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#2 新入生歓迎会編

鈴芽くんの独り言

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 毎度恒例(嘘)、前回のあらすじ!
 平凡最推しの桃野くん、なぜか生徒会書記に捕まってしまう。訳がわからねぇ。そして、『俺で処女卒業しよっ?』的な感じなことを、可愛く言われてしまった! 可愛くても許されないセクハラ発言だ。俺は誤魔化されないぞ!
 これからどうなる、チェリーボーイ桃野くん?!


 落ち着いてください、どうにもならんです。


 どうにもならんと信じてるし、何かあっても意地でどうにかする心持ちでいるが───どうやら俺は捕まってしまったみたいだし(捕まえたのか?)、本部の方に行くことにしよう。

 ノロノロと本部へ向かって歩み始める。心なしか足が重い。そうだ、ボーッとしてると余計なこと考えちゃうし、この間に白雪さんの情報をおさらいするとしよう。隙間時間を有効に使うことは大切だ。

 生徒会書記の白雪 姫花。生徒会のお嬢様である。学年は2年。同い年だ。もちろん、生徒会の生徒なので、S組の所属である。
 生徒会には、特殊なあだ名というか、二つ名的なものがある。あの会計が『野獣様』と呼ばれているようなものだ。まあ、生徒たちや親衛隊の隠語のようなものである。
 会長は、あの圧倒的な美貌からお姫様の代名詞『シンデレラ』と。副会長は、あの美しい姿と冷静な性格から『雪姫』と。そして、あの白雪さんは、可愛らしい見た目とあざとさから、『白雪姫』と呼ばれていた。
 浦戸情報によると、あの可愛い姿の後ろには毒が含まれているらしい。あれは、ただの愛くるしい林檎じゃなくて、毒林檎なのだと。

 あと、生徒会にはもう一人、一年生の子がいるのだが、あまりその人について情報を持ち合わせていない。申し訳ないが、興味がないものでね……。
 名前ぐらいなら、なんとすれば思い出せそうだが───うーん、なんだっけなぁ。二つ名は確か『赤ずきん』とかそんな感じだったと思う。

 己の記憶力の悪さに参っていたところ、見慣れた後ろ姿を見つけた。あの鳥の巣もじゃもじゃ頭は!

「鈴芽っ!」

 背後まで近づき、ポンと肩に触れる。振り返った彼は、確かに鈴芽だったのだが、視線が交差して驚く。

「眼鏡してないんだな」
「……そうだね」

 鈴芽はそう言って、ふんわりと遠慮気味に笑った。何気に、鈴芽の眼鏡オフ姿は初めて見た。
 あの瓶底のあり得ない厚さのレンズの下には、全てを見透かしてしまいそうな緋色の瞳が隠されていた。前髪が掛かっていてもなおわかる、澄んだ緋色。
 赤系統の色はなんでか分からないが、若干怖いというイメージが強いのだが、鈴芽の瞳の色はどこまでも優しかった。

「驚いた? 俺の瞳の色」
「あぁ、かっこいい色してるな」
「ふふ、嬉しい。俺はあんまり好きじゃないんだよね、この瞳の色。怖いでしょ?」
「そんなことないよ。かっこいいし、優しい色してるな」

 俺がそう言えば、鈴芽の緋色の瞳は驚いたようで、一瞬だけ静かにゆらりと揺れた。

「……昔と変わらないんだね」

 ぽつりと溢されたその言葉は、俺の鼓膜を揺らして風に攫われていく。その言葉の意味は、いまいち通じなかった。

「昔?」
「あ、いや、ごめん、独り言だから。気にしないでね」

 鈴芽はそう言うと適当に会話を切り上げて、あの眼鏡をかけた。すると、あの緋色は全く見えなくなる。やはり、原理がわからない。いくら厚いレンズだとしても、これすげぇな。何かの魔法でも使っているのだろうか。

「桃野くん、まだ逃げてる? それとも、今もう捕まって本部に向かってる?」
「逃げてはないよ。今本部に向かってる」
「そっか、もう捕まっちゃったか」
「あ……、うん、そうだよ」

 なんていうべきかわからなくて、適当に濁して返事をする。鈴芽は「残念だね」と応えた。

「んじゃあ、鈴芽は頑張ってね」
「うん、頑張るよ」

 手を振って鈴芽が走るのを見送る。俺は本部へ向かって歩き出す。

 ……鈴芽が眼鏡を外したの、初めてだったけど、あの瞳の色どっかで見たことあったっていうか、なんか既視感があった気がした。デジャヴ感じちゃったな。なんでだろう。
 鈴芽もなんか意味ありげなこと言ってたし。昔どこかで会ってたとか? そんなわけないと思うが───もしも、会ってるとするのならば、過去というものはどこまで俺の後をついてくるつもりなのだろう。嫌になっちゃうな。
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