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お礼のお茶会

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サロン棟での待ち伏せ騒動の際にレイモンド王太子殿下とお兄様にお世話になったので、何かお礼をしたいとお兄様に相談したら、殿下から「自分もサロン棟でのお茶会に招待してほしい」と希望されたそう。

あの日、夕食には招待したのだけど、お茶会でのお菓子も食べてみたかったってことかな?
マリエルちゃんとルビィにそう言ったら、盛大にため息を吐かれたのは解せぬ。
皆知らないかもしれないけど、レイモンド王太子殿下って結構食いしん坊なんだからね!

そういえばお兄様から聞いたところによると、サロン棟のあの部屋は私が入学するまではお兄様と殿下のサボり部屋だったらしい。
学園では上下の身分はないとは言っても、この国の民が王太子殿下に馴れ馴れしくすることなどは決してなかったため、幼馴染の殿下とお兄様はあの部屋で王族や貴族という立場を忘れてくつろいでいたそう。

お兄様たち、人気者だもんね。
人目を気にせず息抜きができる場所って必要だよね、うん、わかる。
ちなみに、それを聞いたマリエルちゃん大歓喜で妄想が捗ったのはいうまでもない。
ちょ、ルビィも一緒になってはしゃぐのはやめて⁉︎

だけど、私が無事学園に入学することが決まったことで、お兄様がセキュリティも含め私好みに部屋を劇的改造、もとい改装して殿下を出禁……いや、ええと、お兄様の許可なく男子(主にレイモンド王太子殿下)の出入りを禁止することにしたそうで。
……お兄様、レイモンド王太子殿下の扱いが酷くないかな⁉︎

それで、今回私がお礼をしたいと申し出たことで、あの部屋でのお茶会を希望されたとのことだった。
でも、お兄様から「今は僕が忙しいからお礼は少し待ってほしい。レイモンド王太子殿下と会う時は必ず僕が同席するからね?」と待ったをかけられてひと月が経ってしまっていた。

さすがにお礼するにはタイミングが遅すぎると焦ってお兄様をせっつき、やっとのことでその機会を設けることができたので、この度ようやくレイモンド王太子殿下とお兄様をお茶会に招待することになった。

「……それで、私も招待されるのはおかしいのではなくて?」
お茶会の当日、例のエリスフィード公爵家が私たちの在学中借り上げているサロン棟の一室で、アリシア様が腑に落ちないといった表情で私に抗議した。
「いやそれを言ったら私がいることこそおかしいですよね?」とマリエルちゃんが落ち着かない様子で言った。

「おかしいなんてことありませんわ。アリシア様もあの場でレイモンド王太子殿下に助けられた一人と考えたら、私と一緒にお礼するために同席するべきですよね? マリエルさんも当事者として同席するのが自然かと」
「えっ? レイモンド王太子殿下に助けられ……? そ、そうなるのかしら?」
私がにこっと笑顔で答えると、アリシア様はそうだっけ? みたいな顔でますます腑に落ちなさそうに眉を寄せた。

あの時は朱雀様が間に入ってくださってアリシア様のことも味方だと証言してくださったから、正しくは朱雀様がアリシア様を助けたことになるのかもだけど。
あの騒動を収めて、あれこれ動いてくださったのはレイモンド王太子殿下とお兄様なのだからお礼はちゃんとしないとね。
マリエルちゃんは「わ、私、とんだとばっちりなのでは……?」と呟いていた。ばれたか。
マリエルちゃん、ズッ友な貴女も一連托生なのだよ……ふふふ。

「そ、それに、聖獣様方と一緒にお茶会だなんて、恐れ多くて……!」
そう言ってアリシア様がチラッと視線を向けたそこには、黒銀くろがね真白ましろが面白くなさそうに座っていた。

「我は主の護衛のためにここにいるので気にせずともよい。それに、此度は『じょしかい』とやらではないから我らも同席してもかまわんのだろう?」
「そうそう。こんかいはおとこもいるからおれたちもいていいもんね?」
「え? あ、あの、その……も、もちろんですわ!」
黒銀くろがね真白ましろの圧にアリシア様はタジタジだ。

んもう、黒銀くろがねったら「アリシア様との女子会に男子は参加しちゃダメ」って締め出したのを根に持ってるのね。
「じゃあ聖獣もとの姿ならいいだろう⁉︎」って聖獣の姿で入り込もうとゴネまくったもんね……

真白ましろ真白ましろで「おんなのこのかっこうでさんかしたらいい?」って迫ってくるしで……
それを聞いたマリエルちゃんが「私に衣装を作らせてください!」ってシュバッと挙手してくるからそれを止めるのも一苦労だった。はあ……

そういうわけで今回は男女比が男子に偏りがちなお茶会になった。
うーん、お茶会って、女子たちがキャッキャウフフってしてるイメージだったんだけどな。
まあ、殿下とお兄様にお礼をする会ってことでひとつ。

ちなみに今回のお茶会は、殿下とお兄様からお菓子のリクエストを聞いて準備した。
お兄様からはどら焼きなどあんこを使ったお菓子をリクエストされた。

お兄様はこってりしたクリーム系のお菓子はどちらかというと好みではないらしく、はじめこそあんこのビジュアルに引き気味だったけれど、私たちと一緒に食べているうちにすっかり和菓子派になってしまった。
私も和菓子のほうが好きなので、お兄様に気に入ってもらえて嬉しいな。

レイモンド王太子殿下は以前、妃殿下にお土産として持ち帰ったかぼちゃの茶巾絞りやパンプキンパイ、かぼちゃのプリンなどのかぼちゃづくしのスイーツやアップルパイが食べたいとのことだった。
そうそう、レイモンド王太子殿下が私の悪食令嬢疑惑で領地の視察と銘打って調査しにきた時に、妃殿下にお土産を頼まれて作ったんだよね。懐かしい。

あの時、少しだけ食べさせてもらったけれど、それ以上は分けてもらえなかったからまた食べてみたかったんだって。
そう言われてしまうと、きっちりリクエストに応えなきゃね! と張り切ってたくさん作っちゃったよ。
試食で初めてかぼちゃづくしスイーツを食べたルビィも気に入ってくれた。
にんじんスイーツもまたリクエストされたので、近いうちにまた皆でお菓子作りをしようかな。

お二人のリクエストであるスイーツをずらりと並べたところでレイモンド王太子殿下とお兄様がやってきた。
ミリアの案内で部屋に入ってきた二人は、テーブルに並んだスイーツを見て嬉しそうだ。

「レイモンド王太子殿下、お兄様、いらっしゃいませ。お茶会へようこそ」
私、アリシア様、マリエルちゃんの順で挨拶をしていくと、殿下とお兄様は一人ひとり丁寧に挨拶を返してくださった。
その様子にアリシア様やマリエルちゃんは見惚れていたけれど、初めて殿下とお会いした時の印象が強烈だったこともあって違和感しかないのだけど……

「ク、クリステア嬢。今日はお茶会に招いてくれて、か、感謝する」
「こちらこそ、あの時は助けてくださってありがとうございました。本日はそのお礼にたくさんお菓子を作ってまいりましたのでお楽しみくださいね」
「う、うむ!」
あら、お顔が少し赤い?
少し部屋が暑かったかしら。

「やあ、テアのお菓子が食べられるなんて嬉しいよ。今日はお招きありがとう」
「うふふ、お兄様の好きなお菓子もたくさん作りましたからね」
「クリステアが作るものはなんでも美味しいから楽しみだな」
「もう、お兄様ったら。おだててもいつものお菓子しか出ませんわよ?」
「ふふ、それは残念だな」

私がお兄様とそんな会話をしていると、殿下とアリシア様に呆れたような、なんだこいつらって顔で見られてしまった。
え、普通だよね?

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次回もほのぼの(?)お茶会回です。

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