなぁって……思って…………」
「それは白雪さんに訊いてください」
「えっ、でも、白雪さんは」
「今、少し席を外しているだけです。おそらく、すぐに帰ってきます」
それらの受け答えの後にまた訪れる沈黙。俺は赤髪の(確証は持てないがおそらく)後輩を見つめて、漠然としていた。こいつはやべぇ。
この赤髪くん、輝夜タイプだ。
言葉の端々から見え隠れするクールさ。その冷たさに痺れてきた。世間からクーデレ、ツンデレと言われるタイプだろう。目もシュッとしててかっこいい。
花咲のように先輩に忠誠を誓ってくれる忠犬タイプは、言葉が荒くなってしまうが扱いやすい。だがしかし、輝夜のようにツンツンしたタイプは俺の手に余る! 正直なところ、どうやって接していいかわからん。
ウオ~~!! これは、ますます二人きりが気まずくなってきた。早く来てくれ、白雪さん。この二人きりという気まずい状態をなるべく早めに脱却したい。正直、白雪さんじゃなくてもいい。神さま仏さま!
哀れな俺に救いの手を!
もはや一縷の望みにかけることしかできず、天を仰いでいると、ガラガラーッと背後の扉が開いた。
こんな世界にも救いはあったのか! やっぱり人生ってまだ捨てたもんじゃない!
湧き出る喜びを胸に、勢いよく後ろに振り返る。俺の神様は一体どんな人だろうか。
「……んで、ここに桃野がいるんだよ」
あぁ…………そうだ、この学園には神も仏も存在しないんだったっけな。後ろには我らが担任、春暁先生が立っていた。予想の斜め上の人物すぎて、もはや笑えてくる。
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