上 下
38 / 51
#2 新入生歓迎会編

怖いよ、志野さん!

しおりを挟む
「こんなとこで騒いでんじゃねぇよ」
「すみませんねぇ、まさか風紀委員長がここでサカってたとは思わなくてぇ!」
「無理矢理とか最悪だな」
「そんなこと体育館裏で、やってた人に言われたくないんですけどー? 仕事しろ、仕事。風紀は運営してればいいですよぉ?」
「生徒会だってそうだろ、殴るぞ」
「すぐ殴るとか言う! 自ら風紀乱しちゃってんじゃないですか」
「黙れ」

 ここここここ、こっこれが風紀委員長なんです?! 口を開けば暴言しか言わないこの目の前の男が? 冗談きちぃぜ。こんな人にこの学園の風紀任されてたら、こんな学園にもなるよ!
 いやはや、にわかに信じ難いが、髪色も瞳の色も風紀委員長のそれと一致している。この人があの鬼怖いと話題の志野 千鶴か。嘘じゃんね。違う意味で鬼怖じゃん。
 隣には、おそらく先ほどまで風紀委員長とにゃんにゃんしてたであろうチワワが頬を朱に染めて俯いていた。風紀委員長、手が腰の位置にあっていかにもって感じ。

「風紀委員長が自ら風紀乱してるとか最悪すぎでしょ。チョベリバ~」
「お前だって無理矢理やってんじゃねぇ」

 持ち前のヘラヘラフェイスは崩していないが、見るからに風紀委員長とバチバチな視線を交わしている美玲さん。
 生徒会と風紀が険悪っていうの、都市伝説じゃなかったんだな。どっかの親衛隊が適当に流した噂かと思ってた。

「お前、一体誰に……」

 風紀委員長は、ふと此方に視線を向けて、瑠璃色の瞳を細めた。
 すると、次の瞬間、美玲さんはなぜか俺のことをギュッと優しく抱き寄せる。

「え」

 ふんわりと、美玲さんの甘い香りが俺の鼻腔を擽る。俺を抱く力は優しいようで強かった。

「おい、会計。コイツ、桃野太郎か?」
「そうですけど、なんなんですー? なんで太郎くんのこと知ってるんですか」
「前、金星に取り調べさせたからな」
「どういうことです? 太郎くんが? 被害者として? 加害者として?」
「普通に情報収集のためだ」
「本当ですかぁ」
「あと、疑わしかったからな。こういう平凡な奴が一番何するかわらねぇ」

 俺は抱き抱えられているので、美玲さんの胸あたりにちょうど顔がきていた。美玲さんの制服、いい匂いする───この思考、我ながらちょっとキモいな。親衛隊の子が見てたら、絶許案件すぎる。これは誤解なんです!
 まあ己のキモさはともかく、俺は美玲さんの胸に顔を押し付けられている、と言っても過言ではない状態で、風紀委員長の方は向けない。向こうとしても、美玲さんによって力をかけられた。
 だから、二人がどんな表情をしているのかは、いまいち不明瞭だが、声色として絶対美玲さん不機嫌である。美玲さんオコですね。

「なんで、お前そんな一般生徒に肩入れしてんだよ」

 風紀委員長のそういった、疑問に満ちた声が聞こえる。そうね、俺もそう思う。ナイス質問だわ。

「肩入れ? 確かにしてるかもしれませんねぇ」
「なんでだよ」
「そりゃあ大切な幼馴染の、大切で大切で仕方がないお友達なんで」
「それだけか?」
「あと、こんなに純粋な子なんてこの学園になかなかいないんで。大切にしないとねぇ」

 美玲さんはそう言って、俺の頭をポンポン撫でる。キャー、イケメンに触られちゃったワ! 桃野くんの胸がドキドキ、トゥインクル! それはそうとして、そろそろ解放してほしいです!

「そんな大切な子に手ェ出そうとしてたんだ?」
「こーんなにも可愛い子、抱かないでどうするんです?」
「あぁ、お前無節操だもんな」
「そんな風に思われてるんですかぁ。ショックだなぁー」
「あんまヘラヘラすんなよ。気に障る」
「あぁ、不快にさせてすみませんね。そういうキャラなんです」
「チッ」
「舌打ち怖ぁい」

 「ちょっともう志野さんの近くにいると、俺も不快になるので俺たちはもう離れますねぇ」と。
 火力高めの言葉を吐き捨てて、美玲さんは俺をそのまま引っ張って、体育館の表へと連れ出そうとした。

「勝手にしろ」

 風紀委員長は絶対零度の声で、鼻で笑いつつそう言った。そのあと、後ろでチワワと風紀委員長の戯れる、キャッキャウフフは声が聞こえる。ワオワオ、お盛んなこと。
 あれが風紀委員長とか全く信じられない。アンビリーバボー。これは普通に人間不信になるだろ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

王道学園にブラコンが乗り込んでいくぅ!

玉兎
BL
弟と同じ学校になるべく王道学園に編入した男の子のお話。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

兄弟がイケメンな件について。

どらやき
BL
平凡な俺とは違い、周りからの視線を集めまくる兄弟達。 「関わりたくないな」なんて、俺が一方的に思っても"一緒に居る"という選択肢しかない。 イケメン兄弟達に俺は今日も翻弄されます。

俺が総受けって何かの間違いですよね?

彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。 17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。 ここで俺は青春と愛情を感じてみたい! ひっそりと平和な日常を送ります。 待って!俺ってモブだよね…?? 女神様が言ってた話では… このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!? 俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!! 平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣) 女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね? モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。

養子の僕が愛されるわけない…と思ってたのに兄たちに溺愛されました

日野
BL
両親から捨てられ孤児院に入った10歳のラキはそこでも虐められる。 ある日、少し前から通っていて仲良くなった霧雨アキヒトから養子に来ないかと誘われる。 自分が行っても嫌な思いをさせてしまうのではないかと考えたラキは1度断るが熱心なアキヒトに折れ、霧雨家の養子となり、そこでの生活が始まる。 霧雨家には5人の兄弟がおり、その兄たちに溺愛され甘々に育てられるとラキはまだ知らない……。 養子になるまでハイペースで進みます。養子になったらゆっくり進めようと思ってます。 Rないです。

噂の補佐君

さっすん
BL
超王道男子校[私立坂坂学園]に通う「佐野晴」は高校二年生ながらも生徒会の補佐。 [私立坂坂学園]は言わずと知れた同性愛者の溢れる中高一貫校。 個性強過ぎな先輩後輩同級生に囲まれ、なんだかんだ楽しい日々。 そんな折、転校生が来て平和が崩れる___!? 無自覚美少年な補佐が総受け * この作品はBのLな作品ですので、閲覧にはご注意ください。 とりあえず、まだそれらしい過激表現はありませんが、もしかしたら今後入るかもしれません。 その場合はもちろん年齢制限をかけますが、もし、これは過激表現では?と思った方はぜひ、教えてください。

王様のナミダ

白雨あめ
BL
全寮制男子高校、箱夢学園。 そこで風紀副委員長を努める桜庭篠は、ある夜久しぶりの夢をみた。 端正に整った顔を歪め、大粒の涙を流す綺麗な男。俺様生徒会長が泣いていたのだ。 驚くまもなく、学園に転入してくる王道転校生。彼のはた迷惑な行動から、俺様会長と風紀副委員長の距離は近づいていく。 ※会長受けです。 駄文でも大丈夫と言ってくれる方、楽しんでいただけたら嬉しいです。

処理中です...