上 下
335 / 376
連載

試食会へご招待!

しおりを挟む
お兄様とレイモンド王太子殿下宛に出した試食会の招待状はミリアによってすぐに届けられ、ミリアが戻ってきてまもなく返事が届いた。はやっ!
レイモンド王太子殿下とお兄様のどちらも返事は「何が何でも行く」だった。

さすがに学生の身とはいえ、王太子ともなれば公務の手伝いなど色々とあるので、忙しいそうで。
普通ならお茶会のお誘いも前々から招待状を出してスケジュール調整しなければならないところを今回は無理矢理予定を空けてくださったみたい。

何だか無理させてしまったみたいで申し訳ないけれど、二人とも「楽しみにしてる」とあったので、せめて美味しい料理で労えたらいいな。

夕食は簡単に済ませ、試作の済んでいたメニューを皆で手分けして作り、インベントリへ収納しておいた。
残るスパイスのメニューももちろん試作済み。

これは翌日の試食会でのお楽しみだからとインベントリに即しまうと皆からブーイングの嵐だったけれど、今から試食するなら味見程度しか出さないし、明日の試食会には参加させませんと言うとおとなしく引き下がった。

だって、全て試食済みなら試食会に参加する必要がないでしょう?
元々、アリシア様やレイモンド王太子殿下たちだけ招待して試食会をする予定だったのを我も我もと参加表明したんですからね。
そのくらいは我慢してもらわないと。

それに、そう何度もスパイスの調合なんてしてられないもの。
クリア魔法がなければ、スパイスの香りが染み付いてしまうんじゃないかしらってくらい延々と薬研でゴリゴリしまくらなきゃなんだもの。
早いところレシピをまとめて料理長やシンに押し付け……もとい、引き継がなければ。

そんなこんなで翌日の午後、お茶の時間より少し遅い時間にアリシア様やレイモンド王太子殿下、お兄様がサロン棟のいつもの部屋に招待した。

お茶会とは違って、今回は試食会ということで少しずつとはいえ色々と食べるからお腹いっぱいになるだろうと思い、早めの夕食のつもりで時間を指定したのよね。

アリシア様は殿下より遅くなるわけにはいかないとすでに部屋で待機している。
手土産に紅茶をいただいたので後でお出ししようかな。
合いそうならチャイを淹れてノーマルな紅茶と飲み比べていただくのもいいかも。

お兄様とレイモンド王太子殿下がお花を手土産に来てくださったので、ミリアに花をテーブルに生けてもらうよう頼んで、お二人を料理が準備してある部屋へ案内した。

「やあ、テアの手料理が食べられて嬉しいな。依頼してそんなに経ってないのに、もう試食ができるとは思わなかったよ」
「そ、そうだな! さすがはクリステア嬢だ。どんな料理が出るのか楽しみにしているぞ!」
「お客様に喜んでいただけるものになっていればよいのですけれど……まずは私たちが美味しくいただけるものか試していただきたくて」

「まかせておけ! 俺は上級向けのカレーだって食べられるのだからな。香辛料たっぷりの料理だろうが問題ない! ……そういえばカレーを出すという手もあったな。今回は試食できるのか?」
レイモンド王太子殿下がドヤって聞いてきた。
やっぱり! カレーにはスパイスをたっぷり使っているのは伝えているから、そう言うんじゃないかとは思ってた。

「カレーは我が家の秘伝のレシピですから、王宮の料理人には教えられませんわ」
「ああ……そうだったな。残念だ。またあの病みつきになる辛さを味わいたかったのだが。時折ふとあの味を思い出しては食べたくなるんだ。それくらい美味かったんだが……」
殿下が心底残念そうに言った。

定期的にカレーが食べたくなる身としてはその気持ちは痛いほどよくわかる。だけど、そのような中毒性があるのならあれはこの世に出してはいけないものなのだ。うん。
一皿がなかなかのお値段がするものだからね。
前世では庶民のメニューだったのになぁ……

そう言う意味では、今回スパイスをふんだんに使い放題だった試食会もなかなかのお値段になるはずだけどね。
料理が並べられた部屋の扉を開けた途端、スパイスの香りがブワッと広がった。
おお、これはなかなかの破壊力。
……試食会が終わったら、部屋全体にクリア魔法をかけなくちゃ。

「うわ、すごい香りだね」
「ああ、カレーに似ているようで違う、香辛料独特の香りだな」
殿下たちも強烈な香りに迎えられ、鼻をすんすんとさせながら室内へ入った。

「やあ、アリシア嬢」
「レイモンド王太子殿下、ノーマン様。お茶会ぶりでございますわ。この度も同席させていただきます」
「堅苦しい挨拶はいい。共に試食を楽しもうじゃないか」
「ありがとう存じますわ」

さすがアリシア様。さすアリ!
美しいカーテシーで優雅に挨拶を決めた。
マリエルちゃんはその後ろでギクシャクしながらなんとかといった様子でカーテシーっぽいポーズをした。
……うん、はい。今日からカーテシーの特訓だね。このままじゃ淑女教育の授業で落第しそう。

セイは騎士の礼で二人を迎えた。
まあ、セイは留学生だしドリスタン王国の臣下ではないから殿下たちも特に気にはしないだろう。
聖獣の皆様は私とセイの命令で壁際で控えている。じゃないとつまみ食いされそうだったからね!

殿下たちがくるギリギリまでインベントリに入れていたのでどれも熱々の状態だ。
壁際で今か今かと待ち構えていた聖獣の皆様は殿下を気にすることなく料理に集中していたので、殿下もお兄様も苦笑していた。
は、恥ずかしい……食いしん坊聖獣たちめ!

「本日はビュッフェ形式での試食会となります。お好きなものを取り分けてご試食ください。皿の側に料理名とその説明。小瓶に使ったスパイスを入れておりますので自由に香りなどお試しください」

私がそう説明すると待ってましたとばかりに皆がテーブルに殺到した。
それを見た殿下たちも慌てたようにテーブルに向かったので、思わず笑ってしまった。
「皆様、そんなに急がなくてもおかわりはありますから!」

どうしたらいいのかオロオロしているアリシア様の手を引いて、私もテーブルに向かうのだった。

---------------------------
いつもコメントandエールポチッとありがとうございます!

執筆の励みになっておりますー!

しおりを挟む
感想 3,336

あなたにおすすめの小説

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

しげむろ ゆうき
恋愛
 卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく  しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ  おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

最後に、お願いがあります

狂乱の傀儡師
恋愛
三年間、王妃になるためだけに尽くしてきた馬鹿王子から、即位の日の直前に婚約破棄されたエマ。 彼女の最後のお願いには、国を揺るがすほどの罠が仕掛けられていた。

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。