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#1 王道転入生編
不満げ浦戸くん
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授業中お腹が鳴り過ぎて、羞恥で爆発しそうになっていたところ、授業終了のチャイムが学校に響き渡った。
よっしゃぁぁぁあ!!!!!
お腹ぺこぺこのままよく乗り切った、桃野! つかむしろ、限界状態で逆に目が冴えたな。現文の先生のおねんねボイスにも負けなかったわ。
こうして、俺は無事に今日も一日を乗り越えたわけなのだが。
隣の席の鈴芽は、午後の授業には出席しなかった。あんなことがあったから、当たり前と言えば当たり前である。
そして、俺は今日、すごく部屋に帰りたくない。部屋に帰ることは別にいいけど、一人になったらなんか余計なこと考えてしまいそうで───主に過去のこととか過去のこととか。
「浦戸ぉ、放課後なんか予定あったりする?」
そういうわけで、授業終了後すぐに俺は後ろの席の浦戸に縋りついた。いつもの浦戸なら「なんもねぇけど何? 俺の話が聞きたいの?」とか言って反応する前に話し始めるのだが。
「予定? あるけど、どうしたん」
「だよね───って、予定あるの?!」
「おいおい、俺だって暇じゃねぇんだよ。んで? 急に引き止めちゃってどうしたの? なんかあった?」
「あーえっと、なんか今日は浦戸の話聞きたいなーって気分というか」
思ってもいない嘘をついてみたのだが、浦戸は「嘘つくなよ」と言って一瞬で見透かしてきた。
「どうしたん、重大な用事なら今ある予定の方を蹴るけど」
「いや、全然重大じゃない」
「じゃあ、なんだい?」
「なんか、今日、寮に帰りたくないっていうかぁ、一人になりたくないっていうかぁ」
「一人が怖いんだ?」
「そうです、そうです」
恥ずかしかったけど、それが事実なので頷く。浦戸の方は馬鹿にしてくるかと思ったけど、そんなことなく「そうか」と言って何かを考え込んでいた。
「俺は今日王道転入生について仲間と語り合う予定なんだけど───」
ん? 浦戸くんは真面目な顔で何を言っているのだろうか。王道転入生? について仲間と話し合う? 仲間ってなんの仲間よ。腐仲間?
ちょっと何言ってんだかわからんが、黙って聞く。
「桃野がそれほどひとりが嫌なら、一緒に桃野の同室───バレー部だっけ? その人が帰ってくるまで付き合うよ?」
あまりにも親身になってくれるので、急に申し訳なくなって「いいや、いいよ。全然。大丈夫」と断った。俺の子供じみた身勝手なわがままで、浦戸や浦戸の仲間? に迷惑はかけられない。
「…………」
断ったのに、浦戸は不満げな顔をした。
「な、なに?」
「いや、いつも通りだなぁと」
「何がよ」
「べーつーにぃ? なんでもねぇ」
「はぁ……?」
「あんま気にすんな。また明日」
浦戸は「気にすんな」といいつつ、ムッとした顔で、手を振った。一応、俺も振り返とく。すると、浦戸はそのまま、お仲間のところへ行ってしまった。
なに、あの不満げな顔。
何か言いたいことがあるなら言ってほしいんだけど。言わないとなんでも伝わらないし。別に、内緒にしたいなら言わなくてもいいんだけど、なんかモヤモヤする。
もうクラスメイト全員、部活か寮に行っちゃったし、今残っているのは俺だけである。
「…………」
どこで時間潰そうかな。
そうやって思考を巡らせていたところ、教室の入り口から能天気な声が響く。
「おぉ! 桃野、いいところに!」
入り口に目を向ければ、深緑のメッシュが視界に入る。派手な見た目で、明るい声色。
「どうせ暇だよな。手伝ってくれ」
どうせ暇って!
相変わらず、この教師は俺のことを暇だと思っていやがる。いやまあ、実際そうなんですけど……!
よっしゃぁぁぁあ!!!!!
お腹ぺこぺこのままよく乗り切った、桃野! つかむしろ、限界状態で逆に目が冴えたな。現文の先生のおねんねボイスにも負けなかったわ。
こうして、俺は無事に今日も一日を乗り越えたわけなのだが。
隣の席の鈴芽は、午後の授業には出席しなかった。あんなことがあったから、当たり前と言えば当たり前である。
そして、俺は今日、すごく部屋に帰りたくない。部屋に帰ることは別にいいけど、一人になったらなんか余計なこと考えてしまいそうで───主に過去のこととか過去のこととか。
「浦戸ぉ、放課後なんか予定あったりする?」
そういうわけで、授業終了後すぐに俺は後ろの席の浦戸に縋りついた。いつもの浦戸なら「なんもねぇけど何? 俺の話が聞きたいの?」とか言って反応する前に話し始めるのだが。
「予定? あるけど、どうしたん」
「だよね───って、予定あるの?!」
「おいおい、俺だって暇じゃねぇんだよ。んで? 急に引き止めちゃってどうしたの? なんかあった?」
「あーえっと、なんか今日は浦戸の話聞きたいなーって気分というか」
思ってもいない嘘をついてみたのだが、浦戸は「嘘つくなよ」と言って一瞬で見透かしてきた。
「どうしたん、重大な用事なら今ある予定の方を蹴るけど」
「いや、全然重大じゃない」
「じゃあ、なんだい?」
「なんか、今日、寮に帰りたくないっていうかぁ、一人になりたくないっていうかぁ」
「一人が怖いんだ?」
「そうです、そうです」
恥ずかしかったけど、それが事実なので頷く。浦戸の方は馬鹿にしてくるかと思ったけど、そんなことなく「そうか」と言って何かを考え込んでいた。
「俺は今日王道転入生について仲間と語り合う予定なんだけど───」
ん? 浦戸くんは真面目な顔で何を言っているのだろうか。王道転入生? について仲間と話し合う? 仲間ってなんの仲間よ。腐仲間?
ちょっと何言ってんだかわからんが、黙って聞く。
「桃野がそれほどひとりが嫌なら、一緒に桃野の同室───バレー部だっけ? その人が帰ってくるまで付き合うよ?」
あまりにも親身になってくれるので、急に申し訳なくなって「いいや、いいよ。全然。大丈夫」と断った。俺の子供じみた身勝手なわがままで、浦戸や浦戸の仲間? に迷惑はかけられない。
「…………」
断ったのに、浦戸は不満げな顔をした。
「な、なに?」
「いや、いつも通りだなぁと」
「何がよ」
「べーつーにぃ? なんでもねぇ」
「はぁ……?」
「あんま気にすんな。また明日」
浦戸は「気にすんな」といいつつ、ムッとした顔で、手を振った。一応、俺も振り返とく。すると、浦戸はそのまま、お仲間のところへ行ってしまった。
なに、あの不満げな顔。
何か言いたいことがあるなら言ってほしいんだけど。言わないとなんでも伝わらないし。別に、内緒にしたいなら言わなくてもいいんだけど、なんかモヤモヤする。
もうクラスメイト全員、部活か寮に行っちゃったし、今残っているのは俺だけである。
「…………」
どこで時間潰そうかな。
そうやって思考を巡らせていたところ、教室の入り口から能天気な声が響く。
「おぉ! 桃野、いいところに!」
入り口に目を向ければ、深緑のメッシュが視界に入る。派手な見た目で、明るい声色。
「どうせ暇だよな。手伝ってくれ」
どうせ暇って!
相変わらず、この教師は俺のことを暇だと思っていやがる。いやまあ、実際そうなんですけど……!
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