桃野くんは色恋なんて興味ない!

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#2 新入生歓迎会編

やめろって話

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 意味がわからない。

「いやいやいやいや、いいです。教えなくて大丈夫です。わかってます」
「そっかぁ、わかってるかぁ」
「だからいいですって! ちょ、や! 待て、めっちゃ手際いいな!」
「ふふ、よく言われるよ」

 猫の如くスルスルと距離を縮められ、あっという間に体と体が密着。手慣れてんな、オイ。
 体育館裏ゆえ、いくら騒いでも表に声は届かない。それにここは魔境だし。こういうのは日常茶飯事なんだろうな……。つまり、救いはない。
 だが、たとえ誰かに俺の助けを求める声が届いたとしても、風紀でない限り、生徒会にはなかなか逆らえない。生徒会の権力強すぎ。そういうのはどうかと思いますよ。

「ちょっと、マジでそういうの大丈夫です。俺以外にやってあげてください、大丈夫です」
「そうかぁ、俺はねぇ君がいいかな」
「なんでですか!!」
「興味かな」
「興味?!」
「あのつまんねー幼馴染が好きになる子は、どんな子なんだろー? っていう興味」
「なんか勘違いしてるっぽいっすけど、俺は別に加賀美に好かれてませんから!」
「うそぉ? あはは、これは言っちゃいけない情報だったかなぁ。まあ、確かにそうかもしれないねぇ」
「だから、やめろって話してるんです」
「そっかぁ、元気だねぇ」
「やめろって日本語わかる?」

 美玲さんは話しながらも、慣れたように事を進める。ちょいちょいちょい、ちょい待ち。そういうのは合意の上でやることでしょ。桃野くん『オッケー』だなんて一言も言ってないんだが?

「待て、本当にやめろ」
「そんな抵抗されると傷つく~」
「まじで!!」
「そんなぁ?」
「そんな!」
「そっかぁ」
「やめろよ!!」

 高校二年生にして、俺は童貞を卒業する前に処女を卒業しちゃうんだけど! そんなことはあってはならねぇ、これ以上手を出したら殴る! 鉄拳制裁!!
 グッと拳を固めて、覚悟を決めたら「おい」と第三者の声が上から降ってきた。なにごと?!

「うるせぇよ、会計」
「あーらあらあらぁ」

 美玲さんはパッと手を止めて、俺の背後を見た。それにつられて、俺も背後を見る。一体誰ですか?!

「風紀委員長じゃないですかぁ!」

 え?
 この不良みたいな見た目で、くそ口悪いコイツが? いつも髪はシチサン分けで眼鏡をきっちり掛けて、ボタンは上まで閉めてる風紀委員長だとぉ?
 おいおい、何一つとして当てはまってないぜ?
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