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#2 新入生歓迎会編
驚きの浦戸くん
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閉会式は、体育館で行われた。特に何か事件は起きなかったが、美玲をはじめ、風紀委員長、生徒会長が出席していなかった。学園ツートップが出席してないって何事だって感じですよね、ええ、大いに共感します。俺らの感性はまだ正常だ。
それと、なぜか、鈴芽の姿も見当たらなかった。どこへ行ってしまったのだろうか。鈴芽はいなかったが、浦戸はいた。彼は俺を見るなり「誰に捕まった?」と尋ねてきて、だんまりを決め込んでいると「ふぅん、そういうことね」と、勝手にお得意の妄想を始めてしまった。浦戸の妄想特急列車、誰にも止められない。
あと、俺を捕まえた張本人である白雪さんが、俺と視線が合うなりニッコニコの笑顔で手を振ってきて、観衆たちがざわついたことがあった。まあざわついただけで、俺に向かって振っていたことはバレなかった。
あの人、自分がどれだけ影響力を持ってるのか知ってるのかな。白雪さんが、鴉は白だと言えば、この学園において鴉は白になるんだよ。それくらい影響力があるのを、ちゃんとご自身で把握しておいてほしい。それとも、わかっていてやったのだろうか。桃野くんの心臓に大いなる負荷がかかるので、そこらへんを配慮して欲しい限りだ。
閉会式は開会式同様に、副会長の司会進行で行われた。副会長、素晴らしい仕事ぶりである。
もちろん、俺は副会長の素晴らしいルックスを眺めながら、ポケーッとしていた。副会長足が長すぎる。見た感じ、五メートルありそう。ルックスだけじゃなく顔もいい。まつ毛バッサバサである。この世のものとは思えない、お美しい御尊顔だ。副会長の顔の造形、芸術作品って感じ。
「んじゃあ、帰りますかー」
そして、気がついたらもう既に閉会式は終わってたってわけだ。浦戸にそう言われて浮いていた思考を取り戻す。
「あーうん、そうだな。帰るか」
「どうしたんだい、桃野くん、ボーっとしちゃって。己の将来を案じているのかい? 安心しな、お前は総受け主人公になれる。それで、誰に捕まったんだ?」
お前、結局それが聞きたいだけだろ……と呆れつつ「内緒」とまたはぐらかそうとする。
「内緒って……そんなことはないでしょ」
そう言われてヒュッ、と息を飲む。腕をスッと取られて左側から誰かが接近する。腕を絡め、こちらを見上げているのは翡翠の双眸だった。
「ね、タロちゃん」
「え、あ………そうで、すね」
「えっ、えっ、どういう!?!」
混乱する浦戸、俺だって混乱してる。過剰なスキンシップ、白雪さん構いすぎて猫に嫌われるタイプだろ。周りを見ればもう残っている人は風紀の運営する人たちのみ。しかも、みんな自分のお仕事に夢中でこちらのことなど気に止めていない。よかった。白雪さん過剰ファンはいないようだ。
「まっさか、お前……!」
浦戸はいつの間にか俺とだいぶ距離を取っていた。おい待て、どこに行くつもりだ。この完全に見る専と化した浦戸に「これは誤解だ」と今言ったところで、別にこれが誤解であるわけじゃないし、絶対に聞く耳を持たない。事実として、今だって「うっひょ、やっべぇな!」とか言ってニヤニヤしていらっしゃる。
「ごめんね、タロちゃん。お友達と楽しそうに話してる時に割り込んじゃって」
浦戸を見つめていると、白雪さんが全く申し訳ないとは思っていなそうな微笑を浮かべてこちらを見た。
「いいえ、全然大丈夫です……」
「ふふ、顔が素直だよ。全然大丈夫じゃなさそー」
「いえ、あーっと、ちょっと近いなって」
そう言ってやんわりと、白雪さんを押しのける。申し訳ないのですが、桃野くんは過剰なスキンシップとかが苦手なので。そーっと距離を取ると、白雪さんは特に驚く様子もなく何か言うこともなく、俺から離れてくれた。
「タロちゃんもあそこにいるお友達と早く寮に帰りたいと思うから手短にすませるね」
「あっ、はい」
「まず、連絡手段の交換ね」
白雪さんから折ってある小さな紙を渡された。どうやら中には白雪さんの連絡先が書いているらしい。「そこから連絡寄越してね」と笑っていた。
「そして、お願いごとについて。基本的に、何でも大丈夫だよ。タロちゃんは可愛いからなぁ、どんなお願いごとをしてくるのか楽しみだよ」
「楽しみにしないでください」
「可愛い反応するなぁ」
いや、どこが? 感性がよく分からねぇぜ……。
「それで一日デートのことなんだけど」
「はい」
「冬雪ちゃんの───副会長の話、ちゃんと聞いてた?」
「え、閉会式の話ですか?」
「そうだね」
「何も聞いてませんでした」
「正直者だ。閉会式で冬雪ちゃんが一日デートの説明ちょろっとしてたんだけど、基本日程は自由なの」
「そうなんですね」
「いつが空いてるかな?」
「いつもフリーです」
「清々しい即答。オッケーわかった。それは俺の予定もあるから後日決めよっか」
「了解しました」
白雪さんはニコッと笑って「伝えたいことは以上」と言った。大変簡潔でありがたい。
「たくさん、話そうね」
「そうですね」
「大丈夫? 心とかある?」
「俺のことなんだと思ってます?」
まあ、心ない受け答えしてたからそう言われるのも納得だ。
「またね」
「はい」
ふわりと反回転して、去りゆくミルクティーの髪を見送る。ぼんやりとしていると遠くの方から「訳がわからねぇ、これは……すげぇ」と俺の親愛なる友達の腐男子くんの声が聞こえた。
「浦戸、お待たせ」
「ありがとう、桃野。ありがとう。これからも供給を頼む、ありがとう……最高だぜ」
「怖いし、そんなに最高なら立場代わってあげようか?」
我ながら素晴らしい提案だと思ったのだが、浦戸は口に手を当てて、あり得ないものを見るような目でこちらを見ていた。
「えっ何。俺、なんか失言した?」
「BLは見るからいいんだよ……ッ!! お前、俺のBLとか見てぇか?! 俺は絶対見たくないし、誰も得しねぇ!!! BLを見るのと当事者になるのは違うんだよ!!!!!」
「……怖ァ」
予期せぬところで、思わぬ地雷を踏み抜いてしまったようだ。腐男子、腐女子というのは繊細な生き物なのかも。以後気をつけよう。
それと、なぜか、鈴芽の姿も見当たらなかった。どこへ行ってしまったのだろうか。鈴芽はいなかったが、浦戸はいた。彼は俺を見るなり「誰に捕まった?」と尋ねてきて、だんまりを決め込んでいると「ふぅん、そういうことね」と、勝手にお得意の妄想を始めてしまった。浦戸の妄想特急列車、誰にも止められない。
あと、俺を捕まえた張本人である白雪さんが、俺と視線が合うなりニッコニコの笑顔で手を振ってきて、観衆たちがざわついたことがあった。まあざわついただけで、俺に向かって振っていたことはバレなかった。
あの人、自分がどれだけ影響力を持ってるのか知ってるのかな。白雪さんが、鴉は白だと言えば、この学園において鴉は白になるんだよ。それくらい影響力があるのを、ちゃんとご自身で把握しておいてほしい。それとも、わかっていてやったのだろうか。桃野くんの心臓に大いなる負荷がかかるので、そこらへんを配慮して欲しい限りだ。
閉会式は開会式同様に、副会長の司会進行で行われた。副会長、素晴らしい仕事ぶりである。
もちろん、俺は副会長の素晴らしいルックスを眺めながら、ポケーッとしていた。副会長足が長すぎる。見た感じ、五メートルありそう。ルックスだけじゃなく顔もいい。まつ毛バッサバサである。この世のものとは思えない、お美しい御尊顔だ。副会長の顔の造形、芸術作品って感じ。
「んじゃあ、帰りますかー」
そして、気がついたらもう既に閉会式は終わってたってわけだ。浦戸にそう言われて浮いていた思考を取り戻す。
「あーうん、そうだな。帰るか」
「どうしたんだい、桃野くん、ボーっとしちゃって。己の将来を案じているのかい? 安心しな、お前は総受け主人公になれる。それで、誰に捕まったんだ?」
お前、結局それが聞きたいだけだろ……と呆れつつ「内緒」とまたはぐらかそうとする。
「内緒って……そんなことはないでしょ」
そう言われてヒュッ、と息を飲む。腕をスッと取られて左側から誰かが接近する。腕を絡め、こちらを見上げているのは翡翠の双眸だった。
「ね、タロちゃん」
「え、あ………そうで、すね」
「えっ、えっ、どういう!?!」
混乱する浦戸、俺だって混乱してる。過剰なスキンシップ、白雪さん構いすぎて猫に嫌われるタイプだろ。周りを見ればもう残っている人は風紀の運営する人たちのみ。しかも、みんな自分のお仕事に夢中でこちらのことなど気に止めていない。よかった。白雪さん過剰ファンはいないようだ。
「まっさか、お前……!」
浦戸はいつの間にか俺とだいぶ距離を取っていた。おい待て、どこに行くつもりだ。この完全に見る専と化した浦戸に「これは誤解だ」と今言ったところで、別にこれが誤解であるわけじゃないし、絶対に聞く耳を持たない。事実として、今だって「うっひょ、やっべぇな!」とか言ってニヤニヤしていらっしゃる。
「ごめんね、タロちゃん。お友達と楽しそうに話してる時に割り込んじゃって」
浦戸を見つめていると、白雪さんが全く申し訳ないとは思っていなそうな微笑を浮かべてこちらを見た。
「いいえ、全然大丈夫です……」
「ふふ、顔が素直だよ。全然大丈夫じゃなさそー」
「いえ、あーっと、ちょっと近いなって」
そう言ってやんわりと、白雪さんを押しのける。申し訳ないのですが、桃野くんは過剰なスキンシップとかが苦手なので。そーっと距離を取ると、白雪さんは特に驚く様子もなく何か言うこともなく、俺から離れてくれた。
「タロちゃんもあそこにいるお友達と早く寮に帰りたいと思うから手短にすませるね」
「あっ、はい」
「まず、連絡手段の交換ね」
白雪さんから折ってある小さな紙を渡された。どうやら中には白雪さんの連絡先が書いているらしい。「そこから連絡寄越してね」と笑っていた。
「そして、お願いごとについて。基本的に、何でも大丈夫だよ。タロちゃんは可愛いからなぁ、どんなお願いごとをしてくるのか楽しみだよ」
「楽しみにしないでください」
「可愛い反応するなぁ」
いや、どこが? 感性がよく分からねぇぜ……。
「それで一日デートのことなんだけど」
「はい」
「冬雪ちゃんの───副会長の話、ちゃんと聞いてた?」
「え、閉会式の話ですか?」
「そうだね」
「何も聞いてませんでした」
「正直者だ。閉会式で冬雪ちゃんが一日デートの説明ちょろっとしてたんだけど、基本日程は自由なの」
「そうなんですね」
「いつが空いてるかな?」
「いつもフリーです」
「清々しい即答。オッケーわかった。それは俺の予定もあるから後日決めよっか」
「了解しました」
白雪さんはニコッと笑って「伝えたいことは以上」と言った。大変簡潔でありがたい。
「たくさん、話そうね」
「そうですね」
「大丈夫? 心とかある?」
「俺のことなんだと思ってます?」
まあ、心ない受け答えしてたからそう言われるのも納得だ。
「またね」
「はい」
ふわりと反回転して、去りゆくミルクティーの髪を見送る。ぼんやりとしていると遠くの方から「訳がわからねぇ、これは……すげぇ」と俺の親愛なる友達の腐男子くんの声が聞こえた。
「浦戸、お待たせ」
「ありがとう、桃野。ありがとう。これからも供給を頼む、ありがとう……最高だぜ」
「怖いし、そんなに最高なら立場代わってあげようか?」
我ながら素晴らしい提案だと思ったのだが、浦戸は口に手を当てて、あり得ないものを見るような目でこちらを見ていた。
「えっ何。俺、なんか失言した?」
「BLは見るからいいんだよ……ッ!! お前、俺のBLとか見てぇか?! 俺は絶対見たくないし、誰も得しねぇ!!! BLを見るのと当事者になるのは違うんだよ!!!!!」
「……怖ァ」
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