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続編
12、不安な気持ち
しおりを挟むミレイとナジェがパドラス国に行くことが決まってから、その準備もあって研究室はさらに忙しくなった。
なんだかアーサー殿下が来てからずっと忙しいなあ。思わず苦笑いしてしまう。
彼が原因の全てではないけれど、なんとなく彼のせいにしてしまいたくなるのはあの性格のせいだろうか。
そんなことを考えながら、研究室の出入り口近くの共同机に座ってレニと作業をしていると、アーサー殿下がお付きの人と一緒に現れた。
私たちが立ち上がり彼らを迎え入れると、パドラス国へ向かってくれる新聖女に挨拶をしたいと申し出てきた。
ハニカ様がアーサー殿下にミレイを紹介する。
「そなたが新しい聖女か。今回は面倒をかけるな」
「はい。でもナイジェル様と旅に出れるので楽しみです~」
「それがそんなに嬉しいのか?」
「私を好きになってもらえるチャンスなので~」
ミレイはふふっと笑う。
「ほう、あいつを落としたいのか」
アーサー殿下は私の方をちらっと見ながら言った。
「はい、頑張ります!」
ミレイは片手を上げて、ガッツポーズを取っている。
「そうか、頑張れよ」
アーサー殿下は片手で口元を押さえて、ぷぷっと笑いを堪えながら言った。
私は微笑みを絶やさない。特にアーサー殿下が見ている間は意地でも。
私は年上ですからね。
「男は年下の女に弱いからな」
アーサー殿下はわざとらしく私に向かって大きな声で言った。
「あら、殿下はそういったご趣味なんですね」
「いや、俺は年上のガキっぽい女が好みだ」
っく……~~~!
新手の嫌味かしら。
「そうですか。変わったご趣味ですね。それでは聖女ではない私は仕事がありますので失礼いたしますね」
笑顔でそう言って、私はアーサー殿下に背を向けて椅子に座る。
そんな私の様子を見て、彼はさも可笑しそうに笑いながら去って行った。
ミレイも出発に向けて魔法のレッスンが立て込んでいるため、レッスン室へ向かう。
も~~、なんなのよあの王子は!
人のことバカにして!
私は気を取り直して、色付き紙を使ってこよりを作る作業を再開した。
魔法道具を種類別に見分けられるように目印として使うのだ。
こういう単純作業の時は、色々と余計なことを考えてしまう。
はあ~
やっぱりアーサー殿下が言うように、男の人が年下の女の子を可愛く思うって、よくあることだよね。
しかもあんなに可愛くて純粋で儚げな子が、うるんだ瞳をしながら好き好きってアプローチしてきたら心が動かない方が珍しいわよね……。
いや!ナジェはそんな人じゃないわ!うんうん。
私たちは固い絆で結ばれているもの!
いやでも……これからパドラス国に向かう道中で心を通わせるなどして……やはりナジェも男であるからにして…………う~ん。
「ちょっと、リシャ……?!」
レニの呼ぶ声で我に返ると、目の前にはこよりの山ができていた。
しまった、作り過ぎた。
「リシャ大丈夫?」
レニのその優しい顔にホッとして甘えたくなる。
「レニ~~」
私は思わず情けない声を出す。
「うんうん」
レニは慰めるように相槌を打つ。
「レニどうしよう~」
「そうねえ」
「やだよ~」
「ん」
「不安だよ~」
レニはふっと吹き出す。
「リシャ。あなたのその素直なところ好きよ」
「へ?」
「そんなに素直に感情が出せて羨ましいよ」
レニは私を眩しそうに、優しい顔で見ている。
「え? レニもいつも感情に正直じゃない」
「へ? そうかな?」
「うん、相当」
「へえ、そっか~」
そうして二人でぼんやり笑い合って納得していると、隣の机で作業していたハニカ様がブフっと吹き出した。
「ふ、二人ともいつも正直でとてもいいですよ」
そう言いながらハニカ様は笑いを堪えている。
何がツボに入ったんだろう……。
こんなに笑うハニカ様って珍しい。
すると、ふと笑うのをやめて、ハニカ様は真顔になった。
「でもですね、リシャ様。所長の方がよっぽど不安だと思いますよ」
私はピタッと動きを止めた。
えっ……?ナジェが不安?
「ミレイ様はまだ、どこかあどけない視点で所長を見ています。だけど、第一王子殿下はあなたに本気です」
ハニカ様は私を真剣に見つめて続けた。
「そんな人がいる場所に、リシャ様を一人置いて行かなければならないのですから」
「い、いや、あの人は面白がって揶揄っているだけですよ」
私は愛想笑いを浮かべながら言う。
「ああいう人に限って、本気の時ほど茶化してしまうものですよ」
む、そうかな。
「小さな頃から人の心の裏側を見てきた所長には、手に取るように分かることでしょう」
あ、そうか…………。
……私はいつも、都合の悪いことは見て見ぬ振りをするところがあるのかもしれない。
そんな自分を反省すると、なんだかすごくナジェに会いたくなった。
「所長は出発までに片付ける仕事があるので、今日は遅くまで執務室に籠っていると思いますよ」
ハニカ様は微笑みながらそう言った。
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