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試食会へご招待!
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お兄様とレイモンド王太子殿下宛に出した試食会の招待状はミリアによってすぐに届けられ、ミリアが戻ってきてまもなく返事が届いた。はやっ!
レイモンド王太子殿下とお兄様のどちらも返事は「何が何でも行く」だった。
さすがに学生の身とはいえ、王太子ともなれば公務の手伝いなど色々とあるので、忙しいそうで。
普通ならお茶会のお誘いも前々から招待状を出してスケジュール調整しなければならないところを今回は無理矢理予定を空けてくださったみたい。
何だか無理させてしまったみたいで申し訳ないけれど、二人とも「楽しみにしてる」とあったので、せめて美味しい料理で労えたらいいな。
夕食は簡単に済ませ、試作の済んでいたメニューを皆で手分けして作り、インベントリへ収納しておいた。
残るスパイスのメニューももちろん試作済み。
これは翌日の試食会でのお楽しみだからとインベントリに即しまうと皆からブーイングの嵐だったけれど、今から試食するなら味見程度しか出さないし、明日の試食会には参加させませんと言うとおとなしく引き下がった。
だって、全て試食済みなら試食会に参加する必要がないでしょう?
元々、アリシア様やレイモンド王太子殿下たちだけ招待して試食会をする予定だったのを我も我もと参加表明したんですからね。
そのくらいは我慢してもらわないと。
それに、そう何度もスパイスの調合なんてしてられないもの。
クリア魔法がなければ、スパイスの香りが染み付いてしまうんじゃないかしらってくらい延々と薬研でゴリゴリしまくらなきゃなんだもの。
早いところレシピをまとめて料理長やシンに押し付け……もとい、引き継がなければ。
そんなこんなで翌日の午後、お茶の時間より少し遅い時間にアリシア様やレイモンド王太子殿下、お兄様がサロン棟のいつもの部屋に招待した。
お茶会とは違って、今回は試食会ということで少しずつとはいえ色々と食べるからお腹いっぱいになるだろうと思い、早めの夕食のつもりで時間を指定したのよね。
アリシア様は殿下より遅くなるわけにはいかないとすでに部屋で待機している。
手土産に紅茶をいただいたので後でお出ししようかな。
合いそうならチャイを淹れてノーマルな紅茶と飲み比べていただくのもいいかも。
お兄様とレイモンド王太子殿下がお花を手土産に来てくださったので、ミリアに花をテーブルに生けてもらうよう頼んで、お二人を料理が準備してある部屋へ案内した。
「やあ、テアの手料理が食べられて嬉しいな。依頼してそんなに経ってないのに、もう試食ができるとは思わなかったよ」
「そ、そうだな! さすがはクリステア嬢だ。どんな料理が出るのか楽しみにしているぞ!」
「お客様に喜んでいただけるものになっていればよいのですけれど……まずは私たちが美味しくいただけるものか試していただきたくて」
「まかせておけ! 俺は上級向けのカレーだって食べられるのだからな。香辛料たっぷりの料理だろうが問題ない! ……そういえばカレーを出すという手もあったな。今回は試食できるのか?」
レイモンド王太子殿下がドヤって聞いてきた。
やっぱり! カレーにはスパイスをたっぷり使っているのは伝えているから、そう言うんじゃないかとは思ってた。
「カレーは我が家の秘伝のレシピですから、王宮の料理人には教えられませんわ」
「ああ……そうだったな。残念だ。またあの病みつきになる辛さを味わいたかったのだが。時折ふとあの味を思い出しては食べたくなるんだ。それくらい美味かったんだが……」
殿下が心底残念そうに言った。
定期的にカレーが食べたくなる身としてはその気持ちは痛いほどよくわかる。だけど、そのような中毒性があるのならあれはこの世に出してはいけないものなのだ。うん。
一皿がなかなかのお値段がするものだからね。
前世では庶民のメニューだったのになぁ……
そう言う意味では、今回スパイスをふんだんに使い放題だった試食会もなかなかのお値段になるはずだけどね。
料理が並べられた部屋の扉を開けた途端、スパイスの香りがブワッと広がった。
おお、これはなかなかの破壊力。
……試食会が終わったら、部屋全体にクリア魔法をかけなくちゃ。
「うわ、すごい香りだね」
「ああ、カレーに似ているようで違う、香辛料独特の香りだな」
殿下たちも強烈な香りに迎えられ、鼻をすんすんとさせながら室内へ入った。
「やあ、アリシア嬢」
「レイモンド王太子殿下、ノーマン様。お茶会ぶりでございますわ。この度も同席させていただきます」
「堅苦しい挨拶はいい。共に試食を楽しもうじゃないか」
「ありがとう存じますわ」
さすがアリシア様。さすアリ!
美しいカーテシーで優雅に挨拶を決めた。
マリエルちゃんはその後ろでギクシャクしながらなんとかといった様子でカーテシーっぽいポーズをした。
……うん、はい。今日からカーテシーの特訓だね。このままじゃ淑女教育の授業で落第しそう。
セイは騎士の礼で二人を迎えた。
まあ、セイは留学生だしドリスタン王国の臣下ではないから殿下たちも特に気にはしないだろう。
聖獣の皆様は私とセイの命令で壁際で控えている。じゃないとつまみ食いされそうだったからね!
殿下たちがくるギリギリまでインベントリに入れていたのでどれも熱々の状態だ。
壁際で今か今かと待ち構えていた聖獣の皆様は殿下を気にすることなく料理に集中していたので、殿下もお兄様も苦笑していた。
は、恥ずかしい……食いしん坊聖獣たちめ!
「本日はビュッフェ形式での試食会となります。お好きなものを取り分けてご試食ください。皿の側に料理名とその説明。小瓶に使ったスパイスを入れておりますので自由に香りなどお試しください」
私がそう説明すると待ってましたとばかりに皆がテーブルに殺到した。
それを見た殿下たちも慌てたようにテーブルに向かったので、思わず笑ってしまった。
「皆様、そんなに急がなくてもおかわりはありますから!」
どうしたらいいのかオロオロしているアリシア様の手を引いて、私もテーブルに向かうのだった。
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レイモンド王太子殿下とお兄様のどちらも返事は「何が何でも行く」だった。
さすがに学生の身とはいえ、王太子ともなれば公務の手伝いなど色々とあるので、忙しいそうで。
普通ならお茶会のお誘いも前々から招待状を出してスケジュール調整しなければならないところを今回は無理矢理予定を空けてくださったみたい。
何だか無理させてしまったみたいで申し訳ないけれど、二人とも「楽しみにしてる」とあったので、せめて美味しい料理で労えたらいいな。
夕食は簡単に済ませ、試作の済んでいたメニューを皆で手分けして作り、インベントリへ収納しておいた。
残るスパイスのメニューももちろん試作済み。
これは翌日の試食会でのお楽しみだからとインベントリに即しまうと皆からブーイングの嵐だったけれど、今から試食するなら味見程度しか出さないし、明日の試食会には参加させませんと言うとおとなしく引き下がった。
だって、全て試食済みなら試食会に参加する必要がないでしょう?
元々、アリシア様やレイモンド王太子殿下たちだけ招待して試食会をする予定だったのを我も我もと参加表明したんですからね。
そのくらいは我慢してもらわないと。
それに、そう何度もスパイスの調合なんてしてられないもの。
クリア魔法がなければ、スパイスの香りが染み付いてしまうんじゃないかしらってくらい延々と薬研でゴリゴリしまくらなきゃなんだもの。
早いところレシピをまとめて料理長やシンに押し付け……もとい、引き継がなければ。
そんなこんなで翌日の午後、お茶の時間より少し遅い時間にアリシア様やレイモンド王太子殿下、お兄様がサロン棟のいつもの部屋に招待した。
お茶会とは違って、今回は試食会ということで少しずつとはいえ色々と食べるからお腹いっぱいになるだろうと思い、早めの夕食のつもりで時間を指定したのよね。
アリシア様は殿下より遅くなるわけにはいかないとすでに部屋で待機している。
手土産に紅茶をいただいたので後でお出ししようかな。
合いそうならチャイを淹れてノーマルな紅茶と飲み比べていただくのもいいかも。
お兄様とレイモンド王太子殿下がお花を手土産に来てくださったので、ミリアに花をテーブルに生けてもらうよう頼んで、お二人を料理が準備してある部屋へ案内した。
「やあ、テアの手料理が食べられて嬉しいな。依頼してそんなに経ってないのに、もう試食ができるとは思わなかったよ」
「そ、そうだな! さすがはクリステア嬢だ。どんな料理が出るのか楽しみにしているぞ!」
「お客様に喜んでいただけるものになっていればよいのですけれど……まずは私たちが美味しくいただけるものか試していただきたくて」
「まかせておけ! 俺は上級向けのカレーだって食べられるのだからな。香辛料たっぷりの料理だろうが問題ない! ……そういえばカレーを出すという手もあったな。今回は試食できるのか?」
レイモンド王太子殿下がドヤって聞いてきた。
やっぱり! カレーにはスパイスをたっぷり使っているのは伝えているから、そう言うんじゃないかとは思ってた。
「カレーは我が家の秘伝のレシピですから、王宮の料理人には教えられませんわ」
「ああ……そうだったな。残念だ。またあの病みつきになる辛さを味わいたかったのだが。時折ふとあの味を思い出しては食べたくなるんだ。それくらい美味かったんだが……」
殿下が心底残念そうに言った。
定期的にカレーが食べたくなる身としてはその気持ちは痛いほどよくわかる。だけど、そのような中毒性があるのならあれはこの世に出してはいけないものなのだ。うん。
一皿がなかなかのお値段がするものだからね。
前世では庶民のメニューだったのになぁ……
そう言う意味では、今回スパイスをふんだんに使い放題だった試食会もなかなかのお値段になるはずだけどね。
料理が並べられた部屋の扉を開けた途端、スパイスの香りがブワッと広がった。
おお、これはなかなかの破壊力。
……試食会が終わったら、部屋全体にクリア魔法をかけなくちゃ。
「うわ、すごい香りだね」
「ああ、カレーに似ているようで違う、香辛料独特の香りだな」
殿下たちも強烈な香りに迎えられ、鼻をすんすんとさせながら室内へ入った。
「やあ、アリシア嬢」
「レイモンド王太子殿下、ノーマン様。お茶会ぶりでございますわ。この度も同席させていただきます」
「堅苦しい挨拶はいい。共に試食を楽しもうじゃないか」
「ありがとう存じますわ」
さすがアリシア様。さすアリ!
美しいカーテシーで優雅に挨拶を決めた。
マリエルちゃんはその後ろでギクシャクしながらなんとかといった様子でカーテシーっぽいポーズをした。
……うん、はい。今日からカーテシーの特訓だね。このままじゃ淑女教育の授業で落第しそう。
セイは騎士の礼で二人を迎えた。
まあ、セイは留学生だしドリスタン王国の臣下ではないから殿下たちも特に気にはしないだろう。
聖獣の皆様は私とセイの命令で壁際で控えている。じゃないとつまみ食いされそうだったからね!
殿下たちがくるギリギリまでインベントリに入れていたのでどれも熱々の状態だ。
壁際で今か今かと待ち構えていた聖獣の皆様は殿下を気にすることなく料理に集中していたので、殿下もお兄様も苦笑していた。
は、恥ずかしい……食いしん坊聖獣たちめ!
「本日はビュッフェ形式での試食会となります。お好きなものを取り分けてご試食ください。皿の側に料理名とその説明。小瓶に使ったスパイスを入れておりますので自由に香りなどお試しください」
私がそう説明すると待ってましたとばかりに皆がテーブルに殺到した。
それを見た殿下たちも慌てたようにテーブルに向かったので、思わず笑ってしまった。
「皆様、そんなに急がなくてもおかわりはありますから!」
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