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連載
【番外編/モブ視点】とある子爵令嬢の悩める取り巻き生活3
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トリクシー様の命令で、私を含め数名のご令嬢たちでサロン棟のロビーでクリステア様たちがやってくるのを見張ることになってしまったわけなのですけれど……
サロン棟を利用するでもなくロビーでたむろするのは、目当ての方からのお声掛けを待つだとか、憧れの方を遠目からチラリとでも見たいとか、そういう方たちばかり。
憧れの方の姿を見たいと思う気持ちはわからないでもないですけれども。
その姿はわかりやすく物欲しげに見えるから、淑女としてはかなりはしたない行動とも言えるのよ。
そんな恥ずかしいことをしなさいとトリクシー様に命令され、私たちは憂鬱な気持ちでサロン棟のロビーに向かったのだけれど……今日はいつもと雰囲気が違った。
ロビーが人でごった返していたのだ。
「これは……」
「どういうことかしら? 今日に限ってサロン棟の利用希望が殺到しているの?」
周囲の様子を伺ってみると、これだけ人がいるにも関わらず、フロントで受付をする利用者はほとんどいないようだ。
フロントにいる受付係であろう従僕のお仕着せを着たアルバイトの学生は、カウンターの近くにいる生徒に「ご予約されていらっしゃいましたら受付いたします」と声をかけているようだけれど、「あら、ええ、まあ……」だの「ああ、ちょっとここで用事があってね」だのと言葉を濁してフロントから離れていくので困惑を隠せない様子だ。
「これって、もしかして……?」
私は隣に並ぶ、私と同じく犠牲となったご令嬢と目配せした。
「ええ。ここにいらっしゃる大半の目的は私たちと同じでしょうね」
ようするに、ここにいる生徒の大半はクリステア様たちが目当てということだ。
時々聞こえる会話から「聖獣様が」とか「護衛は」とかいう言葉も聞こえるからクリステア様だけじゃなく契約聖獣のお二方のお姿も間近で拝めるのでは? という期待と好奇心でここにいる生徒もいるみたいね。
そうか、クリステア様の契約聖獣のお二方が護衛として付いてくる可能性もあったのね。
お披露目の際に遠目から見ただけでも見目麗しい方たちだったから、こんなに近くで見られるのなら、トリクシー様の命令で嫌々来たとはいえ役得だったかも。
そんな期待を胸にそわそわとクリステア様やアリシア様がいらっしゃるのを待っていたところ、出入り口付近がざわめき始めた。
「クリステア様がいらっしゃったわよ!」
隣にいる令嬢が小声でおっしゃるのを合図に彼女の視線の先を追うと、クリステア様がご友人のメイヤー男爵令嬢と共にロビーに入ってきたところだった。
クリステア様はロビーの人混みに驚いた様子で周囲を見渡していた。
かっ……可愛い!
なんて可愛らしい方なの⁉︎
チェリーブロンドのふんわりとした髪に少しだけつり目のサファイアを思わせるブルーの瞳。まだあどけなさを残した薔薇色の頬にすっと通った鼻筋……まるでお人形みたい。
隣のメイヤー男爵令嬢も小動物を思わせるような可愛らしさで並んでいてとても目立つわ。
二人とも可愛いドレスで着飾らせてみたいわ……あら? クリステア様は公爵令嬢にしては制服がシンプルだと思っていたけれど、よくよく見れば同色の質の良い糸で袖や襟などが飾り刺繍されているじゃないの。
光の加減でさりげなくそうとわかるようにしているだなんて、相当な自信がないとできないことだわ。
あっ、袖口から覗くレースも繊細でかなりのものだわ。
どれもこれも最高級のものだとわかるのに、パッと見は控えめで嫌味がない。
聖獣契約者でありながらそれをひけらかすことなく、レイモンド王太子殿下の婚約者候補とまで噂されていても一歩引いて控えめなその姿勢と重なるわね。
そういえば新年の集まりの際も、少しだけしかお姿が見えなかったけれど、その時もかなり装飾を抑えたドレスだった。
「公爵令嬢のくせに貧相ね」ってトリクシー様は笑っていたけれど、フランシーヌ様は「貴女はもう少し物事の本質を見抜く力を身につけたほうがよろしくてよ」と柔らかく微笑んでいらしたそうよ。だけど視線はクリステア様から離れなかった……という話をその場に居合わせたご令嬢から聞いた覚えがある。
それに、その後開かれたパーティーでは装飾を控えたドレスが流行り始めたと、この前お母様が言っていたわね。
おしゃれなことで評判のコネリオ伯爵夫人やマードリック侯爵夫人がほっそりとした体型を生かした優美なドレスを着ていらして話題を攫ったのですって。素敵よねぇ……
あ、いけないいけない。
クリステア様の観察を忘れるところだった。
……え? メイヤー男爵令嬢が胸に抱えているのは、ぬいぐるみではなく、もしかして……噂の聖獣様⁉︎
うわあ、これまたなんて可愛らしいの⁉︎
帽子や服を身につけているだなんて。
メイヤー男爵令嬢とお揃いの服なんて着せたらきっと可愛いに違いないわね。
そんなことを考えて心の中で盛り上がっていたら、クリステア様のところへ男子生徒の集団が近寄っていた。
あ、あれは……トリクシー様がそれとなくけしかけるように仕向けたガドリー家のご子息では?
その反対側からはボートヴィル家のご子息の一団が近寄っていたけれど、先を越されたようで歯噛みしていた。
あらまあ、トリクシー様の思惑通りになったってことね。
ガドリー家のご子息がにこやかにクリステア様に話しかけていたけれど、クリステア様は困ったように当たり障りなく受け答えしているようだった。
どう見ても脈はない様子なのに、ガドリー家のご子息はごり押しでお茶会の約束を取り付けようとしていたわ。なんて無粋な。
そこへ、サロン棟へやってきたアリシア様が割り込んできた。
……取り巻きもなしに単身で。
しばし二人でやり合っていたけれど、エリスフィード家に敵対していたはずのグルージア家の令嬢同士でお茶会をすることを言及されてアリシア様が少し怯んだところへ、クリステア様が反論してアリシア様とともに部屋に移動しようとした。
それでもしつこく食い下がろうとしたガドリー家のご子息を遮るようにクリステア様の後ろに控えていたメイドが間に入った。
え、今まで存在感がなかったから気にしていなかったけれど、よくよく見ればなんて派手なメイドなの⁉︎
ハッとするような美貌に燃えるような赤い髪。メイド服越しでもわかるメリハリのあるスタイル……今までなぜ気づかなかったのか不思議なくらいの美女だった。
男子生徒たちの視線は顔と上半身を行ったり来たりしながら、ごくり、と生唾を飲んでいる者もいて、女子生徒たちがその様子を見て眉を顰めていた。
「クリステア嬢! 大丈夫か⁉︎」
「テア、無事かい?」
微妙になった空気を吹き飛ばすようによく通る声が聞こえ、そちらを見ると、なんとその声の主たちはレイモンド王太子殿下とノーマン様だった。
まずいところを見つかってしまったとばかりに固まるガドリー家のご子息にお二人が詰め寄る。
それを見てそっとボートヴィル家のご子息やその取り巻きはそっと後ろに下がっていった。
彼らは出遅れて命拾いしたわね。
クリステア様たちはレイモンド王太子殿下たちの計らいでお茶会に向かった。
その後、サロン棟のロビーに意味なく居た私たちはその場で厳重注意を受け、本日のサロン棟への出入りや滞在を禁止されてしまった。
クリステア様たちが出てくるところを待たないようにするための配慮だろうけれど、本日中とはいえ、サロン棟の出入り禁止を申し渡されてしまってとんだ大恥をかいてしまったわ。
ガドリー家のご子息と彼が率いる取り巻きの一団はその後も男子寮に連れ戻されお小言をもらったそうだけれど、それは自業自得というものよね。
そんなわけで、私たちは特に成果らしい成果を持たず、ことの成り行きだけをトリクシー様に報告しに向かったのだけれど……
「ああ、さっき他のおつかいが報告しに来たわ。やはり、商人の子のほうが情報が早いわね。貴女方、少しのんびりしすぎているのではなくて?」
なんと、私たちの他にも偵察係を寄越していたらしい。
あっけに取られながらも、そんなことなら私たちを巻き込まないでほしいと叫びたいのをぐっと堪えた。
「それにしても……お茶会ではどんな話題が出ているのか気になるわね。聖獣契約者二人に、聖獣様もお二人いらっしゃったことも鑑みれば、聖獣契約についてということも……まずいわね、アリシア様がフランシーヌ様より優位に立たれてしまう……」
「え? 聖獣様がお二人?」
メイヤー男爵令嬢の聖獣様はいらしたけれど、クリステア様が契約した聖獣様はどこにも……
「……貴女、気づかなかったの? 報告ではもう一人の契約者、セイ・シキシィマの契約聖獣様が何故かメイドの姿をしていたそうだけど」
トリクシー様に呆れた目で見られたけれど、その言葉を聞いて納得した。
あの超絶美人、聖獣様だったんだわ!
どうりで……ああ、そんなことならもっとまじまじと見ておくんだった!
聖獣様をあんなに近くで拝めるなんて幸運、今後あるかもわからないのに!
内心歯噛みしていると、トリクシー様がため息を吐いて私たちを見た。
「まあいいわ。とりあえずアリシア様の取り巻きは引き剥がすことに成功したから、明日は皆でアリシア様にご忠告しにいくことにいたしましょうね」
「……え?」
「え? ではなくてよ。貴女たちがぼうっとしているから私が直接アリシア様にわからせるしかございませんけれど、まさか、か弱い私一人だけを向かわせるわけありませんわよね?」
……要はアリシア様の取り巻きを引き剥がした上で、上級生である私たちがぞろぞろと大勢で押しかけた挙句、あれこれ言ってやろうって話じゃないの⁉︎
いやー! 行きたくないぃ!
---------------------------
もう少し続きます!
モブ視点書くの楽しいです……!
クリステアに対する評価と本人との温度差がありすぎない⁇ とセルフツッコミしつつ次回最終回になるよう頑張ります!
そしていつもコメントandエールポチッとありがとうございます!
執筆の励みになっておりますですー!やっほい!
サロン棟を利用するでもなくロビーでたむろするのは、目当ての方からのお声掛けを待つだとか、憧れの方を遠目からチラリとでも見たいとか、そういう方たちばかり。
憧れの方の姿を見たいと思う気持ちはわからないでもないですけれども。
その姿はわかりやすく物欲しげに見えるから、淑女としてはかなりはしたない行動とも言えるのよ。
そんな恥ずかしいことをしなさいとトリクシー様に命令され、私たちは憂鬱な気持ちでサロン棟のロビーに向かったのだけれど……今日はいつもと雰囲気が違った。
ロビーが人でごった返していたのだ。
「これは……」
「どういうことかしら? 今日に限ってサロン棟の利用希望が殺到しているの?」
周囲の様子を伺ってみると、これだけ人がいるにも関わらず、フロントで受付をする利用者はほとんどいないようだ。
フロントにいる受付係であろう従僕のお仕着せを着たアルバイトの学生は、カウンターの近くにいる生徒に「ご予約されていらっしゃいましたら受付いたします」と声をかけているようだけれど、「あら、ええ、まあ……」だの「ああ、ちょっとここで用事があってね」だのと言葉を濁してフロントから離れていくので困惑を隠せない様子だ。
「これって、もしかして……?」
私は隣に並ぶ、私と同じく犠牲となったご令嬢と目配せした。
「ええ。ここにいらっしゃる大半の目的は私たちと同じでしょうね」
ようするに、ここにいる生徒の大半はクリステア様たちが目当てということだ。
時々聞こえる会話から「聖獣様が」とか「護衛は」とかいう言葉も聞こえるからクリステア様だけじゃなく契約聖獣のお二方のお姿も間近で拝めるのでは? という期待と好奇心でここにいる生徒もいるみたいね。
そうか、クリステア様の契約聖獣のお二方が護衛として付いてくる可能性もあったのね。
お披露目の際に遠目から見ただけでも見目麗しい方たちだったから、こんなに近くで見られるのなら、トリクシー様の命令で嫌々来たとはいえ役得だったかも。
そんな期待を胸にそわそわとクリステア様やアリシア様がいらっしゃるのを待っていたところ、出入り口付近がざわめき始めた。
「クリステア様がいらっしゃったわよ!」
隣にいる令嬢が小声でおっしゃるのを合図に彼女の視線の先を追うと、クリステア様がご友人のメイヤー男爵令嬢と共にロビーに入ってきたところだった。
クリステア様はロビーの人混みに驚いた様子で周囲を見渡していた。
かっ……可愛い!
なんて可愛らしい方なの⁉︎
チェリーブロンドのふんわりとした髪に少しだけつり目のサファイアを思わせるブルーの瞳。まだあどけなさを残した薔薇色の頬にすっと通った鼻筋……まるでお人形みたい。
隣のメイヤー男爵令嬢も小動物を思わせるような可愛らしさで並んでいてとても目立つわ。
二人とも可愛いドレスで着飾らせてみたいわ……あら? クリステア様は公爵令嬢にしては制服がシンプルだと思っていたけれど、よくよく見れば同色の質の良い糸で袖や襟などが飾り刺繍されているじゃないの。
光の加減でさりげなくそうとわかるようにしているだなんて、相当な自信がないとできないことだわ。
あっ、袖口から覗くレースも繊細でかなりのものだわ。
どれもこれも最高級のものだとわかるのに、パッと見は控えめで嫌味がない。
聖獣契約者でありながらそれをひけらかすことなく、レイモンド王太子殿下の婚約者候補とまで噂されていても一歩引いて控えめなその姿勢と重なるわね。
そういえば新年の集まりの際も、少しだけしかお姿が見えなかったけれど、その時もかなり装飾を抑えたドレスだった。
「公爵令嬢のくせに貧相ね」ってトリクシー様は笑っていたけれど、フランシーヌ様は「貴女はもう少し物事の本質を見抜く力を身につけたほうがよろしくてよ」と柔らかく微笑んでいらしたそうよ。だけど視線はクリステア様から離れなかった……という話をその場に居合わせたご令嬢から聞いた覚えがある。
それに、その後開かれたパーティーでは装飾を控えたドレスが流行り始めたと、この前お母様が言っていたわね。
おしゃれなことで評判のコネリオ伯爵夫人やマードリック侯爵夫人がほっそりとした体型を生かした優美なドレスを着ていらして話題を攫ったのですって。素敵よねぇ……
あ、いけないいけない。
クリステア様の観察を忘れるところだった。
……え? メイヤー男爵令嬢が胸に抱えているのは、ぬいぐるみではなく、もしかして……噂の聖獣様⁉︎
うわあ、これまたなんて可愛らしいの⁉︎
帽子や服を身につけているだなんて。
メイヤー男爵令嬢とお揃いの服なんて着せたらきっと可愛いに違いないわね。
そんなことを考えて心の中で盛り上がっていたら、クリステア様のところへ男子生徒の集団が近寄っていた。
あ、あれは……トリクシー様がそれとなくけしかけるように仕向けたガドリー家のご子息では?
その反対側からはボートヴィル家のご子息の一団が近寄っていたけれど、先を越されたようで歯噛みしていた。
あらまあ、トリクシー様の思惑通りになったってことね。
ガドリー家のご子息がにこやかにクリステア様に話しかけていたけれど、クリステア様は困ったように当たり障りなく受け答えしているようだった。
どう見ても脈はない様子なのに、ガドリー家のご子息はごり押しでお茶会の約束を取り付けようとしていたわ。なんて無粋な。
そこへ、サロン棟へやってきたアリシア様が割り込んできた。
……取り巻きもなしに単身で。
しばし二人でやり合っていたけれど、エリスフィード家に敵対していたはずのグルージア家の令嬢同士でお茶会をすることを言及されてアリシア様が少し怯んだところへ、クリステア様が反論してアリシア様とともに部屋に移動しようとした。
それでもしつこく食い下がろうとしたガドリー家のご子息を遮るようにクリステア様の後ろに控えていたメイドが間に入った。
え、今まで存在感がなかったから気にしていなかったけれど、よくよく見ればなんて派手なメイドなの⁉︎
ハッとするような美貌に燃えるような赤い髪。メイド服越しでもわかるメリハリのあるスタイル……今までなぜ気づかなかったのか不思議なくらいの美女だった。
男子生徒たちの視線は顔と上半身を行ったり来たりしながら、ごくり、と生唾を飲んでいる者もいて、女子生徒たちがその様子を見て眉を顰めていた。
「クリステア嬢! 大丈夫か⁉︎」
「テア、無事かい?」
微妙になった空気を吹き飛ばすようによく通る声が聞こえ、そちらを見ると、なんとその声の主たちはレイモンド王太子殿下とノーマン様だった。
まずいところを見つかってしまったとばかりに固まるガドリー家のご子息にお二人が詰め寄る。
それを見てそっとボートヴィル家のご子息やその取り巻きはそっと後ろに下がっていった。
彼らは出遅れて命拾いしたわね。
クリステア様たちはレイモンド王太子殿下たちの計らいでお茶会に向かった。
その後、サロン棟のロビーに意味なく居た私たちはその場で厳重注意を受け、本日のサロン棟への出入りや滞在を禁止されてしまった。
クリステア様たちが出てくるところを待たないようにするための配慮だろうけれど、本日中とはいえ、サロン棟の出入り禁止を申し渡されてしまってとんだ大恥をかいてしまったわ。
ガドリー家のご子息と彼が率いる取り巻きの一団はその後も男子寮に連れ戻されお小言をもらったそうだけれど、それは自業自得というものよね。
そんなわけで、私たちは特に成果らしい成果を持たず、ことの成り行きだけをトリクシー様に報告しに向かったのだけれど……
「ああ、さっき他のおつかいが報告しに来たわ。やはり、商人の子のほうが情報が早いわね。貴女方、少しのんびりしすぎているのではなくて?」
なんと、私たちの他にも偵察係を寄越していたらしい。
あっけに取られながらも、そんなことなら私たちを巻き込まないでほしいと叫びたいのをぐっと堪えた。
「それにしても……お茶会ではどんな話題が出ているのか気になるわね。聖獣契約者二人に、聖獣様もお二人いらっしゃったことも鑑みれば、聖獣契約についてということも……まずいわね、アリシア様がフランシーヌ様より優位に立たれてしまう……」
「え? 聖獣様がお二人?」
メイヤー男爵令嬢の聖獣様はいらしたけれど、クリステア様が契約した聖獣様はどこにも……
「……貴女、気づかなかったの? 報告ではもう一人の契約者、セイ・シキシィマの契約聖獣様が何故かメイドの姿をしていたそうだけど」
トリクシー様に呆れた目で見られたけれど、その言葉を聞いて納得した。
あの超絶美人、聖獣様だったんだわ!
どうりで……ああ、そんなことならもっとまじまじと見ておくんだった!
聖獣様をあんなに近くで拝めるなんて幸運、今後あるかもわからないのに!
内心歯噛みしていると、トリクシー様がため息を吐いて私たちを見た。
「まあいいわ。とりあえずアリシア様の取り巻きは引き剥がすことに成功したから、明日は皆でアリシア様にご忠告しにいくことにいたしましょうね」
「……え?」
「え? ではなくてよ。貴女たちがぼうっとしているから私が直接アリシア様にわからせるしかございませんけれど、まさか、か弱い私一人だけを向かわせるわけありませんわよね?」
……要はアリシア様の取り巻きを引き剥がした上で、上級生である私たちがぞろぞろと大勢で押しかけた挙句、あれこれ言ってやろうって話じゃないの⁉︎
いやー! 行きたくないぃ!
---------------------------
もう少し続きます!
モブ視点書くの楽しいです……!
クリステアに対する評価と本人との温度差がありすぎない⁇ とセルフツッコミしつつ次回最終回になるよう頑張ります!
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