桃野くんは色恋なんて興味ない!

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#1 王道転入生編

危険人物とマリモ

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 そんな一悶着を終えて、クラスに着くと、昨日とおんなじタイミングで浦戸と会ってしまった。今日は朝から運が底を尽きている。絶対星座占い十二位だろ、これ。厄日の次は星座占い十二位とかどうなっちゃってんの。

「桃野! 俺はお前の友達でいれて嬉しいよ! おはよう!」
「俺もそう思うよ、おはよう」

 なんだなんだ、朝からめっちゃハイテンションだな。俺とは大違いだな。

 そのハイテンションのまんま、毎度恒例、あの謎言語で立板に水のごとく、意味のわからん話を喋り倒すのかと思っていたのだが───予想は反して、急にまじまじと顔を見つめらた。こっわ。

「えぇ、どしたん」
「…………」
「ちょっと、無視つら」

 加賀美に促されて冷やしてきたけど、まだ泣いた影響で赤く腫れてるのだろうか。バレたら色々めんどくさくて嫌なんだけど! 辛い出来事って説明するだけで辛くなるよね。

 内心ヒヤヒヤで浦戸と見つめ合っていた俺だが、彼は「お前、寝てないだろ? ちゃんと寝ろよ」だけで済ませて、またハイテンションを取り戻す。
 ちゃんと寝ろよって……一見無愛想な言葉だが、彼なりに心配してんだろう。浦戸、こう見えて不器用さんだから。

「それにしても、昨日はすごかったな!」

 気を取り直し、浦戸はニコニコとそう言ってくる。心なしか水色の瞳がキラキラと輝いていらっしゃる。

 昨日って、あの食堂での生徒会のことだろう。オイオイオイ、人の不幸は蜜の味ってか? さっきの優しさどこ行った。

「生徒会と話してたもんだからヒヤヒヤしちゃったよ! もしかして、非王道狙ってる?」
「そんなに話してないから、別に。しかも、ひおうどーってなんだよ」
「甘いなぁ、桃野。あの転入生は、完全な王道転入生だから。残念だけど、桃野総受けルートにはならない可能性の方が高いと思うなぁ。でもまあ、非王道を目指すなら俺も応援するぜ! だけど巻き込まれるのは嫌だから!」
「おう、そうだなー」

 話が通じない通常運転。大丈夫、誰もお前をひおうどーてんかい? とやらに巻き込んだりはしないさ。安心せい。
 そうやって、話を右から左へ聞き流していたところで、探していた後ろ姿を見つける。

「鈴芽!」
「あ、桃野くん」

 こちらを振り返った鈴芽は、昨日とおんなじ芋姿だった。マジで何度見てもこの瓶底メガネが、本当にメガネとして役に立ってんのかわからねぇ。このマリモヘアもどうなってんだろう。
 実は、この姿はこの異質な学園生活を生き抜くための化けの皮で、それを剥いだら中から美少年が出てくるとか……? ありえねぇな。いくらなんでもアニメの見過ぎである。

「桃野くんと……初めまして? ですよね」
「あ~あ~あ~! 初めまして! 俺、浦戸です! 呼び捨てタメ口でどうぞ!」

 そうか。この人たち初対面なのか。

「なるほど、浦戸くん。俺のことも呼び捨てで大丈夫だから」
「了解、鈴芽!」

 そうならばなんてことだ、予期せず鈴芽とこの危険人物に面識を作ってしまった。ごめんな、鈴芽。コイツは俺が知っている中で最も危ない人物だ。気をつけろ。

「どうしたの、桃野くん。神妙な顔して」
「あ~、いや別に」

 なんか、悪いなと思いまして。と言う言葉は浦戸に悪いので飲み込んでおいた。
 友情の芽生えは素晴らしいが、最近出会いが多いな。スリリングなエブリデイだぜ。こう見えて人見知りの桃野くん、参っちゃうワ……。
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