32 / 51
#2 新入生歓迎会編
鈴芽くんの独り言
しおりを挟む
毎度恒例(嘘)、前回のあらすじ!
平凡最推しの桃野くん、なぜか生徒会書記に捕まってしまう。訳がわからねぇ。そして、『俺で処女卒業しよっ?』的な感じなことを、可愛く言われてしまった! 可愛くても許されないセクハラ発言だ。俺は誤魔化されないぞ!
これからどうなる、チェリーボーイ桃野くん?!
落ち着いてください、どうにもならんです。
どうにもならんと信じてるし、何かあっても意地でどうにかする心持ちでいるが───どうやら俺は捕まってしまったみたいだし(捕まえたのか?)、本部の方に行くことにしよう。
ノロノロと本部へ向かって歩み始める。心なしか足が重い。そうだ、ボーッとしてると余計なこと考えちゃうし、この間に白雪さんの情報をおさらいするとしよう。隙間時間を有効に使うことは大切だ。
生徒会書記の白雪 姫花。生徒会のお嬢様である。学年は2年。同い年だ。もちろん、生徒会の生徒なので、S組の所属である。
生徒会には、特殊なあだ名というか、二つ名的なものがある。あの会計が『野獣様』と呼ばれているようなものだ。まあ、生徒たちや親衛隊の隠語のようなものである。
会長は、あの圧倒的な美貌からお姫様の代名詞『シンデレラ』と。副会長は、あの美しい姿と冷静な性格から『雪姫』と。そして、あの白雪さんは、可愛らしい見た目とあざとさから、『白雪姫』と呼ばれていた。
浦戸情報によると、あの可愛い姿の後ろには毒が含まれているらしい。あれは、ただの愛くるしい林檎じゃなくて、毒林檎なのだと。
あと、生徒会にはもう一人、一年生の子がいるのだが、あまりその人について情報を持ち合わせていない。申し訳ないが、興味がないものでね……。
名前ぐらいなら、なんとすれば思い出せそうだが───うーん、なんだっけなぁ。二つ名は確か『赤ずきん』とかそんな感じだったと思う。
己の記憶力の悪さに参っていたところ、見慣れた後ろ姿を見つけた。あの鳥の巣もじゃもじゃ頭は!
「鈴芽っ!」
背後まで近づき、ポンと肩に触れる。振り返った彼は、確かに鈴芽だったのだが、視線が交差して驚く。
「眼鏡してないんだな」
「……そうだね」
鈴芽はそう言って、ふんわりと遠慮気味に笑った。何気に、鈴芽の眼鏡オフ姿は初めて見た。
あの瓶底のあり得ない厚さのレンズの下には、全てを見透かしてしまいそうな緋色の瞳が隠されていた。前髪が掛かっていてもなおわかる、澄んだ緋色。
赤系統の色はなんでか分からないが、若干怖いというイメージが強いのだが、鈴芽の瞳の色はどこまでも優しかった。
「驚いた? 俺の瞳の色」
「あぁ、かっこいい色してるな」
「ふふ、嬉しい。俺はあんまり好きじゃないんだよね、この瞳の色。怖いでしょ?」
「そんなことないよ。かっこいいし、優しい色してるな」
俺がそう言えば、鈴芽の緋色の瞳は驚いたようで、一瞬だけ静かにゆらりと揺れた。
「……昔と変わらないんだね」
ぽつりと溢されたその言葉は、俺の鼓膜を揺らして風に攫われていく。その言葉の意味は、いまいち通じなかった。
「昔?」
「あ、いや、ごめん、独り言だから。気にしないでね」
鈴芽はそう言うと適当に会話を切り上げて、あの眼鏡をかけた。すると、あの緋色は全く見えなくなる。やはり、原理がわからない。いくら厚いレンズだとしても、これすげぇな。何かの魔法でも使っているのだろうか。
「桃野くん、まだ逃げてる? それとも、今もう捕まって本部に向かってる?」
「逃げてはないよ。今本部に向かってる」
「そっか、もう捕まっちゃったか」
「あ……、うん、そうだよ」
なんていうべきかわからなくて、適当に濁して返事をする。鈴芽は「残念だね」と応えた。
「んじゃあ、鈴芽は頑張ってね」
「うん、頑張るよ」
手を振って鈴芽が走るのを見送る。俺は本部へ向かって歩き出す。
……鈴芽が眼鏡を外したの、初めてだったけど、あの瞳の色どっかで見たことあったっていうか、なんか既視感があった気がした。デジャヴ感じちゃったな。なんでだろう。
鈴芽もなんか意味ありげなこと言ってたし。昔どこかで会ってたとか? そんなわけないと思うが───もしも、会ってるとするのならば、過去というものはどこまで俺の後をついてくるつもりなのだろう。嫌になっちゃうな。
平凡最推しの桃野くん、なぜか生徒会書記に捕まってしまう。訳がわからねぇ。そして、『俺で処女卒業しよっ?』的な感じなことを、可愛く言われてしまった! 可愛くても許されないセクハラ発言だ。俺は誤魔化されないぞ!
これからどうなる、チェリーボーイ桃野くん?!
落ち着いてください、どうにもならんです。
どうにもならんと信じてるし、何かあっても意地でどうにかする心持ちでいるが───どうやら俺は捕まってしまったみたいだし(捕まえたのか?)、本部の方に行くことにしよう。
ノロノロと本部へ向かって歩み始める。心なしか足が重い。そうだ、ボーッとしてると余計なこと考えちゃうし、この間に白雪さんの情報をおさらいするとしよう。隙間時間を有効に使うことは大切だ。
生徒会書記の白雪 姫花。生徒会のお嬢様である。学年は2年。同い年だ。もちろん、生徒会の生徒なので、S組の所属である。
生徒会には、特殊なあだ名というか、二つ名的なものがある。あの会計が『野獣様』と呼ばれているようなものだ。まあ、生徒たちや親衛隊の隠語のようなものである。
会長は、あの圧倒的な美貌からお姫様の代名詞『シンデレラ』と。副会長は、あの美しい姿と冷静な性格から『雪姫』と。そして、あの白雪さんは、可愛らしい見た目とあざとさから、『白雪姫』と呼ばれていた。
浦戸情報によると、あの可愛い姿の後ろには毒が含まれているらしい。あれは、ただの愛くるしい林檎じゃなくて、毒林檎なのだと。
あと、生徒会にはもう一人、一年生の子がいるのだが、あまりその人について情報を持ち合わせていない。申し訳ないが、興味がないものでね……。
名前ぐらいなら、なんとすれば思い出せそうだが───うーん、なんだっけなぁ。二つ名は確か『赤ずきん』とかそんな感じだったと思う。
己の記憶力の悪さに参っていたところ、見慣れた後ろ姿を見つけた。あの鳥の巣もじゃもじゃ頭は!
「鈴芽っ!」
背後まで近づき、ポンと肩に触れる。振り返った彼は、確かに鈴芽だったのだが、視線が交差して驚く。
「眼鏡してないんだな」
「……そうだね」
鈴芽はそう言って、ふんわりと遠慮気味に笑った。何気に、鈴芽の眼鏡オフ姿は初めて見た。
あの瓶底のあり得ない厚さのレンズの下には、全てを見透かしてしまいそうな緋色の瞳が隠されていた。前髪が掛かっていてもなおわかる、澄んだ緋色。
赤系統の色はなんでか分からないが、若干怖いというイメージが強いのだが、鈴芽の瞳の色はどこまでも優しかった。
「驚いた? 俺の瞳の色」
「あぁ、かっこいい色してるな」
「ふふ、嬉しい。俺はあんまり好きじゃないんだよね、この瞳の色。怖いでしょ?」
「そんなことないよ。かっこいいし、優しい色してるな」
俺がそう言えば、鈴芽の緋色の瞳は驚いたようで、一瞬だけ静かにゆらりと揺れた。
「……昔と変わらないんだね」
ぽつりと溢されたその言葉は、俺の鼓膜を揺らして風に攫われていく。その言葉の意味は、いまいち通じなかった。
「昔?」
「あ、いや、ごめん、独り言だから。気にしないでね」
鈴芽はそう言うと適当に会話を切り上げて、あの眼鏡をかけた。すると、あの緋色は全く見えなくなる。やはり、原理がわからない。いくら厚いレンズだとしても、これすげぇな。何かの魔法でも使っているのだろうか。
「桃野くん、まだ逃げてる? それとも、今もう捕まって本部に向かってる?」
「逃げてはないよ。今本部に向かってる」
「そっか、もう捕まっちゃったか」
「あ……、うん、そうだよ」
なんていうべきかわからなくて、適当に濁して返事をする。鈴芽は「残念だね」と応えた。
「んじゃあ、鈴芽は頑張ってね」
「うん、頑張るよ」
手を振って鈴芽が走るのを見送る。俺は本部へ向かって歩き出す。
……鈴芽が眼鏡を外したの、初めてだったけど、あの瞳の色どっかで見たことあったっていうか、なんか既視感があった気がした。デジャヴ感じちゃったな。なんでだろう。
鈴芽もなんか意味ありげなこと言ってたし。昔どこかで会ってたとか? そんなわけないと思うが───もしも、会ってるとするのならば、過去というものはどこまで俺の後をついてくるつもりなのだろう。嫌になっちゃうな。
30
お気に入りに追加
347
あなたにおすすめの小説
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
チャラ男会計目指しました
岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように…………
――――――それを目指して1年3ヶ月
英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた
意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。
※この小説はBL小説です。
苦手な方は見ないようにお願いします。
※コメントでの誹謗中傷はお控えください。
初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。
他サイトにも掲載しています。
不良高校に転校したら溺愛されて思ってたのと違う
らる
BL
幸せな家庭ですくすくと育ち普通の高校に通い楽しく毎日を過ごしている七瀬透。
唯一普通じゃない所は人たらしなふわふわ天然男子である。
そんな透は本で見た不良に憧れ、勢いで日本一と言われる不良学園に転校。
いったいどうなる!?
[強くて怖い生徒会長]×[天然ふわふわボーイ]固定です。
※更新頻度遅め。一日一話を目標にしてます。
※誤字脱字は見つけ次第時間のある時修正します。それまではご了承ください。
王道学園のモブ
四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。
私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。
そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951
風紀“副”委員長はギリギリモブです
柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。
俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。
そう、“副”だ。あくまでも“副”。
だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに!
BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる