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#2 新入生歓迎会編

白雪さんガチ勢

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「あらら? 捕まっちゃいましたか?」

 本部に辿り着くと、可愛らしい風紀の子にそう尋ねられた。いわゆるチワワ顔。 ぱっちり二重まぶたがベリベリキュートだ。

「そうです。捕まりました」
「ケイサツの方は?」
「え、いや、ケイサツっていうか、なんていうか、生徒会の? あの、書記の白雪さんに」

 困惑して、しどろもどろの喋りになってしまう。俺、まだあそこで何が起こったのか把握してないし。あれは、やはり一種の悪夢では? もしくは、俺の妄想か? そうであってほしすぎる。悪夢の見過ぎで、現実と夢の境界線があやふやになっちゃった~的な感じだと大変嬉しいんだけどな。

「あっ! もしかして桃野さん?」
「そうです」
「白雪さんから話聞いてます! いいなぁ、役職持ちとデートなんて。羨ましいです」
「はははァ、そうですね」

 悲報、あれは現実でした。

 俺の悪夢とか妄想の類で、俺がこの風紀の子に虚言癖扱いされる方がマシだった。是非とも代わってあげたい、君と俺の立場。この子なら大喜びで白雪さんとデートしてくれそうだ。可愛いお顔つきだし、白雪さんにとっても、ハッピーラッキーな展開なのでは……?
 そう考えていると「一応確認するために!」と謎の機械を突き出され、リストバンドをかざすように促された。
 近付ければピロンと音を立てて、リストバンドが謎の機械に反応する。風紀の子は「ふむふむ」と謎の機会の水晶画面を見つめて「ご協力ありがとうございました!」と笑った。すごい、これで誰に捕まったのかわかるのか。文明の利器って感じする。

「ちなみに桃野さんは何をお願いするか、決まってるんですか?」
「え」
「あ! 全然秘密とかでも大丈夫です!」
「まだ全然決まってなくて……」
「色々悩んじゃいますよね!」
「そうですね」
「一緒に外出も素敵だし、お家デートならぬお部屋デートも憧れちゃいますよね~っ! 白雪さんってどんな風に過ごしてるんだろう……手料理とか食べてみたいです。お願いしたら作ってくれるかなぁ?」

 目をハートマークにしながら語るその姿に、俺は苦笑いで応じる。外出にしろお家デートにしろ、話が盛り上がらなければ楽しくはない。この子だったら、この素晴らしいトークスキルや相手への興味を駆使して、話をうまく盛り上げられそうだが……俺にはそのどちらもない。

「一日デートってことはきっと、お泊まりもですよね! 白雪さんと恋バナしちゃったりして! あー楽しそう。羨ましいですっ」
「そうですね……どんな感じになるんだろう」
「そりゃもうきっと、白雪さんのことだから素晴らしい時間を提供してくださいますよ!」

 思ったよりも、この子は白雪さんガチ勢っぽかった。『してくださる』だってよ。上下関係が厳しい体育会系の部活でも、生徒同士でそんな言葉使わないよ。
 この子の熱気に押されて、白雪さん素晴らしい的なトークに耳を傾ける。彼はきっとこうしてくれる、きっとこうだろう、など様々な妄想が働いていた。推しへの解像度が高くて、どれもやけに具体的である。
 なるほど。浦戸のBL話に似てるなぁ、だなんてぼんやりと考えていたのだが、

「先輩!」

 と、突然本部に響きわたる先輩コール。風紀の子と俺は顔を見合わせた。先輩? 一体誰のことなのだろうか。本部を見渡してみるが、誰から発されたかは謎である。

「先輩!!!」

 も一度、大きく先輩コール。一体誰のことを呼んでいるのだろう。大声で呼んでるけど、そんな気づかんもんなのかな。風紀の子が「どうしたんでしょう?」と言って周りを見渡した。俺も一緒になって見渡す。これは、どこから叫んでいるのだろうか。探しているうちに、もう一度「先輩!」とコールする声がした。これ、もしかしたら後ろかもしれない。

「先輩!! 先輩ってば!」

 「桃野先輩!!」不意に呼ばれる俺の苗字。風紀の子は、俺の方を見て目を白黒させていた。その顔、俺がしたい。

「え、俺」
「そうですってば!!」

 振り向いて、視線を声がする方に合わせる。そこにいたのは懐かしの後輩だった。
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