落ちこぼれ仮聖女ですが、王国随一の魔道士に溺愛されました

六花心碧

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本編

5.ハニカ様の魔法レッスン

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 この世界にやってきてから数日が経ち、ここでの生活にも徐々に慣れ始めてきた。

 最近はエメラルド塔内の研究室をちょくちょく訪れて、魔導士たちの研究を見学するのが日課になっている。

 この国の魔法には火・地・風・水の4種類があって、エメラルド塔ではそれぞれの部門に分かれて研究をしている。

 それは主に国民の生活に役立てる魔法道具を作り出す為だ。

 火の魔法を使った照明器具のような魔法道具。
 水と風の魔法を使った洗濯機のような魔法道具。

 そんな生活を便利にする魔法道具は、魔導士達の手によって日々生み出されているのだという。


 さらに、魔法上級者になると光魔法が使えるのだとか。

 現在その魔法が扱えるのは、この国では魔法研究所の所長である『王国随一の魔道士』と呼ばれるその人物只一人だけらしい。

 話を聞いているうちに魔法や魔法道具に物凄く興味が湧いてきた。


「私もこの世界の住人だったら魔法が使えるようになれてたのかな」

 というほんの何気ない私の呟きに、ハニカ様は当然のように答えた。

「訓練すればリシャ様もできますよ」

 いやいや、私にそんな特別な力はないです。


 ハニカ様は白けた顔をしている私に、さも当たり前だという風に続ける。

「魔力を持たない人はいませんから、多かれ少なかれ皆持っているものなんです。そもそもこの世界に辿り着けたという時点で、リシャ様にも多少の魔力があるという証しになるのですよ」


 えっ!!そうなんだ!

「でもこんな年から始めて出来るものなのかな?」

 もうアラサーだし……訓練するにしろ若いうちからでないと上達出来ないんじゃ……。

「年齢は関係ありませんよ」

 ハニカ様はその美しい顔に微笑を浮かべながら全く問題ない、という風に言い切った。


 それなら、私もやってみたい!


 そんな私の唐突な願いを受け入れてくれて、なぜかハニカ様が直々にレッスンをしてくれることになった。


 副所長という肩書きがあるくらいの人なら私なんかに構っている場合じゃないのでは……と思うとちょっと申し訳ない気がしたけれど「責任ある立場としてリシャ様をサポートする役目があるのです」と言うので、もうこの際甘えてしまうことにした。


 そんなこんなでハニカ様の魔法レッスンが始まることになったのだ。

 今日はその第1日目。

 魔法のレッスンはとにかく実践あるのみということで、実技トレーニングをしてもらうことに。


 まずは魔力を流してそれが火・地・風・水のどの種類かを当てるレッスンだ。
 自分が使える種類の魔力はきちんと感じられるようになっているのがこの世界の魔法のセオリー。

 逆に、自分が使えない種類のエネルギーはいくら流しても全く感じられないらしい。


 ハニカ様と向かい合って立ち、彼は私に手をかざしながら言う。

「それでは火のエネルギーを流しますね」

 そう言ってハニカ様は集中する。

「なんだかポカポカします」

 体中にエネルギーが流れてきたのが分かったのでそれを伝えた。


 ハニカ様は少し笑顔になって続ける。

「そうですか、では次は地のエネルギーです」
「なんだかぽわっとします」
「ふむ、では次は風のエネルギーを流します」
「スースーしますね」

 ハニカ様は少し驚いたような顔をしてから続けて言った。


「それでは、最後に水のエネルギーです」
「なんだかヒンヤリします」

 私の答えを聞いて、ハニカ様は少し考えるような仕草をして言う。

「もしかするとリシャ様は全ての魔法を使えるのかもしれないですね」

 えっ!全部?
 それってなんだか凄そうだけど、まさか私にも聖女のお役目が……?!

「いえ、この程度では聖女としての魔力には到底及びませんので大丈夫です」

 私の思っていることが顔に出ていたのか、ハニカ様は笑顔でさらっと答える。

 うっ、なんか恥ずかしい……。


「とはいえ、全てのエネルギーを扱える人はそんなに多くはないですから、これはすごいことですよ」

 そ、そうなんだ。じゃあ褒め言葉として受け取らせて頂こうかな……。

 そんな私の様子を見ていたハニカ様は、ふふっと笑う。

「リシャ様は表情がくるくると変わって楽しいお方ですね」

 えっ、そうかな?
 自分ではそんなつもりなかったけど、何か変かな。

 そう思って自分の顔を慌てて手で押さえた。

「楽しそうで、とても素敵ですよ」

 美しいその顔にふわっと笑顔を咲かせたハニカ様を見ていると、なぜだか私も急に可笑しさが込み上げてくる。

 そうして2人で長いことクスクスと笑い合っていた。

 何はともあれ『魔力を感じられた』という事実に、ほんの少し自分がレベルアップできたような気がして嬉しかった。
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