桃野くんは色恋なんて興味ない!

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#2 新入生歓迎会編

ワクワク新歓!

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 光陰矢の如しとは、まさにこのこと。

「いやぁ! 素晴らしいほどの晴天だね! 俺の心も澄みに澄み渡ってる! この世の全てにありがとう! きっと俺はこれから良質な“萌え”を摂取できるだろう! それはそうとして気分はどうだい、マイベストフレンド桃野!」
「銀河破壊爆弾を出してくれって、ドラえもんに泣き縋りたい気分だわ」
「それは素晴らしい! 今は二十三世紀じゃないぞ」

 そんなこと知ってるよ。
 つか、お前はなんでそんなに元気なんだよ、マイベストフレンド浦戸。その元気さ分けてくれ。

 本日、五月某日。新入生歓迎会の日である。生徒たちはジャージを着て、第一グラウンドに招集されていた。

 この学園のジャージは機能性が良く、デザインも謎に良い。加賀美みたいなイケメンが着ると、それなりにいい感じに仕上がる。普通にそれで街中を歩いてても、パッと見で違和感は全くない。むしろ、しゃれおつって感じ。
 とは言っても、だ。
 いくらデザインが良かろうが、俺みたいなやつが着たら普通のジャージである。平凡な俺にはイケメンパワーがないからな。

「快晴で日差しがすごいね……」

 隣にいた鈴芽が、そう言って空を仰いだ。穏やかで平和だ。
 左右で温度差が違いすぎる。
 主に、浦戸のテンションがおかしいのである。なんで、そんなにハイテンションなんだよ。

「太陽も今日という日を祝福しているな!」
「うるさいよ、浦戸」
「祝福するのは別にいいけど、少し自重してほしかったね」
「この時期、けっこう紫外線えぐいからな」
「ヒャー美容男子桃野くん! キタコレ!」
「別にそんな美容に気を遣ってないんだけど。何にもきてないし、こないよ」
「美容に興味ないんだね。桃野くんの肌綺麗だからなんかしてるのかと思った」
「えー、ありがとう。何もしてないよ」

 久々にこんな騒がしい気がする。桃野くんあまり友達がいないもんで、このような騒がしさは久々だ。
 右から左へ縦横無尽に、様々な話題が飛び交う。太陽もそうだが、浦戸も少し自重すべきだと思う。うるさい。鈴芽の穏やかさを見習うべきだ。

「それでは、開会式を始めるのでみなさん並んでください」

 そう言ったのは、我らがクールビューティ副会長。その指示に従って、みんながゾロゾロと動き出す。
 おいおいマジかよ、始まっちゃうのかよ……。

「ワクワクだなぁ!」
「たぶんワクワクしてるの浦戸だけだよ」
「でも、ちょっと俺も楽しみかも」
「うそだろ、鈴芽」

 ま、まあ、鈴芽はこの学園の異常さをまだまだ知らないからな。きっと、これから生活してるうちに知ることになるよ。望んでも、望まなくても。

「それでは、これから新入生歓迎会開会式を始めます」

 お美しい立ち姿の副会長が、そうアナウンスする。

 ついに来てしまったか、新歓。
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