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解釈違いぃ!

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「ルビィが……こんな……マッチョだったなんて……」
マリエルちゃんがプルプルと震えている。
見た目は可愛いうさぎの聖獣カーバンクルだったルビィが、まさかマッチョなお兄さんの姿になるとか想像つかないわよね。

「ルビィがもし人化することができたら、カトラリーしか持ったことないような、細身で儚げな少年か青年だと思ってたのに……これじゃ私のイメージしてたカップリングが解釈違いぃ……!」
涙目で訴えるマリエルちゃんの発言に私は思わずずっこけそうになった。そっちかーい!

それにしてもマリエルちゃん、その人化像は契約者オヤバカ丸出しすぎないかな⁉︎
ルビィって、飛び蹴りとか結構やることがワイルドなんだから、どこをどう間違ったらそんな華奢なイメージになるのよ?
私もさすがにここまでマッチョだとは思わなかったけど!
そして解釈違いの発言に関してはこれ以上は敢えて触れないよ!
いろんな意味でお触り厳禁アンタッチャブル

「カトラリーしかって……あのねえ、アナタが衣装作りに夢中になって寝落ちたのを誰がどうやってベッドに運んでたと思ってるのよ?」
ルビィが呆れたような声で首を傾げると、マリエルちゃんが一瞬「え?」と思いもよらなかったという反応を見せた。
ちょ、マリエルちゃん⁉︎
寝落ちるまで衣装作りだなんて……針だのハサミだのあるのに、危ないじゃないの!
それに、前世の失敗が活かされてないわよ⁉︎
三つ子の魂百まで以前、前世の魂今世までって、シャレにならないからね⁉︎

「え……どうやってって……それは、無意識にベッドに潜り込んだか、ルビィが転移で移動させてくれているとばかり……え、で、でもそういえば部屋着からナイトウェアに着替えてたし……て、ま、まさか⁉︎」
マリエルちゃんの顔が赤くなったり青ざめたりして忙しい。

「そのまさかに決まってんでしょお? ワタシのさりげない優しさに感謝しなさいよね!」
ルビィがバチコーン! とウインクして見せるものの、マリエルちゃんは絶望したようによろめいた。
「マ、マリエルさん⁉︎」
確かに人化したルビィに運ばれ、さらには着替えまでされてたとか倒れそうになってもおかしくない衝撃の事実だわ。

「も、もう、お、お嫁にいけない……」
「何バカなこと言ってんの。アナタみたいな小娘に興味なんかないわよ」
「そういう問題じゃないし、それはそれで屈辱っ……いだっ⁉︎」
呆れ果てた様子のルビィがマリエルちゃんの額にデコピンをかました。あれは痛い。
「んもう、グタグタうるさいのよ。本来のワタシの姿はとってもキュートなんだから問題ないでしょ? ほらぁ、そんなことよりワタシは何を手伝ったらいいの?」
ルビィがマリエルちゃんを放置して私に向き直る。切り替え早っ!

「ええと……あ、その前にエプロンは……と」
ルビィのフリルだらけのシャツだと料理の邪魔になるし、汚れてはいけないだろうと思ってインベントリの中を探ると、レースをふんだんに使ったエプロンが出てきた。
あ、昔のレースを取り外してもらうお直し前の「新婚さんエプロン」もどきがまだ残ってたんだ。
割烹着を作ってもらってからはエプロン使わなかったから、すっかり忘れてた。
結ぶ位置で多少調整は効くといえ、これじゃちょっと小さいかな?

「あらっ? それ可愛いじゃない。ちょっと借りるわね」
「あっ」
ルビィが私の手からひょいとエプロンを取り上げると、手早くエプロンを装着した。
ちょっと……いや結構小さい気がするけど、これなら襟元のフリルも汚れないだろうから、よしとしよう。
しかしマッチョと新婚さんエプロンって……似合わないようで意外と似合ってるのは、ルビィだからかしら。

「クリステア様、卵を割り終えましてよ」
朱雀様と白虎様が黄身と白身に分けた卵の入ったボウルを持ってきた。
「あ、ありがとうございます。ちょうどよかったわ。それじゃあ、これを泡立てていただけますか?」
「泡立てる?」
私はルビィの疑問に答えるべく、空いているボウルに砂糖と卵白を入れ、泡立て器で実際に手を動かして見せた。

「こんなふうに泡立てていくと、卵白が白くふわふわになりますから、ツノが立つまで泡立ててください」
「ツノが立つって?」
「ええと、こう……泡立て器を持ち上げてツノのような形状が保てるようになれば大丈夫です」
「ふんふん、なるほどね。やってみるわ」
私から泡立て器とボウルを受け取ると「フンッ!」と鼻息も荒く高速で手を動かし始めた。

ものすごい勢いで泡立てるルビィを見て、唖然としていた私は、我に返って慌ててマリエルちゃんと手分けして小麦粉を量ったり、粉を振るったりした。
「ねえ、こんなもんでいいかしら?」
ルビィが手を止めてボウルを見せてきた。

「えっ? もうですか? どれどれ……はい、いいですね! じゃあ、これに……」
きれいなメレンゲができたので、そこに小麦粉を入れてさっくりと混ぜ、サラダ油の代わりに溶かしバター、すりおろしにんじんと牛乳をを加えて、混ぜすぎないように混ぜ合わせる。

専用の型がないので、パウンドケーキ型にバターを塗り、生地を流し入れて余熱していたオーブンへイン。
形は違うけど、にんじんシフォンケーキは焼き上がりを待つばかりとなった。
ミートローフやテリーヌに使えるからパウンドケーキ型はガルバノおじさまに作ってもらっていたけど、普通のホールケーキやシフォンケーキの型も作ってもらおうかしら。

そんなことを考えながら、残ったにんじんとりんごのすりおろしでジャム、それからアップルパイの中身のりんごを煮ようと鍋に火をかけたところで、朱雀様に肩をガシッと掴まれた。
「す、朱雀様?」

朱雀様が卵黄の入ったボウルを手に艶やかに微笑んだ。
「クリステア様……この卵黄で何を作りますの?」
「これはゆ……」
夕食の卵焼きにでも使おうかと思っていた私の言葉を、朱雀様が遮った。
「プリン……そう、プリンしかございませんわよね。ねえ? クリステア様?」
「は、はひ……」
朱雀様のものすごい圧に負けて、アップルパイのためのりんご煮とジャムとプリン作りが同時進行することになったのはいうまでもないのだった。

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