33 / 52
#2 新入生歓迎会編
白雪さんガチ勢
しおりを挟む
「あらら? 捕まっちゃいましたか?」
本部に辿り着くと、可愛らしい風紀の子にそう尋ねられた。いわゆるチワワ顔。 ぱっちり二重まぶたがベリベリキュートだ。
「そうです。捕まりました」
「ケイサツの方は?」
「え、いや、ケイサツっていうか、なんていうか、生徒会の? あの、書記の白雪さんに」
困惑して、しどろもどろの喋りになってしまう。俺、まだあそこで何が起こったのか把握してないし。あれは、やはり一種の悪夢では? もしくは、俺の妄想か? そうであってほしすぎる。悪夢の見過ぎで、現実と夢の境界線があやふやになっちゃった~的な感じだと大変嬉しいんだけどな。
「あっ! もしかして桃野さん?」
「そうです」
「白雪さんから話聞いてます! いいなぁ、役職持ちとデートなんて。羨ましいです」
「はははァ、そうですね」
悲報、あれは現実でした。
俺の悪夢とか妄想の類で、俺がこの風紀の子に虚言癖扱いされる方がマシだった。是非とも代わってあげたい、君と俺の立場。この子なら大喜びで白雪さんとデートしてくれそうだ。可愛いお顔つきだし、白雪さんにとっても、ハッピーラッキーな展開なのでは……?
そう考えていると「一応確認するために!」と謎の機械を突き出され、リストバンドをかざすように促された。
近付ければピロンと音を立てて、リストバンドが謎の機械に反応する。風紀の子は「ふむふむ」と謎の機会の水晶画面を見つめて「ご協力ありがとうございました!」と笑った。すごい、これで誰に捕まったのかわかるのか。文明の利器って感じする。
「ちなみに桃野さんは何をお願いするか、決まってるんですか?」
「え」
「あ! 全然秘密とかでも大丈夫です!」
「まだ全然決まってなくて……」
「色々悩んじゃいますよね!」
「そうですね」
「一緒に外出も素敵だし、お家デートならぬお部屋デートも憧れちゃいますよね~っ! 白雪さんってどんな風に過ごしてるんだろう……手料理とか食べてみたいです。お願いしたら作ってくれるかなぁ?」
目をハートマークにしながら語るその姿に、俺は苦笑いで応じる。外出にしろお家デートにしろ、話が盛り上がらなければ楽しくはない。この子だったら、この素晴らしいトークスキルや相手への興味を駆使して、話をうまく盛り上げられそうだが……俺にはそのどちらもない。
「一日デートってことはきっと、お泊まりもですよね! 白雪さんと恋バナしちゃったりして! あー楽しそう。羨ましいですっ」
「そうですね……どんな感じになるんだろう」
「そりゃもうきっと、白雪さんのことだから素晴らしい時間を提供してくださいますよ!」
思ったよりも、この子は白雪さんガチ勢っぽかった。『してくださる』だってよ。上下関係が厳しい体育会系の部活でも、生徒同士でそんな言葉使わないよ。
この子の熱気に押されて、白雪さん素晴らしい的なトークに耳を傾ける。彼はきっとこうしてくれる、きっとこうだろう、など様々な妄想が働いていた。推しへの解像度が高くて、どれもやけに具体的である。
なるほど。浦戸のBL話に似てるなぁ、だなんてぼんやりと考えていたのだが、
「先輩!」
と、突然本部に響きわたる先輩コール。風紀の子と俺は顔を見合わせた。先輩? 一体誰のことなのだろうか。本部を見渡してみるが、誰から発されたかは謎である。
「先輩!!!」
も一度、大きく先輩コール。一体誰のことを呼んでいるのだろう。大声で呼んでるけど、そんな気づかんもんなのかな。風紀の子が「どうしたんでしょう?」と言って周りを見渡した。俺も一緒になって見渡す。これは、どこから叫んでいるのだろうか。探しているうちに、もう一度「先輩!」とコールする声がした。これ、もしかしたら後ろかもしれない。
「先輩!! 先輩ってば!」
「桃野先輩!!」不意に呼ばれる俺の苗字。風紀の子は、俺の方を見て目を白黒させていた。その顔、俺がしたい。
「え、俺」
「そうですってば!!」
振り向いて、視線を声がする方に合わせる。そこにいたのは懐かしの後輩だった。
本部に辿り着くと、可愛らしい風紀の子にそう尋ねられた。いわゆるチワワ顔。 ぱっちり二重まぶたがベリベリキュートだ。
「そうです。捕まりました」
「ケイサツの方は?」
「え、いや、ケイサツっていうか、なんていうか、生徒会の? あの、書記の白雪さんに」
困惑して、しどろもどろの喋りになってしまう。俺、まだあそこで何が起こったのか把握してないし。あれは、やはり一種の悪夢では? もしくは、俺の妄想か? そうであってほしすぎる。悪夢の見過ぎで、現実と夢の境界線があやふやになっちゃった~的な感じだと大変嬉しいんだけどな。
「あっ! もしかして桃野さん?」
「そうです」
「白雪さんから話聞いてます! いいなぁ、役職持ちとデートなんて。羨ましいです」
「はははァ、そうですね」
悲報、あれは現実でした。
俺の悪夢とか妄想の類で、俺がこの風紀の子に虚言癖扱いされる方がマシだった。是非とも代わってあげたい、君と俺の立場。この子なら大喜びで白雪さんとデートしてくれそうだ。可愛いお顔つきだし、白雪さんにとっても、ハッピーラッキーな展開なのでは……?
そう考えていると「一応確認するために!」と謎の機械を突き出され、リストバンドをかざすように促された。
近付ければピロンと音を立てて、リストバンドが謎の機械に反応する。風紀の子は「ふむふむ」と謎の機会の水晶画面を見つめて「ご協力ありがとうございました!」と笑った。すごい、これで誰に捕まったのかわかるのか。文明の利器って感じする。
「ちなみに桃野さんは何をお願いするか、決まってるんですか?」
「え」
「あ! 全然秘密とかでも大丈夫です!」
「まだ全然決まってなくて……」
「色々悩んじゃいますよね!」
「そうですね」
「一緒に外出も素敵だし、お家デートならぬお部屋デートも憧れちゃいますよね~っ! 白雪さんってどんな風に過ごしてるんだろう……手料理とか食べてみたいです。お願いしたら作ってくれるかなぁ?」
目をハートマークにしながら語るその姿に、俺は苦笑いで応じる。外出にしろお家デートにしろ、話が盛り上がらなければ楽しくはない。この子だったら、この素晴らしいトークスキルや相手への興味を駆使して、話をうまく盛り上げられそうだが……俺にはそのどちらもない。
「一日デートってことはきっと、お泊まりもですよね! 白雪さんと恋バナしちゃったりして! あー楽しそう。羨ましいですっ」
「そうですね……どんな感じになるんだろう」
「そりゃもうきっと、白雪さんのことだから素晴らしい時間を提供してくださいますよ!」
思ったよりも、この子は白雪さんガチ勢っぽかった。『してくださる』だってよ。上下関係が厳しい体育会系の部活でも、生徒同士でそんな言葉使わないよ。
この子の熱気に押されて、白雪さん素晴らしい的なトークに耳を傾ける。彼はきっとこうしてくれる、きっとこうだろう、など様々な妄想が働いていた。推しへの解像度が高くて、どれもやけに具体的である。
なるほど。浦戸のBL話に似てるなぁ、だなんてぼんやりと考えていたのだが、
「先輩!」
と、突然本部に響きわたる先輩コール。風紀の子と俺は顔を見合わせた。先輩? 一体誰のことなのだろうか。本部を見渡してみるが、誰から発されたかは謎である。
「先輩!!!」
も一度、大きく先輩コール。一体誰のことを呼んでいるのだろう。大声で呼んでるけど、そんな気づかんもんなのかな。風紀の子が「どうしたんでしょう?」と言って周りを見渡した。俺も一緒になって見渡す。これは、どこから叫んでいるのだろうか。探しているうちに、もう一度「先輩!」とコールする声がした。これ、もしかしたら後ろかもしれない。
「先輩!! 先輩ってば!」
「桃野先輩!!」不意に呼ばれる俺の苗字。風紀の子は、俺の方を見て目を白黒させていた。その顔、俺がしたい。
「え、俺」
「そうですってば!!」
振り向いて、視線を声がする方に合わせる。そこにいたのは懐かしの後輩だった。
33
お気に入りに追加
358
あなたにおすすめの小説
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
チャラ男会計目指しました
岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように…………
――――――それを目指して1年3ヶ月
英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた
意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。
※この小説はBL小説です。
苦手な方は見ないようにお願いします。
※コメントでの誹謗中傷はお控えください。
初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。
他サイトにも掲載しています。
目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件
水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて──
※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。
※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。
※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。
眠り姫
虹月
BL
そんな眠り姫を起こす王子様は、僕じゃない。
ただ眠ることが好きな凛月は、四月から全寮制の名門男子校、天彗学園に入学することになる。そこで待ち受けていたのは、色々な問題を抱えた男子生徒達。そんな男子生徒と関わり合い、凛月が与え、与えられたものとは――。
人生イージーモードになるはずだった俺!!
抹茶ごはん
BL
平凡な容姿にろくでもない人生を歩み事故死した俺。
前世の記憶を持ったまま転生し、なんと金持ちイケメンのお坊ちゃまになった!!
これはもう人生イージーモード一直線、前世のような思いはするまいと日々邁進するのだが…。
何故か男にばかりモテまくり、厄介な事件には巻き込まれ!?
本作は現実のあらゆる人物、団体、思想及び事件等に関係ございません。あくまでファンタジーとしてお楽しみください。
ボクに構わないで
睡蓮
BL
病み気味の美少年、水無月真白は伯父が運営している全寮制の男子校に転入した。
あまり目立ちたくないという気持ちとは裏腹に、どんどん問題に巻き込まれてしまう。
でも、楽しかった。今までにないほどに…
あいつが来るまでは…
--------------------------------------------------------------------------------------
1個目と同じく非王道学園ものです。
初心者なので結構おかしくなってしまうと思いますが…暖かく見守ってくれると嬉しいです。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる