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計画を立てよう!
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「それで、女子会って何をするの?」
ルビィがクッキーのようにニンジンをぽりぽりと齧りながら聞いてきた。
最近は野菜スティックの他にニンジンをねじり梅の飾り切りにしたものをおやつにするのがお気に入りみたい。
初めてねじり梅のニンジンを見たとき「かっわいーい!」と盛り上がっていたからね。
「ええと……女子会と言っても、別にこれといって正式な作法とかがあるわけじゃないので……」
「そうね。女子だけで集まってお茶会をしたり、お泊まり会をしたりしておしゃべりするだけだし……」
「ふうん。女子だけってことは当然恋バナとかもするのよね?」
「恋バナ、って……」
マリエルちゃんたら前世の知識を教えるにしても偏りすぎてない?
マリエルちゃんをチラッと見ると「ルビィってば、勝手に私の記憶を読んでるんですよね……」と肩を落とした。
「あら、人聞きが悪いわね。マリエルとは契約で繋がってるから、私の能力で筒抜けなだけよぉ?」
ルビィはそういうとニンジンを上へ放り投げてパクッとキャッチした。
「ま、召喚された時に魔力の相性もいいし、面白そうな記憶を持ってる子だなって思ったから契約を決めたんだけどね~」
なんと、マリエルちゃんと聖獣契約をする決め手がマリエルちゃんの記憶とは……
「それより女子会よ! サロン棟でやるんならお茶会よね? 私も食べられるお茶菓子も出してちょうだいよ!」
「ええ⁉︎ ……野菜スティックですか?」
お茶会に野菜スティックはなぁ……
「あらやだ、まさかワタシにだけ野菜スティックを出すつもり? そんなのやーよ」
「ええ……?」
どうしようかな。
アフタヌーンティースタイルならケーキスタンドの下段に野菜多めのBLTサンドやたまごサンドを食べやすいサイズにして、中段はスコーンなどの焼き菓子、上段はケーキだけど……
「ルビィったら、わがまま言わないでよ」
マリエルちゃんがルビィの無茶振りを諌めようと嗜める。
「だってぇ……女子は皆と同じものを分け合ったりして仲良くなるんでしょ? 仲間はずれにしないでよ」
ルビィが拗ねた様子を見せると、マリエルちゃんは「うっ」と言葉に詰まる。
ルビィの普段の食事は肉食の聖獣たちに合わせるわけにもいかないので基本的に単独メニュー(サラダ)だ。
こればかりはしかたないこととはいえ、いつも疎外感を味わっているのかもしれないと思うとこういう時くらいは皆と同じものを食べて楽しみたいのだろう。
「……わかりました。何か考えてみます。作る時は手伝ってくださいね」
「もちろんよ! うふふ、楽しみにしてるわぁ」
「え、クリステアさん? だ、大丈夫なんですか⁉︎」
マリエルちゃんが心配そうに私を見る。
「ええ……多分、何とかなるんじゃないかしら。マリエルさんも手伝ってね?」
「えっ……⁉︎」
いやだからマリエルちゃん、どうしてそこで絶望したような顔で私を見るのよ?
「だ、だって私が料理したら、素材を腐海の底に沈めてしまうやも……」
……マリエルちゃんの心はいつも腐海に漂っているのでは? とツッコミを入れそうになるのをグッと堪えていると、ルビィが「あらやだクリステアったら、なかなか上手いこと言うわね?」なんて私を見ていうもんだから、マリエルちゃんが「え? えっ?」と戸惑っていた。
……ルビィさん、私の思考を読むのをやめてもらえます⁇
「マリエルさん、ルビィのサラダは作れてるんだから大丈夫よ」
「いえでもあれは造形と思って作ってますから……」
確かに、飾り切りの腕はメキメキと上がりつつあるのよね。
きゅうりやニンジンでリボンや薔薇の花を作ってるのを見て、いずれカービングまで始めるのではないかと思うくらいよ。
それなのに、料理となると途端に「何がどうしてこうなった⁉︎」みたいな仕上がりになってしまうから、不思議なのよね……
前世からの苦手意識がそうさせるのかしら。
その日はもう遅かったので解散することにして、翌日また話し合うことになった。
翌朝、午前の授業を受けるために教室に向かう途中でアリシア様やその取り巻きと鉢合わせした。
「あ……アリシア様、おはようございます」
「……おはようございますわ」
アリシア様が私に挨拶を返したので、取り巻きたちが信じられないような顔をして私とアリシア様を見た。
今まではアリシア様が私に対して敵対心ばっちばちだったこともあり、私から話しかけにいくことはなかったので、今朝も挨拶してくるとは思わなかっただろうし、アリシア様がそれを受けて挨拶を返すとか思いもよらなかったんだろうなぁ。
だってこれって、アリシア様が私を受け入れたってことになるもんね。
それでも、アリシア様が私たちから顔を背けることはなかったので、取り巻きたちも渋々と言った様子で「おはようございます……」と挨拶してきた。
「ええ、皆様おはようございます」
取り巻きたちには無視されちゃうかな? と思っていたのでちょっと意外に思いながら挨拶を返すと、アリシア様がスッと私たちの前に進み出た。
「アリシア様⁉︎」
取り巻きたちが慌てたように手を伸ばしかけたところで、アリシア様が振り向いた。
「貴女たちは別教室だからお急ぎなさい。私はクリステア様にお話がありますから」
アリシア様の毅然とした様子に、取り巻きたちはハッとしたように顔を見合わせてから「それではお先に……」と言って先を急いだ。
アリシア様の側を通る時に「頑張ってくださいませ!」と小声で応援していたから、きっとアリシア様が私に何かガツンと言ってやるのだとでも思っているのだろう。
パタパタと足早に去っていく取り巻きたちを見送った後、アリシア様が少しもじもじした様子で私たちを見る。
「あの……教室まで、わ、私もご一緒してもよろしくて?」
「ええ、もちろんですわ!」
「はい!」
やだー! アリシア様が可愛いんですけど!
「あの……お話って、何でしょう?」
皆で教室に向かいながらアリシア様に尋ねる。
さっき「話がある」と言っていたのは単なる口実だったのかもしれないけれど、ずっと沈黙が続いていたので、つい……
「あ……それは、別に、あの……」
私の問いに目線を落として歩くアリシア様の言葉を待っていると、アリシア様がぴたりと歩くのをやめた。
「アリシア様?」
「あ、あの……お茶会にご招待したかったのですけど……」
おお? アリシア様も女子会での親睦希望⁉︎
「……でも、よくよく考えたら、私ではクリステア様に満足いただけるもてなしなどできそうにありませんわ……」
そう言ってアリシア様は俯いてしまった。
「えっ?」
「昨日、夕食の際にエイディーから聞きましたの。クリステア様はショートブレッドや、柔らかいパンの素、果ては学園内のカフェのメニュー開発までなさったのでしょう? それに、王妃様もクリステア様の作ったお菓子の虜だという噂までありましたし……そんな方に満足いただけるようなお茶菓子なんて、私には……」
出せっこありませんわ……と呟き、抱えていた教材にギュッと力がこもった。
ああ、私が天然酵母パンを作るまで固いパンが主流だったし、王妃様も我が家の敵対する家の奥様たちを呼んで私の作ったお菓子を振る舞ったりしたことがあったよね……
ラース……ごはんの件で悪食だと揶揄してたら、実は美味しいものをたくさん開発してたから、お茶会に招待したくても何を出しても見劣りしてしまうのでは? と意気消沈してるってことね……
「でしたら、私がアリシア様をお茶会にご招待しますわ! 昨日、マリエルさんともお話していたんです! ね、マリエルさん」
「は、はいっ! ル、ルビィの発案です!」
「ルビィ様が……?」
「はい! 女子だけで仲良くお茶会しましょうって!」
「まあ……!」
さっきまで死んだ目をしていたのに、もふもふ好きなアリシア様の目は今やキラキラと輝いていた。よかった……
「ぜひとも、参加させていただきますわ!」
楽しみにしていますわ! と弾む声で答えるアリシア様を見てほっこりしつつ、お茶会の日はまた改めて招待状を送ると約束して教室へ急いだ。
よし! アリシア様との仲直りお茶会という名のお茶会、頑張るぞー!
---------------------------
5/18(木)にコミカライズ版「転生令嬢は庶民の味に飢えている」28話が更新されております!よろしくお願いします~!
感想&エールポチッとありがとうございます!励みになっております( ´ ▽ ` )
ルビィがクッキーのようにニンジンをぽりぽりと齧りながら聞いてきた。
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「そうね。女子だけで集まってお茶会をしたり、お泊まり会をしたりしておしゃべりするだけだし……」
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「恋バナ、って……」
マリエルちゃんたら前世の知識を教えるにしても偏りすぎてない?
マリエルちゃんをチラッと見ると「ルビィってば、勝手に私の記憶を読んでるんですよね……」と肩を落とした。
「あら、人聞きが悪いわね。マリエルとは契約で繋がってるから、私の能力で筒抜けなだけよぉ?」
ルビィはそういうとニンジンを上へ放り投げてパクッとキャッチした。
「ま、召喚された時に魔力の相性もいいし、面白そうな記憶を持ってる子だなって思ったから契約を決めたんだけどね~」
なんと、マリエルちゃんと聖獣契約をする決め手がマリエルちゃんの記憶とは……
「それより女子会よ! サロン棟でやるんならお茶会よね? 私も食べられるお茶菓子も出してちょうだいよ!」
「ええ⁉︎ ……野菜スティックですか?」
お茶会に野菜スティックはなぁ……
「あらやだ、まさかワタシにだけ野菜スティックを出すつもり? そんなのやーよ」
「ええ……?」
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「ルビィったら、わがまま言わないでよ」
マリエルちゃんがルビィの無茶振りを諌めようと嗜める。
「だってぇ……女子は皆と同じものを分け合ったりして仲良くなるんでしょ? 仲間はずれにしないでよ」
ルビィが拗ねた様子を見せると、マリエルちゃんは「うっ」と言葉に詰まる。
ルビィの普段の食事は肉食の聖獣たちに合わせるわけにもいかないので基本的に単独メニュー(サラダ)だ。
こればかりはしかたないこととはいえ、いつも疎外感を味わっているのかもしれないと思うとこういう時くらいは皆と同じものを食べて楽しみたいのだろう。
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「もちろんよ! うふふ、楽しみにしてるわぁ」
「え、クリステアさん? だ、大丈夫なんですか⁉︎」
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「ええ……多分、何とかなるんじゃないかしら。マリエルさんも手伝ってね?」
「えっ……⁉︎」
いやだからマリエルちゃん、どうしてそこで絶望したような顔で私を見るのよ?
「だ、だって私が料理したら、素材を腐海の底に沈めてしまうやも……」
……マリエルちゃんの心はいつも腐海に漂っているのでは? とツッコミを入れそうになるのをグッと堪えていると、ルビィが「あらやだクリステアったら、なかなか上手いこと言うわね?」なんて私を見ていうもんだから、マリエルちゃんが「え? えっ?」と戸惑っていた。
……ルビィさん、私の思考を読むのをやめてもらえます⁇
「マリエルさん、ルビィのサラダは作れてるんだから大丈夫よ」
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確かに、飾り切りの腕はメキメキと上がりつつあるのよね。
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それなのに、料理となると途端に「何がどうしてこうなった⁉︎」みたいな仕上がりになってしまうから、不思議なのよね……
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その日はもう遅かったので解散することにして、翌日また話し合うことになった。
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「あ……アリシア様、おはようございます」
「……おはようございますわ」
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「ええ、もちろんですわ!」
「はい!」
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「あの……お話って、何でしょう?」
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「アリシア様?」
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おお? アリシア様も女子会での親睦希望⁉︎
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「えっ?」
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ラース……ごはんの件で悪食だと揶揄してたら、実は美味しいものをたくさん開発してたから、お茶会に招待したくても何を出しても見劣りしてしまうのでは? と意気消沈してるってことね……
「でしたら、私がアリシア様をお茶会にご招待しますわ! 昨日、マリエルさんともお話していたんです! ね、マリエルさん」
「は、はいっ! ル、ルビィの発案です!」
「ルビィ様が……?」
「はい! 女子だけで仲良くお茶会しましょうって!」
「まあ……!」
さっきまで死んだ目をしていたのに、もふもふ好きなアリシア様の目は今やキラキラと輝いていた。よかった……
「ぜひとも、参加させていただきますわ!」
楽しみにしていますわ! と弾む声で答えるアリシア様を見てほっこりしつつ、お茶会の日はまた改めて招待状を送ると約束して教室へ急いだ。
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