落ちこぼれ仮聖女ですが、王国随一の魔道士に溺愛されました

六花心碧

文字の大きさ
23 / 63
本編

22.頼れるレニお姉ちゃん

しおりを挟む
「リシャ、私。入ってもいいかな」
 扉の向こうから聞こえてきたのはレニの声だった。私は嬉々としてレニを迎え入れた。

「身体は大丈夫?」
「うん、もうなんともないよ」
「ほんと、昨日はビックリしたよ~!」
「うん……レニとハニカ様が来てくれなかったらどうなってたか……本当にありがとう」
「無事でよかった」

 改めて私をじっと見つめ、レニが息を飲みながらそう言った。

「でもレニはよくあそこに私がいるって分かったね」

 自分で言いながら、昨日のあの瞬間を思い出してゾクッとした。2人が来てくれなかったらと思うと本当に恐ろしい。

「たまたま通りがかった令嬢たちからリシャの話をしているのが聞こえてきてね」
 そう言って、ちょこんと立てた人差し指の先に貯めた魔力を光らせた。

「ちょっと質問に答えてもらったのよ」

 その可愛い顔とは裏腹に、何をしたのか想像すると怖いよ、レニ……。
 でも私のために必死で探してくれたんだね。ありがとう。

「あの場所は魔物が出るから騎士団の訓練の場所として使われている所なのよ」
「?!」
「この国には白・青・青緑・紫の色をした4つの扉があるの。そのうち3つは三大侯爵家の家にあって、扉の先は同じ“魔物が出る場所”へ通じてるわ。それぞれの家門の騎士団が訓練所として使っているの。ただ紫の扉だけは王宮にあって、噂によると3つの侯爵家にある扉とは違う場所に行くらしいの。滅多に使われることはないらしいし、本当のところはよく分からないんだけど」

 へえ!そういうことか。ゲーム好きな私としてはすぐに理解できた。

「なるほど、ダンジョンってことね」
 そこで魔物を倒してレベルアップしていけるのね。

「だんじょん?」

 不思議そうなレニを尻目に私は1人で納得した。
 レニは気を取り直して続ける。

「いつもなら扉は厳重な管理がされていて、解錠してあるなんてことはないと思うんだけど……」

 鋭く目を光らせたレニは私を真っ直ぐ見ながら言う。

「質問に答えてくれた3人の令嬢はティナ様の取り巻きなの。彼女たちはわざとリシャを誘導したようにしか思えない」

 なるほど、そういうことか。私にはなんだか納得がいった。

「実は前に庭園でレニが助けてくれたとき、ティナ様に私の婚約者に近づくなって言われて」
「……そう、それでリシャをあんな目に合わせたのね」
「でも、私もいけないんだと思う。そう聞いたときからナジェとの関わり方をきちんと考えるべきだったのに」

 そうだ。きちんと距離を置くべきだった。だから私は自分の気持ちに気づいてしまったことは、レニには言わずにいることにした。

「そうだったのね……。あのね、そう言うことならまず誤解を解いておくけど、所長とヴェルナー侯爵令嬢との婚約は正式に王宮に受理されているわけではないのよ」
「えっ?」
「見れば分かる通りティナ様は執拗に所長を追いかけてるけどね。所長が頑なに拒んで王太子殿下に却下するよう指示してるんだって」

 王太子殿下に指示って。なんだかそれもナジェらしくて笑ってしまいそうになった。

「お二人は小さな頃から絆が強いからね。殿下も所長の頑固さには苦笑いしてるってお父様が言ってたわ」
 レニも半分呆れながら笑っている。

「ただ、ヴェルナー侯爵家の勢力は王宮も一目置くほど、多くの貴族達をまとめてバランスを保っているし、親族には王家に関わりのある人もいるから決して無視はできないの」
「そうなんだ……」
「そう、だからその権力を盾に所長を誰にも取られないようにああやって婚約者気取りでいるのよ。困ったお嬢様よね」

 それからレニはぐっと体に力を入れて呻くように言った。

「今まではその程度で済んだけど。いくら所長が分かりやすいからって、リシャにあんなことするなんて許せない……!」

まあまあ、落ち着いて……。
ん?分かりやすい?

「だって、所長はあんなに……」
 レニは私のきょとんとした顔を見てから、言葉を切って頭を抱えた。

「いや、ううん、なんでもない。いくら見れば分かるような態度でも私が勝手に所長の想いをリシャに語るなんてよくないわよね……副所長にもなんだか悪いしね」

 小さくぶつぶつと呟いてからレニは私に向き直った。

「とにかく! ティナ様は婚約者なんかじゃないし、あなたに対して良からぬ感情を抱いているのは確かだから、これから充分に気をつけよう!」
「う、うん」

 レニの勢いに押されて、取り敢えず頷いておいた。
 とはいえ、今のこの状況は暇すぎる!

「でもまずは早く研究に戻りたいよ~。元気が有り余っちゃって、もうこれ以上休んでられない……!」

 レニは私の様子を見て苦笑いしながら答える。

「所長も副所長もリシャを大切にしすぎて過保護よね。私からも2人にもう大丈夫だって伝えておくよ。明日からまた復帰しよう!」

 やった!
 なんだか本当に、レニって頼れるお姉ちゃんみたい。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています

放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。 希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。 元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。 ──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。 「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」 かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着? 優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。 前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。 外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。 もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。 そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは… どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。 カクヨムでも同時連載してます。 よろしくお願いします。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

処理中です...