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試食会 そのニ
しおりを挟むお次はガパオライスね。
これまたハーフサイズで運ばれてきたよ。
半熟の目玉焼きはハーフサイズにするのもなんなので一枚丸っとのせたから、ライスやお肉がすっぽり隠れてしまっているのがちょっとおもしろい。
「これは? 目玉焼きの下に炒めた挽き肉が隠れているようだが」
レイモンド王太子殿下が興味深そうに目玉焼きをめくってその下を検分していた。
「こちらはガパオライスという料理で、みじん切りにした野菜と挽き肉を炒めたものをイディカにのせ、さらにその上に半熟の目玉焼きをのせました」
「……聞いただけで美味そうだな」
レイモンド王太子殿下が期待を込めた目でガパオライスから目を逸らさずにスプーンを手にした。
それを合図に皆が争うようにスプーンを手にしてガパオライスを食べ始めた。
「むっ! これは……」
「それぞれ食べるより目玉焼き、挽き肉、イディカを一緒に食べるのが正解の料理ですね。それにしても、先程のチャーハンと比べてさらに香り高いような……」
お父様とお兄様が早くも反応した。
さすが我が家の料理を食べ慣れているだけあって、口の中で料理を完成させる口中調味という最適解を正しく理解しているわね。
「はい、こちらは我が家でもよく使用するハーブのバジルや最近開発したばかりの調味料である豆板醬などを組み合わせておりますので独特の風味をお楽しみいただけると思います」
私の説明にお父様とお兄様が「ああ、それで……」と納得した様子で完食していた。
独特な香りで好き嫌いが分かれるかと思いきや、皆あっという間に平らげていた。
え、皆ペース早くない⁇
次に出すフォーが間に合うかヒヤヒヤしていていると、またチャーハンが運ばれてきた。
「ん? またチャーハンか?」
予定になかった二度目のチャーハンに私も戸惑っていると、料理長が説明するために食堂に入ってきた。
「失礼いたします。こちらはガパオライスと同じ材料でチャーハンにするとナシゴレンという料理になるとクリステア様から伺い、試作したものです。ぜひお試しください」
おお……! 料理長ってば、私の何気ないひと言を拾って、もう一品作るとか有能すぎない⁉︎
私はさっきの試食で結構お腹いっぱいになっていたからお茶だけだったんだけど、これは「是非採点を」と皆より少なめに配膳された。
「いただきますわね」
スプーンでナシゴレンをひと匙すくい、ぱくり。
お? お、おおー?
なかなかよい出来なのでは?
あのひと言だけで作ったにしては上出来じゃない? 料理長ってばすごい!
「美味しいわ。さすがね、料理長」
「クリステア様のお知恵があればこそでございます」
料理長が満面の笑みで調理場へ戻っていった。
うん、美味しかった。
惜しむらくはここにスイートチリソースがないことだわ。
実のところあれがなかったからガパオライスのついでの紹介のみに留めたのよね。
ナシゴレンにはスイートチリソースがあると味変ができて最高なのよねぇ。
スイートチリソース、どうやって作ればいいのかな?
サモナール国にそれっぽい調味料がないか後でカルド殿下に聞いてみようかな?
そんなことを考えていると、視界の端でティカさんが「俺、それは食ってないっすよ⁉︎」って絶望顔でこっちを見ているのに気づいた。
いやごめんて。料理長の機転の賜物だから、私も今知ったんだもん。
後で絶対用意してもらうから。
「ガパオライスですら美味いのに、ナシゴレンは同じ材料でこれまた美味い。チャーハンとやらも入れる材料次第で化けそうだ」
カルド殿下が嬉しそうに空になった皿を見つめながら言った。
飢えた国民の腹をただ満たすだけでなく、美味しいとあればそりゃあ嬉しいよね。
そんなに喜んでもらえたら、私もレシピを提供した甲斐があるってもんよ。
……まあ、ドリスタン王国の王族であるレイモンド王太子殿下がこの場にいらっしゃる以上、多少は外交的なあれこれが発生しちゃうのは間違いないのでちょっともうしわけないけれど。
私としてはレシピはお近づきの印に献上します、その代わり私がレシピ提供者なのは内緒なのと、イディカや香辛料などを色々優遇していただけたら嬉しいな! ってスタンスを貫くよ!
とりあえず王宮は前回の問題あるおもてなしによる外交問題が解決したってことで手打ちにしてほしい旨をお父様にお願いしよう。
あれこれ考えているうちにフォーの用意ができたようだ。
「次の料理をお運びします」
ふわりと湯気を上げながら、小丼サイズのボウルに盛り付けられたフォーが各席に提供された。
「……麺⁉︎ イディカは麺にもなるのか⁉︎」
お父様が驚きながら私を見た。
「はい。ラースを小麦粉のように使えないかと以前から研究していたのですが、その製法をイディカに応用して粉にしてみました」
「製粉まで……これは国家間だけでなく領地間にも影響するぞ」
「ええ、これは……領地によっては大打撃ともなりえますし、今でこそ食材としての地位を得たものの、以前は飼料としてしか扱われなかったラースしか栽培できなかった領地の価値が跳ね上がる」
「クリステア嬢……お前は本当に何者なんだ? 製粉技術まで開発するとか、有能が過ぎる!」
え、え、えええ⁉︎
国家間? 領地の価値⁉︎
いやそこまで考えてませんけど⁉︎
私はただ、美味しいごはんが食べたいだけなんですけどぉ⁉︎
いっつもこうだよ! 美味しいごはんを作っただけで、なんで問題事にまで発展するのよ、もおお!
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いつもコメントやエール・いいねをポチッとありがとうございます( ´ ▽ ` )
執筆の励みになっております~!
12月は本業が繁忙期に入るため、もしかしたらお休みする週があるかもしれません……しょぼんぬ(´・ω・`)
その場合はXや近況ボードなどでお知らせし、前回分のコメント返しのみさせていただこうかと思います。
よろしくお願いいたします。
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