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悪役になりきれない悪食令嬢、それが私⁉︎
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昼に食べ過ぎたこともあり、夕食は自室で軽く食べるだけにとどめることにし、カルド殿下たちにはカレーうどんを出すように料理長に伝えた。
カレーライス、カレーチャーハン、カレーうどんとカレー味が続くけれど、カルド殿下がカレーカレーとうるさいそうなので、せめて変化を、ということでフォーを使ったカレーうどんを出してもらうことにしたのだ。
私は普通のお出汁のうどんに、甘辛く煮付けたすじ肉と温玉をトッピングしてもらうことにした。
ああ、スパイシーな味つけが続いたせいか、鰹節の風味が効いたお出汁の優しい味がしみるぅ……
ズズッと麺をすすりながら、先程料理長から渡された、今後我が家で取り引き可能な香辛料のリストの内容を反芻する。
……ほぼほぼ全種類の香辛料や薬草の取り引き可能な上、どの貴族よりも優遇しますって内容だったんだよね……いいの?
カルド殿下ってば、「何なら王家より優遇しますよ?」って言ってたって、本気?
同席していたレイモンド王太子殿下も「それでいいと思う」って許可してたって、正気?
さすがにそれは陛下に叱られ案件だと思うから、お父様と陛下とカルド殿下とでうまいこと話し合っていただきたいわね。
本音を言えば、ベーコン他燻製品の新フレーバーとしても使えるから、優遇とまではいかなくても融通してもらえるのは非常に助かる。
オークの納品が増えて領地でベーコンの生産量がぐんと上がったそうなので、ここらでベーコンなどの肉料理に合うスパイスを売り出してもいいかもと思っていたところなのよね。
それというのも、野営していて困ることの一つに食事……料理がある。
ただ焼いて塩を振るだけと言っても、塩梅という言葉があるように素材のうまみを引き出すよう程よく、適量で……ということすら難しいぶきっちょさんだっているのだ。
料理オンチのマリエルさんがいい例だろう。
そんな人たちがいくらスパイスが広く安価に流通しはじめたとしてもそれらを上手に使いこなせるかは甚だ疑問なのよね。
そこで、ささっと振りかけるだけでリッチな味わいになるハーブ塩やスパイス塩を販売するのはどうだろうと考えたのだ。
だから、香辛料の取り引きが有利に動くのは願ったり叶ったりなのよ。
だけど、ただでさえ王家と懇意にしているエリスフィード公爵家が香辛料の取り引きで王家を凌ぐほどの圧倒的優位に立つのはまずいでしょ?
私だってそのくらいわかるわよ。
なんでもかんでも手放しに喜んではいられないってわけ。
いくらお父様が娘に甘いとはいえ(その割にはお小言が多いけど)、政治的なパワーバランスを考えてうまくことを運んでくださいます……よね? お父様⁉︎
とりあえず、私が定期的にまとまった量の納品を希望する香辛料や、もし手に入るならたまにでよいから納品していただきたい香辛料や薬草などをリストアップしてお父様に渡しておこうっと。
ん? 政治的なパワーバランス?
わかってるんじゃなかったのかって?
嫌だわ、私はただこれが手に入ったらいつでもお父様に美味しいごはんを召し上がっていただけるのになあって思ってお手紙を書くだけですわよ、おーっほっほ(ゲスな高笑い)
私はあくまでも無理のない程度に、ちょっと多めに手に入ったら嬉しいなあって、そう思っただけですのよ? うふふふふ。
私がそんなことを考えながら素知らぬ顔でリストアップしていたのを見たミリアが後で「クリステア様、何だか悪巧みしているかのようでしたよ」って苦笑いしていた。
あれ? 素知らぬ顔、できてなかった……?
私にはポーカーフェイスとか、腹の探り合いとか、そういう類には向かないなってしみじみ思ったわ。
悪食令嬢には悪役令嬢は向いてないみたい。
できてポンコツ悪役令嬢がせいぜいだと思う。
翌朝。
学園に戻ることにした私は早めに起きて食堂に向かうと、お兄様とレイモンド王太子殿下がいた。
え、殿下泊まってたんだ。
「おはようございます。お兄様、レイモンド王太子殿下」
「おはよう、テア」
お兄様は昨夜遅くまでお父様たちと話し合いをしていたそうなのに、疲れた様子も見せず優雅に微笑みを返してくれた。
「お、おはよう! いい朝だな、クリステア嬢!」
レイモンド王太子殿下は朝から元気だなぁ。
でも、いい天気? だったっけ?
「……? 今朝は曇りですけど」
「あ⁉︎ ああ、暑くもなく寒くもないいい天気だな⁉︎」
変な殿下。
「……そうかもしれませんわね。ところで殿下は王宮に戻られなかったのですか?」
「え? あ、ああ。遅くまでお邪魔していたのでな。公爵の勧めで泊まらせていただいたのだ。この後そのままカルド殿下を王宮にお連れする予定だ」
ああ、なるほど。
夜遅くに王宮に帰ってまた早朝に迎えにくるって面倒だもんね。
さすがお父様、レイモンド王太子殿下の負担を減らそうと気を利かせたのね。
「そうなのですね。私はこれから学園に戻りますので、カルド殿下によろしくお伝えくださいませ」
「え? もう戻るのか? そうか……」
レイモンド王太子殿下も学園に戻りたかったのかな。
若いのに接待疲れしてるのかも。
ごめんね。お先に失礼しますよっと。
「テア、僕もレイモンド王太子殿下に付き添って王宮にカルド殿下をお送りしてから学園に戻るよ。明日にでもサロンで話をしよう」
「承知しましたわ。お茶会の準備をしておきますわね」
「楽しみにしてるよ」
フレンチトーストとサラダ、スープで簡単に朝食を終えた私は、途中食堂にやってきたお父様やお母様に挨拶もそこそこに学園に向かったのだった。
昨夜の話し合いの内容は気にならないわけじゃないけど、ここで話し込んでいたらカルド殿下とまた鉢合わせしそうなので、面倒ごとは避ける方向でひとつ。
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カレーライス、カレーチャーハン、カレーうどんとカレー味が続くけれど、カルド殿下がカレーカレーとうるさいそうなので、せめて変化を、ということでフォーを使ったカレーうどんを出してもらうことにしたのだ。
私は普通のお出汁のうどんに、甘辛く煮付けたすじ肉と温玉をトッピングしてもらうことにした。
ああ、スパイシーな味つけが続いたせいか、鰹節の風味が効いたお出汁の優しい味がしみるぅ……
ズズッと麺をすすりながら、先程料理長から渡された、今後我が家で取り引き可能な香辛料のリストの内容を反芻する。
……ほぼほぼ全種類の香辛料や薬草の取り引き可能な上、どの貴族よりも優遇しますって内容だったんだよね……いいの?
カルド殿下ってば、「何なら王家より優遇しますよ?」って言ってたって、本気?
同席していたレイモンド王太子殿下も「それでいいと思う」って許可してたって、正気?
さすがにそれは陛下に叱られ案件だと思うから、お父様と陛下とカルド殿下とでうまいこと話し合っていただきたいわね。
本音を言えば、ベーコン他燻製品の新フレーバーとしても使えるから、優遇とまではいかなくても融通してもらえるのは非常に助かる。
オークの納品が増えて領地でベーコンの生産量がぐんと上がったそうなので、ここらでベーコンなどの肉料理に合うスパイスを売り出してもいいかもと思っていたところなのよね。
それというのも、野営していて困ることの一つに食事……料理がある。
ただ焼いて塩を振るだけと言っても、塩梅という言葉があるように素材のうまみを引き出すよう程よく、適量で……ということすら難しいぶきっちょさんだっているのだ。
料理オンチのマリエルさんがいい例だろう。
そんな人たちがいくらスパイスが広く安価に流通しはじめたとしてもそれらを上手に使いこなせるかは甚だ疑問なのよね。
そこで、ささっと振りかけるだけでリッチな味わいになるハーブ塩やスパイス塩を販売するのはどうだろうと考えたのだ。
だから、香辛料の取り引きが有利に動くのは願ったり叶ったりなのよ。
だけど、ただでさえ王家と懇意にしているエリスフィード公爵家が香辛料の取り引きで王家を凌ぐほどの圧倒的優位に立つのはまずいでしょ?
私だってそのくらいわかるわよ。
なんでもかんでも手放しに喜んではいられないってわけ。
いくらお父様が娘に甘いとはいえ(その割にはお小言が多いけど)、政治的なパワーバランスを考えてうまくことを運んでくださいます……よね? お父様⁉︎
とりあえず、私が定期的にまとまった量の納品を希望する香辛料や、もし手に入るならたまにでよいから納品していただきたい香辛料や薬草などをリストアップしてお父様に渡しておこうっと。
ん? 政治的なパワーバランス?
わかってるんじゃなかったのかって?
嫌だわ、私はただこれが手に入ったらいつでもお父様に美味しいごはんを召し上がっていただけるのになあって思ってお手紙を書くだけですわよ、おーっほっほ(ゲスな高笑い)
私はあくまでも無理のない程度に、ちょっと多めに手に入ったら嬉しいなあって、そう思っただけですのよ? うふふふふ。
私がそんなことを考えながら素知らぬ顔でリストアップしていたのを見たミリアが後で「クリステア様、何だか悪巧みしているかのようでしたよ」って苦笑いしていた。
あれ? 素知らぬ顔、できてなかった……?
私にはポーカーフェイスとか、腹の探り合いとか、そういう類には向かないなってしみじみ思ったわ。
悪食令嬢には悪役令嬢は向いてないみたい。
できてポンコツ悪役令嬢がせいぜいだと思う。
翌朝。
学園に戻ることにした私は早めに起きて食堂に向かうと、お兄様とレイモンド王太子殿下がいた。
え、殿下泊まってたんだ。
「おはようございます。お兄様、レイモンド王太子殿下」
「おはよう、テア」
お兄様は昨夜遅くまでお父様たちと話し合いをしていたそうなのに、疲れた様子も見せず優雅に微笑みを返してくれた。
「お、おはよう! いい朝だな、クリステア嬢!」
レイモンド王太子殿下は朝から元気だなぁ。
でも、いい天気? だったっけ?
「……? 今朝は曇りですけど」
「あ⁉︎ ああ、暑くもなく寒くもないいい天気だな⁉︎」
変な殿下。
「……そうかもしれませんわね。ところで殿下は王宮に戻られなかったのですか?」
「え? あ、ああ。遅くまでお邪魔していたのでな。公爵の勧めで泊まらせていただいたのだ。この後そのままカルド殿下を王宮にお連れする予定だ」
ああ、なるほど。
夜遅くに王宮に帰ってまた早朝に迎えにくるって面倒だもんね。
さすがお父様、レイモンド王太子殿下の負担を減らそうと気を利かせたのね。
「そうなのですね。私はこれから学園に戻りますので、カルド殿下によろしくお伝えくださいませ」
「え? もう戻るのか? そうか……」
レイモンド王太子殿下も学園に戻りたかったのかな。
若いのに接待疲れしてるのかも。
ごめんね。お先に失礼しますよっと。
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「承知しましたわ。お茶会の準備をしておきますわね」
「楽しみにしてるよ」
フレンチトーストとサラダ、スープで簡単に朝食を終えた私は、途中食堂にやってきたお父様やお母様に挨拶もそこそこに学園に向かったのだった。
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