転生令嬢は庶民の味に飢えている

柚木原みやこ(みやこ)

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最新型……だと⁉︎

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殿下とお兄様、そしてアリシア様を見送った私たちは、洗い物を一旦まとめてインベントリに収納してから部屋全体にクリア魔法をかけて特別寮に戻った。

サロン棟のこの部屋は、私たちの在学中ずっとエリスフィード家が借り上げている部屋とは言え、スパイス臭漂わせたままにしておくわけにはいかないからね!

あの香りを漂わせたままだとインテリアをオリエンタルにしたくなっちゃうもの。
いやしないけどね⁉︎

するなら和風がいいなあ。
セイの部屋とかどうなってるのか興味津々なんだよね。
淑女だから男性のお部屋訪問とかできないもんなぁ……

……おセイちゃんの時は知らなかったからノーカンです!
女子だと思ってたんだもん、しかたない!
そう、褌一丁の姿とか見なかった!
見てなかったってことでひとつ!
痴女令嬢なんてこの世に存在していない!
オーケー⁉︎

いかん、話がそれた。

特別寮に戻ってから使った食器類を手分けして洗い、片付けは完了。
それぞれの部屋に戻り、私は明日の授業の準備を終わらせた。

試食会の時間的に早めの夕食のつもりでいたけれど、夜になると小腹が空いたと言って皆がゾロゾロと食堂に降りてきた。

私はと言うと、黒銀くろがね真白ましろ輝夜かぐやに夜食をおねだりされたので、明日の朝食の仕込みも兼ねて厨房にいた。

「あらら、皆お腹が空いちゃった? ええと、おにぎりなら出せるけど……」
朝食とストック用も兼ねておにぎりを大量に握っていたところだったのでセイとマリエルちゃんには二つ、聖獣様たちには五つずつ出したよ。
いやー、それストック分だったんだけどね……

ルビィにはニンジンのスティックサラダを、輝夜かぐやは毎度お留守番させているのでおかかおにぎりの割合を多めに出してあげたのだった。

ミリアにほうじ茶の用意を頼んで私もおにぎりをぱくつく。
ああ、美味しい。刺激的な味のメニューが続いたから、ホッとするわ。
もうね、普段食べるのはこういうのでいいんだよ。
いや、こういうのいいんだよ。うん。

しみじみと素朴な味を堪能していると、ふと週末の予定を思い出した。
「そういえば、この週末は外出申請を出して実家に帰ろうと思って。試食会をやる予定なのだけど皆も一緒に行く?」

皆を見渡しながら問うと、セイは頭を横に振った。
「俺は遠慮しておくよ。今回は役に立てそうもないしな。週末は久々にバステア商会に行こうと思う」
「あら、それなら我が家の馬車に乗って行きましょうよ。商会まで送るわ」
「いや、トラの転移でひっそり行くことにするよ」

「ええ……通り道だから気にしなくていいのに」
「いやそういう問題じゃなくて」
丁重にお断りされてしまった。残念。
セイ曰く、我が家の馬車は一番地味目のものでも一目で高位貴族とわかるそうで。
ええー……そうかなぁ?
キラッキラの金装飾とか、家紋の彫刻とか、そういうのは一切排除してるのに。

「クリステアさん。いくら地味目に装っていても、あの馬車、最新型ですよ……? 目立ちますって」
「えっ⁉︎」
マリエルちゃんの指摘で初めて知った。

そういえば最近乗り心地いいなーとは思ってたんだよね。
前世で言うならば高級車で有名なメーカーの最新型モデルを乗り回してるみたいな感じらしい。
そりゃあ目立ちますわ……

「ええと、じゃあマリエルさんは……」
「私は……父に例のお話の報告をしないとなので……はは……」
おわぁ、マリエルちゃんがいきなり灰になったよ。

「あ、でも同乗させていただいてもいいですか? 目立つのはともかく、防犯面では最強ですから」
「確かに」
最強の聖獣ごえい付きだからね!
マリエルちゃんも最近注目株のご令嬢だし、誘拐とか気をつけなきゃだもんね。
私にもその原因の一端ではあるのだから、送り迎えは責任持っていたしますわよ、おまかせあれ!

そんなわけで、週末は実家です!

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キリが悪かったので、今回短めです。
申し訳ない……!

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