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私のせいかも⁉︎

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あれから数週間が経過した。
チャレンジメニューは思いのほか好評だったようで、期間限定の予定だったはずが継続を熱望されたため、トッピングメニューとして継続することになった。

ついでにどうしても生の卵が食べられない人のために温泉玉子を出してはどうかと私が提案したことで、温玉もトッピングメニューに加わった。
これもねっとりとした黄身がたまらないと人気のメニューとなった。

よーしよし。
生卵の忌避感は着実に薄れているので、折を見て卵かけご飯……そう、TKGを普及するとしよう。ふふふ……!
カフェの料理長にTKGに合うご飯のお供を見繕って売り込むといいかもね!

そんなことを考えていると、アリシア様に話しかけられていることに気づいた。
「クリステア様、聞いていらっしゃいますの?」
「へ? え、あ、その……」
「もう、聞いてらっしゃらなかったのね?」
「……えへへ、すみません……」

あれ以来、アリシア様とはすっかり打ち解けて仲良しになった。
今日もサロン棟の一室で一緒にお茶をしているところだ。

そうそう、サロン棟といえばロビーでの待ち伏せの件が問題だと判断されたそうで、待ち合わせ以外でロビーにたむろするのは厳禁とされた。
これには一部の生徒からブーイングがあったらしいのだけど、学園の生徒として品位に欠ける行為として撤回されることはなかった。

「はあ……、クリステア様って意外とぼんやり屋さんなのですのね」
「あはは……ええと、で、何のお話でしたかしら?」
「もう……この前カフェでお会いした先輩方のことですわ」

アリシア様の報告によると、アリシア様をいじめていた先輩方はあの日、私の発言を恐れて、自分たちの言動がレイモンド王太子殿下への不敬となることを回避するためにラースを食べに行っていたらしい。

え……あのハッタリを間に受けて?
別にレイモンド王太子殿下に報告しちくったりはしないのに。
それで忌避しまくってたラースを食べに行くとか、相当な覚悟が必要だったに違いない。
まあ、気の毒だとは思わないけど。
だって、ギュードン……ラースは美味しかったでしょう?
だったら、問題ないよね!

「それで、今回先導していたとされる方はフランシーヌ様派の取り巻きの一人、トリクシー様なのですが、フランシーヌ様からしばらく謹慎するよう申し渡されて現在休学しているようですわ」
「ええ⁉︎」
まじですか……私の不用意な発言のせい⁉︎
私の動揺を感じ取ったのか、アリシア様がクスッと笑った。

「クリステア様が気になさることではございませんわよ? 聞くところによると、今回のことはトリクシー様の暴走によるもので、フランシーヌ様に泥を塗る行為だったとしてトリクシー様に反省の意を示すよう促した結果だそうですから」
「そ、そうなのですか?」
それなら、私のせいじゃないよね?

「ええ。そもそも上級生が下級生に詰め寄ることは恥ずかしい行為でしょう? その上、レイモンド王太子殿下への不敬ともとれる発言を回避するための言い訳のためにラースを食べに行くなど、フランシーヌ様への背信行為とも受けとれますからね」
「……ラースを食べるのが背信行為になるのですか?」

「ええ、まあ……これまで散々ラースを食べる行為を……その、悪食として揶揄していましたし。フランシーヌ様はこれまでご自身が不利にならないよう自ら中傷じみた発言は一切されていらっしゃらないそうですが、私同様にクリステア様のこともライバル視されていらっしゃるでしょうし。今回のトリクシー様の行動は不敬発言の回避であると同時にクリステア様を認めることになりますからフランシーヌ様への裏切り行為とも受け取れますもの」

……てことは、私の発言とラースが原因と言っても過言ではないじゃないのー!
うう、ただあの場を切り抜けるための発言だったのに。
そんな、休学まで追い込むことになるとは思わなかったんだよう……

落ち込む私を慰めるように、ミリアがお茶を淹れ直してくれた。はあ、あったかい……
「私にできることってないのでしょうか?」
「クリステア様には落ち度はございませんもの。気になさることはございませんわ。下手に情けをかけると、フランシーヌ様への侮辱とも受け取られかねませんし」

敵に塩を送るのはやめたほうがいいってことね。
別に、私的には敵でも何でもないんだけどなぁ……一方的に敵視されてるのはただただしんどい。
アリシア様と仲良くなれたのは本当に運がよかったってことなんだろうなぁ。

私が落ち込むのをやめてにこにことアリシア様を見つめると、アリシア様はほんのり頬を染めた。
「な……なんですの? 急に嬉しそうにこちらを見て」
「アリシア様とお友達になれてよかったなぁと思って」
「なっ……! わ、私もよ……よかったと思ってますわ!」
アリシア様は顔を真っ赤にして、淹れ直した紅茶をごくごくと飲んで「な、何だかお部屋が暑いですわね!」なんて誤魔化した。可愛い。

「うん、これはよいツンデレ……!」
隣で話を聞いていたマリエルちゃんがボソリと呟く。
うん、それには完全同意だよ。
アリシア様のツンデレはよいツンデレ!

「な、なんですの? そのツン……なんとかは?」
「え? あはは、その……なんでもないです!」
「アリシア様、マリエルさんは時々突拍子もない発言をしますが、基本無害ですのでお気になさらず」
「クリステアさん、ひどい!」
いやだって、ちょいちょい妄想が漏れ出てるよね? あくまで妄想だから害はないけど。

「お二人はたまにわけのわからないことをおっしゃいますのね」
「あはは……」
私とマリエルちゃんは顔を見合わせて苦笑いで誤魔化したのだった。

「そういえば、今日はルビィ様はいらっしゃいませんの?」
アリシア様がマリエルちゃんの隣にルビィがいないのが気になるようだった。
アリシア様、もふもふ好きだもんね。

「ああ、最近は何やら用事があるとかで別行動が多いんです」
「まあ……そうですの。残念ですわ」
マリエルちゃんはなんでもないことのように答えたけれど、最近のルビィは特別寮の談話室でお兄様とよく話をしているのよね。
「ワタシとおにーさまとの内緒話だから、アナタたちは聞いちゃダメよん」
……と、ルビィに追い出されてしまうので怪しいことこの上ない。
まさか、前に言ってたように報復のための情報共有とかじゃないよね……?

嫌な想像を振り払うように、私は追加のお菓子を出して楽しいおしゃべりに集中することにしたのだった。

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今回は後日談回でした。

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